熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

坂村健教授:イノベーション基盤としてのユビキタス・・・C&Cユーザーフォーラム

2007年12月07日 | イノベーションと経営
   ICT革命の動向を適格に把握するのに非常に役にたっているのが、毎年ビッグサイトで開催されているNECのC&Cユーザーフォーラムである。
   結局、今回は、2日目の30周年記念シンポジウムしか参加できなかったが、NEC佐々木元会長のNECの革新への軌跡の話の後、東大坂村健教授の基調講演「イノベーション基盤としてのユビキタス」、その後、東大江崎浩教授、慶大金子郁容教授、トヨタ渡邉浩之技監、NECの山田敬嗣所長、國尾武光所長(司会)の参加によるパネルディスカッション「これからのC&Cイノベーション」と続いて結構面白かった。

   ICTの現在をどう認識するかと言うことであるが、坂村教授の場合は、ucodeが社会のインフラとなるユビキタスコンピューティングの時代だという事に主眼が置かれるが、同じネットワーキングでも、フラット化したネットワークに比重を移したビジネスモデルを考えるとウィキノミクス的な発想となり、大分ニュアンスが異なって来るが、後半のパネルは自動車の未来と言った話が絡んでくるとコンピューターそのものに話となり、また、関心の持ち方の違った論客たちの議論なので、議論が拡散していった。

   坂村教授の主張は、ICTにおいては、汎用技術を活用して、総てユニバーサルデザインとオープンネスを目指すべきで、ユビキタスコンピューティングの基本は状況の自動認識であるから、世界中の識別すべき総てのモノ・場所・概念に個別識別番号のついたuIDタグを付けて読み取り、ネットに繋ぐとコンピューターの働きによって最適処理がなされる、すなわち、場所情報システムのユニバーサルデザインを社会インフラにすべきであると言うことである。

   社会インフラについて、坂村教授は、日本のバスの自動運賃支払い機について、お札やコイン、カードなど色々な支払手段に対応するあんなに多機能な機械は日本だけのもので、非常に高くつくシステムだと言う。外国では、現金なら現金だけとして、他の支払手段を認めないので機械の開発コストも安くて無駄もない。
   高速道路のETCであるが、日本では現金やカード支払いなどどちらでも良いが、シンガポールではETCをつけない車は走れなくして一挙に制度化したので、ゲートでの開閉機を全廃した。これによってETCの機械も規格大量生産で安くなり関連コストを含めて社会全体で大幅なコスト削減を実現したが、日本のように、どちらでも対応出来る機械のコストは高くつくし、選択肢を沢山残したシステムは、厖大なコストがかかるだけで非効率だと言う。
   日本では、金銭出納のゲート員の首を切れないからだというが、民営化と言ってもその程度である。

   日本では、何でも画一化することに反対し、自由裁量の余地を残そうとするが、これをクリアーする為には、先のバスのケースと同じで大変な努力とコストがかかるのだが、必要だと思ったら一挙に法制化してこのような無駄を省く欧米を見習うべきかも知れない。
   住基カードに反対する人も結構多いし、納税番号と言うべき国民一人一人につく背番号制度もまだまだ先の話だが、アメリカでは、30年以上も前私が留学した時に、ソーシャル・セキュリティ番号を持たされて総てそれで処理されていたが、国民総背番号制などあたり前だったのである。
      余談だが、日本企業のIT化がシステムとして完結しない企業が多くて効果が上がっていないのは、いまだにコンピューターを使ってビジネスを進めるのに横車を押して抵抗するトップが居るからだと言うが、アメリカなどは、そんな人間は即刻排除されてしまう。
   
   公共の利益と個人の権利をどうバランスさせて行くか、非常に難しい問題であるが、日本の場合には、放縦と言うか、個人勝手が過ぎる場合が多いので、社会インフラの整備が遅れて社会コストが異常に高い。
   政治の場では、多数の力でごり押しをするが、個人の権利については、最後の一人まで待って解決するケースが多いような気がする。
   休日、守屋元次官が何処に居るのかさえ把握できずゴルフをするのさえ知らなかったと言うのなどは言語道断で、自由やプライバシーの次元の話ではない。高位の公僕であるのなら、四六時中所在はオープンであるべき義務を負う筈である。

   坂村教授は、社会インフラを実現する為には、技術設計と制度設計が同時に必要であると言う。不完全な道路交通網をインフラとして成り立たせているのは、道路交通法規や自賠責保険などの制度の補完あってこそなのである。
   日本の場合には、民間による製品技術の質はどんどん高度化するが、新しい経済社会に対応した社会インフラの整備が遅れるので、社会そのものが上手く新しい動きに対応出来ないので十分に機能しないと言うのである。
   坂村教授が、世界中を巻き込んで推進しているucode による社会インフラを整備し、この戦いを通して広範囲のソーシャル・イノベーションの嵐を巻き起こす、このことが、高齢化社会に対処し持続可能な環境を維持するための日本の21世紀において果たすべき役割だと言うことである。
   
コメント
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