熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

団塊の世代へエール・・・堺屋太一

2007年03月13日 | 政治・経済・社会
   DANKAI日本橋アカデミー「人生の新しい橋を渡ろう」で、堺屋太一氏が、「黄金の時代の担い手たちよ」と言う演題で講演を行った。
   団塊の命名者で謂わば団塊世代の保護者と言うべき堺屋先生の、自分のために生まれたようなアカデミーの卒業フォーラムであるから、サービス満点で、予定時間を30分もオーバーするほどの熱の入れようで、何時もの名調子で団塊世代を救世主のように「よいしょ」する堺屋節を披露した。

   上海の株の暴落に始まった世界同時株安に言及して、経済成長を謳歌する中国も必ず初期的調整に入るので、今後も一時的な経済悪化は避けられないと言う。
   20世紀の前半から、インフレ、デフレ、ディスインフレが、10年周期で繰り返すのだと独自の景気循環論を説きながら、工業生産社会から知価社会への日本の経済社会の構造変革について語った。

   官僚主導、職縁社会、核家族の三角形に守られた官僚主導業界協調体制の中で、1980年代には、世界に冠たる近代工業社会を作り上げた。
   大型、大量、高速が価値観を主導し、モノの豊かさを幸せの指標に祭り上げた経済産業社会である。
   官僚が、総ての開発計画や発展政策を作り上げ、その根本的な方針は、
   過度な設備はなくす
   産業の新規参入は認めない
   と言うことで総ての産業の設備投資を調整し、コスト+適正利潤=適正価格を設定して企業は絶対に損をしない体制を作り上げ、先行投資型内部留保方針を貫き通した。
   会社は永遠で絶対に潰れないので、終身雇用、年功賃金体制が確立し、日本人は職縁社会に埋没してしまった。
   社員の福利施設の拡充は良いが、社長の贅沢は許せない、余剰資金は内部留保に充当して会社の拡大に資することが大切で配当などは極力抑えるべし、そんな社会であったと言うのだが、この中で悪戦苦闘し泳ぎ切ったのが団塊世代なのであろう。

   90年代の日本の不況と企業の凋落が見て取れるような逆転振りだが、当然に起こるべくして起こった日本の不幸だったのであろう。
   良くも悪くも、独創性とイノベーションを涵養出来ない日本企業の体質、株主重視や企業価値の向上などに全く無頓着な日本式経営の特質などは、あの絶頂期の遺産でもある。

   ところで、知価社会への移行で、価値観の変革について、堺屋先生は、幸せの指標である工業社会の「物財の豊かさ」と、知価社会の「満足の大きさ」は根本的に違う。
   前者は、客観的、科学的だが、後者は、主観的、社会的で、改変可能だ。
   この変化と違いに気付いた企業が勝利して勝組になっているのだと言うのである。
   
   団塊世代の新しい橋の渡り方については、職縁社会に雁字搦めに縛られて生きて来てやっと自由の身となるのだから、職縁社会から決別して好きな所で好きなことをして生きて行こうと激励。
   好きなこととは、何時間やっていても飽きない、そのことなら何時間話しても嫌にならないし何時間も話を聞きたいと思うこと。
   家計リストラをすること、月10万円プラスの道を探すことなどと言った一寸現実的な話をしながら締め括った。

   社会開発センター村田裕之理事長が「本格化する高齢社会」という講演の中で、50代から70代にかけて、脳の海馬にある樹状突起が急速に増え始めて活動が活発になり、解放、変身願望が強くなってくるので、熟年離婚が多くなるのだと言う面白い話をしていたが、それでなくても、仕事一途で人生の楽しみ方を知らずに突っ走ってきた団塊男性には、何となく身構えざるを得ない、一寸身につまされる話かも知れない。

   パネルディスカッション『「個」に生きて「社会」に生きる』には、阿木燿子さんが出ていたが、実に優雅な語り口でそれに美しくチャーミングであった。
   作家加藤仁氏が、定年退職者のインタビューで、阿木さんのお父さんに偶然会って、田舎に移り住んで極甘のブドウ栽培をしていた事情を取材したらしい。
   阿木さんの話では、頭が良くて素晴らしい人だったようだが、三つ子の魂百までで、怒りっぽい、飽き易い、意地っ張り、傲慢だったと述懐しながら、亡くなる時、お母さんともう一度結婚したいと言ったようだが、お母さんの方は絶対に嫌だと言ったという話を披露していた。
   人との交わり、社会性を大切にして、絶えず自分自身に向き合って自分を育てて行けるような成熟した人間になることが大切だと言っていた。
   男性は、芸術や音楽などにそっぽを向いているが、劇場に足を運んで欲しいとも。
   
 
コメント (1)
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