熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

イノベーションを推進するMOT(1)

2007年03月20日 | イノベーションと経営
   経済産業省が、二日間にわたって、「イノベーションを推進する人材育成・研究の進展に向けて」をテーマに技術経営シンポジウムを開催した。
   MOT(Manegement of Technology)を目的に、産学連携による新たな人材育成に向けて経済産業省が立ち上げたプロジェクトで、最近、日本の大学に相次いで設立されているMOTディグリープログラムを後押ししており、産業立国ジャパン再生に向かってのすごい意気込みが感じられた。
   広い会場は、企業や役所、大学関係者が詰めかけて熱心に耳を傾けていた。
   都合で第一日目しか聞けず、二日目のイノベーションの第一人者MITのリチャード・レスター教授の講演をミスったのが残念であったが、二日目は人材育成が主であった所為もあり、初日だけでも日本の技術経営に関する周辺事情はかなり把握できたと思っている。

   経産省の説によると、技術経営MOTとは、「技術に立脚する事業を行う企業・組織が、持続的発展のために、技術が持つ可能性を見極めて事業に結びつけ、経済的価値を創出していくマネジメント」と言うことで、イノベーションを支える人材の育成に国運をかけようということである。

   ついでながら、わが母校ウォートン・スクールのEMTM(Executive Master's Technology Manegement)プログラムでは、Technology + Business >> A Powerful Compaund と言うことで、学生は、ペンシルバニア大学工学大学院とビジネス・スクールであるウォートンのユニークで強力な連携から恩恵を受け、教授陣や産業界のエキスパートたちから、科学と技術が超スピードで変化している今日においてどのようにしてイノベーションをマネッジすれば良いのか、先駆的なリサーチと現実への洞察を授けられるとして、大学の創立者ベンジャミン・フランクリンの高邁な科学と哲学の伝統の継承を唱えている。
   技術とビジネスの世界で、両者のインターフェイスでベストミックスの事業を推進して行けるようなビジネスリーダーを育成すと言うことであろう。

   ところで、カリフォルニア大学のバークレィ校のMOTプログラムでは、MOTは、市場にハイテク製品を提供することに関する一連のアクティビティであると定義するとして、決してローテクではないと強調している。
   伝統的な手法とは全く違った技術経営であって、MOTは、新商品の開発と商業化に関するオペレーションや組織問題に集中するとしていて、ニュアンスがぐっと変わってくる。
   いずれにしても、両校のMOTプログラムは、1980年半ばの創設で、日本とはキャリアが違うが、会場にあった各大学のMOTプログラムのパンフレットを見ていて、ここ数年で雨後の筍のように創設された各大学の日本型ビジネス・スクールの貧弱さを思い出して、趣旨は良いのだがこのままでは先が思いやられる感じがしている。

   講演者や報告者達が口々に言っていたのは、ビジネススクール・トラウマと言った表現で、あたかもビジネススクールが間違っていて、MOT教育を推進すれば日本の経済と経営が一挙に良くなるような発言をしていたが、認識不足と言うべきであろう。
   ヘンリー・ミンツバーグ教授が、「MBAが会社を滅ぼす 実際の原題はMANEGERS NOT MBAs」を書いてMBAプログラムを語ったが、彼が批判したのは実際の実業や経営の経験のない学生に教えているビジネススクールの教育システムであって、マネジメントスクールのマネジメント教育の必要性は十二分に認めており、ビジネススクールの改革の必要性を説いているのである。
   
   また、今回のMOT教育については、アメリカの場合でも、名だたるビジネススクールに併設されているケースが多く、ビジネススクールにエンジニアリングスクール、インフォメーションスクール(IT関連)等の専門大学院を糾合した学際的な教育プログラムとなっており、根幹はマネジメント教育なのである。
   学際教育は欧米では普通で、必要に応じて学際に対応出来ない日本の教育の大きな欠陥がここにあると言えよう。
   
   私は、日本の場合は、将来のビジネスリーダーを目指して若年の企業スタッフにMOT教育の機会を与えることは良いことだと思うが、むしろ、経営者なり上級管理職に、ダブルメイジャーないしΠ型教育を施す方が大切だと思っている。
   理工系の出身者にはMBA教育を、文科系の出身者には技術ないしMOT教育を付加することである。
   アメリカの場合、各分野で活躍しているトップで専攻が理工系や医学、法学など異分野であってもMBAの学位を持っている人が結構多いし、ヨーロッパでは、ポリテクを筆頭に理工系の高等教育機関ではマネジメント学を教えているし、ダブルメイジャー的な逸材が多い。
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