連日の中国発新型肺炎報道ですが、シーズン30日ほどの屋外スケートリンク、例年今でしょうで体力チェック?。
半世紀前、九州から東京経由、初任地北海道に、翌年は冬季五輪を見れるかと思っていたら出稼ぎ?で東京へ冬季転勤(そんな時代でした)、その競技場。でも施設老朽化?や寒い中屋外で滑る子供もいない?かで施設解体の話も(人口2.30万の帯広にあって200万の札幌には屋内スピードリンクはありません)。
冬場のスポーツとしていい汗かけるのですが・・・、年間30日かの営業では・・・。
道東で6年ほど過ごした時に、町の父兄手作りの天然リンクで楽しんでる少年団を見ながら覚えた我流のスケート。
いい靴買っておけば・・・、半世紀も使うとは思わずの靴を研磨してもらって(300円)。
いざリンクへ、足にフィットした靴でないので・・・。
月曜日午後2時ごろですが一人滑っていた同年配の人もあがって、このリンク貸し切り状態!
風は向かいコースは逆風ですがこちらでは風が押してくれて気持ちよくスピードに乗ります。
でもコーナリングはとうとうマスターできていません、30分も滑ると体が流れ、しりもちを着き出したので、ケガする前に終了。
今回は車でなくバス・電車そして歩き、敬老パス、リンク65歳以上無料では頑張る必要もないので!。これがシニアライフ?氷点下の中体は温まってます。
さてお隣の中国、17日かのスキーの時は、春節に入ったら沢山の人で賑わうことかと思っていたのですが!
20年近く前のSARSの時は半年近くの作為で多くの中国の人を罹患、死に至らし、自分たち共産党がなしたことに懲りたはずなのに。
この20年の時間的短縮と中国社会の人の移動の爆発的増加を考えると、共産党の都合を検討する余裕のないことは明白。
しかし、習近平による権力の集中と配下の忠誠、忖度を求める今の状態での結果が招いた今の状況。
そんな時でも今の状況を利用してより権力を強化する中国共産党が透けて見えるのは私だけ?
湖北省長、武漢市長の会見での言い訳、謝罪?報道がなされていますが、彼らはそれぞれナンバー2、彼らの上に共産党委員会書記が居るのが今の中国統治機構そして頂点は習近平。
「断固戦いに勝利する!」と気勢を上げ(自作自演とまでは言いませんが)、李克強にパフォーマンスをやらせる習近平。
この国を世界標準にする?リーダーに?、その時は中国共産党の都合で世界の人が巻き込まれる?(今のWHOはもうその影響下?負担金、人材でいつの間にか機能不全?)。
ウイルスだけではありません、これから始まる通信インフラ5Gも同じ範疇です(中国共産党にとって例外はありません)。
中国の人たち、企業(中国で活動する外国企業も、合弁企業は問題なく!)はひとたび中国共産党から要請(指示)があれば全てを共産党に提供する義務があると法的に規定されています。
北大の中国籍先生は実家に帰ったあともう半年?ちかく音信不通、中国共産党への忠誠と協力を迫られていることでしょう。
こうして中国発の問題が起こると見えてきます、問題が起こってからでは否応なく巻き込まれる現実。
でも中国の人たちも私たちと同じ、そして隣人(でも逃げられない!)、隣の国を冷静に見極めましょう(しかし習近平の国賓招待は・・・)。
決して中国の人が悪いのではありません、過ってのヒットラーのドイツも、組織が構成員の思考をコントロールしモンスターへと駆り立てる、歴史から学ぶことが大切(ハンナアーレントがアイヒマン裁判を評論)。
こんなこと書いてたら引っかかってハッキングされるかも???
以下に関係するコラムを紹介します。
日経ビジネス 一分解説 2020/1/27 上海支局長 広岡 延隆
新型肺炎:広東省の地方都市が「封鎖」発表も2時間強で撤回の顛末
「1月26日午後2時から公共交通機関やタクシーなどの運行を停止し、27日午前0時からは特別の事情がある場合や物資搬入を除き、車両や船、人が市内に入ることを禁止する。道路も封鎖する」
1月26日午前10時30分ごろ、中国広東省汕頭市政府が突然、上記の発表をした。新型コロナウイルスによる肺炎の流行を食い止めるため、湖北省の武漢市やその周辺では事実上、都市が封鎖される「封城」と呼ばれる措置が取られている。それに倣ったものといえる。
すでに新型肺炎の感染者は中国全土に広がっており、中国政府は1月27日から海外への団体旅行を禁じた。ただ、感染者の大多数は湖北省に集中している。汕頭市でも2人の患者が確認されてはいたものの、湖北省とは遠く離れており圧倒的に少ない人数だ。封鎖を発表したのは湖北省以外の省では初めてで、他の都市でも同様の対策が取られるようになる可能性があるため、ニュースは全国で衝撃をもって受け止められた。
ところが、事態は意外な展開をたどる。そのわずか2時間半後、汕頭市は「封鎖の撤回」を発表したのだ。
当然のことながら、唐突に封鎖を宣告された汕頭市民はパニック状態に陥った。「通告が出されてから30分後には人がスーパーに群がり、米を奪い合った。価格もつり上げられた」。中国版ツイッターの「微博(ウェイボ)」には、こう書き込まれている。当局はその様子を見て慌てて撤回した。
経緯を見ると十分に対策が練られたとも思えず、ずさんとしか言えない。こうした汕頭市当局の対応を中国メディアの新京報は「迷惑行為大賞」と批判。「封城は緊急時の非常措置であり、厳格な適用条件が必要だ」と指摘した。
人の移動の自由は基本的人権の一つで、武漢市をはじめとした湖北省のような対応は日本では考えにくい。市民生活においても経済活動においてもダメージが大きすぎるからだ。中国共産党による一党独裁体制の中国政府だからできるといえる。中国国内でも封鎖を当然ととらえる人が多くいる一方で、衝撃を受けた人もいる。
武漢市からは日々、切迫した医療現場の状況がソーシャルメディアなどを通じて報告されている。それにもかかわらず汕頭市は、なぜ都市を封鎖しようという極端な判断を下したのだろうか。
習近平(シー・ジンピン)国家主席は1月25日、春節(旧正月)期間中としては極めて異例となる共産党最高指導部の政治局常務委員会を招集。新型肺炎対策には指導部直轄のチームで対応にあたることなどを決めた。海外への団体旅行禁止など、これまで見られなかった政策をちゅうちょなく取るようになってきている。
しかし、感染がここまで拡大した背景には、初動対応の拙さがあったとみられる。当局は国民や海外メディアからの批判にさらされており、中国政府は信頼回復に躍起だ。
地方政府の幹部や役人にしてみれば、この局面で感染拡大につながるような判断ミスを犯せば、国民はもちろん中央政府からも厳しく非難されることは避けられない。感染拡大防止に向けて打てる手を最大限打つ姿勢を見せることが、非難されないための最大の安全策となっている。汕頭市の朝令暮改は、そうした構図によって引き起こされたものだったのだろう。
武漢市政府の初動の遅れも、同市の幹部や役人の保身や中央政府への配慮だった可能性が高い。汕頭市の一件も問題発生の原因は同じところにあるといえそうだ。経済でも見られる一党独裁の中国の弱点が緊急事態で露呈している。
日経ビジネス 一分解説 2020/1/28 上海支局長 広岡 延隆
新型肺炎:デマ対策に乗り出したテンセントと中国の事情
中国で新型コロナウイルスによる肺炎の感染が拡大している。このように社会全体に不安が広がるとき、問題になるのが「デマ」の拡散だ。日本でも肺炎の感染が拡大し始めてから、「武漢から来た、新型肺炎の疑いがある中国人が関西空港から逃げた」というデマが出回ったことは記憶に新しい。新型肺炎の脅威をより身近に感じている中国では、偽情報がさらに出回りやすい環境にある。
中国人が情報をやり取りする際に使っているのが、10億人を超えるユーザーがいる騰訊控股(テンセント)の「微信(ウィーチャット)」だ。そのテンセントは新型肺炎についてデマが出回っているのに対応して、情報の真偽を確認できる特設サイトを用意している。
例えば「アルコール度数が高い白酒を部屋に噴霧すれば新型肺炎の予防になる」という噂に対して、専門家が監修した上で「偽科学」という判定を下すといった具合だ。
テンセントは新型肺炎に関する情報の真偽を確認できる特設サイトを設けた
こうした取り組みは、付け焼き刃でなされたものではない。テンセントは以前からネット上の情報の真偽を明らかにするサイトを開設していた。そのサイトをベースに新型肺炎に関する情報に特化したものを新たに立ち上げたと見られる。
日本でも、フェイクニュースや不確かな情報を裏付けせずにまとめる「キュレーションサイト」が社会問題となった。新型肺炎は世界各地で感染者が増加しつつある。ソーシャルメディアの運営者が信頼できる情報を提供する取り組みは今後、日本で不確かな情報の拡散を防ぐためにも参考になりそうだ。
テンセントはデマ拡散を防ぐため「強硬姿勢」も見せている。それを示すのが1月25日に発表した文書で、要旨は以下のようなものだ。
「ネットで言われているところでは」「聞いたところによると」といった類のデマが大衆の恐慌を刺激している。法律では虚偽の危険や疫病、災害、警察に関する情報をでっち上げて情報ネットワークやメディアに流して社会秩序を著しく乱した場合は、3年以下の有期懲役などに処することになっている。テンセントは断固としてデマ情報と戦う。違反の程度によってアカウントの機能を期限付き、もしくは永久に停止する。
もともと、ウィーチャットでは中国政府にとって不利益な情報を送ろうとすると、相手に届かなかったり、アカウントが停止されたりするケースがあることが知られており、中国政府による検閲が行われているとの指摘もある。ウィーチャットは情報のやり取りはもちろん、店舗などでの支払いツールとしても存在感が大きく、中国で生きていくには必要不可欠なアプリだ。アカウント停止を避けるためにも、政治関連など不用意なメッセージのやり取りは行わないというのが、暗黙の利用ルールになっている。
このように、様々な手段を織り交ぜながら、全体として中央政府に有利なように情報を統制していくのが中国のやり方だ。ただし、新型肺炎についてはこの手法が裏目に出ている面もある。
武漢市の公安当局は1月1日、新型肺炎について「事実でない情報を発信、転載した」として8人を拘束し、処罰したことを明らかにしている。当時、武漢市当局は新型肺炎について「人から人への感染は確認されていない」など、安心性を強調する情報ばかりを流していた。
だが、その後新型肺炎の感染の実態が明らかになっていくにつれ、ネット上では「公安は8人に公開謝罪すべきだ」との意見が公然と書き込まれるようになった。一般的にこうした書き込みはすぐに消去されることが多いが、今回は共産党系メディア幹部も理解を示す意見を書き込むなど様相が異なる。
湖北省の王暁東省長と武漢市の周先旺市長が1月26日夜に開いた会見の中継サイトには「辞任しないのか」などと批判的なコメントがあふれた。新型肺炎の流行は、不利益を恐れて政府に「忖度(そんたく)」した発言に終始するという、中国人のメンタリティーにも影響を与えつつあるようにも見えるが、地方政府の対応のまずさを非難させることが中央政府の狙いなのかもしれない。
Jppress 2020.1.28(火) 近藤 大介 東アジア「深層取材ノート」(第20回)
新型肺炎は人災、「習近平に追従」で出世の弊害露呈
2012年11月、北京で開かれた第18回中国共産党大会で、習近平副主席が、共産党総書記(14億中国人を指導する9000万共産党員のトップ)に選出された。その際、習近平新総書記は、自身の方針として、「社会主義核心価値観」を打ち出した。これは、「富強、民主、文明、和諧、自由、平等、公正、法治、愛国、敬業、誠信、友善」の12語24文字を今後、中国に根づかせていくというものだった。
この「社会主義核心価値観」の推進運動の「模範都市」を宣言したのが、湖北省の省都・武漢市と同省の黄石市だった。とりわけ当時の王暁東・湖北省副省長と、周先旺・湖北省商務庁長のコンビが旗振り役だった。
習近平を賛美することで出世した湖北省長と武漢市長
彼らが行った推進運動とは、一例を挙げると、街の繁華街などに市の居民委員らを動員し、街行く市民に、「習近平新時代の社会主義核心価値観は?」と問いかけるものだった。もし答えられなければ、「社会主義の核心的価値観の模範都市の市民にふさわしくない」としてそのまま身柄を拘束し、近くの「研修所」に引っ張っていく。そこで「12語24文字」を諳んじられるようになって初めて、釈放されるというものだ。
こうした推進運動は、共産党政権内で高く評価された。2017年8月、中国共産党中央宣伝部と国務院民政部は、全国の地方自治体の末端組織が、「模範都市」武漢に視察に行くことを奨励した。
また「実績」が評価された王暁東は、2017年7月、湖北省長に昇格。周先旺も2017年3月、湖北省副省長に昇格。2018年9月からは、武漢市長も兼任となった。
そのような「習近平総書記を賛美すること」しか考えていないような指導者たちのもとで起こったのが、今回の新型コロナウイルス騒動だった。王省長と周市長のコンビは、約1カ月にわたって、新型コロナウイルスの発生を隠蔽し続けた。
武漢市民の怒りに油を注いだ記者会見
被害が拡大した後、このコンビは、「すでに武漢から逃亡した」という説まで流布したほどだった。それで「旧正月2日」にあたる1月26日夜、二人はようやく記者会見に出てきたのだった。
会見で王省長は、「わが省は年間、108億枚のマスクを生産しているので、何も問題はない」と胸を張った。だが横の官僚が慌てて、王省長に囁く。「あ、間違った、18億枚だ」と慌てて訂正する王省長。再び横の官僚が慌てて、囁いた。「あ、間違った、108万枚だった」。
もう一人の周武漢市長は、会見時に、マスクを表裏逆につけていることが発覚。それでも会見が終わると、「今日のオレの出来は80点だったかな」と、意味不明の自己評価を行った。
ともあれ、6000万人の湖北省人及び1100万人の武漢市民は、ほとんど初めて目にした省長と市長の姿に、唖然としたのだった。「こんなアホな奴らが省長と市長だったのか」というわけだ。
社会主義国の中国では、省長や市長の直接選挙などは実施しておらず、すべては習近平総書記がトップを務める「党中央」が決定する。そのため、省長や市長になる条件は、「いかに現地で行政能力があるか」よりも、「いかに党中央への追従(ごますり)能力があるか」である。
前任の胡錦濤政権の時にも、そうした傾向がなかったとは言わないが、もう少し地方指導者たちの才能が、百花繚乱の感があった。日本で言うなら、「大正デモクラシー」のような時代だった。
ところが習近平政権になって、「八項規定」という賄賂禁止令を出し、胡錦濤時代に才能を発揮していた能吏たちに、「汚職幹部」のレッテルを貼って、次々にひっ捕らえていった。習近平政権の最初の5年間で、153万7000人もの幹部が失脚した。
代わって台頭してきたのが、「能力はそこそこだけど、習近平総書記の指示や講話に絶対忠誠を誓う幹部たち」である。彼らに共通しているのは、「習近平総書記の指示だけは、全身全霊実行するけれども、それ以外のことはやらない」という姿勢である。
武漢市民が唖然とした、新型ウイルス肺炎の拡大を受け、1月26日に湖北省が開いた会見の模様(写真:新華社/アフロ)
つまり、地元の市民を見ているのではなく、北京の習近平総書記だけを見て仕事しているのである。また、そうした上司のもとで引き立てられる部下たちも、似たような人間だ。結果、金太郎飴のような組織ができ上がる。
削除されてもネットに溢れる「怒りの声」
話を武漢に戻すと、1100万武漢市民の省長と市長に対する怒りは、日増しに抑えきれなくなってきている。特に、1月26日のアホな会見が、決定的となった。
インターネットやSNS上には、そんな怒りに満ちた武漢市民の声が上がっては、削除されている。私が見た中で、最も感銘を受けたのは、方方の「微博」(ウエイボー=中国版ツイッター)だった。
方方は、ノーベル文学賞に最も近い中国人女流作家である。1955年生まれで、武漢で育ち、武漢大学中国文学科を卒業後、湖北テレビの社員を経て作家となった。現在は、湖北省作家協会主席を務めている。
彼女は、王省長と周市長の会見があった翌27日、新型コロナウイルス騒動に関して、「微博」で非常に長いメッセージを書いた。その中の最後に、次のように綴ったのだ。
<昨日の湖北省の記者会見が、物議を醸している。多くの人が非難しているのを見た。(会見に出た)3人の幹部は疲労困憊で、会見の席でミスを連発した。自分たちでも「混乱している」と説明していた。かわいそうなことだ。彼らも家族は武漢にいるのだろう。彼らの「自責の念」は本物だろう。
なぜこんなことになってしまったのか。どうしたらよいのか。それは自ずと分かってくるだろう。
武漢の当局は初期に事態を軽視し、対応が遅れがちだった。また(1月23日に)武漢を封鎖した前後の当局の無為無策ぶりは、すべての一般市民に恐怖と犠牲を与えた。それらはいずれ詳細に書きたい。
だがいま言いたいのは、湖北省の当局の表現能力は、中国の当局の平均的なレベルの表現能力だということだ。必ずしも湖北省の当局のレベルが他省よりも低いのではないのだ。彼らが悪かったのは、むしろ運気だ。
いまや当局の人たちは、文書の指示だけに基づいて仕事をし、いったん文書がなくなれば無気力になってしまう。だからもしも仮に、別の省で同様の事態に陥ったら、その省の当局の人たちが、湖北省よりも優れた能力を発揮したとは思えない。
これは、官界で「逆淘汰」(能力のある人ほど淘汰されていく)が行われているという悪しき結果なのだ。空疎な政治、正確に言えば「事実に即して物事を行わない」ことに対する悪しき結果だ。(ネットやSNS上で)官製でないメディアが真相を報道することを禁じるなかれ。われわれは誰もが判断能力を持っているのだから。
武漢でいま起こっている騒動は、ただ先に起こってしまった場所が大きかったというだけに過ぎないのだ>
この長い大作家のメッセージは、私が訳した部分のみ、たちまちのうちに削除されてしまった。中国当局には、ネットやSNSの除去と同じくらいのヤル気でもって、コロナウイルスも除去してほしいものだ。
ダイヤモンドオンライン 2020.1.30 5:10 莫 邦富:作家・ジャーナリスト 莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見
新型肺炎に恐怖する武漢市民、「逃げるも戻るも命がけ」のサバイバル事情
思い起こすSARSパニック「臭いものに蓋」は相変わらず
2003年春先、SARS(重症急性呼吸器症候群)の嵐が中国で吹き荒れていた。当時、航空会社は定期便を減便したり、一時休止したりと対応に追われた。外国要人の訪中やビジネスマンの商談も相次いでキャンセルされた。
そのうち、中国人観光客の入国を一時禁止する措置に踏み切る国まで現れた。中国要人の海外訪問も延期を求められた。工場を中国に移した日本企業の多くが社員の中国出張を見合わせ、テレビ局の中国取材も白紙になった。まるで「中国封じ込め」の様相を呈していた。
当時、私は日本のメディアに『「知情権」に逆行の政府』と題した記事を書き、「その責任はSARS伝染情報の公開が遅れた中国政府にある」と指摘した。2002年11月に感染者が現れたにもかかわらず、数カ月も真実を隠していたからだ。
実際、中国政府の上層部はマスコミに報道を禁じる通達を出した。経済への悪影響を心配したからだ。WTO加盟の交渉を担当していた某中国高官が香港を訪問した際に、SARS関連の報道を1面に載せた香港の新聞を見て、「総人口650万人で感染者300人。騒ぐ必要はない」と批判した。危機意識がまるでなかった。
前述の記事に、私は「経済が発展すればするほど、クリーンで透明な政治環境、公平で平等な競争環境、安全で衛生的な生活環境、迅速でオープンな情報環境が求められる。国民もこれまで以上に『知情権』(知る権利)を求める。インターネット時代だというのに、共産党の幹部は旧態依然としている」と書いた。
メディアに情報封鎖のマスクをし、臭いものに蓋(ふた)をすれば、自分たちの手で空をも覆い隠せると信じていたようだ。渦中にあった広東省は、改革・開放の先進地であるにもかかわらず、情報公開を渋った。
あれから17年が過ぎた今、当時私が批判したような場面や問題は、今度は湖北省の武漢に場所を移し、新型コロナウイルスによる肺炎の猛威という形で、そのまま再演されている。
17年前の批判はそのまま、今の湖北省政府と武漢市政府にも当てはまる。1月26日夜、周先旺・武漢市長はすでに500万人以上が武漢を離れ、中国各地や他の国々へ移動してしまったという事実を明らかにした。武漢市が封鎖されるまでの20日間あまりで、最大6万人以上が武漢から北京へ、5万人以上がそれぞれ武漢から広州、成都へ飛んだ。香港とマカオ、台湾もそれぞれ1万人近くの武漢市民を受け入れた。
海外では、武漢出航便が最も多いのはタイのバンコクで、最大で1万人以上が現地へ向かっており、出航数2位はシンガポール、3位は日本の東京となっている。まさに悪夢再来だ。
後手に回る地方政府に対して迅速だった中央政府の対応
もちろん、進歩もあった。中国の中央政府はさすがにSARS危機からいろいろと学んだ。武漢の対応のおかしさに気づいてから、都市間封鎖という非常手段の実施に素早く踏み込んだ。1月24日の時点で、湖北省では武漢、鄂州、仙桃、枝江、潜江、黄岡、赤壁、荆門、咸寧、黄石(大治市、陽新県を含む)、当陽、恩施、孝行、宜昌、荆州の計15都市で公共交通が運休している。
世界保健機関(WHO)のガリア(Gauden Galea)中国駐在代表は、北京で「科学的に人口1100万人の都市を封鎖しようとするのは、珍しいことだと聞いている。 このような公衆衛生の取り組みは決して例を見ない」と評価している。
救急と救援活動に励む医療機関と、ウイルス撃退の研究活動に没頭する医学研究機関の行動も印象的だ。危機の前期は無為無策、事態が公開されてからは右往左往という状態に陥った湖北省長、武漢市長に代表される地元政府の役人の執政レベルの低さと比べれば、大きな差があった。
地元政府の対応の遅さには、いつも庶民がその「痛い対価」を払わされている。インターネットを介して伝わってきた、逃避行を余儀なくされた2組の市民の行動をここに紹介したい。
23日の未明、冷たい雨と冷たい風の中、浙江省紹興市柯橋区の高速道路の出口で、すでに長時間待機していた警察と医療関係者が、武漢から脱出した学生を満載した湖北省ナンバープレートの寝台バスを包囲した。
これらの学生は全員、柯橋にあるアパレル専門市場である中国軽紡城に店舗を構える、武漢出身の企業経営者の子どもたちだ。これらの経営者たちは紹興での生活が長く、すでに紹興に住み着いた新紹興人となっている。紹興の教育レベルが武漢より優れていると判断した彼らは、紹興に定住するようになってから、その子どもを紹興に呼び寄せて、紹興で教育を受けさせている。
武漢から脱出せよ!バスに飛び乗る子どもたち
学期試験が終わり、冬休みが始まると、子どもたちは祖父母が住む武漢に戻り、親から解放され、故郷での休暇を楽しんでいた。
1月22日の朝、武漢の民衆の中に、伝染病治療専門家として名高い鐘南山院士が武漢で新型コロナウイルスの発病状態を調査した後、事態が深刻であると判断し、全国への蔓延を抑えるために、最も有効な方法は武漢市の封じ込めだと判断した、という情報が出てきた。しかし、武漢市政府はその都市封鎖措置の影響があまりにも大きすぎると見て、決断を躊躇していた。
紹興に住む武漢出身の経営者たちは、その内部情報をいち早くキャッチした。もし武漢市が封じられたら、武漢市内に住む人間は外に出られず、外の人も入れなくなる。そうすると、2月10日に学校が始まれば、自分の子は紹興に戻って学校に通うことができなくなる。 優柔不断な武漢市政府とは対照的に、これらの経営者は、どんな対価を払ってでも、子どもたちを23日6時前に武漢から脱出させ、直ちに紹興に戻らせようと即断した。その決断を下したのは22日20時だった。
交通関係に強い人は、すぐに貸し切り料金を2倍払うという条件で、武漢脱出用の寝台バスを確保した。その3時間後に、緊急に呼び集められた42人の学生を載せたバスは、計画通り武漢を脱出できた。バスに乗り遅れた学生は、すぐにタクシーを拾い、遠く離れた紹興へ直行した。
こうしてタイムレースが始まった。まだ学校しか知らない子どもたちがこうして人生初めての冒険を始めた。ところで、まもなく車内に熱を出した人がおり、新型コロナウイルスに感染した可能性があることがわかった。
紹興にいた42人の学生の親たちも、この恐ろしいニュースをすぐに知った。彼らは直ちに運転手と通話し、寝台を調整して、その熱のある男子学生を最後列の下の階に配置するように求めた。車内の全員もマスクをつけるようにした。
途中、 防疫当局が高速道路のサービスエリアで車を止め、熱のある人がいないかチェックしていたが、機転を利かせた保護者は、熱を出した男子学生をスーツケースなどの荷物を入れる空間に移すよう、すぐに運転手に電話で指示した。こうして防疫当局のチェックをごまかし、バスは検査関門を通って、再び高速道路に出た。
新型肺炎に感染した子の親も手厚い医療保護に喜んだ
このあまりにもスリリングな脱出行に、学生たちは興奮した。ある女子中学生は、中国版SNSのWeChatでその脱出行の詳細を担任教師と話していた。担任教師はことの重大さに気づき、すぐに校長に報告した。
度肝を抜かれた校長は、直ちに区教育委員会に報告した。間もなくこの情報は、区政府と区衛生健康委員会に報告された。びっくり仰天した区政府と区衛生健康委員会は、間を置かずに警察の出動を手配し、緊急対策に乗り出した。こうして、冒頭の高速道路出口での一幕が演じられたのだ。
結果、発熱した17歳の男の子はすぐに救急車で病院へ運ばれた。 残りの人員は車両とともに指定の病院へ向かい、14日間の隔離観察を受けなければならなくなった。保護者の親たちもこの措置に納得して、むしろ武漢を脱出できて、手厚い医療保護を受けられることを喜んだ。
こうした武漢脱出組の人々とは違って、武漢に帰るために四苦八苦していた逆行組の人たちもいる。たとえば、学校の冬休みが始まったのに合わせて、1月17日に子どもを連れて海外旅行に出た武漢出身の夫婦だ。その旅行は3カ月前に決められたもので、旅先はマレーシアのコタキナバルだった。
しかし、旅に出て3日目、事態は急転直下を迎えた。悪い知らせが矢のごとく飛んでくる。そばには相談できる家族や友人がおらず、茫然自失の状態に陥った。スーツケースにある荷物を半分ぐらい捨てて、たくさん買ってきたマスクや消毒用品を詰め込み、家族や友人にあげようと思っていた。
「武漢市民は歓迎しない」ホテルに缶詰めにされた夫婦
23日に予定されていた帰りのフライトは、欠航となってしまった。旅先のホテルで春節を過ごすことになったが、敏感な子どもは「お母さん、ここのレストランは、武漢市民を歓迎しないとか書いていない?」とお母さんの耳元で囁いた。 女性は声を詰まらせて、彼の頭を撫でるだけだった。
彼らは食事の時間を除いて、ずっと部屋にいて自己隔離を実施していた。大みそかの夕方、旦那さんに「おいしいものを少し仕入れてこようか」と提案したところ、機嫌の悪い旦那さんから断わられた。
一方、武漢にいる母親からは、家の銀行カードの暗証番号などがSNSを通して全て送られてきた。その意味を悟った女性は、泣き崩れた。
地元の中国領事館にも相談した。対応に出た領事館関係者は親切だったが、ただ、できるだけ早く自分で航空券を買って帰国し、他の都市にたどり着いてからそれからの行動計画を立てるよう、アドバイスされただけだった。
ようやく、広州行きのエアチケットを確保できた。武漢出身であることを絶対明らかにしないと家族全員で約束した。飛行機に搭乗するとき、その一家は終始列の最後尾に並んでいた。もう一組の家族3人も、彼らと同じ行動を取っていた。言葉は交わしていないが、目を合わせるだけで、先方も武漢出身者だとすぐに気づいた。
いったん海南島にでも空き家を借りて、しばらく避難生活をしようかとも検討したが、広州に到着してから、やはり直ちに武漢に帰ることに決めた。WeChatで、武漢に停車しないはずの高速鉄道の電車に乗ってから、車掌に懇願し、武漢駅でドアを開けて降ろしてもらえた人がいたことを知り、自分たちもそうしようと決めた。
自己隔離を続ける市民たち何かできることはないのか
広州の白雲空港のベンチで一夜を明かした一家は、始発の地下鉄で広州南駅に移動して、鄭州行きの高速鉄道の切符を買った。改札員はその行き先が湖北ではないことを再三確認したうえ、その一家の乗車を認めた。
乗車後、彼らはすぐに車掌に状況を説明し、武漢駅でドアを開けて降ろしてほしいと頼んだ。 似たようなケースが多すぎるほどあったためか、車掌は彼らの身元情報を登録しただけで、それ以上は何も言わなかった。これで「希望あり」と一家は期待感を膨らませた。
12時35分、「武漢駅で下車する予定の乗客は下車準備を」という車内アナウンスが流れたとき、突然、車内で大勢の人が立ち上がった。一瞬で、みな武漢出身者だと悟った。 わずか数分で、3分の1ほどの旅客が武漢駅に降りた。
一家は今、武漢の自宅にいる。現地に残っている約1000万人もの武漢市民とともに、自己隔離の日々を始めた。
無能な官僚に翻弄された名もない武漢の市民たちの生き方に、私は涙した。その市民たちに対して「せめて何か手伝えることはないのか」と、自分に言い聞かせている毎日だ。
(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)
The Wall Street Journal 2020.1.30 4:20 会員限定 WSJ PickUp
新型肺炎で検閲強化、中国政府ピリピリ
【北京】中国の習近平国家主席は世界で最も高度と目される検閲システムを構築し、世論をコントロールしてきた。全国に拡散する新型コロナウイルス感染を巡り当局が世論を方向付けようとする中、そのシステムが試されている。
ソーシャルメディアで政府批判が広がっていることを受け、習氏は当局関係者に「世論指導の強化」を繰り返し指示している。こうした言い回しは検閲を命じる共産党用語とみなされている。
中国人ジャーナリストらによると、国営メディアは当局を通した情報のみを報じるよう命じられている。さらに、「ポジティブなエネルギー」の創出に努め、政府に関する批判的な報道は一切避けなければならないと指示されたという。
政府がウイルス拡散を阻止できなかったと指摘したり、感染症を巡る政府統計に疑問を呈したりするソーシャルメディアの投稿は削除されている。武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染拡大を受けた複数都市の閉鎖について、現地から出られなくなった人々の窮状に触れている投稿も、検閲の標的となっているようだ。
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