自由人の発信 おっさんの中国一人旅から国内旅。

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今やれる一人山とお隣習近平のコロナ

2020-03-01 14:21:43 | おっさんの中国一人旅終了?に伴って、もっと日本を旅します。

この5日から九州3泊4日の法事予定も一週間ほど前に延期しようと(孫の出産や体調の弱ってる人を考えると当然の配慮)決めています。

ところが昨日今日の急展開!北海道からでは来るのを断られる状況?になってしまいました。

今年も雪まつりの写真撮りに2月5日に、そう、特に今年は雪まつり日より、連日の真冬日。

屋外はいいのですが今思えばあの無料休憩所、狭い中、沢山の人が寒いので温まっていました!、(中国語もたくさん飛び交ってましたが、水際撃退してるし・・・、クルーズ船は閉じ込めてるので・・・)。

   

まさに原因のない結果はないです。。

このぶんでは3月28日から予定、わが家系の法事を利用した兄弟会(今年も京都嵐山)、それに続く4泊5日の歴史探訪野宿の旅も・・・(こちらもキャンセル効かないチケットだぞ!でもコロナが相手では・・・)。

 

それにしても今までの一か月は何だったのでしょう??、想定外をここでも言うのかな~。

想定外、過ってないを言い訳にするリーダーには危機管理能力が欠如している表明でしかない!。その組織、国は甚大、存亡の時を迎えます。その集団個々人は自身の問題として次なる行動を考えるべき。

そして今日29日午後6時の記者会見、長々と空虚な独演会?プロンプター見ながらかもしれませんが立て板に水、でも森・加計、桜の延長のようで、途中でチャンネル変えました。

詐欺師は詐欺を働くときは自身詐欺とは思わず、正しいと思い込むそうで、でないと相手に見破られるそうです(まさか?)。

ほかに人がいないから人格が信頼できないでも、この人に託さないといけない?・・・。

議会制民主主義の限界?でも直接民主制(大統領制)を見ると文さんトランプ君では・・・。制度の問題でなく人では?

政権交代を叫ぶ政党もいますが、もう懲りてる?状況、でも投票で「おかしい!」とブレーキを表明することが今ほど大切だと思いますが。

さて、取敢えず2週間の学校閉校、施設閉鎖(太極拳教室もお休み!)、人ごみに行ってはダメ、ではありませんが去年も今どき行ってる三角山へ(自宅から歩くと往復3時間、大倉山シャンツエまで周れば5時間ですが・・・)。

 

2月29日(土)天気は上々、5㎝ほどの新雪。

三角山はピストンなので軽く?普段着、長靴、ザックに少しのカバノアナタケ茶に防寒ダウン・タオル・マスク。

8:40自宅出ます、表通り一直線の先に! 手稲山頂は薄く雲。

琴似の街も人出はいまいち? 三角山もハッキリと。  

1時間ほどで登山口、 人気の山?ここから30分ほどで頂上。

冬でもこの道なら・・・。でも登山口の山ガール?二人アイゼンはいています!(私長靴・・・)。

 勾配のある登山道はこのようにステップ切ってくれています!素晴らしいメンテ!子供も楽しめます(友の会?へ感謝!)。

中に着ていたフリースでは汗ばみ、すぐに脱いで。

30分ほどで頂上!  

下山中は次々と、バードウオッチ兼ねてるグループや子供ずれで賑わう?(私の時は頂上は3人、でもすぐ下山しました)。

帰りの道すがら

ドラッグによると(冷やかし?)、アルコール消毒液・マスクはもちろんトイレットペーパーやティッシュまで。

入口の消毒液で思いっきり消毒して?帰宅でした。

 

さてお隣コロナと習近平さんのコメント集めてみました。そう、これも中国共産党・習近平は利用するのでしょうか・・・(いやよそ事ではないか?)。時系列に並べると見えてくる?

 

デリー新潮 2020年1月31日掲載 柯隆

死者170人突破「新型肺炎」があぶり出した習近平政権の「弱点」

習近平政権は、国民に「強国復権」という夢の実現を呼び掛けている。これは、日本の明治時代の「富国強兵」と同じ文脈で語られている。

世界2番目の経済規模を誇る大国・中国は、ほんとうに強国になれるのだろうか。アメリカとの貿易戦争は1年半も続いて、ようやく中国側の大幅な譲歩によって第1段階の合意に達した。

香港で起きた抗議デモは、もともと逃亡犯引き渡し条例改正案の採決に反対するための動きだったが、やがて反中デモと化し、いまだに収束していない。

習近平政権は「一国二制度」の枠組みで台湾を統一するとしているが、さる1月11日に行われた台湾の総統選挙で、独立志向の強い蔡英文が圧倒的な得票数で再選された。

こうしたなかで、新年早々、北京政府が青天の霹靂のような出来事に見舞われた。中国一大工業都市の武漢市で、新型コロナウイルス感染による肺炎が急速に広がっているのが、それだ。

根源は「なんでも食べる文化」

振り返れば17年前の2003年、中国はすでにコロナウイルス感染の肺炎(SARS)禍を経験している。しかし、当時の経験と教訓がほとんど活かされず、今回もコロナウイルスが猛威を振るっている。

そもそもなぜ人間がコロナウイルスに感染したのかについて、中国政府と専門家は、野生動物によるものだとの見方を示している。そうであるとすれば、人間が野生動物に接触しなければ、ウイルスに感染しないはずである。

今でも一部の中国人、とりわけ富裕層の人たちは、野生動物を食べる習慣がある。

今回、武漢市で発生したコロナウイルス感染の中心地は、市内にある「華南海鮮市場」というところといわれている。海鮮市場と名乗っているが、海鮮だけ売っているわけではない。食用の竹ネズミやコウモリなど、さまざまな野生動物が売られているのだ。

中国の広東省で、地元の人と食文化について会話すると、

「4つ足のものなら、机と椅子以外なんでも食べる。空を飛ぶものなら、飛行機以外なんでも食べる。水のなかを泳ぐものなら、潜水艦以外なんでも食べる」と必ずいわれる。

このなんでも食べる食文化こそ、ウイルスに感染する禍のもとといえる。

医師の不用意なSNSでコロナウイルス感染の原因はある程度判明したといえようが、なぜその広がりを食い止められなかったのだろうか。

今報告されている、最初の感染例は12月8日だった。そのあと数人の感染があったが、武漢市政府は、コロナウイルス感染の深刻さを十分に認識せず、患者の隔離措置も取られなかった。

同じころ、北京大学第1付属病院のある医師は、「今回の肺炎は毒性が弱くコントロール可能なものだ」と中国国内のSNSに書き込んだ。この専門家の書き込みこそが、武漢市政府の対応を遅らせてしまったのである。

それ以降、武漢市政府および湖北省政府は、コロナウイルス感染例が増えたのに、事実を公表しなかった。おそらく地方幹部として、すでに深刻化してしまった事実を公表すると、社会不安につながるのではないかと危惧したのだろう、隠蔽工作を行った。

このような連鎖的なボタンの掛け違いが重なった結果、コロナウイルスの感染拡大を食い止める良いタイミングを逸してしまった。ここで検証すべきは、今回の地方政府の失政は地方政府幹部個人の能力の問題なのか、それとも制度の欠陥によるものなのか、ということだ。

「中央集権」と「隠蔽体質」

2019年秋に開かれた、中国共産党第19期中央委員会第4回全体会議(4中全会)で演説した習近平国家主席は、国家統治と管理の近代化を呼び掛けた。これは、かつて周恩来首相(当時)が呼び掛けた「4つの近代化」(工業の近代化、農業の近代化、国防の近代化と科学技術の近代化)に加え、「5番目の近代化」と呼ばれている。

しかし、今回のコロナウイルス感染による肺炎の禍こそ、習近平政権の国家統治能力を検証する試金石になっている。

これについて詳しく述べてみよう。

習近平政権になってから、国家の統制力を強化するために、これまで以上に中央集権型の制度作りを行ってきた。

しかし、中央集権型の制度は、資源を動員する能力を強化することができるが、地方政府が突発事故や事件に対処する力が弱くなってしまう。

武漢市政府が市全域を封鎖することを決めたのは、2020年1月23日。北京で習近平国家主席が指示を出したあとのことだった。最初の感染例が報告されてから、1カ月半も経っていた。すべては万事休す、遅すぎたといわざるを得ない。

また行政官僚の、都合の悪い情報を公表したがらない体質も問題だ。

武漢市で最初に感染した8人の患者は、命がけでインターネットのSNSでコロナウイルス感染の事実を告発した。だがその直後、この8人は武漢市公安局に拘束されてしまった。その理由は、「デマを流した」というものだった。

無論、この8人が流したのはデマではなく、事実である。もし、この8人の告発を受けた武漢市政府が即座に感染症に対処すれば、事態はここまで拡大しなかったはずである。

さらに、世界保健機関(WHO)の対応が謎である。

WHOは1月23日、新型コロナウイルスをめぐる国際的な公衆衛生上の緊急事態の宣言を見送った。ただし26日、新型コロナウイルスの世界的なリスクについて、「中程度」とした表記を「高い」と修正した。WHOの評価の恣意性が疑われ、その権威に傷がついたといわざるを得ない。

迫られる「地方分権」「民主化」

コロナウイルスの猛威はまだ鎮静化していない。中国だけでなく、世界的に感染が広がっている。当初、今回のウイルスは毒性が弱く、人から人へ感染しないといわれたが、ここに来て毒性が強くなっており、人から人への感染も確認された。中国国内でも感染者の数は増え続け、死者はすでに170人を超えた。

1月29日に日本政府手配のチャーター機で緊急帰国した第1陣200人余の中から、3人の感染者も確認された。日本国内での感染確認はこれで10人となった。

中国社会に目を転じると、コロナウイルスの大規模な感染は、年に1度の春節の民族大移動と重なってしまった。今、中国政府は人の流れを力ずくで止める措置を取っているが、感染症が長期化すれば、国民の不満が爆発する恐れがある。すなわち、コロナウイルス感染の公衆衛生問題が、深刻な社会問題になっていく可能性がある。

結論的にいえば、今回の危機を通じて中国社会の弱点がみえてきた。

今、中国社会は完全にパニックに陥っている。だがそれに対処しなければならない政府、とりわけ地方政府のリスク管理能力が、予想以上に弱い。また、危機管理のための制度も構築されていない。

行き過ぎた中央集権型の制度が危機に対処できないことは、今回の禍で実証されている。

習近平政権が「強国復権」の夢を実現しようと本気で考えているのならば、地方分権を進め、将来の民主化を目標に取り組んでいかなければ、真の強国にはなれないといわざるを得ない。

 

西日本新聞 2020.2.5

異例の反省、習氏の思惑 新型肺炎で団結訴え批判かわす

【北京・川原田健雄】新型コロナウイルスによる肺炎が拡大する中、中国の習近平指導部は自らの対応に「欠点と不足」があったと認める異例の対応を見せた。経済活動の停滞などで国内の不満は高まりつつあり、習指導部は中央幹部の責任も追及する厳しい姿勢を示して、総力戦で感染拡大を食い止める構えだ。

4日付の共産党機関紙、人民日報によると、最高指導部の党政治局常務委員は3日に会議を開催。「今回の疫病はわが国の管理システムと能力への試練であり、教訓をくみ取らなければならない。露呈した欠点と不足への対応力を高める必要がある」と強調し、対応の不備を事実上認めた。

会議で習党総書記(国家主席)は「直接の責任者だけでなく、党と政府の主要な指導者の責任も問う」と述べ、出席した幹部に覚悟を迫った。

最高指導部による会議は1月25日にも開催。その後、地方幹部の責任を追及する動きが拡大した。湖北省武漢市に隣接する黄岡市では、感染者数などを把握していなかった市衛生当局の幹部ら337人が処分された。河北省、福建省などでも党・地方政府幹部に職務怠慢があったとして処分が相次いだ。

ただ、党中央も初動の遅れは否めない。1月9日に専門家の分析で新型ウイルスが検出されたにもかかわらず、習氏が「感染まん延の阻止」を指示したのは10日以上たった同20日。それまで武漢市以外の感染者情報は公表されず、移動制限などの対策は後手に回った。中国メディアから情報公開の遅れを指摘された武漢市の周先旺市長が「地方は権限を委託されなければ公表できない」と述べるなど中央への不満がくすぶる。

インターネットでは湖北省や武漢市の幹部の責任を問う投稿が相次ぐ。移動制限や自宅待機の動きは北京など都市部にも拡大し、市民生活に影を落とす。経済活動の停滞が景気後退に拍車を掛ける事態になれば、市民の不満は一気に高まりかねない。

今回、習氏は「中央幹部の問責」に踏み込む一方、「防疫の総力戦が始まった」と強調。“有事の団結”を訴えて指導部への批判をかわす思惑が透ける。

さらなる感染拡大は政治・外交日程にも影響を及ぼす。3月には国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が予定されるが、事前に開かれる地方の会議は延期が相次ぎ、全人代開催を危ぶむ声もささやかれる。4月には習氏が訪日を予定。予定通り進められるか、難しい判断を迫られる。

 

Newsweek 2020年02月06日(木)17時00分 コラム グレン・カール CIAが視る世界

新型コロナウイルスの「不都合な真実」を隠す中国政府の病弊

<一国の情報機関には、それが仕える国や社会の基本原理や価値観が色濃く投影される――CIAとの比較から見えたウイルス蔓延を助長した根本的な欠陥とは>

およそ情報機関なるものは道徳心のかけらもないニヒルな連中(つまりスパイ)の集まりだと、たいていの人は思っている。どこの国でもそうだろう。しかし一国の情報機関には、それが仕える国や社会の基本原理や価値観が投影されている。だから中国の国家安全省(MSS)とアメリカのCIAは似て非なるもの。その違いを理解すれば、中国政府が2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)危機に続いて、またしても新型コロナウイルスの蔓延を防げなかった根本的な欠陥が見えてくる。

中国政府は今回も、その体制に深く根付いた悪しき体質ゆえに、都合の悪い事実や真実を自らへの脅威と見なして隠蔽し、ほぼ1カ月、国民には何も知らせなかった。武漢(人口約1100万)の市長はつい最近まで、このウイルスについて話すことも対策を講じることも許されていなかった。公の場でこのウイルスに言及した医師たちは「誤りを含む」見解を撤回させられ、警察から「流言飛語」を慎めと「教育」された。おかげで、その間も多くの人々が感染地域に出入りすることになった。

米バージニア州にあるCIA本部の入り口の壁には、「あなた方は真理を知る、真理はあなた方を自由にする」という聖書の言葉が刻まれている。そしてCIAの使命は「脅威を未然に防ぎ、米国の安全保障に関わる目的を達成するために必要な情報を収集し、客観的な分析を提供」することだとされている。

地球温暖化の警鐘を口止めされたCIA

むろん、これは理想にすぎない。現実には時の政権に都合のいい真実を提供するよう、政治家に強いられることもある。地球温暖化について、CIAはずいぶん前から警鐘を鳴らそうとしていたが、武漢の医師たちと同様、私たちも共和党の政治家から無責任な「流言飛語」は慎めと「批判」されてきたのだった。

結果はどうだ。今やカリフォルニアは気候変動に由来する大規模な山火事に見舞われている。フロリダでは海面上昇のせいで水につかる地域が増えている。CIAがこだわるのは情報の客観性であり、特定の真実ではない。真実は不確かで、刻々と変わるものだからだ。そしてCIAの使命は時の政府を守ることではなく、この国の社会を強くすることにある。

一方、中国のMSSが掲げる使命は「わが国の社会主義体制の妨害・不安定化・転覆をはかる敵の要員・スパイ・反革命活動に対する効果的な措置を通じて国家の安全を確保する」こととされる。つまり「社会主義」(実態としては全体主義)のシステムを支えることが使命なのであり、「真実」はあらかじめ提示されている。真実、つまり「客観的な分析」はどうでもいい。

そんなシステムだから、未知なるウイルスの脅威に気付いた医師たちの口を、反射的に封じてしまう。こんな体制の下では、都合の悪い事実を上司に報告することも難しい。かく言う私もCIA時代に、政治家の意向に沿った報告を上げろというプレッシャーを感じたことはある。だが中国ではそういうプレッシャーがはるかに強い。

私のカウンターパートだったMSSのスタッフも中国政府の役人も、たいていは政府のため、国のために正直に働いている。情報機関の人間も一般の公務員と同様、理想というものを信じている。だが悲しいかな、中国では権力者に真実を伝えることが不可能な場合が多い。

この自称「社会主義」体制の根本的な欠陥は、自分たちの手に負えない客観的事実を拒絶しようとする反射的かつ制度的な反応にある。今のトランプ米政権にも似たような衝動があるが、それではウイルスの蔓延を防ぐのは難しい。

<本誌2020年2月11日号掲載>

 

日経ビジネス 2020/2/17一分解説 広岡 延隆上海支局長

戦時管制に財産接収可、新型コロナウイルスで「禁じ手」繰り出す中国

新型コロナウイルスの感染者数が最も多い湖北省で、「戦時管制」を宣言する都市が出てきた。十堰市張湾区は2月13日から全てのビルを封鎖し、医療関係者らを除く住民の外出を禁じた。違反者は拘束される。医療関係車両や消防車、パトカーなどを除く車両の通行も禁止された。生活必需品や医薬品は、数日おきに要員が各世帯向けに購入を代行して供給する。

十堰市は中国国有自動車メーカー大手の第二汽車製造廠(現在の東風汽車)が毛沢東の指示で創業した土地だ。現在、東風汽車の本社は武漢市に移っているが、今も張湾区には商用車工場などが残る。十堰市張湾区の発表からほどなくして近隣の孝感市に属する大悟県も戦時管制を敷いた。さらに同市雲夢県が14日に、洪湖市が15日に同様の措置を取っている。

事実上の移動制限や外出禁止措置は、すでに湖北省の他の都市や他の省でも実施されている。それにもかかわらず、実際に交戦している相手もいない中で、わざわざ戦時管制を適用する意図は何か。地元政府は「感染拡大防止策を厳格に実施するためだ」と説明している。「戦時」という言葉を使うことによる注意喚起効果も狙っているようだ。

ネット上では厳格な封じ込めを支持する声がある一方、中国メディアでは専門家が「戦争状態かどうかは全国人民代表大会(全人代)と全人代常務委員会が決める」として「乱用すべきではない」と指摘している。極端な施策であるため、中国政府は地域を限定して様子を見ながら範囲を拡大しているとみられる。

湖北省内の複数都市で戦時管制が発表された2月13日に、中国共産党指導部が湖北省の蒋超良・共産党委員会書記(党委書記)と武漢市の馬国強・党委書記を解任したのは偶然ではないだろう。初動対策の失敗による更迭とみられる。新たな湖北省トップには習近平(シー・ジンピン)国家主席が浙江省にいた時代に部下だった上海市の応勇市長が就任し、馬氏の後任は王忠林・山東省済南市党委書記が就いた。

湖北省政府は同日、12日までの感染者数が4万8206人で、前日から1万4840人増えたと発表した。ウイルス検査で陰性でもコンピューター断層撮影装置(CT)による肺炎確認など臨床診断も認定対象に加えたためで、増加分のうち1万3332人は臨床診断によるものだった。感染者の早期治療につなげるためとしているが、湖北省と武漢市の前トップの責任を強調するようなタイミングでの発表だったことは間違いない。

ただ、習国家主席の腹心を湖北省トップに据えたことで、今後の状況次第では批判が中央政府に向かいかねないリスクも抱え込んだ。多くの人に衝撃を与えた戦時管制の発令は、国民の不満が高まる中でもう失敗を許されないという危機感の表れといえそうだ。

一方、広東省の広州市と深セン市は11日、両市の人民代表大会において「感染の拡大を防ぐために、必要であれば組織や個人の土地などを接収できる」とする措置を決めている。企業にも必要な物資を生産、または供給することを要求できるとしている。その後、補償や返還を行うという。

広州市と深セン市は、中国の政治経済の中心都市であることを示す「一線都市」だ。一線都市としては4市があげられることが多く、残る2つは北京市と上海市である。この一線都市を2つ抱える広東省は中国最大の人口を有しており、湖北省に次いで感染者が多い省になっている。自動車や電気製品の組み立て工場や、部品工場などが集積する中国製造業の心臓部であり、今後さらに感染が拡大すれば影響は甚大だ。2月10日から工場再稼働を許可したものの地方政府の担当者が衛生状態などを厳しく見極めており、本格操業には至っていない企業が多いとみられる。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のためとはいえ、戦時管制や土地接収といった対策は、常識的には明らかな「禁じ手」だ。企業は大きなリスクを抱え込みながらの経営を強いられ、ビジネスの継続性にも大きな影響がある。だが、そんな副作用を百も承知で一線を超えなければならないほど、中国政府の状況認識は厳しいということだろう。

 

FNN primu yahooニュース 2/25(火) 18:34配信

コロナ危機をきっかけに噴き出した各国の「中国恐怖症」 初動対応に失敗しても習政権の盤石さが増すワケ

新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延で中国では医療関係者が追い込まれている。20代の若い医者が妻を遺して亡くなったことも報じられ、ウイルスが増殖する空間で過労に見舞われる医療従事者の危険な立場を改めて示した。報道によれば、北京などでは医療従事者を守るために、他の疾病の患者などの受け入れを停止しているところがあるという。

COVID-19は武漢ウイルス研究所から流出した「兵器」ではないかという根拠のない推測に基づく風評が広がる事態も

肺炎は恐ろしい病気であるし、COVID-19によらずとも多くの高齢者の直接の死因となっている。けれども、今回命が脅かされているのは肺炎患者ばかりではない。医療が崩壊すれば、その他の疾病を持っている人でも救える命が救われない状況が出てくるからだ。

危機管理の当否については、危機が去ってからでなければデータも積みあがらないし、冷静に議論をするのは難しいだろう。けれども、中国の経験が日本の糧になる部分もあるだろうから、まずは中国政府の対応から学ぶべき教訓について振り返っておきたい。

中国は初動対応を誤った

中国は、COVID-19の発生初期に初動対応を誤った。湖北省の武漢で新たな伝染病が広まっていることに警鐘を鳴らした人びとを当局が逮捕し、言論統制を行った。私は、ネットやSNSで、武漢の肺炎に関する情報や当局による逮捕の情報がちらほらと出ていた時期を覚えている。その後、世界は米イランの一触即発の状況に目が釘付けになっていたためにさほど注目は集まらなかったが、1月半ばからはいよいよ状況が変化してきた。

中国政府は、はじめ状況の把握に失敗し、言論監視の厳しい国でありながら公衆衛生上危機的な状況を示す情報を早期にキャッチして舵を切ることができなかった。逮捕されたうちの一人である専門家の李文亮氏はのちに新型肺炎で死亡し、中国政府に対する批判は否が応でも高まることになる。

はじめに疑問視されたのは、武漢市の当局の初動対応だった。当局が適切な対応を図れなかった裏には、政治的な思惑や事情があったのではないかと指摘されている。ひとつの理由は、全人代の前に行われる湖北省人民代表会議をはじめとした会議や大規模イベントに影響を与えたくなかったために問題を報告したくなかった、というもの。もうひとつの理由は、習近平政権になって中央の党勢力が強まった結果として萎縮や忖度が進んだという中央-地方関係の構図そのものだ。

中国政府は初動対応が遅れたので、その後、真逆の方向へ舵を切る。内外の批判や風評被害を恐れて武漢閉鎖と病人の隔離を徹底したのだ。しかし、もともとキャパシティの追い付かない所へ次々と隔離や病院への搬送を行った結果として、限られた医療リソースが崩壊する。人体や動物から離れては生きられないウイルスの量を爆発的に増殖させやすい環境を作ってしまったとも言いかえることができる。そのため、かえって武漢を中心に、死者数と患者数が爆発的に増えたのではないかと専門家は考えているようだ。

陰謀論や恐怖症の広がり

今回の新型肺炎では、中国の対応とはまた別に、多くの副次的な被害が生まれていることにも目を向けなければならない。

中国は風評被害や経済へのダメージを最小化するために必死だった。WHOの専門家と連携し、厳しい封じ込めの処置を取り、海外への団体旅行を禁止した。しかし、すでにBBCやニューヨーク・タイムズ紙なども報じ始めているように、中国人やアジア人に対する差別的な言動の事案が報告されている。また、ウォール・ストリート・ジャーナルのような経済紙には、米中貿易戦争を念頭に、中国からの生産拠点の流出や投資の低下を期待する論調まで散見される。さらには、米連邦議会の上院議員がCOVID-19は武漢ウイルス研究所から流出した「兵器」ではないかという疑いを口にしたりしている。この「兵器流出」説は、実際には根拠のない推測に基づくものであるが、風説が流布したことを重く見て、グローバルな専門家集団がゲノム解析の結果、新型コロナウイルスは動物由来のものであり、人為的な手は加えられていないとして、風説を完全否定する声明を発表している。

新型肺炎という誰でもかかりうる病気を米中貿易戦争と結び付けて政治利用しようとする態度には呆れるほかないが、そうした思惑とは無関係の人も、うわさが流布すれば心配になるのは当然だろう。ただし、新型インフルエンザ、つまり北米発症の豚インフルエンザが流行した2009年には、パニックは起きたものの、ここまでの陰謀論は発生しなかった。つまり、今回の噂が広まった裏にはやはり中国恐怖症の存在が窺えるし、人種差別的な言動が増えているのも、中国人にたいしてもともと抱いていたイメージが噴出しているのだと見た方がよいだろう。

中国恐怖症の結果としてチャイナリスクが過剰に見積られ、リスクの感覚は、容易に恐怖へと変異する。この恐怖こそ、人類史において数々の戦争を引き起こしてきた要素なのである。

習近平政権の今後

さて、中国では全人代(全国人民代表大会)の開催延期が決まった。中国経済は新型肺炎によって大打撃を受ける見通しで、共産党幹部や各当局はまさに被害拡大防止のための対応と、経済的損害の最小化に向けて動いているところだろう。

中国のような巨大国家を統治するうえでは、中央が方針を示したうえで各政府機関や地方政府、国有企業などが切磋琢磨する必要がある。しかし、上で述べたように、そうした「中央の意思」への忖度なるものが不祥事の発覚を阻んでしまったと指摘されている。結果、中国は新型肺炎の初期の封じ込めに失敗し、国際的信用が傷つくとともに、経済に手痛いダメージを蒙ることになった。

しかし、習近平政権が窮地に追い込まれたという見方は間違っている。中央集権強化が裏目に出たからといって、中央集権を見直す改革が行われるとも思わない。むしろ今後、中央からの締め付けは強化されるだろうし、習近平政権の盤石さは増すのではないか。

習近平政権の安定は、「反腐敗」の政治闘争を通じて潜在的対抗者を排除していくあくなき権力強化のプロセスと、持続的な経済成長の二つの土台の上に成り立っていると言われる。新型肺炎とそれにまつわる失策によって持続的な経済成長が損なわれれば、政権の安定が損なわれ、ライバルも出現しやすくなると考える向きはあるだろう。

しかし、各国が中国恐怖症に基づく反応と渡航拒否に走ったことによって、かえって中国政府はナショナリズムを強化して対応する道を見出しやすくなった。持続的な経済成長も、感染症と適切に戦うことも大事だが、危機の時にこそ中央集権が強められるという政権維持のロジックだ。

だから、今年、中国の経済成長が大幅に減速しても習近平政権の安定は損なわれないだろう。中国は、新型肺炎にまつわる状況を国家的な難局と位置付けて行動するだろうと思うからだ。中国は各国の中国恐怖症を読み取り、それを中国の繁栄を阻むための「壮大な陰謀」であると解釈するだろう。国民や各組織は一致団結し、中央が統制を強化する。

さらに強力な統制力を持つ政権へ

新型肺炎の流行が終わってみれば、習近平政権はさらに強力な統制力を持つ政権となっているのではないか。COVID-19による新型肺炎は、米中貿易戦争、香港デモにつづく、「海外勢力の陰謀」に由来する中国の国難であると位置づけられるだろう。それは必ずしも真実であるとはいえない一面的な見方なのだが、とりわけ米欧に見られる皮膚感覚的な意味での中国恐怖症が、中国人の被害者としての自意識を丸ごと証明してあげているようなものだ。

中国は、植民地主義の被害者としても自らを位置づけている。その物語の上に、今回の新型肺炎は記憶されるだろう。結果的に、中国の「国難」は、中国だけにはとどまらず、私たちに振り返ってくる。

日本にできることは、内なるCOVID-19との戦いに注力しつつ、しっかりとしたフェアで人道的な見地に立ちつづけることくらいだろう。【執筆:国際政治学者 三浦瑠麗】

 

日経ビジネス 2020/2/28 田中 信彦 BHCCパートナー 「スジ」の日本、「量」の中国

中国に漂い始めた“戦勝”気分、民主国家日本との対応策の差が話題に

専制と民主、どちらの対策が有効か

新型コロナウイルス(COVID-19)のまん延とその対策について、昨今の中国では「これは専制と民主のどちらが優れた政治体制か、判断する絶好の機会だ」といった趣旨の議論が出てきている。言うまでもなく、中国と日本の感染対策を比較してのことである。

中国では発生地の武漢を含む湖北省を除けば、感染拡大の抑制にほぼ成功しつつあるかに見える。中国国内では積極論が勢いを増しており、街には活気が戻りつつある。それにともなって逆に関心を高めているのが日本での感染の広がりだ。日本社会の危機意識の薄さ、根拠なき(と中国人が感じる)楽観に中国の人々は驚き、中国と日本の政治体制の違い、人々の行動様式の違いの比較といったあたりまで話題は広がりつつある。

一言でいえば、人々の「社会不信」「他人不信」を管理すべく、専制政治、「監視国家」路線を取る中国と、少なくともこれまでは社会の信頼感や人々の善意に立脚してまがりなりにも先進国として繁栄してきた日本の、果たしてどちらが有効に対処し得るのか。そんな観点が広がり始めている。

活気を取り戻した繁華街

2月23日現在、発生地の武漢が属する湖北省を除けば、他の地域ではオフィスや工場も再開し、ショッピングセンターや路地の市場(いちば)なども次々とオープンして、特に週末には大勢の人出でにぎわうところも出てきた。

筆者は現在、東京にいるが、江蘇省・無錫にある妻の実家に聞いたら、市内の名刹・南禅寺の門前町は2月22日(土)の週末、1カ月近かった事実上の軟禁生活に飽き飽きした人たちがどっと繰り出し、大にぎわいだったそうである。

実際のところ、中国とてこの先、感染の拡大を完全に抑え込めるのか、それはわからない。しかし、少なくとも現時点では湖北省以外への大きな拡大はほぼ防いでいる。2月18日には、感染の本格的拡大以降で初めて上海市や広東省深圳市で新規感染者がゼロになり、その後もゼロを含む一桁台で推移している。

つまり、武漢で発生した感染が深刻化した時点で、とんでもなく強引な手法で他地域との交通を遮断し、数億人の人々を事実上の自宅軟禁とし、2~3週間の経過観察期間を過ごさせた。その期間中、不穏当な言い方をすれば、発症すべきは発症させ、徹底的に隔離する。この経過観察期間を終えても何の症状もない人は、感染がないものとして今回、「放免」の運びとなった――ということである。

9500万人の党員組織を総動員

こうした政治の決断を実行するために、中国政府とその意思決定者たる中国共産党は、党員9500万人といわれる巨大組織を総動員し、スマートフォンによる位置確認システムやアリペイ(支付宝)やウィーチャットペイ(微信支付)といったオンラインペイメントの利用記録、全国の監視カメラ網と顔認識システムなど、ハイテク手段を総動員、非常時とあって民間企業もそれに積極的に協力し、徹底した個人の行動管理を実行した。このあたりの話は、広岡延隆上海支局長の記事(新型コロナウイルス、感染者との濃厚接触も分かる中国ITの監視力)に詳しい。

スーパーに行く人数も制限した

著者の中国移動通信の携帯電話で表示させた「疫情期間行程査詢」のページ。携帯電話の通信記録から、過去60日以内に自分がどこにいたかが表示される。スマホのアプリか携帯電話のショートメッセージで自分の身分証明書番号(あるいはパスポート)の下4ケタを入力すると簡単に見ることができ、違う都市に入るときなどにこの画面を表示して自分がどこにいたかを申告する。海外でのローミングは記録されないらしく、ずっと上海にいたことになっていた。

近くのスーパーに買い物に行くのも「1家族から3日に1回、1人だけ」、それも居民委員会(党の基層組織が指導する地域の自治会みたいなもの)の許可証なしではマンションの敷地から出られないといった徹底ぶりで、上海や北京のような大都会でも街からまるで人気(ひとけ)がなくなった。

現時点での抑え込みの「成功」は、こうした強権の結果である。そのような状況の下、武漢や湖北省を除く中国の各地では一種の「戦勝気分」みたいなものすら漂い始めた。そして、その「成功」が国家体制の強さによるものだというストーリーが、もちろん全ての人ではないが、かなりの説得力を持って人々の間に共有されつつある。

そして、現時点で、その「体制優越論」の有力な論拠になっているのが、わが日本である。

日本の現況についてはご承知と思うので、詳述しない。日本国内における感染の拡大阻止は、まさに正念場である。今後どうなるかは現時点ではわからない。結果的に感染は一定の範囲内におさまり、なんとかしのぎ切れる可能性もあるだろうし、一方、非常に深刻な事態に陥る可能性も決して小さくはない。

私は日本の政府が無能だとも、何もしていないとも思わないし、日本は日本なりの対策を一生懸命にやっていると考えている。企業や個人も個々の差はあれど今回の新型肺炎に強い危機感を持って各自がさまざまな努力をしている。

しかし、こうした日本人の対策や危機感は、中国人的感覚からすると、甚だ心もとないというか、不安だらけのものに映る。感染が日本国内に広がる前、中国では日本の支援に対する感謝の声であふれ、日本に対する関心や期待が高まっていただけに、落差は大きい。

本気で「怖い」と思っていない日本人

中国人の妻と共に東京にいる筆者のもとには、2月半ば以降、中国の友人たちから「日本は危ない。早く中国に戻ってこい」との連絡が続々と来るようになった。留学や仕事などで日本に滞在している中国人の間からは「日本は何も対策がなくて怖くて怖くて仕方がない。どうして皆、何もしないんだろう。中国に帰りたい」といった悲痛な声が聞こえてくる。

中国と日本の社会の対応の差を見ていると、その最も大きな違いは、本気で「怖い」と思っているかどうか、だと感じる。中国政府の「強権」が現時点で感染の拡大を抑制したことは明らかだが、それが機能したのは、もっと言えば、政府が強権を発動することができたのは、人々が本気で「怖い」と思っていたからだ。逆に言えば、日本で政府や企業が大胆な決断がしにくいのは、多くの人が本気で、心の底から「怖い」と思っていないからである。

どうしてこのような差が出るのか。中国人は本気で怖がっているのに、なぜ日本人は怖がらないのか。その根底には国家や社会、組織、さらにそれらが運営される仕組みや制度、ルールといったものに対する認識の違いがある。

歩行者の前で車は止まるか

昨今のこうした状況を見ていて、思い出したエピソードがある。

以前、上海から親しい友人家族が東京にやってきて、一緒に街を歩いていた。交差点で歩行者用信号が青になり、私が歩き出そうとすると、傍らにいた友人の奥さんが突然、すごい力で私の腕を引っ張り、歩道上に引き戻した。私は驚いて「何が起きたのか」と周囲を見回すと、1台の車が交差点を左折しようと、ゆっくり進んでくるのが見えた。

この車は道を渡ろうとしている私たちを見て、手前で停止する。これは当たり前のことである。酒酔いや居眠り運転での暴走といった事態を除けば、常識的な速度で交差点を左折してくる車が、そのまま歩行者をはねるという話は、まず起こらない。だから交差点で歩行者用信号が青になれば、私たちは車が近づいてきても、そのまま渡る。車は止まるものと誰もが信じているし、実際、ほぼ100%、車は止まるのである。

しかし、中国の社会はそうではない。法律の規定はともかく、日常の常識では車のほうが強いのは当たり前であり、どんな人間が運転しているかわからない。道路の横断は、たとえ歩行者用信号が青であっても、車の通過を待って渡るものである。歩行者に道を譲る運転者はごく例外的であり、車が止まるものと決めて天真爛漫に道を渡れば、はねられてしまうか、運転者に罵倒されるのが関の山である。(最近、上海などの大都市の主要交差点には道を横断する歩行者保護のための監視カメラと車のナンバーの認識装置が設置され始めた。おかげで車は歩行者の前で停止し、道を譲るようになった。これは極めて画期的なことで、まだ慣れずにこっちが戸惑ってしまう。これも一種の「強権」である)

つまり、先の東京の交差点で友人の奥さんが私の腕を引っつかんだのは、車が横から近づいてくるのに(それが止まることを前提に)道路を渡り始める行為は無謀と言うしかなく、そんな恐ろしいことはできない――という観念の結果である。しかし日本人たる私は「車は止まる」という観念の下、怖がらずに道を渡ることができる。これが社会とか、制度、ルールに対する認識の違いということだ。

「社会不信」「他人不信」の中国

ここには、仕組みとか制度、ルールといったものに対する信頼感が低く、頼れるのは自分の判断のみ――と考える傾向が強い中国社会と、それらのものにとりあえず信を置き、まず「みんな一緒に大きな船に乗る」傾向が強い日本の社会との違いが鮮明に表れている。

個人差があるのを承知の上で、ざっくりひとくくりにして言えば、中国ではこういう危機が発生したとき、まず人々が考えるのは「誰も信用できない。誰かの言っていることは全て一種のポジショントークであって、本当のことではない。自分の身を守るのは自分(と親族、信頼できる友人)しかない」と考える。一種の「社会不信」「他人不信」が根底にあるので、常に最悪の場合を想定して行動する。

そして、根深い「社会不信」「他人不信」がベースにあるが故に、その社会で秩序を維持し、とりあえず身の安全を守れるようにするには、強い権力による統制を受け入れる。どんなに不自由でも、無秩序よりはマシだからである。だから、誰だって自宅軟禁など望んではいないが、そうでもする「強権」がなければ、世の中、本当にどうなってしまうかわからない。それこそ怖くて怖くて仕方がない――という感覚になる。

「監視国家」の優越性を証明していいのか

前述したような全土の監視カメラ網や顔認識システムでの行動管理、アリペイなどのオンラインペイメントによる個人の支出入に対するチェック、個人信用情報の格付けの仕組みなど、「監視社会」としての中国に昨今、日本でも関心が高まっている。私自身も、そのような事柄に関する文章を過去に書いてきた。

個人のプライバシーという観点から言えば、こうした「監視システム」が大きな問題をはらんでいることは事実だし、それが権力体制、既得権益の維持に供されていることは明白だ。しかしながら、それが中国の社会で広く導入され、定着しているのは、単に権力が横暴だからではない。それを(喜んで、ではなくても)受け入れる素地が人々にあるから、社会に定着し、機能している。善悪はともかく、その事実は軽視すべきではない。

もし、仮に今回の新型肺炎がこのまま中国では収束に向かい、そして――想像したくないことだが――日本がさらに悲惨な状況に陥るようなことにでもなれば、そのシステムの優位性が目に見える形で世界に印象付けられるだろう。

日本の社会は今回の新型肺炎に関しても、冗談めかして言えば、「黙っていても車は止まる」と、なんとなく考えているようなところがある。今回、本当に車が止まるかどうかはわからない。もしかしたら日本人の自律性の高さで、政府が強権を発動しなくても、マスクや手洗いの励行、自発的な自宅待機といった要因で、車が止まることもあるかもしれない。心の底から止まってほしいと思うが、止まらないかもしれない。

そうなったら、やはり「強権」は必要だ――という議論に当然、なるだろう。正直言えば、私も、条件付きではあるが、そう思い始めている。デジタル化、グローバル化が破壊的な勢いで進み、時代は変わってしまったのだ。

ただそのときに、「強権」そのものをいかに私たち自身の手で管理するか、その具体的な方法論が求められる。そもそも今回の感染の発生源は中国であって、専制政治の隠蔽体質がなければ、ここまで拡大していなかった可能性が高い。少なくとも現状の日本では「民主主義」が機能しているのだから、政治家を罵倒しても、その政治家を選んだのは自分たちであって、意味がない。

もし権力の有効なコントロールを私たちが実現できなければ、「専制と民主のどちらが優れた仕組みなのか」という議論に対して、有力な判断材料を提供することになるだろう。「社会の信頼感や人々の善意という前提の上に、まがりなりにも繁栄してきた『日本という仕組み』」が、果たして生き永らえることができるのか、今回、その答えが出てしまうことになるかもしれない。

そうだとするならば、われわれ日本人としては、国家の強権なしでも個人や民間の自律性によって悲惨な事態の発生を抑え込み、世界に見せてやるという気概を持つべきだ。これは民主国家日本国の興廃を賭した闘いになる。

がんばろう、日本!

 

AERAdot 西岡千史2020.2.29 07:00

新型コロナ“神対応”連発で支持率爆上げの台湾 IQ180の38歳天才大臣の対策に世界が注目

安倍晋三内閣の新型コロナウイルスの感染拡大対策に、国民から厳しい批判の目が向けられている。共同通信が15、16日に実施した世論調査では、前回から8.3ポイント下落の41.0%、不支持率は前回から9.4ポイント増の46.1%となった。他社の調査も同様の傾向で、産経新聞とフジテレビが22、23日に実施した調査では支持率36.2%(前回比8.4ポイント減)で、不支持率の方が10ポイント以上高くなった。

一方、世界的な感染拡大が続くなか、支持率が“爆上げ”した政治家もいる。台湾の蔡英文総統だ。24日に公表された台湾民意基金会の調査によると、支持率は68.5%。先月調査から11.8ポイントも上昇した。特に高い評価を得ているのが防疫対策で、75.3%が「80点以上」と回答している。

たしかに、台湾の対応の早さは他国と比較しても際立っている。日本では1月16日にはじめて国内の感染者発生が公表されたが、新型コロナウイルスを「指定感染症」として閣議決定したのは1月28日。台湾は感染者が一人も出ていない1月15日の時点で「法定感染症」に定めていた。

安倍首相は2月27日、全国の小中高校や特別支援学校に休校要請することを発表した。だが、台湾ではすでに学校の休校は原則終了している。旧正月(春節)の冬休みを2週間延長して24日まで休みにしていたのを、現在は、教職員や生徒で感染者が1人出れば学級閉鎖、2人以上なら学校閉鎖するという基準を設け、授業を再開している。

共働き家庭への配慮も評価されている。休校中に小学生の世話が必要になる保護者は、看護休暇を申請できるようにした。また、中学生以上でも障害を持つ子供の保護者であれば、同じ制度が適用されるようにした。もし、企業が有給休暇の取得を拒否した場合、法律にのっとって処罰することも表明。「休校」という方針だけが発表された日本とは、大きな違いだ。

日本では今、経済対策として新規の補正予算を組む声が高まっている。26日には自民・公明の両党が安倍政権に経済対策の策定を求める方針を決定。では、台湾はどうか。台湾立法院(国会)は25日、600億台湾ドル(約2200億円)を上限とする経済対策の特別予算案を可決した。大きな打撃を受けている観光産業への支援などが柱になる予定だ。

そのほかにも中国へのマスク輸出禁止や厳しい渡航制限など、蔡政権が次々と打ち出す方針に当初は批判もあった。それでも、28日現在で感染者数が34人に抑えられていることから、批判は少なくなっている。台湾では、2003年に起きたSARS(重症急性呼吸器症候群)で84人の死者を出した。その時との違いも、高い評価を得ている理由だ。検査体制が異なるため単純な比較はできないが、日本の感染者数210人(クルーズ船の陽性反応者705人を除く)、韓国の2000人以上(いずれも28日現在)と比較しても、現時点での封じ込め対策は一定の成果を出しているといえるだろう。

台湾在住のノンフィクションライターの近藤弥生子さんは、こう話す。

「一般の人々が不安に感じていることについて常に先回りした対応をしていること、そして蔡総統や蘇貞昌行政院長(首相に相当)が寝る間を惜しんで必死に感染症拡大に奮闘している姿が伝わってきます。武漢からチャーター機で帰国した台湾人から一人の感染が確認された時は、陳時中衛生福利部長(保健相)が記者会見で涙を流しながら『患者の数は増えてほしくない。だが、逆に考えると命を救うことができる』と訴え、その真剣な姿に台湾人から称賛の声が相次ぎました」

“神対応”を連発する蔡政権のなかで、世界から注目されているのがデジタル担当政務委員(大臣に相当)のオードリー・タン(唐鳳)氏だ。タン氏は世界的に有名なプログラマーで、現在38歳。8歳からプログラミングを学び、14歳で中学を中退。15歳でIT企業を起業した。その後にトランスジェンダーであることを明かし、36歳で入閣した時は性別欄に「無」と記入した。タン氏はIQ180ともいわれる天才で、台湾の人々は「彼女の存在は私たちの希望」と慕う。

台湾が誇る天才が、感染症対策でも活躍している。

日本と同じく台湾でも、1月後半からマスクの在庫不足が問題になっていた。まずは輸出や持ち出し、転売が禁止され、2月6日にはマスクの購入が実名制になり、7日間で2枚しか買えないようにした。厳しい供給規制に反発がおきる可能性もあったが、タン氏は衛生福利部(保健省)中央健康保険署と協力して、台湾国内の薬局にあるマスクの在庫データをインターネット上に公開。すると、民間のITエンジニアがそのデータを地図上に落とし込み、在庫状況がひと目でわかるアプリを開発して無償配布した。

それだけではない。緊急時に発生するデマ情報の拡散を防ぐため、ラインなどの通信アプリを通じて間違った情報を信じないよう注意するメールを配信。また、新型コロナウイルスに感染しやすいタクシー運転手やバス運転手にマスクが優先的に届くように求める情報を発信すると、フェイスブック上では、本当に必要な人にマスクを譲ろうという声があふれた。

台湾の新型コロナウイルス発生状況のホームページはグラフや地図を効果的に使用していて、どの地域にどれくらいの感染者が出たかわかりやすい。台湾にも寄港した国際クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客については、下船してから訪れた場所をすべて公開した。こういったテクノロジーを使用した危機管理に、米国をはじめ世界から注目が集まっている。

タン氏にインタビューした経験がある前出の近藤さんは、こう話す。

「両親の職業がジャーナリストということもあり、彼女は『情報』が人々にどのような影響を与えるかをとても理解しています。一方で、現役の閣僚でありながらも特定の政治的立場に立つのではなく、むしろ意見の対立をIT技術で可視化して、解決につなげることを考えている。入閣した時に『公僕の中の公僕になる』と宣言したとおり、特定団体の利益のために動くのではなく、テクノロジーを駆使して台湾の人々と行政院をつなぐ“パイプ”になっています」

台湾に防疫や衛生管理を根付かせて伝染病の撲滅に貢献したのは、日本統治時代の1898年に台湾総督府で民生長官を務めた医師出身の後藤新平だ。それから120年以上がたった今、立場は逆転した。日本は、感染症の流行対策について台湾に学ばなければならない。

(AERA dot.編集部・西岡千史)

私見:コネクティングルームに泊まって官費旅行する実務リーダーと国民の模範となる実務リーダーの違いが今の現実でしょうか?それもこれも緊張感のない国のリーダーと緊張感の真っただ中にいるリーダーに帰結するのでしょう。

3月2日の新型肺炎状況

中華人民共和国 現在感染者32.739(+206)疑似感染者715(+141)現在重篤者7.110(‐255)死亡者2.915(+42)

(湖北省)        30.543(-2.416)                         2.803(+42)

日本            254(+15)                            6(+1)

(クルーズ船関係)     705                                6

台湾            40                                  0

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