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3月31日公開中国評③についてのコラム紹介。

2019-05-26 14:03:34 | おっさんの中国一人旅終了?に伴って、もっと日本を旅します。

3月31日に今の中国と中国共産党についての気になる論点を羅列し、その2項目についてのコラムを紹介しました。

そこで残り ③中国監視社会の現代化 ④国際社会監視化としてのファーウエイ ⑤国際社会での覇座 についての③中国監視社会についての集めたコラムを紹介します。

2週間の中国一人旅では家族との連絡は写真の网吧wangba からのメールで(携帯は持って行きません、皆さんゲーム中)。勿論中国公民の身名証が要ります、でも融通のきいてた当時は・・・、で使えていましたが(その融通が好きでした)、今はおそらく断られるでしょう。

私の利用していた賓館という大衆ホテル?も外国人の許可を取っていない所(ほとんどの賓館)では“対不起・・・”でしょう。

ある意味完全に閉ざされた国(その中には14億の人)と言えるかも、そして忖度の先にスパイ?捜し、現実に起こる国になっています、今の皇帝習近平の中国。

 

ダイヤモンドオンライン 2018.10.9 谷崎 光:作家 中国ウラオモテ

中国の「劇的ITイノベーション」が本当はとても怖い理由

中国ではITイノベーションが目覚ましい。実際、ほとんどの買い物がスマホで決済できてしまうなど、超便利なIT社会を実現している。優れたIT企業も続々と誕生し成長している。しかし、実はその正体は非常に怖いのだ。(中国在住作家 谷崎 光)

時価総額アジア・トップ級IT企業テンセントの「怖さ」 

中国・深セン――。

ここに、アリババを抜き抜き、トヨタ自動車を抜き、2017年度の時価総額アジアNo.1のIT企業、テンセントがある。

その光り輝く新築の本社ビルの前には、四角い『党といっしょに創業(起業・イノベーション)』のモニュメントがある。

この言葉の本当の怖さがわかる人は、かなりの中国通である。

こんにちは。北京在住18年目の作家、谷崎光です。

さて、今、日本では深センとか中国のイノベーションとか、キャラメルコーン……、じゃなくて、ユニコーン(評価額10億ドル以上の非上場ベンチャー企業)とか話題らしい。

それもいいだろう。

中国企業は、ニッポンのように、会社のひな壇の上の方に昭和の妖怪が密集していて、「下手なチャレンジなどしてオレの経歴に傷をつけるな!」と、若者をジャマしたりはしない。

いや、中国はもっと怖い妖怪が並んでいて、「いろいろ開発してや~」とささやいているのだが、確かに若者は多く、かつ実力主義。トライ&エラーのお国柄。

ここのところ、かなり減ったとはいえ、世界中から流れ込む資金。国の指示なら採算度外視。

実際はファンドのお金を使い切るだけ、のスタートアップ企業も多いが、活気があるのは事実である。

ただし、中国で18年暮らす私から見たその実態は、日本で言うような甘いものではない。

中国の鉄則は、ただ一つ。

すなわち、“すべては党が管理する”である。

どんな企業のどんなイノベーションも、ある規模になれば、党の後押しなしには行われていないし、最後は全部、党のものになる。

今の中国がイノベーションを推す理由は後述するが、もちろん経済発展も大きい。しかし並列する大きな理由は、軍事力の強化、人民の管理に有効、つまりは自分たちの独裁維持に役に立つからである。

いいですか。中国ではドローンという空飛ぶ武器の開発も、スマホでピッという金融業務も、党の了承なしに、勝手にはできないのである。

中国のIT企業にわんさかいる党員

テンセント本社テンセントの本社前にも“党といっしょに創業”のモニュメントが建っている。 

企業の中の党組織IT企業に続々誕生、党員が多いのはテンセントだけではない。

北京本社の京東商城約1万3000人。深セン本社のファーウェイは、鳳凰科技の2017年の報道では2007年の時点で早くも1万2000人いて、現在ははっきりしないが、党企業だから全員じゃないの、とジョークを言われるぐらい多く、実は杭州のアリババがまだ比率が低いと言われている。

 習近平と華為ファーウエイCEO任 正非

 企業にかかわらず組織の中で、こういう党の影響力や執政能力を増す仕事を、党建(ダンジェン)というのだが、IT企業に続々とその指揮をする党委ができている。

軍背景と言われるファーウェイとZTEには昔からあったが、2008年、アリババの党支部が党委に変わり、2010年、2011年、テンセント、京東、2013年に網易、2014年に捜狐、2015年に捜狗、小米、楽視網、同程、途牛、2016年にライブ動画の斗魚、タクシーアプリの滴滴出行、2017年にシェア自転車のofo……、とほとんどのIT企業を網羅、という感じだろうか。新浪に党委設立。

党組織自体は工会という労働組合も含めて、中国ではある規模以上の企業には日系含む外資、中国系かかわらず、たいていあるのだが、党のIT企業への管理は年々強まっている。

かつ、それがメディアでアピールされたりする。

ジャック・マーも昔は共産党批判をしていたが、だんだんやらなくなった。

そして共産党の聖地である、延安詣でをする姿が報道されるようになった。これはテンセントや京東のCEOも行って、報道されていた。

中国の“中の人”はこれを、脅しと受け取る。“歯向かってもムダだからな。もうおまえらのこと、何でも知っているからな”というわけである。

便利にはなったけれど、ふと気づくと、もう逃げられない息苦しさがある。

AI監視カメラは街中(じゅう)にある。

ほとんどすべての支払いはスマホでしている。移動のチケットの購入もすべてスマホだし、決済の記録が残る(目をつけられるとチケットが買えなくなる)。

今日、どこでご飯を食べたとか、誰と電話したとか、SNSで何をいつもしゃべってるとか、ネットで何を検索しているとか、何を買ったとか、今どこにいるとか、あの時どこにいたとか、全部丸見えなのである。

しかもそれがIT企業と連動して、いつでも政府に情報が渡る。一般人でも数千円と携帯番号をヤミ業者に渡せば、上記のすべてがスマホの中の写真や今ドコやタクシーのキャンセル記録まで含めてすぐ出てくる(駐在員の方。中国での行動は注意!お忍び旅行も同伴も過去の居場所まで路上カメラにもスマホ通信にも全記録が残ります)。

もともと大陸の中国人は日本人のように、出国も国内の移動も本当は自由ではない。見えないオリの中にいるのが彼らだが、それが強化された。

もう中国で、テロも天安門事件もやれないのである。その前に見つかる。

中国では、アリババのジャック・マーが引退を表明した翌日に、アリペイが既存の銀行の共通決済手段である政府系の銀聯(ユニオン・ペイ)と契約をし、事実上、取り込まれたという報道があった。

最初に報道したのは、“上海証券報”で、それを新華社が9月14日に伝聞という形で転載している。

ネットでは、「豚を太らせてから食べる政府!」などと話題になった。

ジャック・マーの引退は……、など、詳しいことは、筆者が時事ブックとして、最近出した、『本当は怖い 中国発イノベーションの正体』をぜひお読みいただきたい。

ちなみにこの本の宣伝を中国からツイッターでやろうとしたら、共産党という言葉がひっかかり、なんとしても投稿されなかった(泣)。

中国で暮らした18年間、中国の奇怪なことをイヤというほど見てきた。

街の中でも、小さな店が突然理由なく営業停止になったり、繁華街の一等地の大ショッピングセンターが完全に準備も終わり開店間近のまま5年も6年も放置されたり……。

功成り名を遂げた民間大企業の社長が突然逮捕されたり、殺されたり、会社をのっとられたり。

しかも、全く報道はされなかったりもする。とにかく、中国は奇怪で理不尽なことが多いのである。

党に逆らったら何もできなくなる

ジャック・マーは資産を早くにシンガポールに設立した慈善組織に移していると言われているが、あのぐらいになるとこれからもう1兆円儲けることなどに、あまり意味はないのではないかと思う。

それよりも自分が育ててきた、13億の国民的インフラとなった企業がどうなるか。

今、中国の金持ちは皆、外国に逃げ出しているのである。

「中国はすばらしい!国を愛してます!」と叫んでいた有名企業人や芸能人、調べてみたら、シンガポールに国籍を移していたという話は多い。

もちろんアリババにはソフトバンクはじめ、いろんな外国資本が入っているが、しょせん、中国の会社。党に逆らったら何もできなくなる。

アリババのアリペイ(支付宝)は、ジャック・マーとアリババの社員たちが、一所懸命育ててきたシステムである。急にあそこまで便利になったわけではない。

私はタオバオの最初からのユーザーだが、最初は、銀行や郵便局まで行って振り込んでいた。

20元(350円)のものを買って、振込代が2元(35円)。売り手の利益が10元なら2割である。

当時の銀行はものすごく並ばないとだめで、また地方だと連携していない銀行や、お金を送っても届かない!!!金融機関がある。

返品や不良品が発生したときの返金や値引きはどうするのか。また中国はそれが多い。そういうのを一つずつ改善してきたのである。

しかし当時の中国で、ネット上にお金を置いておくなんて危険なこと、外国人どころか中国人も誰もやらず、私も買い物と同額の最低金額だけチャージしていた。

それを大きく変えたのが、余額宝という、タオバオの独自ファンドである。

確か初期は7〜8%を超える利率で、タオバオの信用が徐々に付いてきたこともあり、こうなると一気に1000万円などの額を預けるユーザーが続出した(注:外国人は今も昔もできません)。

やがて銀行カードと紐(ひも)づけになり、スマホが出てきて、QRコード支払いが始まり、本当に便利になった。

政府は民間企業を利用してきた

実はこういう技術開発は、古くからの社員や養わなければならない官をたくさん抱えた国有企業では、やりにくい。

そこで、民間企業を利用してきたともいえる。

巨大企業に育っていきつつあるアリババを見ながら、政府の誰かがこう考えたのだと思う。

「アリババは、タオバオを通して今はほぼ全国民の消費情報と住所、金融情報を押さえている。我々の金儲けだけでなく、人民の管理にも大いに利用できる」

現在、アリババには社内にも警察組織があり情報を提供していると、これはウォールストリート・ジャーナルが2017年12月4日に報道している。

もちろん投資もしている。アリババの上場について太子党の関与が一時、報道され、江沢民派だと話題になったが、私はそういうのはもう多少古い話だと思う。

日本では中国の派閥争いがよく言われるが、“革命の勇士”、つまり武力でこの場所を獲った人々の子孫はしょせん、皆さん、お友達。

取り合ったりはしているが、結論冒頭の“すべては党が管理する”なのである。

父親が深センで港湾関係の幹部をしていたこともある党員で、自分も大学時代に入党しているテンセントの創業者、馬化騰はアジア有数の金持ちになった。

そもそも深センというのは、1980年代から共産党と軍が、ある方法で自分たちの権利をお金に換えるための経済実験都市である(詳細は『本当は怖い 中国発イノベーションの正体』に記載)。

それがすなわち『中国の夢』(泣)!

杭州で、貧しい家に生まれて起業したアリババのジャック・マーは引退した。

やはり貧しい家に生まれ、北京の中関村で働いて、不良品や偽物があまりにも多いことに疑問を感じ、偽物なし、配達のすり替え(!)なしを売り物に起業し大成功した京東の劉強東は、先日、アメリカでレイプ容疑をかけられて逮捕された。

彼には、ミルクティー小姐というニックネームの、高校時代からネットで大評判だった超かわいい奥さんと小さな娘がいるのだが……。女性尊重を日頃主張する私だが、これはハメられたんじゃない?に一票である。

この件に関する中国のネットの世論誘導も非常に奇妙。すぐ釈放され真偽ははっきりしないが、株はダダ下がりですさまじい額のお金が蒸発し、経営者としての責任は問われるかもしれない。

現在、すでに京東の最大の株主はテンセントで、ただし議決権はやはり大株主である劉強東が約8割もっている。ただし、そのテンセントも今年の夏に、突然ゲーム規制がかけられ、株価が下がった。

以前、中国でテンセントの馬化騰や、アリババのジャック・マー、京東の劉強東、他、今をトキメク十数名の若い中国IT長者たちが集まって一卓で食事をしている写真がネットに流れ話題になった。華やかなそのウラで様々な死闘がくりひろげられていたんだろうな……。

皆、この時代の中国に生まれ合わせ、才を持ち合わせ、死ぬほど働いて、中国人の生活を本当に豊かに変えた企業人たちである。

幸いにも20年近く中国に暮らし、その過程をつぶさに見てきた。

特にアリババのジャック・マーと京東の劉強東の2人については、その夢の終着駅がこれか、という思いがある。

「がんばってきたことがすべて一場の夢という感じ。あんまりじゃないか」と中国人の友達に言ったら、

「いや、だからそれがすなわち『中国の夢』だって!」と、ジョークを交えて返された。

中国の夢”というのは習近平たちが唱えている中国が世界を覇権する中国の美しい未来である。その美しすぎる未来に人民が逆らおうにも、すでにAI顔認証で包囲されている。

新刊はタイムリーな話題を、コンパクトかつディープにまとめた『本当は怖い 中国発イノベーションの正体』谷崎光 600円

逆らえば、日頃使うスマホから顔写真をインプットされたハエほどのドローンがひゅーんと飛んできて、どこに逃げようと額をバキューンと撃ち抜く……、日も遠くない。

あ、もう始まってる?

そして中国に逆らえなくなるのは、人民だけではない。

日本企業も、一般消費者だけではなく、中国企業が大きなお得意様になった。

その企業からの広告費で、平均サラリーマンの4〜5倍の給料をもらってきた一部の大手メディアは、今度は中国企業にも目がキラーン。取材しても読者の食いつき、いいし……。

日本進出を目論(もくろ)む中国企業は、それを逆手にとるだろう。

中国現地にいる日本の官僚は、日本企業への天下りの手土産に、中国の官と中国企業とのコネをつけるのに忙しい。

日本官僚の派遣先として今、中国は大人気だそうで、今や在中国日本大使館は、世界中の日本大使館で一番職員の人数が多い。

で、現地の日本人の彼らがこぞってやっているのは「日本はもうダメ」と見切って、自分の子どもに、英語と中国語を徹底的に仕込むこと。

培った中国コネを生かした明日の中国的ファミリービジネスを目指して……。

本当に怖いのは、日本で、ふと気がつけば中国企業のサービスに首まで漬かって、取り残される皆さんかもしれない。

 

日経ビジネスオンライン 2018年10月19日(金) 田中信彦 スジの日本、量の中国

「中国すごい」の底にある個人情報への鷹揚さ

プライバシーへの寛容さは「量」の社会ならでは

中国人、中国社会のプライバシー(中国語で「隠私」)の話である。

 「スジか、量か」という判断基準の違いは社会のさまざまな領域に影響を与えている、プライバシーに関する議論もその例外ではない。

生活の急激な都市化やIT化で、プライバシーや個人情報の管理に対する考え方は、中国のみならず、他の国でも大きく変わりつつある。日常的なさまざまなものごとを「スジ=原理原則」よりも「量=現実的影響」の大小で判断し、行動する傾向の強い中国人社会が時代とともに大きく揺れ動いている様子が、プライバシーにまつわる議論からだけでもよくわかる。

効率のためなら喜んで個人情報を差し出す

今年3月、中国でNo.1の検索エンジン「百度(Baidu=バイドゥ)」の董事長兼CEO、ロビン・リー(李彦宏)が北京で開かれたフォーラムで行った発言が大きな議論を呼んだ。

Baidu と言えば、アリババ(Alibaba)やテンセント(Tencent)と並んで「BAT」という言い方があるくらい、中国のインターネット企業の頂点に立つ存在の一つである。しばしば「中国のGoogle」とまでたとえられる存在(もっともBaiduに思想や理念は感じられないが)であって、中国でインターネットにつながる人ならその検索エンジンを使ったことがない人はいないだろう。総帥であるロビン・リーの言葉は社会的にも大きな影響力がある。

彼の発言とはこんな趣旨である。

「中国のユーザーはプライバシーに対して敏感ではない。プライバシーと効率を喜んで交換する」

この発言は興味深い。10億人近いユーザーを持つ中国有数のインターネット企業のトップが、要するに「中国のユーザーは自分にとって便利になる状況があれば、プライバシーを譲り渡すことに抵抗がない。それどころか、むしろ喜んで提供する」と認識していることになる。

さらに彼は続けてこうも言っている。

「ユーザーが提供してくれたデータが、より多くの便利さをユーザー自身にもたらせば、ユーザーはますます多くの情報を提供してくれるようになる。それによって我々はより多くの情報を活用できる。このことが我々の“やるべきこと”と“やってはいけないこと”を判断する基準になっている」

つまり彼自身、ユーザーの個人情報の扱い方を、基本的に「便利になるか、ならないか」という基準で判断していることがわかる。

「信用スコアが低いと結婚もできない」

このロビン・リーの発言より少し前になるが、アリババグループの総帥、ジャック・マー(馬雲)も、個人のプライバシーに関する発言で物議をかもしたことがある。

アリババグループには、「芝麻信用(ジーマクレジット)」と呼ぶ、個人の信用情報に基づく格付けサービスがある。同グループの提供するモバイル決済サービス、アリペイ(支付宝)の支払い履歴などをもとに個人の信用度を点数化し、個人を評価する仕組みだ。その「芝麻クレジット」の成長性に関して、2017年1月、スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム(通称「ダボス会議」)でのニューヨークタイムスのコラムニストとの対話中、ジャック・マーはこんな話をした。

「芝麻信用のスコアは今後、恋愛の必要条件になる。彼女のお母さんはあなたに対して『娘と付き合いたいなら芝麻信用のスコアを見せなさい』と言うだろう。レンタカーを借りに行けば芝麻信用のスコアはいくつかと聞かれるはずだ。もしあなたが借金を返さなければスコアは下がり、アパートを借りることもできなくなる。もしネットでニセモノを売るような商売をすれば、すぐ信用スコアに反映される。これが私のつくり上げたいシステムだ」(訳は筆者)

中国国内のメディアはすぐさま「芝麻信用のスコアが低いと結婚もできない、とジャック・マーが語った」と大きな見出しで伝えた。こうしたわかりやすいモノ言いは彼の真骨頂で、人気の秘密でもあるのだが、この発言もまた非常に興味深い。

ジャック・マーがここで語っていることは、確かにその通りで、「だから自分の信用を傷つけるような行いをせず、真面目に暮らして信用を積み、スコアを上げなさい。そうすれば生活はさらに便利で快適になりますよ」――という話ではある。

しかし結婚や就職といった微妙な社会的背景が絡む問題で、「(自社の提供するサービスの)スコアが低いと結婚できない」といった発言をし、やや冗談めかした口調ではあるが、それをビジネスのチャンスととらえる、そこには前述のロビン・リー発言と同様、中国社会に特徴的な「プライバシー感」が反映されている。

個人情報の公開にむしろ積極的な人々

企業家たちがこうした考え方を持ち、それをごく気軽に公開の場で語るのは、ロビン・リーが言うように、そういう気分が社会にあるからだろう。プライバシー保護の重要性は昨今、中国でも知識層の間では急速に関心の対象になってきた。しかし、それはまだ一部の世界に留まる。企業家のこうした発言の反動として「プライバシーは大事なのだ」という意識は目覚めつつあるが、一般の庶民がインターネットの各種サービスを利用する際、自身のプライバシーについて考える例は多くはない。

私の友人たちの多くは、アリペイで買い物をする際、自分がどこで、何を、いくらで買ったのか、そのことを常にリアルタイムで「監視」され、記録されていることに一種の安心感を覚えている。自分のプライバシーを知られることを恐れるより、自分が不正行為の被害に遭ったり、売り手のミスで損害を被ったりすることを防ぐ効果のほうが重要だと感じている。

また、芝麻信用のスコアによる「個人の格付け」の問題も、むしろ自分のランクが明らかになることで、「信用できる客」として遇されるメリットがある。さらには自分がよく行く店やホテル、レストランなどが信用度の高い客を集めてくれれば、そのほうが自分は快適かつ安全になる。そのほうがいい、と思っている。自らの信用情報の公開に抵抗感を示す人は、少なくとも私の周囲ではほとんどいない。

プライバシーは「守られるべき」というスジ論

これまでの連載で、中国人は自分の周囲に発生した状況を認識する際、まずその「量=現実的影響」の側面に注目して頭の中を整理する傾向が強い、と説明してきた。一方、日本人はというと「現実=今の状況がどうなっているのか」よりは、まず「どうあるべきなのか」「どんな状態を目指すべきなのか」という「スジ論」を優先するように小さい頃から習慣づけられている。そんな話をした。

では、プライバシーや個人情報に関する議論を、この考え方に沿って考えてみると、どうなるだろうか。

まず日本人がイメージしやすい「スジ」のほうから見てみる。

スジ論で考えれば、プライバシーとは人間にとっての基本的な「権利」であって、守られる「べき」ものである。そこでは、サービスの向上や商売の利益よりも、プライバシーを保障することが絶対的な優先事項となる。

これが「スジ」であり、人々は個人情報の公開には否定的な姿勢が強くなる。

もちろん、個人情報をある程度は公開しなければ社会的なサービスを受けることは不可能だから、本人同意のうえで必要な情報は公開することになる。しかし、それはあくまで必要最小限に留めるべきであり、場合によっては、便利さや効率はある程度犠牲にしても、この「権利」は守られなければならない――と考える。それがスジである。やや極端に言えば、こういう考え方を日本の社会はする。

現実を「いかに自分に有利に変えるか」と考える中国社会

一方、中国社会の底流にある発想は、もっと実利的であり、融通無碍である。

個人の「権利」という、もともと存在はするが目には見えない話よりも、事実として目の前に存在している状況からものごとを判断する習慣がついている。「本来、どうあるべきか」を考えるよりも、まずどうやったら目の前の現実が自分に有利になるか、効率を高められるか――という観点から考える。それがこの社会ではごく自然な思考の順序である。

 だから、中国では有力なインターネット企業が提供するサービス、例えば、上述のアリペイなどのモバイル決済システムはあっと言う間に普及し、定着した。それ以外にも、日常の足としてすっかり定着したタクシーの配車サービス、シェア自転車、食事の宅配サービスなど、非常に便利で生活上のメリットもある仕組みが登場した際、ほとんどの人は、そのサービスを使うためにむしろ喜んで個人情報を提供した。冒頭の2人の企業家の発言は、中国におけるそういう状況を背景に出てきたものである。

一方、日本国内では、個人情報保護はいいが、その「スジ論」があまりに強すぎて、IT化、デジタル化の世界的な流れに乗り遅れがちだ。時代に合った個人情報のあり方に発想を改めるべきだ――といった意見を耳にすることも多い。

では、中国人、中国社会にプライバシーを守りたいという意識がないのか、といえばそんなことはない。誰だって他人に知られたくないことはある。

しかし、そこでどう考えるのかといえば、中国の人々の関心は「プライバシーが守られるべきだ」という原則論よりは、プライバシーの問題が「どれだけ自分の実生活に不利益をもたらすのか」という点にある。つまり、たとえば個人情報漏洩の問題は「自分の住所や連絡先が勝手に他人の手に渡って、うっとうしいセールス電話やスパムメールがじゃんじゃんやってくるのは嫌だ」という「実害の有無」にある。

このことは以前、この連載で「割り込み」の話をした時(「列に割り込む中国人は、怒られたらどうするか?」)、中国の人たちは、自分の目の前で割り込まれた時、「割り込みという行為の是非」というスジ的な話よりは、「その割り込みによって自分がどれだけの時間のロスを被るのか」という「損害の大小」にまず意識が行く傾向がある――と説明したのと同じ理屈である。

つまり、頭の中で常にメリットとデメリットを天秤にかける。すべては「程度の問題」であって、「どっちが得か」という「メリットの量」が基準になりやすい。そしてこれは通常、そのまま金銭に置き換えることができる。要するに、身も蓋もない言い方をしてしまえば、プライバシーを取るか、経済的利益(お金)を取るか、取るのだったら、どちらを「どの程度」取るのか、常に天秤にかけて、自分に最も有利なバランスを考える――ということができる。

「監視されているから安心」という心理

2017年夏、北海道を旅行中の中国福建省出身の女性が行方不明になり、その後、釧路市内の海岸で遺体となって発見されるという痛ましい出来事があった。各種状況から最終的には自殺と判断されたが、この女性の行方不明中、中国国内の関心は高く、さまざまな憶測が飛び交った。この時の中国国内の反応を見ていると、「日本は街角の監視カメラが少ないから危ない。街を歩くのが恐い」「日本は犯罪があっても犯人を捕まえる方法がない」といった声が少なくなかった。

確かに中国では、全土の道路という道路、事実上すべての公共空間には、ほぼ隙間なく監視カメラが設置されており、その数は一説には億の単位に達するという。自宅やオフィスの中にいるのでない限り、どこを歩いても、車で通っても、その行動はすべてモニターされている。人々は自分がスマホに付属したGPS(衛星測位システム)で常に位置を捕捉され、決済システムで金銭の支払い、受取り状況を「監視」され、街角にくまなく設置された監視カメラ+顔認識システムで行動をモニターされている。

そしてこのような状況を政府は「天網プロジェクト(「天網恢恢疎にして漏らさず」の「天網」である)と名付け、こうした政策を進めていることを隠そうとしていない。むしろ積極的に公言し、治安の向上を目指すと高らかに宣言している。

プライバシーどころの話ではないが、中国の人々はこうした状況をむしろ当然と思っていて、不快感を唱える人は少ない。むしろ「別に何も悪いことはしていないから構わない。生活が安全になったほうがいい」と「守られている感」を持って安心する人が多い。日本に来るとそれがないから不安になるのである。自分に相応のメリットがあれば、第三者に自分の情報を引き渡すことに対する抵抗感は、むろん個人差はあるものの、全般に薄い。

こうした「監視慣れ」「安全はプライバシーに優先する」という感覚は「個人情報保護、プライバシー至上」というスジ論が強い日本社会では理解されにくい。一方、中国社会では、このような国民の「プライバシーに対する鷹揚さ」は権力者による思想、行動の管理に極めて都合がいいばかりでなく、政府や民間企業による個人情報の収集と活用を容易にし、特にIT化、デジタル化の世の中になって、社会の効率を高めていることは否定できない。

「量」で考える中国社会はデジタル化と相性がいい

これまで日本国内での中国社会、中国人に対する評価は「チーム内の情報共有が苦手」「個人では強いが、団結力に欠け、チームプレーに弱い」といった評価が多かった。そのことが日本人の「中国には負けない」という自信の根源にもなってきた。その見方に根拠がないとは思わないが、中国社会はいま、高度に進化したデジタルなコミュニケーションの仕組みが社会に深く浸透し、社会的な個人情報の共有が急速に進みつつある。

その根底に、ここで述べてきたような「プライバシーを“メリットの『量』”で判断する」という中国社会の習性が深く影響している。ものごとを、スジ=「そもそも論」「べき論」で整理するより、現実的な効率を追求したほうが結局は得だと考える、「量=現実的影響」を重視する中国社会の発想がそこにはある。そして昨今の「中国すごい論」の根拠となっている中国の斬新なサービスの飛躍的な成長は、その条件の上に実現したものである。

中国がうまくいったから我々も、と考えるのはやめておこう

私の友人でもある中国に詳しいノンフィクション作家、安田峰俊さんが、先日、ネットメディアに書いた文章にこんな一節があった。

「よくよく考えてみると、中国のイノベーションとは日本が絶対にマネできない(かつ、マネしてはいけない)中国特有の社会や政府や庶民意識のありかたが、たまたま上手に組み合わさった結果として生まれたものでもある」(「ズルい」中国のイノベーションを日本が“絶対に”マネできない理由)文春オンライン2018年10月1日)

 これはまことに言い得て妙というべきで、ここで安田さんが言う「中国特有の庶民意識」の一つが、まさにものごとを「スジ論」ではなく、「量=現実的影響で判断する」という中国の人々の思考様式にほかならない。これは確かに簡単には「マネできない」もので、中国社会、そして中国の人々の発想がここに端的に表れている。

「プライバシーに対する鷹揚さ」は成長の条件なのか。グローバル化、デジタル化によって人々の情報収集、意思決定のプロセスが劇的に変化している現在、これは中国うんぬんの問題というよりは、私たち日本人自身が自らの価値観に基づいて考えるべきテーマだろう。中国社会は何を捨てて、何を取っているのか。日本はどうするのか。これはゆっくり考えてみる必要がある問題だと思う。

 

私見;中国の常識、日本の非常識、日本の常識、中国の非常識。自分たちの常識や価値観で他国の良し悪しを決めつけるのは止めなければ、世界から取り残されます。

中国然り、中国の近代史を辿れば理解できるかも?

中国の人達は中国共産党によって統治されています。中国近代、中国共産党の中国での歴史経過を読み解くと、いま中国の人達のプライバシーに対する対応が理解できるかと。

毛沢東時代(1947~1975?)に全国民は共産制に移行すべく人民公社や国有企業に強制編入、そこでは共同生活(家族単位の食事は出来ませんでした)、日本のオウムではありませんがプライバシーなんかありません。ましてや文革時にはプライバシーを通り越してお互いの監視社会を経験しています。

中国を歩いていると北京でも胡同で、解放当時の各屋敷に何家族もが地区委員会から指示されて居住し(中庭に建増したり、間仕切りして)現在に至る?(今は居住権?建物を買い取ってはいないかと)実態が見られます。そこでは同志です、秘密は無し。夕闇迫ると皆リラックスしてパジャマで夕涼み!朝は夜の間のお便所の後片付けでバケツ(過っては馬桶)を持って地区の公衆便所に!3年前の胡同です(確認まではしていません)。

でもやはり私達と同じ、それを良い悪いで云々してほしくないでしょう。中国共産党はそれを利用して監視社会を構築してるのです。

そんな日本にならないとは・・・。

 

JBpress  4/30(火) 6:00配信 

中国でタクシーに鞄を忘れたら、マジかよ!の結末に

中国におけるデジタルデータ利用の凄さを実感する話を友人から聞いた。

友人(男性)は先日、夫妻で中国の大都市Q市に旅行したという。その日は市内に宿泊、翌日は別の都市に列車で向かう予定になっていた。

その数日間、Q市付近は予想より肌寒く、その気温に見合った服を持ってきていなかったため、翌日上着を買ってから次の都市に移動することにした。

朝食後、夫妻はホテルからタクシーに乗り、市の中心部にあるショッピング街に向かった。「この店はどうだろう?」などと話しながらタクシーを降り、一軒の店に入った。

■ 今降りたタクシーはどこに? 

店に入って少しして、友人が気がついた。「旅行カバンを持っていない!  タクシーから下ろさなかったんだ」荷物を入れた旅行カバンは、タクシーに乗るときに後部のトランクに入れたのだが、それを出すのを忘れていたのだ。

あわてて通りに出てみたが、タクシーは走り去ったあと。

さいわいパスポートは2人とも身に着けていたが、サイフやクレジットカードなどほとんどのものが旅行カバンに入れてあり、ほとんど何も持っていないも同然だ。夫妻は顔を見合わせ「どうしよう!?」と呆然となった。「ひと昔前の中国に対する感覚だとそのまま盗まれて終わり、と思えたので非常にあせった」という。

Q市を走っているタクシーは何万台もある。その中からどうやって探せばいいのか?  レシートを受け取っていないので、タクシー番号はおろかタクシー会社すらわからない。

すると店員が「警察に連絡したら」とアドバイスしてくれた。「警察?  盗難というわけではないのに力になってくれるだろうか」友人は半信半疑で連絡した。

そして30分後、「見つかった」という連絡が警察から届いた。さらに2時間後、店の前にさっき乗ったタクシーが止まり、運転手が降りてきた。「いやー、荷物をトランクに入れたことをすっかり忘れてたね。はい、どうぞ」友人の旅行カバンを差し出した。

 「ありがとう、助かったよ」友人は運転手と店員に何度もお礼を言ったという。そしてふと考えた。「なぜタクシーを特定できたんだ?」

■ 街頭カメラからタクシーを特定

その答えはこうだ。連絡を受けた警察は、その付近にある街頭カメラの映像で、該当時刻のものを調べた。すると、確かにそれっぽい服装の2人がタクシーから降りるところが映っていた。同時に、そのタクシーのナンバーと会社名が判明。運転手に連絡を取り、夫妻が降りた場所に向かわせた、という経緯だ。

それらの作業は人手でやったように思われるが、AIの力を借りている可能性もある。「最近の中国は、デジタルデータをこれだけの素早さで利用できるようになっているのか、と驚いた。しかも個人的なことで警察が動いてくれるとは」と友人は言う。

この話をどう捉えればいいのか。「これだけ親切に対応してもらえた」という“いい話”にも思えるし、「これだけ細かいところまで監視されている」と受け止めることもできる。中国の街を行き来する人は、その一挙手一投足をすべて撮影され、行動を捕捉されているということだ。

これは単に「中国ではこうなっている」ということではない。日本国内でもカメラはかなりの数が設置されている。では、今回の話のような利用方法を日本でも望むのか。

今回、友人から中国での騒動の顛末を聞いて、中国におけるデジタル活用の先進性を改めて認識したと同時に、背筋に冷たいものが走ったのも事実だ。

データは誰がどのように管理し、利用し、運用しているのか。一方で、せっかく蓄積しているデータをもっと有効に利用する方法はないのか。利用者としてどこまでの利用なら許容できるのか。これらのことについては運営者任せではなく、個人個人が危険性と利便性のバランスを見極めて利用したり対処したりしていく必要があるだろう。

島田 薙彦

 

ダイヤモンドオンライン  2019.5.29  高須正和:ニコ技深センコミュニティ

中国を「落とした財布が見つかる街」に変えた監視カメラとネットワーク

腐敗や不公正、そして何より非効率が支配していた中国の行政サービスは、テクノロジーのおかげで急速に向上している。「スマートガバメント」の言葉通り、賢くなっているのだ。かつてはスマートの反対で、どうにも間抜けで頼りにならなかった行政サービスだが、ネットワークに繋がったカメラなどのIoT端末が効率を上げ、人々の振る舞いも変えつつある。(ニコ技深センコミュニティ 高須正和)

中国は落とした財布が見つかる安全な街に

知人が先日、深セン大学に訪ねてくる途中、タクシーの中にカバンを忘れた。ラップトップが入っているので大急ぎで大学の守衛室に駆け込んだところ、カバンは1時間もかからずに戻ってきた。

カバンをなくしたのに気づいて守衛室に駆け込んでからのプロセスは、こんな感じだ。

1. 大学の守衛室にスマホのグーグル翻訳で中国語の文章を見せて問い合わせる。

2. 守衛は、壁一杯に並んだモニタで、大学内に設置されている多くの監視カメラの映像を確かめる。

3.大学入り口(タクシーから降りたところ)の監視カメラを見て、映像を巻き戻す。タクシーの会社名やナンバーを確認する。

4.守衛がタクシー会社に問い合わせる。

5.タクシー運転手が、仕事の合間に大学まで届けてくれる。

以前は守衛が頻繁に大学内を巡回していたのだろうが、今、その業務は多くは監視カメラに置き換わっている。せいぜい数時間に1度の巡回に比べて、常時ONになっていて録画の巻き戻しもできるネットワーク化された監視カメラは、人々の生活を変えつつある。

僕は深センのホテルで財布を落としたことがある。ところが廊下で落とした財布は清掃スタッフがフロントに届け、僕が財布をなくしたことに気づくより早く、チェックアウト時に返ってきた。財布にはクレジットカードやいくつかの身分証が入れてあるので、なくしたら真っ青になるところだ。

持ち主の僕は気づかずにチェックアウトしかかっていたわけだから、ホテルスタッフはそのままネコババしようと思ってもおかしくないはずだが、中国のホテルには廊下にもフロントにも監視カメラがあるから、すぐにバレる。フロントの人はモニタが並んだ守衛室に案内してくれたので、僕は守衛にお礼を言った。

カメラがなく、守衛が定期的に巡回していたり、清掃スタッフの善意に任されていた頃は、問い合わせても暖簾に腕押しだったろう。「届いたら連絡する」という言質はもらっても、実際に届くかはもちろん、仮に届いても連絡がきたかどうかは怪しい。中国に限らず、発展途上国で貴重品を落とすというのは悪夢のような経験だった。

 ところが、最近の中国では頻繁に「落としものが見つかって届けられた」という話を聞く。日本や欧米の報道では市民のプライバシーが侵害される、悪者と考えられがちの監視カメラが、中国を外国人にとっても安全な場所に変えつつあるのだ。

深センの繁華街ではストリートピアノが稼働中

2019年1月、ヤマハが東京の品川駅構内に誰でも弾けるピアノを設置したところ、予想を超えて人が集まりすぎたために10日ほどで早期終了する結果になったことが話題を集めた。ヤマハは2017年から国内のパブリックスペースへのピアノ設置を行っているが、深センでも2018年から世界最大の電気街「華強北」の目抜き通りにピアノが置かれている。

街頭ピアノ複数台のピアノがガード下に置かれている。いずれもヤマハ製だがヤマハのロゴもないので、中国独自の活動と思われる

華強北は業者が行き交う問屋街の性質が強く、ピアノを弾く人はよく見るが、危険を感じるほど人だかりができている様子はまだ見たことがない。

日々、小綺麗になっていく華強北電気街だが、上の写真にあるピアノや献血センターといった、商売に直接関係のない文化や公共サービス的なものが街に現れてくる様は、問屋街からより一般の人々を巻き込んで発展していることの象徴といえる。

華強北では毎日のように装飾のためのLEDが増え、花壇にも花と並んで光るLEDの装飾が埋め込まれるなど、いかにもイタズラで盗まれそうな演出が行われているが、今のところ大規模なイタズラは見られない。もともと交通整理や歩行者天国に自転車が侵入するのを防ぐなどのため警察官の多い街だが、最近はカメラの設置で警察官が減ったようにも思える。

華北強の街灯街の再開発で街灯が一新され、街灯には赤外線や全天周など各種のカメラが搭載されている

没有(メイヨー)の国からスマートガバメントへ

2000年初頭まで中国は、没有(メイヨー)の国といわれていた。「ない」という意味である。ホテルやレストランでさまざまな頼み事をしても、ちょっと話が面倒くさくなると「メイヨー」と返ってきて、以後なしのつぶてになるのだ。「お探しのものはないが、コレで代替できる」といった提案はなく、ひどいと「郵便局に切手を買いに行ったが探すふりもなくメイヨーと帰ってきた」という例が多く見られた。

僕は2000年頃に成都の大学に留学した友人を訪ねたが、郵便局でも鉄道でもメイヨーと戦いながら目的を果たした。「郵便を出す、切符を入手するといったタスクを1日に一つこなせば上出来、と考えよう」と、留学していた友人は中国での心得を語ってくれた。

深センの公園と園内監視カメラ(左)深セン市民が安らぐ公園。公園のマナーもテクノロジーで急速に向上している/(右)公園内で街灯のように立っている監視カメラ

それから20年も経たない間に、スマートフォン決済など、さまざまなサービスがネットワーク化されたことで、中国の各種サービスは一気に使いやすくなった。列車の切符を取るのも銀行取引も、行政手続きもスマホで手軽に使える。

今も中国を訪れる外国人は、入国してから24時間以内に最寄りの警察署に臨時宿泊登記をしなければならない。外国人が宿泊可能なホテルではホテル側が代行してくれるが、アパートを借りている外国人には面倒な手続きだ。ところが昨年から各アパートの住所がQRコード化されたことで、アパートの間口にあるQRをスマホで撮影すればすぐに手続きできるようになった。

2014年から深セン政府と仕事をしている友達は、「当時は役所に出向いて2週間かかった手続きが、今はスマホから2~3日でできる」と伝えてくれた。

スマートガバメントの言葉通り、中国の行政サービスはインターネットの力で質を上げている。世界一巨大で非効率、ワイロとサボタージュの温床で、「スマートじゃなかった」中国の官僚機構が、ネットワーク上のシステムに置き換わっている。

そして、そのネットワークにさらにもう一つの技術進化、カメラなどのIoT端末が普及したことで、街中の風景も変わりつつある。

駅構内と電車内(左)深セン地下鉄の駅ホーム。上からぶらさがっているのは監視カメラ/(右)地下鉄で妊婦に席を譲るのも当たり前になった

監視カメラは駅のホームにもある。電車の中にもある。駅のホームや電車の中での無法な行いは一気に減り、なぜか老人や妊婦に席を譲るのも当たり前になった。地下鉄内では定期的に物々しい制服を着た鉄道警察の巡検があり、妊婦を座らせるのだが、そのときの物腰は親切なものだし、巡検と関係なくお年寄りや妊婦に席を譲ることもよく見る。

中国人は行列をつくらず我先に列車に飛び込む自分勝手な面も知られているが、老人を尊敬し子どもに優しいことでも知られている。乱暴が罰せられるようになって、隠れていた別の性質が表に出てきたのかもしれない。

ホテル内の監視カメラや大学内のカメラは守衛の仕事効率を上げ、人件費を下げるために設置されたものだ。中国の組織は、もともとメンテナンスのために大量の人員を雇用している。効率化のために機械化していくのは自然な流れだろう。

深セン大学構内(左)深セン大学の構内には随所に監視カメラがある/(右)大学構内では施設のメンテナンスや管理のために働く人たちを多く見かける。人手不足に突入しつつある深センで、これでは長く続かないだろう

カメラの代わりに失われたものは何か

インターネットシステムがなかった頃の中国は、共産主義のスローガンとは裏腹に平等とはほど遠い国だった。たとえば2008年の時点で、クレジットカードを作ったり住宅ローンを組める中国人は全体の10%ほど。列車の切符を買うのも金融サービスを使うのも、権力者とのコネが支配する世界だった。

そうした、サービスの“隙間”が多かったころの社会は、その隙間を不正とサボタージュが埋めていた。一方で、管理されないからこその自由があったのも事実だ。たとえば「深セン大学の中に反政府的なポスターを貼る」ような政治的な行為は、カメラのない頃の方がしやすかっただろう。ただ、過去の中国が今よりそうした政治的アピールに寛容だったかは疑問だ。闇から闇に葬られる政治運動家は珍しくなかった。

少数民族政策などでは監視技術はディストピア(反理想郷)を築いていると、さまざまな人権団体が伝える。少数民族を特定・追跡する目的で、大量の監視カメラと顔認証やAI技術が用いられているという。だが、皮肉な話ではあるが、そもそも監視技術がなかったら、そうした“スマート弾圧”はより恣意的に行われ、より恐ろしい悪夢を招いていたのではないだろうか。

「どういう人をどう扱うか」という政治的方針の問題と技術の問題は分けて考えるべきだ。問題はスマートでなくて弾圧にあり、中国脅威論がテクノロジー脅威論に繋がる考え方は未来への視野を狭くするだろう。

日本でもここ数年、ドライブレコーダの売り上げが急成長していて、結果として迷惑運転の抑制になっている。テクノロジーで何が可能になり何が難しくなったかは、これからの社会を考えていく上で避けて通れないテーマだ。

 

私見;私達が監視社会をコントロールしていけるならばともかく、権力による監視社会は私達を滅亡の谷へ誘うことになるかと。

かくなる中国共産党が支配する国が世界やアジアをリードする危険を阻止しなければ、今利用しているつもりの資本主義社会での民主主義国家は、中国共産党に支配されることになるのでは(そういう意味ではトランプさんに頑張って・・・、どこまで真剣にやってるのか・・・)。他国の内政には干渉しないなんて言い分を信じるふりして今の豊かさにしがみつく愚かさと決別しないと。

でも中国と事を構える愚を犯さず、中国共産党の自滅を想定していた考えは再考すべきなのか??

私の生きてる間はまだいいか、でも・・・。

いつかもう一度中国に行きたい気持ちが捨てきれずまだ取敢えずの元を持ってるのですが、親切でフレンドリーな中国の人達、この気持ちを大切に、でも再度の中国行は無理かな~。また行くところではなくなったのかも、みんなどうしてるのかな・・・。

 

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好きな山、空沼岳。

2019-05-15 10:34:40 | おっさんの中国一人旅終了?に伴って、もっと日本を旅します。

先日(5月11日土)家庭内ボランティア?の合間を縫て空沼岳偵察を兼ねて万計沼までの足慣らし。

本題入る前に、“パーフェクト・・・”(孫の付き合いで見だして嵌ります)の松阪桃李名前の語源「桃李不言、下自成蹊」を求めて本人による天水李広墓探訪とBSプレミアム“シルクロード美の回廊”での同じく天水麦積山石窟探訪、懐かしく見ました。

でも、カミさんや孫には“ここ・・・”でそっぽを向かれて、この気持ちを込めて2012年敦煌への旅で天水立ち寄り麦積山石窟、2016年銀川を訪ねてでの天水再訪時の写真を。

麦積山石窟

            青はラピスラズリ。

李広墓

       詳しくはその時のブログで。

さて本題空沼万計沼へ。空沼岳山頂までは登り4時間休憩を考慮すると9時登山口は無理、空沼には途中2時間地点の万計沼、さらに45分?に真簾沼があり時間に合わせた山行きを組めます。

敬老乗車券を持ってるので今回は公共交通でアプローチします。地下鉄真駒内8:15空沼二股行きに乗るため北29条西16丁目7:20?かのバスで地下鉄24条へ。

8:35空沼二股、9:00空沼登山口バス停6月から。 

採石場の中を通って、  

林道入り口の橋は新設されています。  

林道入り口の案内板。  

林道は1㌔程で4,5年前の大雨で流されて、そのまま!     

道が流される前はここがみんなの駐車場!登山届記入の小屋もあります。  

今では林道の管理も放置、放棄で補修、修復もなされていません。林道故市民のレクレーションとしての市の対応も出来ないのか・・・、この山の素晴らしさをもっと活用できないものかと。後手に回るお役所仕事!

過ってはここにもそれなりの鉄製の橋が架かっていましたが。   

今回ここの(融雪時)渡渉が今の登山仲間女性に可能か確認の意味もあって。。

案内甲板や道標なら対応できる? 

登山道に入ります。 

こんな営林署の啓蒙看板も(四,五十年たつので数字は変わってるでしょう) 

山は自然林の状態で、いい森に覆われています。           

これから木々の葉が芽吹くと森は一変!そして秋の紅葉、霊気さえ感じます。

ただし目撃情報はめったにありませんがヒグマのテリトリーであることはもちろん。わざわざ土曜日にぶっつけてみたのですが先行2人、携帯ラジオをガンガンかけ、クマよけ鈴を鳴らしながら。

出会ったら無事では済まない、目をそらさず、逃げないで、向かってきたら屈んで、首とお腹の防護姿勢でクマが立ち去るのを待つ?出来るわけありません!今日の入山は止めようかとも思いましたが・・・(それくらい近年札幌南周辺でクマが徘徊します)。

万計沼手前30分ほどで川を越えます。  

ここらあたりからまだ雪が残っています。       

沼からの落とし口   

そしてその先に沼が。  この小屋は北大山岳部の小屋 

先に万計小屋。   子供が小さいころ皆でここに泊まって、翌日登頂した思い出もあります(小屋の中には手押しポンプの流しまで)。

小屋のテラスから。  この時はラジオを切って・・・、お握り食べながら・・・。

秋の紅葉想像できた方はぜひ一度。。

小屋の前の道標。 マミス沼までには随所に倒木更新が見られます。

帰りは途中で北大山岳部?かの一団12,3名が上がってきます、今日は空沼小屋泊まりだと!。

登山口近くで兩ストックで一人年配の方が上がってきます(この時間で・・・?クマよけ無し)。

二股のバス停2時過ぎ到着!残念?バスは13:44分かで30分前に出ていました。時間もあるのでバスの便が増える常盤まで(4㌔)歩くつもりでしたので、時間気にせず下山してきました。

帰宅は4時近く、それなりの山行き。

 

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