引き続き、磯小学校の実践を紹介します。磯小学校は隠岐の島にある小規模な小学校ですが、だからこそ、こうした意欲的な実践が可能なのかもしれません。当校の永海校長先生の意欲がびんびんと伝わってきます。
考 察
・ねらいについて
自然への関心:作品を選考するには、一つ一つの作品の解釈を高めなければならない。一つの作 品が表しているものを吟味する中で、自然への関心が高まるものと思える。話し合いの中で、実際の生活場面と作品を繋げて発言したものがいくつかあった。
表現力:作品を選考するには、一つ一つの作品の表現に目を向けなければならない。話し合いの中で、作品の表現のよさを指摘する発言がいくつかあった。話し合いの中で、表現力も高まると考える。
感性:今回は、作品づくりを行ったわけではないので、感性の高まりは、よくわからない。しかし、題材とした作品を見ると、子どもたち一人一人が自分の周りに目を向け、独自の表現をするようになってきていると考える。また、作品のよさを話し合う中で感性が高まると考える。
・指導について
今回は、作品選考での助言が指導者の主な役割である。作品を選ぶ過程で、子どもたちの発言を意味づけることや子どもたちが気付いていることを引き出すことができた。
・外部講師について
講師の皆さんの「俳句大賞」発表を子どもたちは、毎回とても楽しみしている。評価が子どもたちの自信や意欲に繋がる。さらに、足りないところの指摘もありがたい。今回は、「季語は一つ」「季語の解説はしない」「句が切れる」「言葉の入れ替え」などについて、具体的に教えてくださった。 俳句がめざいているものや技法について指導を受けることは、作品の質の向上に繋がると考える。
活動の成果と今後の課題
① 活動の成果
ア 継続的な俳句作りについて
・3回の俳句教室は、充実したものとなった。俳句の日(毎月1回)は、だいたいできた。句の暗唱及び「かるた」については、準備不足で徹底できなかった。
イ 適切な評価について
・3回の俳句教室では、講師による「俳句大賞」発表が、児童の自信や創作意欲の向上に繋がった。「俳句の日大賞」は考えていたが、実行できなかった。いくつかのコンクールで 選したことは、児童の自信や創作意欲の向上に大いに繋がった。創作中や鑑賞中の指導の助言が極めて重要であることがわかった。
ウ 自然への関心の高まりについて
・児童は、回を重ねるごとに、自然に俳句創作に向かうようになった。作品も、自然を大 っぱに見るのではなく、焦点を絞った見方ができるようになった。日常においても、登校時などの会話の中に、季節の変化への言葉が多くなってきた。
エ 表現力の高まりについて
・回を重ねるごとに、短時間でできるようになった。作品づくりの中で、オリジナリティを意識するようになった。
オ まとめ
・継続的な俳句作りとその場に応じた適切な評価により、児童の自然に対する関心や俳句の現力の向上が見られた。
・俳句活動全体を通して、児童の感性を高めることを目指しているが、この点についての明らかな成果は出ていない。ただ、俳句活動を楽しむ雰囲気が出てきている。
② 今後の課題
ア 継続的な実践
・形はどうあれ、とにかく続けること。
・できれば、日常的に続け、「俳句脳」を身体にインプットする。(思考の習慣化を図る。)
イ 明確な教育課程への位置づけ
・教育課程全体の中での「言語活動」についての位置づけを明確にする。(全体計画の作成)
・1~6年の国語科年間指導計画の中に「俳句活動」を入れる。(特色有る教育活動として)
ウ 指導法の追究
・「継続的な俳句作り」
俳句を作る中で、「俳句技法」をどう指導していくか。発達段階にに応じた指導計画の作成。
・「適切な評価」
児童の思いを大切にした「創作・鑑賞指導」「添削指導」の効果的なあり方を追究する。
オ 俳句活動の可能性
・「隠岐ジオパーク」との連携 題材に気付かせる工夫。
・「学校図書館教育」との連携 語彙を増やす工夫。
・「道徳教育」との連携 感性の育成→「ものの見方・考え方」の育成
参考文献
① 本校の学校図書館にあるもの
・学習 俳句・短歌歳時記1春の名句と季語(国土社)
・学習 俳句・短歌歳時記2夏の名句と季語(国土社)
・学習 俳句・短歌歳時記3秋の名句と季語(国土社)
・学習 俳句・短歌歳時記4冬の名句と季語(国土社)
・学習 俳句・短歌歳時記5俳句の鑑賞とつくり方(国土社)
・まんが 俳句なんでも事典(金の星社)
② 指導上参考になるもの
・現代子ども俳句歳時記(チクマ秀版社)
・たのしい俳句の授業-わかる・つくる(明治図書)
・言葉の力をつける俳句単元の計画と指導(明治図書)
・教室俳句で言語活動を活性化する(明治図書)
・発見!感動!創造!どの子もできる10分間俳句(学事出版)
・俳句に見る日本人の心-人間観・自然観・社会観の育成-(明治図書)
・百句おぼえて俳句名人(角川学芸出版)
・俳句の授業・作句の技法-どう教え、どう作るか-(明治図書)
・親子で楽しむこども俳句塾(明治書院)等
③ その他
・俳句脳-発想、ひらめき、美意識(角川oneテーマ21)
・五色名句百選かるた(東京教育技術研究所)
・ジュニア版写真で見る俳句歳時記[春1春2夏1夏2秋冬新年](小峰書店)等