医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

ガン予防と硫黄系栄養素とセレンの効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-09-06 15:32:55 | 健康・病気

グルタチオンやR-α-リポ酸など硫黄を分子内に含む栄養素やセレン(ネギ類、ゴマ、魚介類などに含まれる)は、体内でガンの防御を始め、体内の代謝系に関係しています。また、グルタチオンとグルタチオン産生酵素は、健康な細胞をガン細胞に変えるオキシラジカルのオキシラジカル誘導変異を防ぐことができるレベルでは、正常細胞の抗酸化物質の存在を維持します。硫黄経路と硫黄の充足(貯え)に関しては、グルタチオンは硫黄を含むので有益です。なお、NAC(N-アセチルシステイン)は摂取すると、グルタミンとグリシンと共に体内でグルタチオンを産生することから、重要な栄養素です。

次に、セレン(セレニウム)化合物は、強力な抗発がん活性を有しています。食品のセレン化合物と硫黄化合物(グルタチオン、R-α-リポ酸など)の生化学的類似点を調べるため、selenocystamine、cysteamine、semethylselenocysteine、s-metylcysteine、selenobetaine-sulfobetaineなどが研究され、これらのセレン化合物や硫黄化合物は、ガン予防活性があり、発がん物質への暴露後の悪性腫瘍の発現の遅延と阻害だけでなく、正常細胞の悪性細胞への変異の予防においても、いろんなメカニズムを有すると、考えられます。そして、ネギ類のニンニクは、セレンや硫黄を含み、グルタチオン酵素に必要で、ネギ類野菜はガン予防に必要です。

また、ポーランドのGdansk医科大学のAlicja Kuban-Jankowska博士らの研究によると、R-α-リポ酸と還元型デハイドロリポ酸は、乳がん細胞の生存能力を減少させ、PTP1B(インスリン伝達に抑制的に働く酵素)とSHP2(発がん性のあるチロシンホスファターゼ酵素)の活性を低下させることがわかりました。このことは、R-α-リポ酸と還元型デハイドロリポ酸が、乳がんの補助療法となる可能性を有していると、考えられます。更なる研究が待たれます。

References

Dr Sircus. Cancer, Sulfur, Garlic &Gultathione. June 25, 2012

Alicia Kuban-Jankowska, et al.Anticancer Research.2017 vol.37 no.6 2893-2898

Novotny L, et al. Alpha-lipoic acid: the potential for use in cancer therapy. Neoplasma. 2008;55(2):81-6

 

 

 

 


ガンのビタミンC療法による腫瘍マーカーの改善について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-09-04 10:13:49 | 健康・病気

ガンのビタミンC療法の効果は、以前は、quality of life㋨改善(だるさや倦怠感)、それに一生ビタミンC療法を続けた場合の延命率の改善などが報告されていましたが、リオルダンクリニックのリオルダン博士らの臨床研究では、炎症マーカー、腫瘍マ―カー、それに炎症性サイトカイン値の改善が、ビタミンC点滴の効果として報告されています。

博士らは、前立腺ガンがビタミンCの点滴(50g/回、3回/週、程度)により腫瘍マーカーのPSA値とCRP値が低下したことに、注目しました。ガン患者の炎症を抑制する、ビタミンCの点滴の効果の可能性は、血清サイトカイン値のデ―タから示唆されます。リオルダン博士らは、ビタミンC点滴期間中、炎症促進サイトカイン値が低下することを証明しています。IL-2、TNF-α、それにeotaxin値は、ビタミンCの点滴(IVC)治療を受けているガン患者において、絶えず低下しています。6つのサイトカイン(IL-1α、INF-y、IL-8、IL-2、TNF-α、eotaxin)は、50gのビタミンC点滴(ビタミンCナトリウムを含む)後、実際に低下しました。

ビタミンC点滴による、IL-1α値の平均抑制率は6名のガン患者で20%、eotaxin値の平均抑制率は25%でした。なお、IL-1αは炎症のプロセスと転移の拡大を促進させ、IL-1αはガンの部位に多く見られ、発がん現象のプロセス、腫瘍の成長と浸潤、それにガンと宿主(ヒト)の相互作用のパターンに影響します。その他のカギとなる炎症性サイトカインのTNF-αは、ガンの進行において中心的役割を演じます。ガンの微細環境でのTNF-αの発現は、多くの悪性腫瘍の特性であり、それが存在することは、しばしば悲惨な予後を伴います。eotaxin-1(CLL11)は、ガン細胞の成長に影響する化学的誘引物質とリンパ球活性化物質です。多くのガンでのキモカイン受容体発現は、悲惨な予後と関係し、eotaxin-1が脈管形成とガンの転移を誘導するという、研究によるエビデンスもあります。

リオルダン博士らの研究から、サイトカイン値の検査と共に、ビタミンC点滴を受けたガン患者からのデータの分析では、炎症が低下し、この炎症の低下は、PSA値の低下と関係することが示唆されます。これらのことから、ビタミンCの点滴と共に、プロバイオティクスによるガン患者の腸内環境の改善による免役能の改善、グルタチオン、αーリポ酸など抗酸化栄養素によりガン患者の症状を改善することも、ビタミンC療法と共に重要と、筆者は考えています。このことに関しては、ビタミンC点滴を実施している医師と相談下さい。

References

Joyce JA, et al. Microenvironmental regulation of metastasis. Nat Rev Cancer.2009,9:239-252

Nina Mikirova, et al. Effect of high-dose intravenous vitaminC on inflammation in cancer patients. Journal of Translational Medicine.2012,10:189

 

 

 

 


ガンのビタミンC 療法での炎症マーカーの改善について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-09-03 14:15:02 | 健康・病気

ガンのビタミンC療法は、数十年前にCameron博士、Newbold博士、それにHoffer博士、その他の医師などが実施し、効果を報告しています。そして、彼らに続いて、カンザスのリオルダンクリニックのリオルダン博士が、その効果を研究しました。博士は、ビタミンCをガン患者に大量点滴し、ビタミンCの血中濃度を高めることにより、がん細胞が生存しにくい環境にすることにより、その効果が発揮されたと、報告しています。そして、ガン患者のquality of life、延命率の改善、それに炎症指数の改善が報告されています。博士の臨床研究では、炎症マーカーとしてC-反応性たんぱく質(CRP)値を調べ、45名のガン患者のうち35名は、ビタミンC点滴前にCRP値が10mg/Lより高く、炎症が、ガン患者に広く見られる問題点であることが示唆されます。

CRP値の上昇は、ガンの悲惨な予後を暗示させるマーカーであることが、研究により示されています。リオルダンクリニックのガン患者の76±13%において、点滴前に比べてCRP値が下がり、ガンの改善が認められました。また、急激なCRP値の上昇が見られたガン患者は、ビタミンC点滴により28名から14名に減少しました。

さらに、ビタミンC点滴治療の間、ガン患者のCRP値の低下は、その他の腫瘍マーカーの低下と相互関係があることがわかりました。このことは、血漿CRP値が、膀胱がん患者の血清PSA値と強い相互関係があり、他の研究でも同様でした。リオルダン博士の研究では、前立腺の感染と炎症は、前立腺に特異的な血清抗体値を高める可能性が有ります。さらに、血清CRP値を測定することは、血清PSA値の上昇を伴う前立腺がん患者のガンが、良性か悪性か区別するのに役立つ可能性が有ります。

炎症は前立腺ガンの原因で、慢性の炎症は、前立腺ガンの化学的予防と治療への治療指針を与えるものです。炎症のプロセスは、組織学的には良性の前立腺増殖の進行に関係しています。急性と慢性の炎症性浸潤は、前立腺ガンの男性患者の前立腺組織で見られ、より高い炎症値は、ガンで大きくなった前立腺で見られます。これらの研究から、ガンの診断と炎症マーカーは深い関係にあり、ビタミンCの点滴の効果を判定する際の参考になります。したがって、ガン全般に言えることですが、炎症を抑制する栄養成分を常日頃摂取することは、予防のみならず、治療の補助的因子になるので、炎症を抑えるビタミンCやその他の抗炎症性栄養素は、ガン予備軍やガン患者にとって必須の栄養成分になると、考えます。

References

Nina Mikirova, et al. Effect of high-dose intravenous vitaminC on inflammation in cancer patients. Journal of Translational Medicine.2012, 10:189

McSoriey MA, et al. C-reactive protein concentration and subsequent ovarian cancer risk. Obstel Gynecol. 2007, 109:933-945

 

 

 

 

 


糖尿病による睡眠時無呼吸症候群について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-09-01 12:53:55 | 健康・病気

Deepak khandlmal 博士やLyer SR博士によると、二型糖尿病、糖尿病予備軍、それに高齢者は、少年時代に比べて、不眠症などになり、睡眠の質が低下していると、感じています。睡眠の質の低下や睡眠時無呼吸症候群には、その根底の原因に二型糖尿病での高血糖や酸化コレステロールによる動脈硬化症が関係している場合が多いと、報告されています。

体のシステムは、その適切な機能維持のために、良質の睡眠と適切な睡眠時間を必要としています。体は、いろんな睡眠障害により悪い影響を受けます。睡眠時無呼吸症候群は、グルコース代謝の異常が深く関係しており、ヒトは、栄養状態の悪化や老化プロセスにより、グルコース代謝がうまくいかず、高血糖状態や終末糖化物質の産生をもたらし、睡眠障害や老化、それにメタボリック症候群を発症します。これらに対する対策として、食事療法、腸内環境の改善、栄養サプリメントの補給、それに適度な身体活動、ストレスの改善などが管理栄養士により推奨されています。

睡眠時無呼吸症候群と二型糖尿病の間には関係が有り、睡眠不足㋨影響は、糖尿病の悪化に影響し、REM睡眠不足は、肥満の発症に関係しています。インスリン抵抗性と睡眠時無呼吸症候群の間には密接な関係が有り、二型糖尿病による脂肪肝や多嚢性卵巣症候群での睡眠時無呼吸症候群の原因と考えられます。また、持続的に気道内圧を高めておくことによる睡眠時無呼吸症候群の治療では、インスリン感受性を高めると、報告されています。糖尿病患者は睡眠障害を有する人が大変多く、それがいろんな病気の素地を作ります。また、脳と腸は相互に連携しているので、プロバイオティクスやプレバイオティクスで腸内環境を改善し、ビタミン合成能の弱った腸をカバーするため、ギャバやグリシン、マルチビタミン、必須ミネラルの補完も必要かと、考えています。更なる研究が待たれます。

References

Deepak Khandelmal, et al. Sleep disorders in type2 diabetes. Indian J Endocrinol Metab.2017 Sep-Oct;21(5):756-761

Lyer SR.Sleep and type2 diabetes mellitus-clinical implications.J Assoc Physicians India.2012 Oct;60:42-7