医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

炎症性腸疾患に対する生姜の作用について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-09-14 11:14:11 | 健康・病気

近年、食生活の変化や高齢化などにより、腸内環境が悪化し、大腸炎や大腸がんなど腸の疾患が増えています。そこで、その対策として、食事療法が実施され、納豆やヨーグルト、漬物など発酵食品による腸内環境の改善(乳酸菌やビフィズス菌優位の腸内環境)が推奨されています。なお、炎症性腸疾患(IBD)は、小腸や大腸に炎症と潰瘍をもたらす疾患で、自己免疫やある種のウイルス、細菌も関係していると、報告されています。

Zhang M博士らの研究によると、生姜のナノ粒子やその根茎は、IBDの症状を軽減し、再発の頻度を減らす可能性があります。症状はいろいろですが、現在、pentasa、tetracycline、trichozole,プロバイティクスサプリ、それに腸炎の食事療法などで寛解していますが、これらに加えて、生姜の根茎を擦ったものを味噌汁に入れたり、他の料理に使うことも一案です。なお、生姜の根茎は、数千年にわたって胃腸の不調、下痢、心臓のトラブル、それに関節炎など炎症性の症状にハーブ療法、あるいは漢方療法として用いられ、IBDに対する効果も研究され、報告されています。

2008年の"Journal of Entoropharmacology"誌によると、潰瘍性大腸炎に罹った実験動物に生姜の抽出物を与え、pentasaなどと同等の効果が見られたと、報告されています。生姜は、ニンニクと比べると副作用が少なく、比較的安全な食品なので日常の食生活に取り入れ、IBDや大腸がんを始め、いろんな疾患の予防・治療に用いたいものです。なお、胆石や腸の出血のある人、ワッファリンの投与を受けている人は、生姜の摂取は勧められません。過剰摂取は胃腸に負担をかける場合があります。加熱処理した生姜は安全ですが、薬効が弱い場合があります。また、生姜を日々の食事に取り入れることも一案です。

References

Joanne Marie. Is ginger root helpful for colitis?LIVESTRONG.COM.Sep12,2011

Yuette Brazier.Ginger nanoparticles show promise for inflammatory bowel disease. Medical News Today.19 August 2016

Zhang M. Edible ginger-derived nanoparticles:A novel therapeutic approach for the prevention and treatment of IBD and colitis-associated cancer. PubMed. 2016 Sep; 101:321-40