医科栄養学・栄養医学ブログ

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強迫性障害に対するイノシトール、天然タウリン、N-アセチルシステインの効果について 栄養医学ブログ

2018-09-24 16:41:05 | 健康・病気

強迫性障害は、患者が多い精神疾患で、その始まりは、10-24歳の間の思春期に通常発症し、15歳までに全症例の三分の一が発症し、治療がむつかしく、本人も生涯苦しむことになる、と報告されています。また、患者の半数以上が治療を受けていないようです。さらに、Sanda M .Meier博士らの研究によると、統合失調症と強迫性障害の間には関連があり、強迫性障害の既往歴は、後年の統合失調症、統合失調症スペクトラム障害の発症の増加と関連し、両親に強迫性障害の診断歴がある場合、その子の統合失調症、統合失調症スペクトラム障害のリスク増大に関連があり、強迫性障害、統合失調症、統合失調症スペクトラム障害は、多分、共通の原因がある可能性が報告されています。そうだとすれば、強迫性障害の治療だけでなく、平行して、ナイアシンアミド(ビタミンB3)などの統合失調症に有効な栄養素の補給も続ける価値があると考えます。新しい研究なので、追試が待たれます。

強迫性障害は、遺伝子、食事、長期の持続的ストレス、神経毒性物質、それに炎症などの因子が複合的に関係し、神経伝達物質のセロトニンの合成が異常になることが関係しているという、報告もあります。神経伝達物質合成へのアミノ酸トリプトファンを利用することの有効性は、ある消化酵素に依存しており、その活性は、塩酸に依存し、十分なアミノ酸が補給されなければ、神経伝達物質の合成が影響を受けます。特に、トリプトファンはセロトニン合成に必要です。セロトニン合成は、トリプトファンとナイアシン(ビタミンB3) ,ビタミンM(葉酸)、ビタミンB6、亜鉛、Mgなど栄養素、それにセロトニン値に依存しており、そのどれかが欠如しても、セロトニン合成に問題をもたらします。亜鉛は、デカルボキシラ-ゼ活性と5-HTPのセロトニンへの転換に必要で、また、Mgは、そのことに必須な役割を演じ、トリプトファンのセロトニンへの転換プロセスを促進させます。加えるに、葉酸はセロトニンの神経伝達に重要な役割を演じます。さらに、Nathan Gray博士によると、強迫性障害の子供では、血清ビタミンB12値、ビタミンD値が低く、ホモシステイン値が高いことを証明しました。したがって、ビタミンB12やビタミンDの補給も症状改善に結びつくのではないか、と考えられ研究も増えています。また、Kariuki-Nyuthe C博士らの研究によると、グルタミン酸の脳内の高値が強迫性障害の病因の一つであり、N-アセチルシステイン(NAC)を2,000mg~3,000mg/日経口投与を12週続けたところ、有意に症状が改善したという報告もあります。これはNACが、グルタミン酸の脳内過剰濃度を減少させ、グルタミン酸の神経毒性から脳を守る作用による、と考えられております。

ところで、Du Montcel博士、Mathias Zink博士によると、一般人に比べて、統合失調症患者における強迫症状有有病率は高く、統合失調症と強迫性障害の併存が見られる、と報告されており、両疾患の同時並行的治療の必要性があります。 

強迫性障害の米国の自然医などの処方は、5-HTP、Mg、ビタミンC、ビタミンB6、葉酸、イノシトール(IP6の構成成分)、それにタウリンなど生命に必須な補因子(栄養素)を含む処方により、セロトニン合成をうながします。なお、タウリンは、交感神経系システムのトーン(tone)を維持し、セロトニン活性と再吸収を調整します。イノシトールは、セロトニン受容体の感度を高めることから、天然タウリンとともに、自然医により、よく処方されています。また、ナイアシン、亜鉛などの活性化と吸収に利用される5-HTPの量を減らすことにより、5-HTPの有効性を高めます。これらの栄養素は、セロトニン産生を最適化し、セロトニンの神経伝達の異常の一因になるその欠乏を正常なセロトニン血清値に回復させるため、協働的に効果的に作用します。そして、イノシトールや天然タウリンをメインに、上記、栄養素群を併用摂取することにより、これらの栄養素が協働的にセロトニンの神経伝達の異常を改善すると考えられますが、更なる研究を期待しています。

 

References

Prederick Penzel.WebMD Inositol and OCD. Suffolk psychological Services.15 April 2011

James M. Greenblatt,MD.Integrative therapies for obsessive compulsive disorder.Hanslaboratory.com. 2017/7/10

Common vitamins and supplements to treat OCD. WebMD.Vitamins &Supplements Center.

Nathan Gray. Dietary management of OCD. NUTRA. 18 Aug 2017

Kariuki-Nyuthe C,et al. Curr Opin Psychiatry.2014 Jan;27(1):32-7

Clin Psychopharmacol Neurosci.2015 Apr;13(1):12-24

K Payday, et al. N-acetylcysteine augmentation therapy for moderate-to-severe obsessive-conpulsive disorder. Clin Pharm Ther.2016 April ;41(2):214-9

Du Montcel, et al. Obsessive compulsive symptoms in schizophrenia. Current Psychiatry Reports.21,64,2019
Mathias Zink.Comorbid obsessive-compulsive symptoms in schizophrenia. Adv Med.2014.Jun11

Sanda M, Meier, et al. JAMA psychiatry. 2014, Sep3

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