医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

強迫性障害とイノシトール、天然タウリンの作用について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-09-08 10:33:59 | 健康・病気

強迫性障害は、うつ病、統合失調症などと並んで、大変ポピュラーな精神疾患と言われ、英国では約100万人ほどその患者がおり、、一般的に、50人に1人の割合で、生涯のどこかで発症、特に思春期の発症が多いと言われています。原因として、遺伝や問題ある食生活、長期の持続的なストレスなどが複合的に関係し、発症すると言われています。そして、その病態生化学、病態生理学的原因には、神経伝達物質のセロトニンの合成障害、受容体感受性の低下が関係していると、報告されています。また、放射線医学総合研究所の松本良平博士らの研究によると、最新のPETとPETプロ―プによる研究で、強迫性障害の脳内の大脳外側部位(島皮質)において、神経細胞から放出されたセロトニンを細胞内に取り込むたんぱく質(セロトニントランスポ-ター)が減少していることが証明され、今まで明確な原因が分からなかった強迫性障害も、その原因が解明されたと、考えます。

セロトニンの合成障害とその欠乏、受容体感受性の低下は、これらに関係した栄養素の枯渇が関係している可能性があります。また、ある種の栄養素、必須ミネラル、それにアミノ酸(トリプトファンなど)はセロトニンの神経伝達に大変影響しています。5-HTP、ナイアシン(ニコチン酸、ニコチン酸アミド、タバコのニコチンとは無関係)、ビタミンB6、葉酸、ビタミンC、Zn、Mg、イノシトール、プロバイオティクス(善玉菌)、それにタウリンなど栄養素は、セロトニン合成に重要です。それゆえ、これら栄養素群の、治療効果が認められる投与量の摂取は、強迫性障害の補完治療上のアプローチになるはずです。

James M Greenblatt博士(医師)によると、イノシトールの比較対照試験では、強迫性障害、うつ病、パニック症候群、それに過食症では、イノシトール治療で生活を変えるほどの改善を示しました。特に、強迫性障害の子供では、効果が顕著でした。例えば、社会的引きこもりの19歳の子供は、不潔を強迫的に恐れ(不潔強迫)、イノシトール治療で別の子供に生まれ変わりました。同様に、イノシトールと5-HTPで治療したPJさんは、強迫性障害の症状の著しい改善を示しました。また、副作用は認められませんでした。博士は、イノシトールを3g/日、3回/日を強迫性障害患者に投与しています。この投与量と回数では、腹部膨満感と吐き気など副作用は最小と、報告されています。

次に、セロトニン産生と神経伝達の改善は、セロトニン値を高め、強迫性障害(OCD)の症状の改善に不可欠です。しかしながら、神経伝達物質の過剰な活性化を防ぐことも考慮されなければいけません。栄養素のタウリンはギャバの前駆体で、抑制神経伝達物質です。抑制因子のギャバは、正常なセロトニン値と正常な再取り込みを維持するのに役立ちます。ある研究では、4 週間、高天然タウリン食を与えられた動物は、うつ症状の抑制が見られました。さらに、マウスの研究では、不安感テスト前の30分に、タウリンが投与され、不安感が緩和されました。タウリンは、直接的にセロトニン産生をターゲットにしていませんが、その阻害作用は、強迫性障害のような不安障害に伴う、追いつめられた考えを軽減できる可能性があるので、上記、栄養素らと併用する価値はあると、考えられます。なお、タウリンは、通販で米国から純度100%粉末(pure powder)が入手可能です。更なる研究が待たれます。

また、Du Montcel博士、Mathias Zink博士らによると、統合失調症患者に併存する強迫症状が認められる症例が多く見られる、と報告されており、この対策として、統合失調症の栄養医学的治療(ナイアシンアミドなど)と共に、強迫症状の栄養医学的治療も同時に実施されることが検討され、このブログの前半のビタミン・ミネラル栄養療法が、これに該当します。

References

Naturopath. OCD and Natural therapies. SuperPharmacy.November 27.2017

James M.Greenblatt. Integrative therapies for obsessive compulsive disorder Mental Health.JamesGreenblattMD.com. 2017/7/10

Shabeen E Lakhan, et al. Nutritional therapies for mental disorders. Nutrition Journal.2008;7:2

Fux M. Inositol treatment o Med. 20f obsessive-compulsive disorder. Am J Psychiatry. 1996 Sep;153(9):1219-21

Du Montcel(2919). Obsessive compulsive symptoms in schizophrenia. in schizophrenia. Current Psychiatry Reports. 21,64
Mathias Zink. Comorhid obsessive-compulsive symptoms in schizophrenia. Adv Med.2014,Jun11