医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

糖尿病腎症のアルブミン尿対策とビタミンB1の効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-06-21 23:06:13 | 健康・病気

糖尿病腎症になるとステージが上がるに従って、アルブミン尿が見られますが、その対策として血糖値やヘモグロビンA1cの管理が求められています。今回は、ビタミンB1やその誘導体がアルブミン尿に有効という研究が数多く発表されましたので、概略を紹介したいと思います。

ビタミンB1(チアミン)は、糖尿病の微量アルブミン尿を減らします。ビタミンB1(VB1)の大量投与は、実験的糖尿病において、微量アルブミン尿の進行を防ぐことが明らかになりました。微量アルブミン尿は、腎臓が尿中へ微量のアルブミンを漏らした時現れ、腎臓の糸球体の機能不全の兆候を示した時、現れます。そのことは、腎臓の障害とアルブミン尿症の前兆のマーカーとなっています。

新しい研究では、VB1の補給をすると、ニ型糖尿病患者の微量アルブミン尿を遅らせるかどうかを、研究者は調べました。微量アルブミン尿が出る40名の二型糖尿病の被験者(男性21名、女性19名)において、20名づつ2つのグループに被験者を無作為に分け、彼らはVB1かプラセボを摂取しました。この研究はニ重盲検試験であり、被験者は、毎日、3ケ月間、2ケ月の洗い出し(washout)期間を設け、VB1の100mgカプセルを一日に3個摂取しました。

腎・血管機能障害のマーカーとVB1の血漿濃度と共に、尿中アルブミン排泄(UAE)を測定し、UAEは基準値と比較して、3ケ月、VB1療法を受けた糖尿病患者では、著しく減少しましたが、プラセボ摂取の糖尿病患者では、UAEの当然の減少は認められませんでした。その上、VB1摂取グループでは、2ケ月のウオシュアウト(洗い出し)期間中でもUAEは減少し続けました。また、副作用は認められませんでした。

VB1の大量投与は、ニ型糖尿病患者の微量アルブミン尿を退縮さすことが、明らかになり、初期のスタージの二型糖尿病に対し有効で、糖尿病予備軍に対しても可能性が有ります。また、AGEs(終末糖化産物)の増加は、VB1やVB1誘導体(benfotiamine)療法により抑制されたという、研究も有ります。しかし、fructosyl-lysineの増加は、観察されませんでした。また、血漿糖化による内転障害は、VB1により抑制されました。糖化や酸化、それにニトロ化による内転障害によるAGEsの尿中排泄は、糖尿病の血清では27倍まで増加しました。これらの増加は、VB1やbenfotiamine療法により抑止されました。

ビタミンB1(thiamine)とVB1誘導体(benfotiamine)は、蛋白質の糖化による損傷に対し、蛋白質を保護します。糖化、酸化、それにニトロ化により生じた、蛋白質の損傷を減少さす、VB1とVB1誘導体(benfotiamine)の活性を、エセックス大学は報告しています。その研究では、糖尿病モデルのラットが用いられ、損傷部位と微小血管の合併症に伴った、腎症の進行を調べました。benfotiamineが脂溶性のため、thiamineより、もっと生体利用性が高いが、VB1は脂肪組織に入ることができない水溶性であるので、抗糖化作用を有しています。また、終末糖化産物(AGEs)が、糖尿病だけでなく、いろんな疾患と関係しているという新しい研究が発表され始めていますが、ビタミンB1はAGEsに対して、強力な戦術になるのではないか、と考えられます。新しい研究を期待しています。なお、これらは、大量投与になりますので、腎臓がそれに耐えられるか、ステージや体質(アレルギー体質か否か)により違いが有ると思われ、危険も伴う可能性があるので、いきなり大量投与するのではなく、徐々に増やすとかすることなど、腎臓・糖尿病内科医師や臨床管理栄養士(clinical nutritionist )に相談下さい。

ところで、糖尿病による慢性腎臓病と心臓病の意外な関係では、尿たんぱく質が出ていると、腎不全に加えて、心筋梗塞、心不全や脳卒中になりやすいようです。また、糖尿病による隠れ腎不全の人は、微量アルブミン尿の検査が、尿たんぱく、尿クレアチニン検査に加えて必要です。そうすることにより、隠れ腎不全の人も、尿たんぱく、尿クレアチニン値が陰性でも、腎不全を早く発見することができます。

 

References

AGE-reducing nutrients could save your kidneys: Will Block, Life enhancement

Vitamin B1 reverses kidney damage in diabetes, so why won't doctors recommend it?:
Natural News, December 29. 2008

Thiamine(VB1): Mayo Clinic. com

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