医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

糖尿病による慢性腎不全対策と補酵素Q10の効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-06-12 15:34:25 | 健康・病気

糖尿病の合併症による初期の腎不全では、頻尿、不眠、足のこむら返り、腰痛、心不全(息苦しさ)など、いろんな症状をもたらすことが多いと、報告されています。また、腎臓機能の低下が関係した心臓機能の低下(ポンプ力の低下)も報告されています。なお、糖尿病による隠れ腎不全や隠れ心不全の患者が多くいますが、このような症状が出たら、できるだけ早く臨床管理栄養士や腎臓内科と糖尿病内科の両方に詳しい医師に相談下さい。

補酵素Q10は、糖尿病の人々の心臓の健康と血糖値を改善し、高血圧を管理するのに有益である、と研究では報告されています。一日に2回、Q10をそれぞれ100mg摂取し、ヘモグロビンA!cを改善したと、研究は示していますが、更なる研究が増えることが必要、と考えます。

Singh RB博士らの研究では、少なくとも12週、衰弱性腎不全の病歴を有する慢性腎不全患者(血清クレアチニン値>5mg/dl, 平均年齢、48歳)の97名は、ニ重盲検テスト形式で、水溶性Q10(経口、一回60mg、1日3回)もしくは、プラセボ(偽薬)を12週にわたって摂取するよう、無作為に割り当てられました。

研究の開始時、血液透析(透析)を受けていた45名の患者は、尿の回数が増えたり、血清クレアチニン値が2mg/dl以上の値が減少した場合には、透析の回数を減らしたり、透析を中止するよう、勧められました。透析とQ10の摂取を受けている患者に於いて、平均血清クレアチニン濃度は、9.5から6.7mg/dlまで減少し、平均BUN(血中尿素窒素値)は、88.2から79.8mg/dlまで減少し、平均クレアチニンクレアランス(清掃率)は、40から54.9ml/dlまで増加し、24時間尿は、1,300から1,920mlまで増加しました。腎機能は、プラセボを摂取した透析患者では悪化し、Q10摂取グループとプラセボグループでの変化の違いは、著しいようでした(p<0.001に対しp<0.01)。

プラセボグループに関するこれらのパラメータのそれぞれに於いて、著しい改善は、Q10で治療した非透析患者で見られました。透析を受けた患者数は、Q10グループでは、21名から12名まで減少し、プラセボグループでは24名のままで、変化しませんでした(p<0.02)。Q10を摂取した患者の81%は、治療に対し有効でした。なお、当方の少人数調査でも、Q10の300mg/日の経口摂取で、糖尿病合併症である初期の腎機能低下による頻尿、不眠、足のこむら返り、腰痛、息苦しさ、などの改善を認めています。更に追調査をしたい、と考えています。なお、Q10の摂取に関して、心不全(心臓喘息)の場合は、300mg/日程度の大量摂取でないと効果が出ない場合が有りますが、腎不全を併発して重症の場合は副作用が出る可能性があるので、くれぐれも腎臓内科、および糖尿病内科の医師に相談して下さい。

なお、糖尿病による腎不全対策には、補酵素Q10療法だけでなく、食事療法、ビタミンB1療法など、医学と臨床栄養学が結び付いた総合的対策が必要と考えられ、その両方の分野に長けた研究・臨床人材が必要です。また、食事療法では、脂肪は魚油主体に、水溶性ビタミンは多めに、脂溶性ビタミンは、重度の腎不全の場合、摂取量に注意して、Ca、Mg、動物性鉄は多めに、そして、カリウム、食塩(7g/日以内)、蛋白質、カロリー(1400カロリー程度)の制限が必要で、塩分の少ない和食中心の食生活を実行し、塩分の多い加工食品はできるだけ摂取しないことが重要です。これらについては、臨床管理栄養士(clinical nutritionist )に相談することが、必要と考えられます。また、悲惨な糖尿病とその合併症である隠れ腎不全、隠れ心不全に特化したブログを、今後ともupしていきたいと考えています。

 

References

Randomized , double-blind, placebo-controlled trial of coenzyme CoQ10 in patients with
end-stage renal failure: Singh RB, et al. J Nutr Environ Med 2003; 13: 13-22

81% positive responce to coenzyme Q10 treatment for chronic kidney failure: Health News and Research

Coenzyme Q10: University of Maryland Medical Center