医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

アルファーリポ酸の主な作用と糖尿病対策について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-06-20 19:15:57 | 健康・病気

今や、ガンと並んで人類を悩ませている糖尿病による心不全、腎不全は、いろんな分野が連携して、統合的に予防・治療手段を開発することが、喫緊の課題となっています。今回は、αーリポ酸(チオクト酸)に特化して、難題の糖尿病対策を考えていきたいと、思っています。

糖尿病は、活性酸素の産生の増加や抗酸化機能の悪化、糖化蛋白質(AGE)の増加などを伴っている体内代謝障害による病気です。重要なことは、酸化ストレスが糖尿病による心臓血管病のリスクと関係があることです。αーリポ酸(LA)は、dithiol化合物として自然界に存在し、細胞内のミトコンドリアのエネルギー産生酵素の必須補助因子(微量栄養素の一種)として知られています。LAは、異なった薬理学的性質と抗酸化作用を有する、大変重要な微量栄養素です。LAは、薬理学的には、血糖のコントロールと多発的神経障害を改善し、重金属毒に伴う毒性を、
効果的に減少させます。このような性質により、糖尿病の治療や重金属汚染に対するキレート療法などに用いられています。

また、αーリポ酸(レバー、ほうれん草、ブロッコリー、トマト、ニンジンなどに含まれる体内酵素の補助因子)は、直接、フリーラジカルを消去するので、糖尿病の治療だけでなく、ガンのビタミンC点滴療法でも併用されて利用されています。その他に、遷移金属イオンをキレートし、細胞間基質のグルタチオンとビタミンC値を高め、それらの損失に伴った毒性を防ぎます。更に、ビタミンCや補酵素Q10を再活性化するなど重要な機能を有しています。これらのことから、糖尿病や心臓病、ガンの治療に多用されています。これらの多様な作用は、LAが生理学的、薬理学的な多くのメカニズムにより、これらの疾患に作用することを、示唆しています。なお、LAが糖化蛋白質の産生を抑えるかどうかの研究も米国の大学で研究中です。更なる研究が期待されます。

LAの体内の生合成は年齢と共に減少し、健康を損なった人々でも減少しています。従って、不健康な人や高齢者は意識的に補給することが必要と、考えられます。次に、特に、一型糖尿病と二型糖尿病に関係したα―リポ酸の効果が、米国の研究機関で再調査されています。これらの糖尿病患者の血糖コントロール、インスリン感受性、酸化ストレス、末梢神経障害などに関連したLAの利点の可能性が、注目されています。今までのところ、LAの利点は、糖尿病性末梢神経障害に対する効果のようです。

糖尿病患者において、LAを600~1,800mg/日、4週間、経口摂取すると、インスリン感受性、および糖代謝の改善が認められ、800mg/日では心性自律神経障害がわずかに改善されたという、報告も有ります。なお、日本人は、欧米人に比べて、遺伝的体質によりLAに対し低血糖発作などの副作用が出やすい人が4~8%ぐらいいるので、それに該当すると思われる糖尿病患者は、体質に合うかどうか調べてください。副作用の出にくい体質の糖尿病患者は、1,800mg/日までは著しい副作用が出ないようです。なお、糖尿病による重い腎不全を発症している方は、少量しか摂取できないか、全然摂取できないかもしれません。重い腎不全は、薬物療法や栄養サプリメント療法が無理です。これらに詳しい腎臓・糖尿病内科の医師に、一度、相談下さい。

References

Alpha-lipoic acid supplementation and diabetes: Singh U,et al. Nutr Rev. 2008, Nov, 66(11): 646-57

Alpha- Lipoic Acid,Good News for Diabetics: Life enhancement

Treatment of diabetic. polyneuropathy with the antioxidant thioctic acid : a two year multicenter randomized double-blind placebo-controlled trial. Alpha lipoic acid in diabetic
neuropathy. : Relijianovic M.,et al, Free Radic Res. 1999 sep; 31(3): 171-9

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