医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

慢性うっ血性心不全対策と補酵素Q10の効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-06-06 15:01:03 | 健康・病気

糖尿病が原因の、腎臓機能の低下による夜間尿や、腎臓機能低下が関係した心臓機能の低下による心不全(息苦しさなど)に苦しんでいる人は、多数いると報告されています。これらの苦しんでいる人々に、栄養素である補酵素Q10(ビタミン、栄養素)が福音をもたらす、という研究がありましたので、ここに紹介します。ちなみに、Q10は心臓のポンプ力を強めるだけでなく、糖尿病患者のヘモグロビンA1c,血糖値、血圧を改善することが、研究により明らかになっています。なお、軽い腎臓病などでQ10が体に合わない人がいますが、Q10に詳しい専門医に相談下さい。

ナポリ・フェデリコ大学のMorisco C博士らの研究では、補酵素Q10で治療したうっ血性心不全患者の心臓機能の改善では、うっ血性心不全は、細胞内のミトコンドリアの機能不全とそのエネルギー不足を特徴としているので、それをQ10投与により改善できるという仮説を、彼らの研究は支持しています。しかし、うっ血性心不全患者の主たる臨床上の問題は、たびたびの入院の必要性、生命を脅かす不整脈の高頻度の発症、肺性浮腫、それに合併症などです。したがって、慢性うっ血性心不全(ニューヨーク心臓病協会機能段階3と4)で従来の治療を受けている患者において、これらの効果に及ぼすQ10の長期治療の影響を、彼らは調査しました。

患者らは、プラセボ(人数322名、平均年齢67歳、30~88歳まで)、もしくはQ10(人数319名、平均年齢67歳、26~89歳まで)を2mg/kg/日、一年間投与し、ニ重盲検テストを実施しました。心不全の悪化のため入院を必要とした患者数は、対照グループ(人数118名、P<0.001)に比べ、Q10で治療したグループ(人数73名)において人数において更に減少していました。同様にして、肺性浮腫と心臓性喘息の発症は、プラセボグループに比べて、対照グループでは減少しました(20対51と97対198、両者P<0.001)。また、還元型Q10を高齢心不全患者に200mg/日以上を摂取してもらい、心不全に伴う症状が改善し、QOLが顕著に改善したという複数の報告もあります。

この結果から、従来の治療にQ10を加えることが、慢性うっ血性心不全患者の重大な合併症の発症や、心不全の悪化による入院期間を著しく減らすことが、証明されました。更なる研究を重ねることを期待しています。なお、日本でも以前はQ10は、医薬品でしたが、現在、米国の影響で栄養サプリメント(栄養補助食品)として販売されています。そして、副作用に関しては、Q10に詳しい薬剤師や管理栄養士(registered dietitian)、それに、医師に相談してください。また、、90mg/日程度は安全と考えられますが、300mg/日以上は、糖尿病による腎不全を併発している人などは、医師、臨床管理栄養士など、これらに詳しい専門家に相談することが必要と、考えられます。

References

Effect of coemzyme Q10 therapy in patients with congestive heart failure:a long-term multicenter randomized study. Morisco C, Clin Investig. 1933; 71(8 Suppl): S134-6.

Coenzyme Q10:University of Maryland Medical Center

Coenzyme Q10- Topic Overview:Heart Failure Health Center, WebMD, June 29, 2011

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