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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 755 巨人の内情 ②

2022年08月31日 | 1977 年 



" 老齢ジャイアンツ " に過酷な夏場
次は野手陣に目を移してみよう。主砲の王選手。依然としてエンジン全開とはいかない。一時期は調子を上げて、いよいよホームラン量産態勢かと思われたが1本出ても2本・3本と続かない。挙句の果てに対広島12回戦で8年ぶりにセーフティーバントを試みるようでは王本来の姿を見せるにはまだまだ時間がかかりそうだ。昨年までなら本塁打王争いは田淵選手(阪神)だけをマークしていればよかったが、今年は田淵の他にブリーデン選手(阪神)や田代選手(大洋)にも目を配る必要になった。「早く追いつきたいね。麻雀だって初めに大きくマイナスすると後で取り返すのが大変だからね」と王が後楽園球場の選手サロンでポツリと漏らした一言には実感がこもっていた。

王と同じ37歳の張本選手も年齢からくる衰えは隠せない。ヒットを打つ技術は球界屈指の卓越したモノを感じさせる。だが大抵は試合終盤の7回くらいから二宮選手が張本に代わって守備固めに入るので、張本の負担は他の選手と比べれば少ない筈だが移籍1年目の昨季より身体のキレがないのは体力面の衰えとしか言いようがない。35歳の土井選手もかつてのシャープな動きは消え失せた。打撃は粘りが無くなり、守りでは守備範囲が全盛期より左右1m程狭くなった。リンド選手の緊急入団で一時は対抗意識で盛り返したが長続きはしなかった。そのリンドも日本特有の梅雨の湿気に対応できず、数日間だったが入院する羽目になった。

苦しむ選手がいる一方で三塁にコンバートされて2年目の高田選手は開幕から好調を維持している。が、もともとは長距離打者ではないのに球を捉えるポイントが良くて一時は王を上回る本塁打量産ペースとなった。それが災いし大振りする悪い癖が見られるようになり、本来のコンパクトな打撃スタイルを忘れて徐々にだが打率が落ち始めている。「最近はちょっと疲れが取れなくて…」と高田本人も違和感を訴えるようになった。今季は三塁手だけでなく外野手とのかけ持ちを強いられていることも余計に疲労をきたす一因になっている。

25歳の河埜選手と29歳の柳田選手を除いたレギュラー陣は全て30歳以上。ライト投手が登板した日の先発メンバーの平均年齢はなんと32歳。一般のサラリーマンならこれから働き盛りの年齢だが、体力勝負のプロ野球選手としてはピークは過ぎている。それだけに梅雨から暑さが本格的になる夏場にかけて " 老齢ジャイアンツ " ではこれまでのような快進撃からは割り引いて考えねばなるまい。開幕からせっせと貯め込んできた貯金を取り崩していかなくなる場面も覚悟しておかなければなるまい。


ヤング4人組は揃ったけれど…
この難局を乗り越えるには、一つはベテラン勢のスタミナ維持ともう一つはヤングの台頭である。ベテラン選手はそれぞれが対策法を持っている。王は走り込みを始めたし土井は朝8時に起床し朝食後にもう一度眠って体力を温存しているという。柴田選手は冷たい飲料水の飲みすぎで胃腸を弱らせるのが疲れを倍増させると考えて自宅からポットに熱いほうじ茶を入れて球場に持参している。各選手が自分なりに工夫をして夏場を乗り切ろうとしている。しかし疲れた身体を回復させる最良の方策は何といっても休養である。それにはベテラン選手にとって代わる若手の台頭が不可欠である。長嶋監督がキャンプから若手育成に心血を注いだのもその為だ。

故障で二軍落ちした浅野投手に代わって小俣投手が念願の一軍入りを果たした。これでキャンプの時から注目を集めていた西本・田村・定岡・藤城投手らとの " ヤングクインテット " が揃った。なるほど若手投手は成長してはいる。だが先発ローテーションに加わるには未だ力不足は否めない。日程の関係で今季は9連戦が多い。どうしても駒不足になる。そんな時は若手投手にとって千載一遇のチャンスだが、なかなか結果を残せないでいる。長嶋監督も若手投手を起用する際は言葉は悪いが " 捨てゲーム " として負けを覚悟し、味方打線が大量得点をして勝てれば儲けモノと考えているフシがある。

奮起が待たれる投手陣とは対照的に若手野手陣はグングンと力をつけてベテラン選手に肉迫してきている。特に笠間選手と松本選手はその筆頭である。若手投手の話題になると渋面の長嶋監督も笠間、松本に関する話にはその表情が和らぐ。「笠間のリードに関してはキャリア不足もあってまだまだ勉強しなくてなならないが、肩と打撃は矢沢より上。これからもどんどん経験を積ませたい。松本の足は勿論だが打撃も意外とパンチ力があり戦力になる。日々進歩しているよ」と長嶋監督の目尻は下がりっ放し。他にも守備固めで毎試合のように出場している二宮選手の足と守りの評価も高い。

それでも彼ら3人の中でスタメンで起用できそうなのは松本だけ。笠間や二宮を使うには余程の度胸が必要となる。正直言って現レギュラー陣と控えのヤング陣との実力差はまだ歴然としているのが今後の巨人の不安材料なのではないだろうか。投手陣をはじめ疲労を解消する為に「お年寄りの皆さん、どうぞごゆっくり休んで下さい」と言えないのが現状である。ベテラン選手が老骨にムチ打って頑張らねばならないのが今の巨人。スタメンの平均年齢が20代の阪神・ヤクルト・大洋が打倒巨人に一丸となってスクラムを組んだら、巨人ファンはこの夏に安眠することは難しそうだ。

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