Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 731 週間リポート・阪神タイガース

2022年03月16日 | 1977 年 



回復後のボクを見て下さい
今季初のTG対決は巨人の3連勝に終わった。歯ぎしりする甲子園に詰めかけた虎キチ以上に悔しがっていたのが掛布選手だ。本来なら大舞台で暴れ回っていた筈が不運にも前の試合で受けた死球の影響で欠場を余儀なくされた。ベンチ入り25人には登録されたままだがプレーできる状態ではなく、やむなく虎風荘でテレビ観戦となった。4月17日の対広島4回戦で掛布は渡辺投手から2打席連続で死球を受けた。いずれもバッターボックス内で転倒する程で、特に二度目は途中退場するくらいの死球だった。そのまま広島市内の病院に行き検査を受けた。幸い骨には異常はなく痛みが引けば試合に出場できる軽症だと診断され胸を撫で下ろした。

ところがなかなか痛みが取れず帰阪後の18日に厚生年金病院で再検査を受けたところ、「3日間は絶対安静」と診断されて甲子園球場での巨人戦は欠場となった。「痛みが意外と引かず手も握れない状態で試合に出たかったけど無理っス」と掛布は落ち込んだ。掛布の無念さは阪神全体の痛手で佐野選手を三塁、桑野選手を左翼に緊急起用を強いられた。しかし掛布の穴を埋めるまでにはいかなかった。「でもこれがヒビでも入っていたら3日間の安静では済まなかった。早く回復して治ったらハッスルしますよ。月末の後楽園決戦を楽しみにしておいて下さい」とそこはクヨクヨしない若者らしく全快後の活躍を誓う掛布だった。


ヒビが入ってる? 回復は?
今季の阪神は掛布選手がいないと昼も夜も明けない感じだ。何しろ掛布が左手首を負傷(4月17日の広島戦)で欠場したとたんに巨人に3連敗、ヤクルトにも3連敗だ。この為、掛布の存在価値は以前にも増して高まった。勝てない阪神に業を煮やしたファンから「カーケーフ、カーケーフ」と掛布コールが巻き起こった。これに押されたわけではないだろうが、4月24日(日曜日)の甲子園球場で行われたヤクルトとのダブルヘッダー第一試合に掛布は代打で出場し、続く第二試合は三番・サードで先発出場し復帰を果たした。体調は万全でないものの2安打を放ち健在ぶりを見せた。

痛めた左手首を庇って右手一本でもホームラン性の当たりを飛ばしたりもした。だがこの強行出場を心配する人間もいた。中川トレーニングコーチだ。代打ならともかく先発出場だと守備に就く。「掛布にはライナーが飛んで来ても取るなと言いました。まともにキャッチしたら左手首に衝撃が来ますからね。それに1打席毎に大丈夫か聞きました。最後の打席でセンター前にヒットした時に左手首にズキンと痛みが走ったと言うのでこれはアカンと思いました」と中川コーチは復帰には反対の立場。つまり本当はまだプレーするには無理なのに連敗のお家事情にたまりかねて首脳陣が掛布の早期復帰を決定したというわけだが、これが回復を遅らせる原因になったら堪らない。

翌25日、次の巨人戦の為に上京する日の午前中に中川コーチに伴われて尼崎の南学堂整骨院でレントゲン検査を受けた。左手首の回復具合が遅く、ひょっとしたらヒビが入っている可能性も否定できない為、広島・大阪に続き三度目の検査を行なった。阪神ナインが待つ新大阪駅の新幹線ホームに現れた掛布の左手にはサポーターがグルグル巻きにされていた。駆け寄る取材陣に掛布は「左手の事は聞かないで下さい」と多くは語らず、その様子からは意外と重傷で痛みが取れてないと推測された。事実、対巨人3連戦はベンチ登録はそのままだったが宿舎の東京グリーンホテルで待機することとなった。


いずれも順調2人の若トラ
不運の怪我と戦っている若トラの2人。掛布選手と佐野選手の経過は順調で5月末か6月中にかけて戦列復帰できる見通しがついた。死球禍で左手首尺骨にヒビが入った掛布は5月9日の午後に大阪厚生年金病院を訪れ治療を受けた。診察した黒津清明医師によると「順調に快方に向かっています。ヒビもほぼ接合しギブスも必要なくなりました。5月末には復帰できるでしょう」と話した。掛布は「自分でも日ごとに良くなっていると感じます。OKが出たら直ぐプレーできるようにトレーニングは続けています。早く治して元気な姿をファンの皆さんに見てもらいたいです」と話す顔にも笑顔が戻った。

ちなみにこの日(5月9日)は掛布の22歳の誕生日で合宿所の虎風荘にはファンから誕生日プレゼントがどっさり届いた。お見舞いや激励の手紙と共に部屋に入りきらない大量のプレゼントが送られて来た。中には直接持参するファンもいて掛布は「嬉しいですね。今までは誕生日といってもいつも試合に出ていて特に感情はなかったけど、今年は怪我と戦っている最中だし励ましの便りが身に染みます。一生忘れられない誕生日になりました」と大感激だ。復帰が見込まれる5月末の巨人戦は27日から地元の甲子園球場で行われる。詰めかけた大観衆のファンから復帰を果たした掛布に大声援が送られる様子が今から目に浮かぶ。

もう一人の佐野選手の経過は当初の予想以上に回復が早く日ごとに元気をとり戻している。救急搬送された川崎市の太田病院から5月9日に東京の順天堂大学病院に転院して改めて頭部の精密検査を受けたが異常は認められず全く順調そのものだった。一時は野球生命の危機と不安視されたがそんな不安を吹き飛ばして再起へ明るい見通しを立てた。最近は歩行にも慣れて日常生活に支障のないところまで回復。6月には戦列復帰も可能だという。「夢中で打球を追っていたのは憶えているけど、そこから病院で目が覚めるまでの記憶がない。本当に色々な方のお世話になりました。チームは怪我人が続出して心配だけど早く良くなって頑張りたいです」と佐野は再起を誓った。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« # 730 週間リポート・読売ジ... | トップ | # 732 週間リポート・広島東... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

1977 年 」カテゴリの最新記事