面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「エリジウム」

2013年09月24日 | 映画
2154年。
地球の環境破壊は手の施しようが無い程に進み、人口は増加の一途をたどり、地上は過密状態になっていた。
一部の“超”富裕層は、あらゆる汚染を排除したスペースコロニー「エリジウム」を建造して地球を脱出。
住民は最先端の医療技術によって開発された医療ポッドを住居内に設置し、あらゆる疾病やどんな大怪我でもたちどころに回復することができた。
快適に維持された自然環境の中、健康と長寿を享受できる「エリジウム」は、人類にとっての理想郷であった。

一方、“超”富裕層から見放された圧倒的多数の人類は地球に住み続けていたが、環境汚染が進み、人口過密となった地球は貧困と犯罪が蔓延する、荒みきった世界になっていた。
マックス(マット・デイモン)は自動車泥棒の常習犯だったが、どん底の生活を打開するべく超巨大企業アーマダイン社の工場で働き始めていた。
組立ラインに従事する彼は、ある日、作業中の事故により、致死量をはるかに超える放射線を浴びてしまう。
余命5日と診断されたマックスは何としてでもエリジウムに潜入するべく行動に出るが、不法侵入者から「エリジウム」を守る防衛省長官デラコート(ジョディ・フォスター)が立ちはだかった…


あらゆる疾病を瞬時に完治させる医療ポッドを住居に備えたスペースコロニー「エリジウム」。
住民である“超”富裕層の人々は、半永久的な命を実現させ、完璧にコントロールされた自然環境の中で、優雅な時間を過ごしていた。
莫大な資産を誇る人々によって支えられる「理想郷」は、汚れの無い美しい世界。
しかしそこに住む「市民」の生活は、地球にとどまる貧困層からの搾取によって成り立っており、彼らは貧困層を顧みることなどない。
劣悪な生活環境によって病気や怪我に苦しむ多くの貧困層に対して、医療ポッドを提供して彼らの生活を改善しようという気など、さらさら無い。
「美しい」世界の住人達は、一見優雅に美しく暮らしているのだが、心の内は決して「美しくない」。

そして美しい理想郷が造り上げられている「エリジウム」も、医療ポッドによる治療を求めて地球から接近してくる人々が乗るシャトルに対して、不法侵入として情け容赦なく攻撃し、例え侵入に成功したとしても徹底的に探し出して全員捕縛し、強制排除することによって“平和”が保たれている。
美しく快適な環境だが、その維持の方法は決して美しくない。
更に、完璧にコントロールされた平和な社会のはずが、その実は政治的な思惑が錯そうする内実を抱えている。
人間のエゴの上に構築された見せかけだけの「理想」の中へ、厳しい「現実」を抱えたマックスが飛び込むことから、物語の展開は急速にスピードアップし、歴史的な献身によって成し遂げられる明るい未来への序章となるクライマックスへと突き進んでいく。


昨年の「TIME」や上映中の「アップサイドダウン 重力の恋人」など、格差社会が究極まで行きついた先を描く作品が続いている。
世界的に広がる格差社会の急速な進展に、映画界は一石を投じ続けようとしているのだろうか。

スペースコロニーの映像がとにかく美しく、まるで自分がそこにいるかのような気分を味わえるのは、CG映像技術の発達のたまもの。
マット・デイモンが“改造人間”となって暴れまわり、ジョディ・フォスターが黒い権力者として見事な悪役ぶりを見せてくれる、SFアクション・ムービーの快作!


エリジウム
2013年/アメリカ  監督・脚本:ニール・ブロムカンプ
出演:マット・デイモン、ジョディ・フォスター、シャルト・コプリー、アリシー・ブラガ、ディエゴ・ルナ、ウィリアム・フィクナー、ファラン・タヒール


最新の画像もっと見る

コメントを投稿