面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「レヴェナント:蘇えりし者」

2016年05月15日 | 映画
1823年、ヘンリー隊長(ドーナル・グリーソン)率いる毛皮ハンターの一団は、ミズーリ川沿いに進んでいたる日、先住民族の襲撃を受けた。
現地ガイドを務めていたヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)と息子のホーク(フォレスト・グッドラック)は、生き残ったメンバーと共に船でその場から離れた。
しかしこのまま船で、カイオワ砦を目指してミズーリ川を行くのは、周辺を支配する先住民族の標的になるため、陸路を行くべきであるというグラスは隊長に進言する。インディアンとの間に生まれた息子を連れているグラスに対して敵意を持っていたフィッツジェラルド(トム・ハーディ)は、グラスの意見に異を唱えるが、ヘンリー隊長は土地に詳しいグラスの意見を採用して山沿いのルートをたどることにした。

陸路を進みだして間もなくの早朝。
周辺の警戒に出たグラスは、親子連れのハイイログマに襲われ、瀕死の重傷を負う事件が起きる。
ヘンリー隊長の計らいで即席の担架が作られ、グラスは仲間たちに運ばれるが、険峻な渓谷に行き当たって一団は身動きが取れなくなった。
担架に乗るグラスを連れて山を越えるのは無理な状況にヘンリーは、深い傷を負って息も絶え絶えのグラスの命は長くないだろうと判断。
彼をその場に置いていくことにし、息子のホークと共にグラスの最後を看取る有志を募ると、フィッツジェラルドとグラスを慕うジム・ブリジャー(ウィル・ポールター)が名乗り出た。
ヘンリーは彼らに、グラスが息を引き取れば丁重に埋葬して自分たちの後を追うよう指示すると、他のメンバーと共に先を急いだ。

極寒の森の中、思いのほか生き続けるグラス。
仲間たちとの距離がどんどん離れていくことに危機感を覚えたフィッツジェラルドは、ホークとブリジャーがその場を離れた隙に、ものが言えないグラスを殺そうと首を絞める。
その場に戻ってきたホークは、驚いてフィッツジェラルドに飛びかかった。
もみ合う中、思わずホークを殺してしまったフィッツジェラルドは、グラスを生き埋めにすると、遅れて戻ってきたブリジャーに言い含めて立ち去る。

息子が殺されるのを目の当たりにしたグラスは、復讐の鬼と化して穴の中から這い出すと、フィッツジェラルドの後を追う…


アメリカ西部開拓時代、熊に襲われて瀕死の重傷を負い、過酷な自然の中での孤独を生き延びたハンター、ヒュー・グラスの実話の映画化。
最愛の息子を目の前で殺されて沸き起こった激しい憎悪は、死の淵から生還するエネルギーとなったのだろうが、それを糧に驚異的な回復を遂げていく強靭な生命力には驚かされる。
極限状態のグラスが「もうダメだ」と諦めた瞬間、おそらくは命を落としたのではないだろうか。
しかし、フィッツジェラルドに対する煮えたぎる復讐心が、彼に生きる力を与えることになったに違いない。
木の根をかじり、野生動物の死肉を貪り、生きた魚を食いちぎりながら生き延びる気迫に圧倒される。

そしてその凄まじいまでの生への執着を、全身にみなぎらせて体現するディカプリオの鬼気迫る演技は圧巻。
エンドロールが流れる中、「ここで賞を獲れなかったら、もう賞を獲る機会は無いよ」と、くにお・とおるの漫才風に心の中でうなった。
ディカプリオも、ここまでやってようやく勝ち獲った主演男優賞に、安堵と満足を得られたのではないだろうか。


ようやくオスカーを獲得したディカプリオの演技が話題となっていたこの作品であるが、太陽光と火による自然光だけで撮影された、撮影賞に輝いた映像が素晴らしい!
滔々と流れる大河、雪に覆われた渓谷、そびえたつ険峻な山々。
偉大なる自然に抱かれながら、そこに生きる動植物の“命”を身体に取り込むことで、深い傷を負いながらも生きながらえることができる生命力を維持できたのではないだろうか。
大自然の中を行くグラスの姿に、人間もまた自然の一部であるということを思い知らされ、自然が持つ豊かな力を感じずにはいられない。


ディカプリオの圧倒される気迫と雄大な自然に息をのむ瞬間の楽しさは、大きなスクリーンで観るからこそ感じられる醍醐味♪
映画館で観なければ損。


レヴェナント:蘇えりし者
2015年/アメリカ  監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン、ウィル・ポールター、フォレスト・グッドラック


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