タイトルまんまの物語。
テレビのウルトラマンシリーズそのもののチープな特撮(さすが実相寺昭雄監修!)、稲川素子事務所の外国人タレントの怪演など、「いかレスラー」「コアラ課長」「ヅラ刑事」を世に送り出した監督・河崎実ワールドが炸裂!
B級感がたまらなく心地よい、マニア必見の怪作。
2011年、突然地球規模の地殻変動が起き、一週間でアメリカ大陸が消えて無くなったのを皮切りに、中国が沈没、ユーラシア大陸全土が沈没、アフリカ大陸が沈没、そしてオーストラリア大陸が沈没と、たった数日間で地球上から日本以外の陸地が全て無くなってしまった。
日本には、命からがら脱出してきた大量の難民(外国人)が押し寄せる。
一気に人口が増加した日本は、食料が不足し、物価は高騰、失業率も急上昇し、外国人犯罪が激増した。
政府は「超法規的措置」としてGAT(外人アタックチーム)を結成し、不良外国人を次々に検挙して国外追放するという強硬手段に出た。
外国人は日本人に対して媚びへつらうようになり、それに比例して日本人はどんどん特権階級化して横暴になっていく。
そして日本以外が沈没してから3年が経ち、外国人達の不満も爆発寸前となっていたが…
学校教育的価値観、あるいは優等生的発想を一切停止させることができなければ、この映画は不愉快以外の何物でもない。
人権蹂躙、外国人蔑視、異民族に対して人間が持つあらゆる形の悪意が描かれる。
GAT=外人アタックチームという、「帰ってきたウルトラマン」に登場するMAT=モンスターアタックチームを連想させる、戦前日本の特高、ドイツのゲシュタポ的組織が登場する時点で“終わっている”。
地球上に広い陸地はもはや日本列島以外に無く、生きていくためには“日本にとどまらせていただく”しかない立場の各国首脳が、日本の総理大臣に対して究極の卑屈な態度をとるシーンなど、人権団体幹部が観たら卒倒するに違いない。
特に、元中国国家主席や元韓国大統領が、日本の総理大臣に身をよじるようにしてへつらうシーンは、一歩間違えれば国際問題にもなりかねないほどの過激さである。
どこの国が残ることになろうが、その国以外が全て海の藻屑と消えるようなことになれば、この映画のように優位な立場を濫用して、支配階級と下層階級が生まれることだろう。
大ヒットしている「日本沈没」に対する強烈なアンチテーゼとして面白い。
でもやっぱりサイテー!
とはいえ、「サイテー」というのも、笑いにおける重要なファクターだ。
とにかく常識的思考を停止して、くだらなさを堪能すべき作品。
「
日本以外全部沈没」
2006年/日本 監督:河崎実
出演:小橋賢児、柏原収史、松尾政寿、藤岡弘、、村野武範、土肥美緒、松尾貴史、デーブ・スペクター、筒井康隆、黒田アーサー