面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

日本シリーズ第2戦

2006年10月23日 | 野球
日ハムが一矢報いて、1勝1敗のタイに持ち込み、北海道へ凱旋することができた。
これでまた行方がわからなくなった。

今日を中日が獲っていれば、10中8、9は中日がシリーズを制しただろう。
日ハムにとっては最悪の状態を逃れて、北海道に帰ることができたのは大きい。

先発は日ハムは新人ながら12勝、防御率2.48でパ・リーグ3位という八木。
かたや中日は41歳のノーヒッター、大ベテランの山本昌。
同じ左投手で、投球スタイルもそっくり、ちょっとギクシャクした投げ方も良く似ている両投手の対決は楽しみでもあった。
(と言いながらテレビ中継はほとんど見ていなかったのだが)
どちらもストレートは130km/h台。
驚くようなスピードはないが、変化球のキレとコンビネーションが良く、打者に対して実測以上に速く見せることができる技術を持っている。
そして、左腕が身体に巻きくように、カラダ全体の前への動きに比べて遅れて出てくる独特のピッチングフォーム。
打者からはボールの握りが見えにくく、速球でも変化球でも同じように思い切り腕を振ってくるので、バッティングのタイミングがとりにくい。
従って松坂の速球のスピードには程遠いストレートでも、バッターは振り遅れて詰まった当たりになる。

それにしても日ハム先発の八木は素晴らしい。
とても新人とは思えないマウンド度胸。
特に5回裏のバント処理は圧巻であった。
ノーアウト1、2塁という大ピンチ。
打者は投手の山本昌で、絶対に送りバントの場面。
やや3塁方向に転がった山本昌のバントの打球に、脱兎の如くマウンドを降りてきた八木は、躊躇無く3塁へ送球し、2塁ランナーを刺した。
一死2、3塁へと変わるのと、同じ1、2のままでしかも1塁ランナーを投手の山本昌に代えるのとでは雲泥の差。
八木にとって精神的なプレッシャーの差は計り知れないくらいに大きい。
案の定、後続を自信満々、思い切りの良い強気の投球で押し切って無失点で切り抜けた。
この八木のバント処理は、第2戦の流れを左右するターニングポイントともなった。
そして失点を井端と福留の2発だけに抑えたことも大きい。
大きく崩れることなく、冷静に熱い投球を演じた八木が、勝利の立役者筆頭であることは間違いない。

また、ほとんど見ていなかったテレビ中継の中で、八木のバントと並んでもう一つ印象に強烈に残ったプレーがあった。
日ハムの2番・田中賢。
8回表、ノーアウトから先頭の森本がヒットで出て回ってきた打席。
ベンチのサインはシーズン中と同じく送りバント。
そして彼は、中日戦のセオリー通り、ファーストのウッズめがけてキッチリと打球を転がした。
転がった位置といい、死んだ打球の勢いといい、送りバントの見本のような見事なバントだったが、それよりもその走塁が素晴らしい。
一塁へ全力疾走し、緩慢なウッズのスキを突くのである。
間一髪でアウトにしたウッズであったが、肝を冷やしたに違いない。
こういうプレーの積み重ねが、見えないウッズへのプレッシャーとなるのだ。
ランナーを置いて田中賢に打席が回ってきて送りバントの構えを見せたとき、ウッズは相当イヤな気分になり、エラーする確率が上がる。
ウッズ潰しの見本、基本中の基本のプレーである。
タイガースの赤星や藤本には、肝に銘じておいてほしいシーンであった。
こういう“いやらしさ”の無いことが、今季タイガースが連覇できなかった大きな原因
の一つであることはこのブログでも指摘してきたが、交流戦以外に対戦のない日ハムの田中賢がさっそくやってみせたのには、彼の野球センスの良さが伺える。

ランナーがいようが、自分の打撃の調子が悪かろうがおかまいなしに、ポコンポコンとボールに日清製粉唐揚粉をまぶしたようにフライばかり打ち上げる藤本には、この田中賢のプレーを見て感じ取ってもらいたいものであるが、どうだったろうか。
ま、そこで「よし!これや!」と感じ取れる感受性が彼にあれば、荒木・井端に対抗できる赤星・藤本の1、2番が誕生してるわな。
だから藤本は、タイガースに必要無い。
しかし彼を欲しいというチームはたくさんあるはずなので、いい投手を取れるトレードが見込めるのだが、編成部はどう考えているだろう。