面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「記憶の棘」

2006年10月20日 | 映画
ニコール・キッドマン主演作にして、彼女の美しさ全開の作品。
悪かろうはずがない♪

と書くと、ただの“ニコヲタ”(「ニコール・キッドマンオタク」の意)の戯れ言と思われるかもしれないが、とんでもない!

ジョギング中の心臓発作で夫ショーンを亡くしたアナ(ニコール・キッドマン)は、10年の歳月を深い悲しみの中で過ごしてきた。
そんな彼女をやさしく見守り、溢れる愛情を注いでアナの心を少しずつ癒してきたジョセフ(ダニー・ヒューストン)。
彼の優しさに包まれ続け、その愛情をようやく受け入れることができたアナは、ジョセフとの結婚を決意した。
周りから祝福されながら幸せな時間を過ごす二人の前に、突然一人の少年が現れ、アナに告げる。
「僕はショーン。君の夫だ。」
10歳になるその少年は、アナの夫の生まれ変わりだと主張する。
初めは、少年のいたずらだと思ったアナだったが、夫と二人しか知らない秘密を次々を語る少年に、徐々に心が惹かれていき…

嘆きの淵をようやく離れ、幸せの階段をジョセフと共に登ろうとしたアナ。
しかし“愛する夫の死”というこれ以上悲しい現実が、亡き夫と同じ名前の少年ショーンによって覆されようとしたとき、アナは戸惑いながらも心をかき乱され、次第に惹かれてゆき、やがて壊れ始める。
地震の初期微動のように揺れ始めた心が、ラストに向けて加速度的に振幅を大きくしていく過程を、悲しみを湛えた瞳の変化で表情にグラデーションをつけるように演じぬくニコール・キッドマンは、やはりただ美しいだけの女優ではない。

仏教で言うところの輪廻転生をテーマにしたこの作品が、キリスト教文化のアメリカで制作されたところが面白いが、監督とともに脚本を担当したジャン=クロード・カリエールには、ダライ・ラマとの共著があるということに納得。
しかし物語に宗教色は無く、ニューヨークを舞台にした悲劇の寓話として描かれており、果たして輪廻は有りや無きや、という問題は、全て観客の判断に委ねられている。

少年ショーンはアナに言う。
「僕の愛は永遠だ」
輪廻新しい肉体に宿るとき、前世の魂が持っていた美しい純粋な部分だけが「記憶」として残り、転生するのだろう。
しかし多くの場合、その「記憶」は新しい現実の中(現世)で蘇ることはない。
ただ、不慮の急死を遂げたショーンの、あまりにも強いアナへの思いが、新たな肉体において頭脳のなかで鮮明な「記憶」として蘇ってしまい、またその思いのあまりの強さに、アナは引き込まれてしまった。
そしてその「記憶」の純粋さ故の結末が訪れる。

これはあくまでも“たけとらの私見”。

この映画に対する感じ方や考えは千差万別。
ぜひ誰かと一緒に観て、その違いを楽しんでもらいたい。
(ゆめゆめ、ケンカするなかれ)

記憶の棘
2004年/アメリカ  監督:ジョナサン・グレイザー
出演:ニコール・キッドマン、キャメロン・ブライト、ダニー・ヒューストン、ローレン・バコール