面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「ピンクパンサー」

2006年05月28日 | 映画
小学生の頃、確か父親に連れて行かれて観た二本目の映画が「ピンクパンサー2」だった。
今は亡きピーター・セラーズ主演の、クルーゾー警部が大暴れするスラップスティック・コメディの傑作である。
英語は当然のこと、字幕スーパーの読み取りも怪しい中を観ていたが、大爆笑して息ができない状態に陥ったた覚えがある。
以来、ピーター・セラーズ=クルーゾー警部が刷り込まれているのだが、さて本作、スティーブ・マーティンが挑んだリメイク版や如何に!?

結論から言えば、スティーブ・マーティンのクルーゾー警部は“有り”だ。
ご本人、ピーター・セラーズのクルーゾー警部に憧れていたそうであるが、その思い入れのもとに自分なりのクルーゾーを作り上げているんだろう。

ピーター・セラーズのクルーゾーは、色気は別にして“稚気に富み”、徹底的に浮世離れしていながら、自分の能力の高さには絶対の自信を持っていた。
そして、究極の強運の持ち主であり、あらゆる災厄は彼の上を素通りし、逆に彼に災厄を及ぼそうとする人間に、同等かそれ以上の災厄が降りかかってくる。
そのため、彼に振り回されることになるドレフュスは、どんどん狂気の世界に陥ってしまうのである。

対してマーティンのクルーゾーは、稚気たっぷりのキャラクターはセラーズを凌ぐものがあるが、幼い子供のような“人間臭さ”が残っている。
そこが“今風”なのかもしれない。
監督も、セラーズのクルーゾーを持ってきて、“今”受け入れられるかどうか不安だったと語っている。
何事も、“濃い”ものは“うざい”とされるということか?
(この「うざい」という一関東地方の方言がすっかり幅を利かせていることがうっとうしい、ちゅうねん)

個人的には、ほとんど狂気の世界と言っていい、ピーター・セラーズのクルーゾーの方がはるかに面白い。
本作「ピンクパンサー」は「ピンクパンサー2/3/4」に比較して、スラップ・スティックとしてのインパクトも弱い。
でも、“今”という時代におけるクルーゾー警部として、スティーブ・マーティンは程よくハマっている。

そして、もう一つのキャラクターの見所は、スティーブ・マーティンの相棒を務めるジャン・レノである。
過去のピンクパンサーでは、クルーゾーの弟子(召使?)として、中国人のケイトー(私見であるが、これは日本人名の加藤(KATO)じゃないのか?と思っている)が彼の狂気の受け手として見事なコンビネーションを見せていた。
本作では、その受け手としてジャン・レノが起用されているが、これがなかなかどうして、上手く機能している。
全身タイツを着てマーティンと一緒に奇怪なダンスを踊るシーンは蛇足だったが、キャラクター設定の妙により、ジャン・レノの風貌が活きているのである。

今後の順調なシリーズ化に期待したい。

ピンクパンサー
2006年/アメリカ 監督:ショーン・レヴィ
出演:スティーブ・マーティン、ケヴィン・クライン、ジャン・レノ、ビヨンセ・ノウルズ、エミリー・モーティマー、ヘンリー・ツェーニー