青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

中国および日本のユリ科(狭義)植物 Ⅴ テッポウユリLilium longiflorum

2024-04-29 08:17:27 | 「現代ビジネス」オリジナル記事



一平氏の話題など(「白鵬と大谷」)は、原則として、別ブログ「社会の窓から~いい日朝立ち」のほうに回します。

「いい日、朝立ち」 “Good day. Leaving in the early morning to a strange country, far away,,,,,” - 社会の窓から (hatenablog.com)

そちらの方へのご訪問もよろしくお願いします。



少しでも大谷選手にネガティブなことを言う人間は許さない…そんな空気に警鐘を鳴らしたい(立岩陽一郎)(日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース



水原一平氏の通訳能力、米でのリアル評はどうだった? 在米プロ通訳者が分析「水原氏は憑依型」「並の通訳ではない」後任との最大の違いは…―2024上半期 BEST5 (msn.com)



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初夏になったですね。風が爽やか、大好きな季節なのですが、同時に苦手な季節の到来でもあります。全ての空間を締め切って、一斉の冷房が始まります。せっかくの爽やかな風、素敵な季節が台無しで、ウンザリです。

でも東京から福岡に移って(生活パターンの変化も有りますが)屋外の風に触れる機会が多くなったような気もします。

この季節、樹々の緑は一斉に展開し、草花が爛漫と咲き誇ります。ただし草花は、そのほとんどが外来種。視覚的には素敵ではあるのだけれど、複雑な気持ちにもなってしまいます。

自宅から徒歩5分の、絶滅危惧種シルビアシジミの発生地をチェック。去年偶然見つけたのが6月の下旬、おそらく第2化の個体と思われます(その後10月初めまで継続して発生)。今年は第1化(春型)を確かめねばならないのですが、まだ発生していないようです。

もう少し後(5月に入ってから)になるのでしょうか?春型は発生せず、6月にスタートということも考えられます。

それともいなくなってしまった?

驚くことがあります。

この蝶は、食草のミヤコグサに強く結びついていて、ミヤコグサの生えているところの半径1m程の所だけで見ることが出来ます。

去年は、ごく限られた範囲に、ちらほら見ることが出来るだけでした。そこにシルビアシジミが発生していたのです。

そのミヤコグサが、今年は大量に見られます。シルビアシジミの発生ポイントだけでなく、あちこちに咲いている。殊に、発生地に行く手前の、公団アパートの庭や土手には、びっしりと一面に咲いている。

ミヤコグサだけでなく、今年は例年以上に、様々なカラフルな花をつける雑草(ほとんど帰化植物)が咲き競っているように思えます。まるで、ギリシャのアテネ郊外にいるような錯覚を覚えます。



2年前の5月はじめ、ギリシャから日本に戻ってきました。その年の夏、東京滞在中は行政(青梅市/東京都)から理不尽な醜い仕打ちにあって悲惨な思いをした後、秋に福岡に移ってきたのです。

ギリシャの春は、郊外のいたるところに花が咲き乱れています。

日本の常識からすれば、都市の近郊に於いて、在来種の花が草原一面に咲き乱れる、と言ったことは有り得ません。当然アテネ近郊でも、本来の在来種ではなく、どこからか移入してきた外来種ではないかと思われます。

ただし、ギリシャでは在来種自体が、もともと乾燥した気候の開けた環境に結びついているわけですから、ネイティブたちが一面のお花畑を形成していても、不思議ではないのかも知れません。

お花畑を構成しているそれらの植物は、日本とは全く面子が違い、広い意味でのこの地域(地中海東南縁~中東)に特有の種です。厳密な意味での原植生ではないにしろ、それに準じる植生環境と考えて良いと思います。

ちなみに、現代文明は(キリスト教なども)、中東からギリシャを経てヨーロッパ全土に広がってきたのですね。森林に覆われたヨーロッパの内陸部はともかくとして、中東から地中海東南岸にかけての地域は、温暖な乾燥気候で、剥き出しの草原が植生環境の基本と成ります(樹木はコルクガシやオリーブなどの硬葉低木樹)。

北へ向かうと、高木の森林(主に常緑針葉樹)と、林床に広がる草原の組み合わせになり、そのパターンの植生環境は、ぐるりと北極海を取り囲んでいて、ユーラシア大陸の東南端では日本の北海道に及びます(その延長は本州中部山岳まで)。

そこから南は、ガラリと環境が異なり、ヨーロッパでは南のアフリカに至って更に乾燥の極と成るのと対照的に、熱帯アジアの湿潤な鬱閉した熱帯雨林に連なります。

その狭間に日本列島があるのですね。

森林は、いわゆる中間温帯林。見かけ上は変化の少ない北や南の林と違って、四季による劇的な変化を繰り返します。その時間変動が齎す要素を、人為に拠って空間に凝縮・再編したのが、里山・雑木林です。

そこでは、ユーラシア大陸西部に於けるような草原は発達せず、広々としたお花畑などは望むべくも有りません(上記した周北極海要素の南縁である高山帯にのみ出現)。

草花は、森林のギャップや、林縁、疎林、山の急斜面、渓流沿い、人間居住地では、雑木林林床、路傍、集落や耕作地の周辺などに、面(草原)ではなく、点や線状(草地)に生えています

日本の在来草本植物は、ヨーロッパのように広い草原に咲き乱れるのではなく、それぞれの種の特性に応じた狭い環境に、ぽつぽつと疎らに咲いているというのが、本来の姿なのです。

それはそれで、赴きがあって、魅力的だと思うのです。

ところが、近年になって、その状況が一変しつつあります。

まるでインベータに侵入されたごとく、あらゆるギャップに帰化植物が蔓延り、場所によっては、日本らしからぬ、一面のお花畑を形成している。

ヨーロッパの草原とは、構成種のメンツが異なります。ヨーロッパと中東との関係と同じ前提で考えれば、韓国や中国から進出してきた、ということになるのでしょうが、(旧い時代や有史以前の交流は別として)そうでもなさそうなのです(中南米を含む世界各国が供給源)。

普段私たちが野外で見ている花は、おそらく9割以上が、園芸植物+帰化植物なのではないでしょうか?あとで述べる「出戻り在来植物(国内帰化植物)」を加えれば、ほぼ100%が、ネイティブではないのだと思います。

見た目は確かに美しいです。でも、これで良いのだろうか?という思いもあります

昨今、特定外来植物の駆除などが実施されているわけですが、特定というところに僕は引っ掛かります。(その是非はともかく)公平を期すならば他の大多数の帰化雑草も駆除しなくてはならないのではないか、と。

もとより、園芸(栽培)植物はO.K.(大歓迎)、帰化雑草はNo(忌避排除)、というのもおかしな話です。ともに人間の都合で日本にやってきたことには変わりがないわけですから。

あと、「出戻り在来植物」(「国内帰化植物」に近い概念ですが、置かれた次元がやや異なります)の話をしなくてはなりませんね。でも、(「史前帰化植物」の概念ともども)非常に大きな問題を含んだ話になるので、今回は割愛します。

先日のブログで紹介した、レンゲソウとかヒガンバナ(シロバナマンジュシャゲ)なども、「史前帰化植物」「出戻り在来植物」を組み合わせた例と言って良いでしょう。

ミヤコグサも、そのような意味では、著しく複雑な様相を示しています。それと“絶滅危惧種”シルビアシジミとの関わりも、更に複雑な要素を内包しているだろうことは、想像に難くはありません。

とにかく、(供給源や経路はともかく)新参の植物が、恐ろしい勢いで増えつつあるように思えます。毎年毎年、次から次へと加速度を増して。

今日の「ユリ科の話」の主役はテッポウユリ。紹介する写真は、ちょうど25年前の今日、1999年4月28日の撮影です(屋久島春田海岸隆起サンゴ礁)。

その当時は思いだにしなかったことなのですが、今や、東京でも、福岡でも、至るところでテッポウユリが咲き競っています(屋久島よりも4~5か月後)。信じられないほどの勢いで繁殖を続けているのです(正確には、南西諸島原産のテッポウユリと台湾原産のタカサゴユリとの交雑由来だと思われます)。



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ユリ科の話

Wallichianum clade テッポウユリLilium longiflorumほか



ユリは、古くからヨーロッパに於いて重要な植物として(主に宗教面で)位置づけられてきました。

ユリ属の大半の種は東アジア(および北米大陸)に分布、ヨーロッパに在来分布する種は僅かで、マルタゴン・リリー(L.martagon/Martagon clade)やマドンナ・リリー(L.candidum/Candidum clade)が、その代表種で、特にキリスト教と強い結びつきを持っていたのがマドンナ・リリーです。

多くの種が集中して分布しているのは、中国大陸西南部山岳地帯と日本列島、殊に日本列島には、ヤマユリ、ヒメサユリ、ササユリ、カノコユリなどの美麗な固有種が目白押しで、それらの種の球根が大量にヨーロッパに移出されました。

それらにも増して珍重されたのが、南西諸島原産のテッポウユリです。純白のユリとして、それまでのマドンナ・リリーに代わって、キリスト教を象徴する花に君臨します。

興味深いのは、日本原産でヨーロッパに移出され品種改良が行われ、世界的にポピュラーな園芸植物となった(

日本にも逆輸入)例に、ユリのほか、アジサイやシャクナゲがあります。

それらの原産地は、日本本土ではなくて離島なんですね。

アジサイ(ガクアジサイ)は、伊豆諸島。

シャクナゲ(ヤクシマシャクナゲ)は、南西諸島北部の屋久島。

ユリ(テッポウユリ)は、南西諸島全域(三島列島~八重山)。

ちなみに、日本国内で園芸植物化されて身近な存在になっている、サクラ(ソメイヨシノ)の片親は伊豆諸島産オオシマザクラ。代表的園芸ツツジのサツキも、片親が三島列島~トカラ列島産のマルバサツキ。

お寿司の中仕切りとして知られ、かつ街の中のどこにでも植えられているバランも、やはり南西諸島北部(宇治群島、三島列島黒島、トカラ列島諏訪瀬島)原産。

何かを示唆しているように思われますが、それについては場を改めて検討することにしましょう。

テッポウユリは、(猛烈な勢いで拡散中の現在はともかく)「南西諸島全域固有種」という、興味深い分布パターンを示しています。僕にとっては、屋久島安房春田浜の、まるで花だけが隆起サンゴの上に直接咲いているかのような群落が、印象に残ります。

台湾には近縁種のタカサゴユリL.formosanumが分布。低地帯から山上部まで見られるそうですが、僕が撮影したのは、いずれも3000mを超す高山帯(合歓山道路最高地点の周辺と阿里山~玉山間の登山道)、いかにも高山植物然とした風格を備えていて、それと低地の集団との関係はよくわかりません。最近になって、台湾の海岸にもテッポウユリそのもの自生しているとの報告がありますが、タカサゴユリとの関係を含め、詳細は未詳です。



テッポウユリのグループ(Longiflorum節、あるいは「中国植物志」に於ける百合組Sect. Lilium)は、永らく、日本の南西諸島のテッポウユリ、台湾のタカサゴユリ、中国四川省岷江沿いに生えるリーガル・リリー(テッポウユリとともに欧米での白花ユリの主流原種)の3種からなる、とされてきました。

しかし、「Biosystematic Studies on Lilium」のDNA解析に拠ると、リーガル・リリーは、テッポウユリ・タカサゴユリとは、極めて遠縁であることが示されています(次回紹介)。

それに代わって、この一群に含められたのが、中国で最も広域に亘って分布する白花種の野百合(日本名ハカタユリ)L.browniiです。中国で単に「百合」と言えば、本種を指します。

「Biosystematic Studies on Lilium」のWallichianum cladeの模式種はL.wallichianumで、ヒマラヤ東部に分布し、テッポウユリに似た白い大きな花が咲きます。このcladeには、ほかに2種(L.wenshanense雲南省南部/L.philippinense台湾-ルソン島)が含められています。



それにしても、本来南西諸島固有種であるテッポウユリの、最近になっての日本の各地での爆発的な繁殖には、驚くほかありません。東京のアパート周辺でも、福岡のアパート周辺でも、夏~秋(西南諸島よりも数か月遅れ)はテッポウユリに埋め尽くされてしまう、と言っていいほど。

正確には、どうやらテッポウユリとタカサゴユリの雑種由来らしいのですが、どうしてこんなに急激に繁殖しているのか、謎ではあります。
















テッポウユリ 屋久島春田浜 Apr.28,1999














野百合 四川省青城山山麓 Aug.5,1991














タカサゴユリ 台湾阿里山 Sep.2,2006






テッポウユリ×タカサゴユリ? 東京都青梅市自宅アパート付近 Sep.28,2022






テッポウユリ×タカサゴユリ? 福岡県飯塚市自宅アパートの階段下のコンクリートの隙間に生育。花が開く前の蕾の時、誰かが枝を折ってしまった、、、、。不憫に思ってペットボトルに水を入れて折れた枝を差し、元の茎の隣に置いていたら、花が開いた。Aug.29,2023

*このあと、9月~10月になっても、階段下のコンクリートの隙間から次々と茎が伸び、花が咲いて行った。



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「ユリ科の話」は、リーガル・リリー、ヤマユリ、ユンナンベニユリ、尖弁百合、小百合、クロユリ、ウバユリ、ギボウシモドキ、カタクリ、アマナとチシマアマナ、ツバメオモト、タケシマラン、ホトトギス、と続きます。











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