青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

中国の野生植物 Wild Plants of China リンドウ科Gentianoceae-20

2021-03-02 12:58:37 | コロナ 差別問題と民主化運動 中国の花


★2月28日の記事に、いいね!その他ありがとうございました。 

Gentiana arethusae 輪葉竜胆(地域集団:四川省四姑娘山/巴朗山峠)〔sect. Kudoa 多枝組〕


雲南省(白馬雪山&四川省境山地)産の「典型ナナツバリンドウ」と“同一”とみるべきか、それとは異なる、と捉えるべきか、、、、。四川省四姑娘山(巴朗山峠)標高4500~4700m付近。2006.9.19(以下、全て同じ/標本写真2枚のみ2006.9.22)
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
昔は「西部支那*」と総称されていた、「中国西南部」の四川省と雲南省。
 
極論だが、四川までが「いわゆる中国」(僕の定義では「長江周辺域」または「東シナ海西縁域」)だと思う。雲南は別の空間だ。四川は「巨大な屋久島」、雲南は「巨大な沖縄」と捉えることが出来る。全く異なる、かつ密接な繋がりを持った空間である。
 
スンダランド(ボルネオ+マレー半島+スマトラ+ジャワ)と、ワラセア(セレベス+南北モルッカ+東部小スンダ+チモール)の関係に似ているかも知れない。
 
ちなみに、両地域(四川雲南)を結ぶ、四川省西南部のチベット高原高標高地帯の生物相は、もちろん魅力的ではあるのだが、「濃密」というわけではない。いわばトカラ列島だ。
 
様々な生物で言えることだが、「この一帯(いわゆる中国西南部:四川+雲南+その周辺地域)全体としての独自の分類群」があるというのも事実だし、なおかつ「四川と雲南で明確に分かれる」ということも、また事実である。
 
非常に分かり易い例が、ジンチョウゲ科の草本種「Stellera chamaejasme」。中国西南部高標高地帯(チベット高原の東南部)に広く分布しているが、四川と雲南で、見事に分かれている。四川側は白(または薄紅)色。雲南側は黄色。前回の項の舞台・省境山地周辺においても、そのことは明確に示されている。四川省側南端の郷城から北は白(薄紅)色、雲南省側北端の翁水から南は黄色。ほぼ例外なく四川と雲南で明確に分かれている(ただし雲南/チベット省境の梅里雪山産は白色)。と共に「種」としては同じ「Stellera chamaejasme」に所属するわけである。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
「輪葉竜胆」(中国産ヤクシマリンドウ類)については、このように(暫定)整理してみた。
 
ヤクシマリンドウ節(Kudoa多枝組)は、4系から成る。
 
うち2つ、頭花系Apteroideaeの種(「中国植物志」ではシノニム1種を含む7種)と、密葉系Confertifoliaeの種(同シノニム1種を含む4種)は、自分の目で確認していないため、詳しい検討は保留しておく(唯一前者のタイワンリンドウGentiana davidiiを第6回で紹介した)。
 
華麗系Ornataeは14種(3変種を含む)、輪葉系Verticillataeは9種(1変種を含む)となっている。
 
最も大きな相違点は、前者は茎葉が対葉で、後者は輪葉であると言う事。それ以外には本質的な差異はないものと思われるが、一応2seriesへの分割を踏襲しておく(「中国植物志」英語版では、「頭花系」「密葉系」も含め、seriesの分割は為されていない)。
 
どの生物でもそうだが、「種を分ける」「種を統合する」、横の繋がり(空間)と、縦の繋がり(時間)の関わりの(それによって今現れている現象の)認識、、、それはDNA解析結果であろうとも同じだと思うが、空間や平面(DNA解析結果なども含む)に示されている「違い」を、複雑に絡まりあう時間軸なかで、どのように理解するか。
 
四川雲南のナナツバリンドウの話に戻る。僕自身でチェックした限りにおいては、雲南省白馬雪山では「典型ナナツバリンドウ」の単群。省境山地では、「典型群」を軸に、やや華麗系の種に似た印象の個体が含まれる。両地に比べ幾分標高が低い香格里拉の1個体は、やや華麗系寄りの印象。
 
今回の四川省四姑娘山では、2つの異なるポイントで撮影した。
 


特徴を4段階で分けておく(左から右へ2個体ずつ)。
 
渓谷部(長坪溝3300~3500m付近)。
1(左の2茎):フタツバリンドウ
茎葉は対生。
*株ごとに大型の単独ロゼット葉を生じる。
 
尾根部(巴朗山4500~4700m付近)
2-4(右の6茎):広義のナナツバリンドウ
茎葉は輪生。
*大型のロゼット葉は生じない(極小ロゼット・クラスターが存在するか否かについては不明)。
 
2(中4茎の左2茎)
外観(色調や茎葉の大きさなど)はやや1に似るが、1に比べて花筒は短い。
 
3(中4茎の右2茎)
色調は4に似て、茎葉がやや大きい。
 
4(右の2茎)
全体として雲南省の「典型ナナツバリンドウ」に似る。
 
ざっと、1-(2-(3-4))というところかな?
 
ここに雲南の典型(5)を配置するとしたら
1-(2-((3-4)-5))
1-((2-(3-4))-5)
そして、典型以外は、何処に組み込めば良いのだろうか。
 
・・・・・・・・・・・・・・
 
*注:パソコンでこの熟語は出てこない、もう腹がたつ。いちいち規制されなくても、分かってるよそんなこと。僕が生物の和名に「シナ」を使わないのは、想うところがあっての自主規制であって、あんたら(たぶんヤフーとかグーグルの人たち)に強制される筋合いはない。
 
・・・・・・・・・・・・・・
 











 


下の明るい空色の花は、同じリンドウ科のヒメセンブリ属。
 


右の葉は、キク科のヤマハハコ属。
 

















 








この3枚はフタツバリンドウにやや類似した印象を持つ個体。
 


四姑娘山6250mの主峰が眼前に迫る。
 
写真㉑

左5茎が渓谷草地で出会った典型的「華麗竜胆系」の対葉種(次回で紹介する蓝玉簪龙胆Gentiana veitchiorum)。
そのほかは巴朗山の山上草地(風衝地)に生えていた「輪葉竜胆系」の種。右端は「典型ナナツバリンドウ」に近く(ただし雲南省産とは印象が異なる)、左に行くにつれ、やや華麗系と共通する印象が加わる(県境山地産の一部や香格里拉とも印象が重なる)。
*右下の株には、不完全ながら極小ロゼットに似た塊が認められる。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする