功夫電影専科

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『三国志英傑伝 関羽』

2016-02-10 22:06:59 | 甄子丹(ドニー・イェン)
「三国志英傑伝 関羽」
「KAN-WOO/三国志英傑伝 関羽」
原題:關雲長
英題:The Lost Bladesman
製作:2011年

●戦乱の時代を駆け抜けた英雄、関羽雲長こと甄子丹(ドニー・イェン)が死んだ。葬儀を執り行ったのは、姜文(チアン・ウェン)演じる魏の武帝・曹操孟徳…乱世の奸雄と呼ばれた男である。
20年前、甄子丹は捕虜として魏に身を寄せており、姜文は彼を自陣に引き入れたいと思っていた。しかし甄子丹は首を縦に振らず、あくまで「自分は劉備元徳に忠を尽くしている」と言って譲らない。
様々な手段で勧誘を行う姜文だが、劉備の居場所を知った甄子丹は出奔を決意。人質となっていた劉備の妻・孫儷(スン・リー)を伴い、魏から去る事となった。
根負けした姜文はこれを許可するも、今度は何者かの命令によって刺客が暗躍し、甄子丹たちに襲いかかっていく。果てなき戦いの中、彼と孫儷の間には許されざる感情が芽生えるのだが…。

 『インファナル・アフェア』を手掛けた麥兆輝(アラン・マック)&莊文強(フェリックス・チョン)コンビによる監督作ですが、これがなかなか渋いタッチの佳作に仕上がっていました。
本作は『三国志演義』の「過五関 斬六将」を元にした作品で、主役の関羽を甄子丹が熱演。つねにストイックな姿勢を崩さず、戦いでは鬼のように強い猛将を見事に演じきっています。
 当然、アクションシーンも甄子丹の独壇場と化しており、第1の刺客・安志杰(アンディ・オン)とのバトルでは、細い路地というシチュエーションを生かした攻防戦が見ものです。
他にも第5の刺客・王學兵との激突など、展開される戦いはどれも壮絶…と言いたいところですが、残念ながら不満を感じる点も多々ありました。
 まず最初の問題は、まともな立ち回りが開始40分まで無いという点です。おかげで序盤の敵将との勝負が一瞬で終わってしまうんですが、まさかこの敵将を演じているのが錢小豪(チン・シウホウ)だったとは…(涙
次に問題となってくるのが、アクション設計の不親切さでしょう。第2&第3の刺客と戦う場所が暗くて見づらかったり、第4の刺客との戦いが音だけで終わったりと、肩透かしを食らうファイトが幾つもあるのです。
最後の戦いもザコしかおらず、まさに竜頭蛇尾を地で行く結果となった本作。錢小豪がいるのなら、それこそラスボスに持ってきてほしかったと言わざるを得ません。

 ストーリーについても、孫儷とのラブストーリーは取って付けた感が強く、個人的にはあまり好感が持てませんでした。しかし本作を佳作たらしめているのは、姜文が扮した曹操の存在感にあります。
曹操といえば、冷酷な人物というイメージが一般的のようですが、本作では複雑な思いを秘めたキャラクターとして登場。甄子丹に対して友のような感情を抱き、熱心に仲間として迎え入れようとします。
 が、その行動の端々には残忍さが見え隠れし、曹操という人物が“人間でありつつも奸雄でもある”という事を、見る者に強く印象付けていくのです。
この描写は最後まで徹底されており、ラストでは甄子丹の死を心から悼みつつも、戦いの策に利用しようとする狡猾さを見せていました(最後に手を合わせるシーンがかなり怖いです)。
甄子丹の立ち回りと姜文の演技…この2つが見事だっただけに、それ以外のマイナスポイントが実に惜しいです。ところで関羽といえば赤兎馬ですが、どうして本作では登場しなかったんでしょうか??

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