功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『借刀殺人』

2007-07-31 22:51:48 | カンフー映画:佳作
借刀殺人
Hit Man in the Hand of Buddha
1981

▼香港映画には意外な人の主演作があったりする(しかも完全な善役で)。例えば有名どころでは高飛・狄威・任世官が、更には白彪(バイ・ピョウ)・呉明才(ウ・ミンツァイ)・楊斯・慮恵光・孟海などの主演作まである。思っても見ない顔合わせも功夫映画の面白いところだが、更に意外な人の主演作がある。それが今回紹介する『借刀殺人』だ。
本作の主演はなんと黄正利(ウォン・チェン・リー)だ。足技ファイターとして有名な彼は韓国で多く主演作に出ているのであまり珍しそうではない気がするが、今回の黄正利はいつもの彼からは想像できない顔を披露してくれている。

■いきなり始まって画面に"香港黄正利影業公司"とでっかく出てきたので驚いた(笑)。そう、この映画は黄正利の監督作でもあるのだ。物語がスタートするや否や、黄正利が金持ちから金をむしり取った。やはり今回も悪役かと思いきや、これは元奎(ユン・ケイ…今回武術指導も担当)ら一団に襲われそうだった金持ちを助けるための芝居だった。
その後、ある街に立ち寄った黄正利は、子供を使ってスリを繰り返す樊梅生(ファン・メイサン)と出会う。樊梅生の格好は『燃えよデブゴン7』っぽい乞食姿だ。たぶんそこらへん意識していたものと思われるが、黄正利VS樊梅生という変な対決は決着付かずという形で終わった。
所変わって、ここは2件の穀物屋さん。小さい方の穀物屋と大きい穀物屋(こちらが悪役)の間でトラブルが巻き起こるのだが、黄正利は小さい方の穀物屋へとやって来た。黄正利の妹がそこへ嫁いでいるのだ。
偵察に出かけて大きい方の穀物屋に捕まっていた妹の旦那を助けた黄正利だが、大きい方の穀物屋は黙っていなかった。さっそく報復に現れるが、こちらには無敵の黄正利がいる!ザコ連中はあっという間に叩きのめされ…っていうか、どう見ても黄正利の方が悪役に見えます(爆
「黄正利を倒すには並大抵の奴でなきゃいかん!」
大きい方の穀物屋の旦那は、めっぽう強いと噂の楊威を尋ねる。楊威ってまた微妙なところをチョイスしたなぁ…と思ったら、突然王將(ワン・チン)が出てきて楊威をボコボコにしてしまった!もちろん旦那は予定を変更し、黄正利の始末を王將に依頼した。茶屋を貸し切り、黄正利を茶会に招待する王將。この2人といえば『南拳北腿鬥金狐』だが、もちろん王將がピンで黄正利に勝てるはずも無かった。
一方、樊梅生らは今日も子供たちを使ってスリをしていたが、1人の子供が高雄(エディ・コー)から時計をスってしまう。高雄が危険な男だと知っていた樊梅生はすぐさま高雄のとこへ返却に行くが、実はこの高雄の部下が王將だった。
「ドラえも~ん…じゃなかった高雄様、ジャイアン…じゃなかった黄正利がオレをぶっとばしたんだ!」
「誰がドラえもんじゃ!」
…というわけで、高雄と王將はケリをつけにやって来た。黄正利のいない間に穀物屋へ押し入り、黄正利の妹は王將に犯された挙句に自害。奇襲を受けた黄正利も高雄の鷹拳にやられてしまう。樊梅生に助けられたものの、今の実力では高雄に勝てない…。そこで樊梅生は「わしがお前を特訓したら『燃えよデブゴン7』のパクリだとか言われそうじゃから、代わりに少林寺っぽいとこへ行って修行して来い!」と言って(嘘)黄正利を修行に向かわせる。この少林寺っぽいとこで見せる黄正利の笑顔がとてもまぶしくて素敵だ(爆
しかし黄正利が修行している間に、妹の旦那も王將に殺されてしまう。修行を終え少林寺っぽいところから下り、樊梅生から事情を聞いた黄正利は、怒り心頭で怒涛の反撃に出る!やはりこの男だけは怒らせてはならなかった…。黄正利は敵の一味を蹴り殺し、続いて王將も拷問の末に葬り去った。そして最後に残った高雄だが…これは結末を言わずともいいですね?(笑

▲この映画からは「俺だってジャッキーっぽく修行とかしたかったんだ!いつも最強で仏頂面の悪役とかじゃなくて、普通の好青年の役とかしたかったんだぁ!」という黄正利の叫びが聞こえてくるような気がしてならない。
考えてみるとこの人、演じてきた役のバリエーションが極端に少ない。決して演技力が悪いわけではない黄正利だが、そもそものデビュー作である『南拳北腿』からずっと最強の悪役として君臨し続け、ジャッキーを始めとしたありとあらゆる功夫スターたちを苦しめ抜いてきた。確かに彼の悪役演技は素晴らしい。だが、彼本人としてはもっと色々な役もやってみたかったのではないだろうか?
いくつか韓国時代に主演した作品には正義の人を演じたこともあったろうが、本作のような香港映画では珍しい…というかほとんど無かった事だ。そしてついに掴んだ正義の主役である。彼なりに全力を尽くした本作のアクションは、とても見事なものだった。
ストーリー面は弱いが、本作の黄正利は足技を抑え気味にしたアクションを披露し、蹴り一辺倒ではないアクションをこなしてポテンシャルの高さを誇示している。もちろんいつもの足技も冴えており、最後のVS高雄戦での怒涛の蹴り技ラッシュは鬼気迫るものがあった。それにしても、いつも黄正利は鷹拳使ってるイメージがあるなぁ…。

『用心棒/極道狩り』

2007-07-29 23:27:12 | 日本映画とVシネマ
「用心棒/極道狩り」
製作:1994年

●基本的に功夫映画とマーシャルアーツ映画を扱っている当ブログですが、この「日本映画とVシネマ」の項では邦画作品を取り上げています(東映空手映画については「千葉真一とJAC」を参照して下さい)。日本にも香港やアメリカと同じように、ボルテージの高い格闘アクションを見せる作品が多数存在します。このカテゴリではそういったタイトルを取り上げていきますが、第一弾は『用心棒/極道狩り』です。

 様々なトラブルを解決するお寺、通称"けんか駆け込み寺"の坊主・岸本祐二と渡辺哲は拳法の名人。ヒロインの田中規子と平和な日常を送っていたが、いつも痛い目に遭うヤクザたちは彼らを快く思っていなかった。そんなある日、1人のチンピラが喧嘩の最中に不可解な死を遂げた。チンピラを殺したのは台湾マフィアの殺し屋だという。
ヤクザたちは休戦して岸本たちに殺し屋始末を頼んだが、殺し屋の中国拳法には岸本でさえ歯が立たない。傷を負った岸本は戦線を離脱し、代わりに立ち上がった渡辺が見事に殺し屋を撃破!しかし、以前助けた女性に看病されていた岸本が、その女性に襲撃されるという事態が発生する。実は彼女もヒットマンであり、一連の事件は岸本たちを潰そうと企むヤクザと台湾マフィアの陰謀だったのだ。
女ヒットマンを退けた2人は、誘拐されてしまった田中を救うべく敵地へと突入する!

 本作は『ビーバップ・ハイスクール』などから始まったコミック実写化作品の一本です。当時、最盛期にあったVシネではマンガを原作にしたタイトルが大量に作られていました。主にヤクザや不良を扱った物が多く、格闘アクションに秀でた作品も少なくありません。本作でも骨法や中国拳法を取り上げ、なかなか本格的な殺陣を見せています。
ですが、ストーリーについては未整理な部分がいくつもあり、消化不良を感じさせる内容になっていました。例えば、上記にも出てきた殺し屋は"岸本の元・兄弟子"という美味しい設定のキャラなんですが、彼との決着は渡辺が付けてしまいます。こういうキャラはクライマックスで出すべきだと思うんですが、まさかその直前で退場するとは…。
 そのほかにも、女ヒットマンが突然マフィアを裏切ったり、終盤には「台湾の殺し屋より強い」と言われる敵キャラが現れたりと、とにかく唐突な描写が目に付きます。展開上ありそうなヤクザとの対決も無く(続編への布石だったのかも)、全体的に中途半端な印象を残したまま終わっています。アクションがわりと良かっただけに、このような結果になってしまったのは非常に残念です。
今回は隠れた傑作…とまではいきませんでしたが、Vシネというジャンルは香港映画以上にディープな部分があります。こういった作品はまだまだ眠っているかもしれないので、これからも日本映画などを続々紹介していきたいと思っています!

『パーフェクト・ウェポン』

2007-07-28 22:09:40 | マーシャルアーツ映画:上
「パーフェクト・ウェポン」
THE PERFECT WEAPON
1991

●以前、マーシャルアーツ映画の特集で多くのスターを取り上げたが、まだまだこういった人材は後を絶たない。今回紹介するこの映画で主演しているジェフ・スピークマンも、そういった隠れたマーシャルアーツ映画スターの1人である。
本作は犯罪アクションだが、特に大きなうねりのない至って普通な内容だ。恩人のマコ岩松を殺されたジェフが、汚いコリアン・マフィアの連中をボコボコにしていくというもので、加えて親不孝で家を飛び出しているジェフと警察官の弟とのドラマを挟みつつ、ジェフが奮闘する姿を描いている。
このジェフ・スピークマンという人は私もあまり知らなかったが、実際に拳法空手などの有段者で、その技のキレはなかなかのもの。冒頭の演舞オープニング(!)からいい動きを見せており、序盤のテコンドー道場における3対1のバトルを皮切りに、クライマックスのヒロポン製造工場での決戦まで安定した素早いアクションを披露している。巧みなカリスティック捌きもキマっているし、もたつく事も無く最後まで自分のテンポを守っていたのも印象的だ。
この映画では、殺陣のリズムも一貫しているし、マーシャルアーツ映画にありがちな蹴り技ばかりの殺陣というわけでもなく、独自のテンポを保持している点も評価できる。
不満があるとすれば、家族間のストーリーが中途半端だったことと、ラストに立ちはだかる敵がただの怪力デブ(元プロレスラーのトール・タナカ)だったことぐらいで特に悪い印象は無く、これもまた1つの"隠れた傑作"といえるだろう。

『勾魂針奪命拳』

2007-07-27 23:40:30 | カンフー映画:傑作
勾魂針奪命拳
Fatal Needles vs. Fatal Fists
1978

▼李小龍亡き後、香港映画界は彼の後継者を捜すことに奔走していた。様々なスターが第2の李小龍に、あるいは李小龍に続け!といわんばかりに現れたが、誰も李小龍を越えることは出来なかった。
そんな中、ゴールデンハーベストは『地獄の刑事』という作品で、新鋭・王道(ウォン・タオ/ドン・ウォン)をデビューさせた。しかし彼はハーベストから離脱すると、功夫映画の金字塔である『南拳北腿』でブレイクした。恐らくは彼自身、単なる李小龍の後追いをすることは良しと思わなかったのだろう。
本作は台湾の名監督・李作楠(リー・ツォーナム)によって製作された、王道版『ドラゴン危機一発』である。今一度、李小龍的なアプローチを取った作品に挑んだ王道。果たして、その出来は…?

■王道は羅烈(ロー・リェ)と共に悪党退治の専門家として、宝石泥棒から強姦犯まで手広く懲らしめていた。ところが、ある町の客棧に立ち寄った事から物語は始まる。
王道と羅烈はそこで狼藉を働く槍使いの關洪一味と対決した。しかしその乱闘のさなかに、王道のミスで羅烈が死んでしまう。敵は撃破したものの、兄貴分の羅烈を死なせてしまった王道は自暴自棄に陥ってしまった。
雨の中を彷徨っていた王道は、張萍(チャン・ピン)が女将をしている遊郭に拾われた。羅烈を死なせた事で生きる気力を失っていた王道だが、そんな彼を張萍は叱咤し、王道に小間使いの仕事を世話してくれた。だが、タチの悪い客とのいざこざで拳を振るえず、傷を負ってしまった王道はこれ以上ここに迷惑をかける訳にはいかず、負傷した身で遊郭から出て行く決心をした。張萍は選別に僅かばかりの金を工面してくれたが、王道はその道中で倒れてしまう。
そんな傷ついた王道を介抱してくれたのは、町の自警団だった。王道は世話になる代わりに、そこで住み込みの下働きとして働くことになった。おしゃべりなデブの葛小寶と仕事を続けていくが、静かな時はそう長くは続かなかった…この町へ、張翼(チャン・イー)ら悪党達が現れたのだ!
張翼一味は遊郭を根城にすると、各所でショバ代を徴収したりとやりたい放題で、ついにはその矛先を自警団へと向けてきた。実は彼らの真の目的はただ単に悪事を働くことではなかった…。
一味の鄭富雄と程天賜(のちに張徹映画で活躍する人)は自警団を襲撃。その際ほとんど無抵抗で殴られるだけだった王道を、他のメンバーは非難した。また、お礼参りに出発しようとした華玲(ファ・リン)らと共に行こうとしなかった王道は、皆からも腰抜け呼ばわりされてしまう。
結局、華玲ら自警団は手も足も出ずに撤退を余儀なくされる。その後、自警団への見せしめに仲間も殺されたりと、一味の攻撃は激しさを増すばかりだ。ある日、葛小寶と一緒に酒を買って帰ろうとした王道は、再び鄭富雄らに襲われる。数々の嫌がらせに耐える王道だが、葛小寶が身を挺してかばった。羅烈の死が脳裏をよぎる…。
「俺は羅烈をミスで死なせてしまった…だから拳を封じた。でも、目の前でみすみす友人を見殺しには出来ない!」
ついに意を決した王道はその拳を復活させ、あっという間に鄭富雄たちを撃破。華玲たちも王道を認めるのだった。
鄭富雄らの失態に、張翼は自分の弟分の金銘(トミー・リー…本作での武術指導家)を向かわせたが、王道の敵ではない。真っ向からぶつかって勝てる相手ではない事を悟った張翼は、自警団を大人しくさせるため、必殺の"勾魂針"で自警団主任の余松照を襲った。この針は無理に抜くとたちまち死に至らしめるもので、余松照を助けるには張翼の指示に従うしかない。王道たちは、仕方なく張翼の要求を飲んだ。
張翼の指示とは、この町に来る仲間の薛漢と李強を尋問せずに通過させ、以後はこちらに一切触れるべからずというものだった。遊郭で薛漢と合流した張翼は、実はこの町に自分たちの隠し財産があり、それを持ち出そうとしている(?)事を語った。それを聞いていた張萍は情報を王道たちにタレ込んだが、余松照の事もあるので容易に動けない。だが、「悪を一掃するのだ!」と、余松照は自らの命を絶って皆に告げるのだった。
隠し財産を持ち出そうとする金銘たち。そこを王道たちが襲撃し、まずは先手を打った。しかしそのことを知った張翼は張萍が漏らしたと察知し、彼女を始末して逃走を図る。これ以上の犠牲を望まない王道は、ただ1人で張翼と対決に向かうのだが…。

▲タイトルにある"勾魂針"とは張翼の技の名だが、"奪命拳"とは王道の技の名であると同時に、羅烈の命を奪ってしまった拳という見方もでき、興味深い。監督・李作楠のドラマチックなストーリー展開は引き込まれる物があり、今まで見てきた王道の主演作の中でも、本作の彼が一番カッコ良く見えた。
ドラマ中心であまり功夫アクションは多くないが、ラストでの王道VS張翼のバトルは間違いなく彼のベストバウトだ。金銘によるアクションもなかなか激しく、台湾の功夫映画も凄いと思わせるに足る一作でした。
それにしても王道や李作楠は、日本ではイマイチ評価がされていない気がする。王道はあまり日本で公開された作品も少ないし、李作楠に至ってはフィルマークの『地獄のニンジャ軍団・クノイチ部隊』の監督ぐらいにしか認知されていない。本当は2人とも素晴らしい才能の持ち主なのだが…この分だと、"隠れた傑作"はまだまだありそうです。

『少林寺・怒りの大地』

2007-07-26 22:20:32 | カンフー映画:傑作
「少林寺・怒りの大地」
「少林寺・激怒の大地」
木棉袈裟/木綿袈裟
Holy Robe of the Shaolin Temple
Shaolin And Wu Tang 2
1985

▼惜しい!とにかく惜しい!
実はこの作品のTV放映時の吹き替え版ビデオを所持していたんですが(かなり昔に親が録画していた)、あろう事か『燃えよドラゴン』と『酔拳』の録画の為に潰してしまったのです!
この二つの作品はいつでもレンタル等で見れるというのに…あのころの自分を殴ってでも止めたかった!しかし殴って止めてしまったら今の香港映画狂の私は存在していない…ギギギ。
まぁそれはさておき、本作には于榮光(ユー・ロングァン)が出演し、監督と武術指導を兼任して徐小明(ツイ・シュウミン)が関わっている。おまけに中国と合作で大人数を動員したスケール感も結構なもの。くだんのビデオを潰してしまったので長らく視聴していなかったが、この度JVDのDVDにて鑑賞に至りました。

■少林寺が目障りな錦衣衛の将軍は「焼き討ちするのではなく乗っ取ってしまおう」となかなかヒネった企みを思いつき、武當派出身の于榮光を新しい館長として少林寺に連れてきた。
そこで少林寺館長との激突となるが、館長は于榮光の武當拳に破れてしまう。錦衣衛の企みを知って帰ってきた主人公(誰?この人)らが奮戦するも、将軍の引き連れてきた大軍勢に少林寺は死屍累々だ。館長は少林寺館長の証である"木綿袈裟"を生き残った主人公らに託し、武當派の少林寺へ向かうように告げる。その後、館長は大勢の僧達を助ける為に身を紅蓮の炎で包み、果てるのだった…。
于榮光の追っ手が迫る中、主人公は一緒にいた少林僧の子供たちと相談し、二手に分かれて捜査を攪乱させる事にした。主人公は冒頭お世話になった遊牧民系の一家に倒れているところを匿われるが、そこにも于榮光らの魔の手が!機転を利かせて于榮光らから逃げ延びるが、その課程で于榮光に遊牧民家族のお父さんが殺されてしまう。
どうにか目的地である武當派少林寺に到着した主人公とヒロイン(遊牧民の娘さん)。崇山の少林寺が将軍の手に落ち、于榮光が武當の出であることに責任を感じたジャムおじさんの声の武当派館長(TV吹き替え版)は、主人公とヒロインに武當派の技を教えてくれる事に。黙々と修業に励み、2人はめきめきと実力を付けていくが、その際ヒロインに自分が少林僧であるとわかってしまう。僧なら結婚してはいけない…せっかくカップル成立かと思われたのだが。
一方で、兄弟子が命を落としたりとエラい目に遭ってきた木綿袈裟を持つ子供たち。武當に匿われた主人公の拘束に失敗した于榮光らに襲いかかるが、その木綿袈裟を奪われてしまう。
そこで于榮光邸に侵入した子供たちは、于榮光らの不穏な動きを知り主人公と合流する。どうやら将軍の行った凶行が皇帝にバレそう(将軍の独断でやったらしい)なので、将軍がいったん都に赴く間にに于榮光は館長に就任しろというのだ。ヒロインの姉妹達と合流した主人公+ジャムおじさんが付けてくれた武當の加勢2人は奇襲をしかける。
そして牢屋から救い出した仲間達と共に、ついに決戦の時を迎えるのだった。

▲崇山→武當への移動の最中に袈裟の奪い合いという、山田風太郎の忍法帖シリーズを思わせる展開はなかなかに面白かった。
注目すべきはやはり徐小明の武術指導。少林寺の話なので『天山回廊』の時みたいに大スタントはないのかなと思いきや、館長の焼身自殺シーンなど、妥協をしていない様子がうかがえる。全編に渡ってのアクションも高クオリティを堅持。ストーリーもありきたりじゃないしテンポも良い。当時の李連杰『少林寺』ブームから作られた派生作品としては、及第点以上の完成度だ。
私がこの作品に出会ったのは、まだ『ワンチャイ』シリーズに熱を上げていた頃だった。ワイヤーアクションではない円熟したアクションの数々は私の目に新鮮な物として映り、特に小太りながら素早いアクションを披露していた館長(誰?)には驚いた記憶がある。
しかし結末に関しては『里見八犬伝』のように、死闘を共にしたヒロインとかけおちエンドというのもアリだったのでは?DVD見てびっりしたが、TV放送版にはばっさりカットされていたヒロインの最後のセリフがあって、それがまた痛々しい。これじゃあ主人公がヒロイン騙していたヤな男みたいでなんだかなといった感じだ(実際そうだけど)。
個人的なお気に入りは本作の勇壮なテーマ曲。もしかしたらTV放映版に差し替えたBGMかと思ったが、差し替えてあったのはオープニングの映像(TV放映版は本編にあった演舞シーンの抜き出しで、オリジナルは達磨大師の水墨画)くらいだった。その音楽を担当したのは願嘉輝(ジョセフ・クオ)。李小龍の『ドラゴン怒りの鉄拳』やジャッキーの『少林門』、倉田さんの『激突!少林拳VS忍者』など、多くの作品で名スコアを残している人だ。
BGMといえば、劇中傷ついた主人公が遊牧民に救われるシーンの悲しい曲にも注目。なんとその曲は『宇宙戦艦ヤマト』のエンディング曲「真っ赤なスカーフ」じゃないか!『妖怪道士2』では同じくヤマトのワープシーンの曲が使用されていたし、ヤマトって意外に香港映画と根強い関係にあるのか?(違

夏の暑さを吹き飛ばせ!

2007-07-26 21:48:20 | Weblog
特集とまではいきませんが、今回から熱闘ムンムンの熱き作品を中心にレビューしていきます!
白熱したバトル、緊迫した展開、至高の名勝負…登場予定の作品には今まで当ブログに登場しなかったアクションスターによる主演作(梁小龍、羅鋭、陳星、ジェフ・スピークマンなど)を中心に紹介していく予定です。
真夏の猛暑は熱き血潮で吹き飛ばしましょう!

『妖術秘伝・鬼打鬼』

2007-07-24 23:06:21 | 洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
「妖術秘伝・鬼打鬼」
「燃えよデブゴン8/クンフー・ゴースト・バスターズ」
原題:鬼打鬼
英題:Encounter of the Spooky Kind/Close Encounter of the Spooky Kind/Spooky Encounters
製作:1980年

洪金寶(サモ・ハン・キンポー)が新機軸として打ち出したホラー・カンフー映画のひとつ。これが後に発展して『霊幻道士』などのキョンシー作品の原型となるのは、皆さんもご存知かと思います。
注目すべきはダブル主役の鐘發(チュン・ファット)が、正義の道士役を演じている点でしょう。彼はその野性的な風貌のせいか、長らく悪役・端役としての仕事が多かったため、本作のようにメイン級の善役を演じるのは本当に稀なのです。

■サモハンは町でも評判の豪胆な男。仲間に廃屋での肝試しを持ちかけられ、現れた幽霊が彼らの変装だと見破るも本物が登場! 騒動が持ち上がるが、当のサモハンは仲の悪い妻が不倫をしている疑惑があり、気が気ではなかった。
そのことを常連客の富豪・黄哈(ウォン・ハー)に漏らすが、何を隠そう浮気相手は黄哈その人。彼は邪魔なサモハンを殺害すべく、道士の陳龍(チェン・ロン)に頼んで呪い殺してしまおうと考えた。
 あの手この手でサモハンを陥れようとする陳龍は、彼に妻殺しの罪を着せて逮捕させてしまう。そんな絶体絶命のサモハンに救いの手を伸ばしたのが、陳龍の弟にして正義の道士・鐘發であった。彼は敵が黄哈であると明かし、まじないをかけて最後の決戦に備える。
実は事件の黒幕は死んだはずの妻であり、彼女はサモハンを始末して黄哈と添い遂げようと企んでいたのだ。黄哈の屋敷に現れたサモハンと鐘發は、妖術のパワーを高めるやぐらを組んで準備万端。対する陳龍は助手や黄哈に精霊を乗り移らせると、驚異的な能力で襲いかかってきた。
鐘發もサモハンに霊を憑依させ、ここに壮絶な妖術合戦の火蓋が切って落とされる!

▲本作には、後のキョンシーの原型ともいうべきキャラが既に登場していますが、ゾンビっぽかったり普通に走ってきたりと方向性が定まっていません。扱いも他の妖術とそんなに変わらず、当時はまだキョンシーだけで通すという考えは無かったものと思われます。
ホラー描写についてはグロテスクな演出が多く、生理的な嫌悪感を抱かせるシーン(実際にニワトリの首を切る・本物のウジ虫を体に這わせる・サモハンの腿が食いちぎられる等々)が多数ありました。おかげで雰囲気は出ていますが、こういうのが苦手な人は本当にダメなんだろうなぁ…(苦笑
 しかし前述の鐘發をはじめ、ガンコだがちょっとお茶目な林正英(ラム・チェンイン)など、人物描写はとてもユニーク。アクションも天下一品で、ラストの2連戦は素晴らしい出来栄えとなっています。
特にサモハンVS黄哈は棍棒と剣を駆使した死闘となり、デブゴン系列の中でも屈指のベストバウトでした。恐らく初見の人は、敵が『酔拳』で修業前のジャッキーに軽く倒されたオッサン(王将の弟)だと気付かないでしょうね(笑

『アムステルダム・コネクション』

2007-07-23 22:52:59 | カンフー映画:珍作
「アムステルダム・コネクション」
原題:荷蘭賭人頭
英題:Amsterdam Connection/Big Bad Bolo
製作:1978年

●パブリックドメインから突如として発売された、なんとも奇妙な雰囲気の怪作です。なぜ怪作なのかというと、本作は香港とオランダのアムステルダムとパリでロケーションを行い、おまけに監督があの元祖デブゴンこと樊梅生(フォン・メイサン)なのです(監督は羅棋(ロー・キン)と共同名義)。
キャストも樊梅生をはじめ、白彪(バイ・ピョウ)黄元申(ウォン・ユンメイ)楊斯(ヤン・スエ)といった濃い面子ばかり。ちょっとしたゲスト扱いで陳星(チン・セイ)まで登場します。
 内容はいわゆる黒社会アクションで、ストーリーは楊斯と樊梅生が仕切る2大組織による抗争を軸に、それぞれの組織に属する白彪と黄元申の友情と葛藤が描かれます。武術指導は白彪と楊斯(彼が指導するのは珍しい!)、そして黄哈(ウォン・ハー)の3人が一緒に担当していますが、アクション自体は全体的に少なめとなっていました。
クライマックスでは敵味方入り乱れての戦いが勃発し、エッフェル塔が見える公園で激突する白彪&黄元申VS楊斯という、目眩がするような光景を見ることが出来ます(苦笑)。しかしラストバトルはこの楊斯戦が終わっても延々と続き、なんとも中途半端な結末を迎えてしまうのです。
 作品そのものも消化不良な点がありますが、『Gメン75』を彷彿とさせる白彪と楊斯コンビ、監督権限で意外な強さを見せる樊梅生、下積み時代の姿がチラチラ見える林正英&陳龍など、見どころも無くはありません。
ちなみにこの作品、オリジナル予告編では『ロッキー』のテーマが高らかに響いていますが、本編で流れるのは最後の最後に少しだけ。これが国内版だけの仕様なのかは不明ですが、もし『ロッキー』のテーマが流れまくるバージョンがあったら…ちょっと見てみたいですね(笑
なお、本作を皮切りにパブリックドメインからカンフー映画が続々発売される予定でしたが、なんの音沙汰もないまま現在に至っています。今となっては知る由もありませんが、もしシリーズが順調に続いていたらどんな作品がリリースされていたのか、個人的にはヒジョーに気になります。

『死亡の塔』

2007-07-22 22:55:40 | 李小龍(ブルース・リー)
「死亡の塔」
死亡塔
Tower of Death
Game of Death 2
1981

●李小龍(ブルース・リー)の事実上最後の作品となった『死亡遊戯』。しかし実は、その作品の中でも使われていなかった幻の未公開フィルムが存在した。本作はその死亡遊戯未公開フィルムを使用して完成した、まさに李小龍正真正銘の傑作にして最高のカンフー映画なのである!
…という触れ込みで公開されたこの映画、もちろん皆さんが知っての通りトホホな出来である事はご承知の事でしょう。
もう一度李小龍で儲けようと本家ハーベストが作ったバッタモン映画たる本作は、上記にもあった死亡遊戯未公開フィルムなぞどこにも使用されず、代わりに燃えよドラゴンの未使用フィルム(およそ5分にも満たない)が使われただけのまさしく詐欺作品である。
しかも監督がなぜかハーベストじゃない思遠影業の呉思遠(ウン・シーユエン)&武術指導が袁和平(ユェン・ウーピン)なので、出演者メンツもどことなくジーゾナル系のメンバーで締められている(こっそり脇役でも出演している元彪も思遠影業にいた経歴あり)。
物語は、死んだ友人の黄正利(ウォン・チェン・リー)の謎を探るため、李小龍が日本と香港を行き来して真相に迫る!というもの。だが後半からは李小龍が死に(死んでるけど)、主役が唐龍(タン・ロン…『死亡遊戯』で李小龍の影武者を演じたかの人)へとチェンジ。エセ片腕ドラゴンや日本在住の残虐な武術家のロイ・ホランまで登場してますますカオスな雰囲気になっていく。
そのカオスっぷりは、唐龍が地下に向かって建てられた死亡の塔(塔じゃなくて地下室でしょ)へ突入していく辺りからさらに加速していく。近未来的な秘密基地や李海生(リー・ホイサン)やら楊成五(タイガー・ヤン)が立ちふさがり、最後には生きていた黄正利が黒幕と解り対決…恐らくこれを初めて見た人は、開いた口が塞がらなかった事だろう。
でも自分はそれ程悪くはないと思っている。世紀の怪作とまで酷評された『死亡の塔』ではあるものの、本作については評価できない事もないのだ。
それは袁和平が手がけた功夫アクションの数々にある。ぜんぜん李小龍っぽくないものの、その流れるような京劇仕込みのアクションは見事で、オマケに無理矢理挿入された"温室の決闘"(本来は『死亡遊戯』広東語版にしかない場面で、洪金寶が殺陣を付けた渾身の名バウト。[上下]薩伐(カサノヴァ・ウォン)の綺麗な足技も見どころ)も高クオリティだ。
珍作だからと毛嫌いしないで見ると、けっこう拾い物としていいかも(熱烈な李小龍ファン以外は)…?

『Weapons of Death』

2007-07-21 23:57:47 | マーシャルアーツ映画:上
Weapons of Death
製作:1982年

●皆さんはエリック・リーという人物をご存知でしょうか?この人はドン・ザ・ドラゴン・ウィルソンの『キング・オブ・キックボクサー』シリーズ(呉思遠作品とは無関係に作られた『2』以降の続編)でドンと何度も共演している、本物の格闘技チャンピオンです。
私が彼を初めて見たのは、『キング・オブ~』シリーズの第3弾『リング・オブ・ファイア』でした。この作品は格闘技の世界チャンピオンが多数出演していますが、肝心のアクション描写はぎこちなくてショボいの一言。そんな中でエリックさんは三節棍を振るい、そこそこ派手に立ち回っていたのを覚えています。
 この『Weapons of Death』は、そんな彼がドン・ウィルソン作品と関わりを持つ前に主演した映画で、若く俊敏な動きを見せるエリックさんを見る事が出来ます。もっとも自主映画に近い作品のようで、ストーリーもロケ地もかなり安く感じました。
物語はチャイナタウンで功夫道場を営むエリックさんが、チャイニーズマフィアの一派に妹のナンシー・リーを誘拐されてしまい、仲間たちと奪還に向かうというもの。監督は底抜けアクションの『Death Machines』を手掛けたポール・キャリアズで、本作では仲間の一人に扮してピストル(おい!)で闘っています。
 正直言って最初の1時間は少々退屈なのですが、注目すべきはクライマックスに押し寄せる怒涛のアクションシーンです。ここから作品のテンションは一気にヒートアップし、無名の作品にしてはなかなか激しいファイトが繰り広げられていました。
特に終盤のエリックさんVSジェラルド・オカムラ(『ホット・ショット2』の冒頭で審判をしていたおっさん…実は本物の武術家)は、マーシャルアーツ映画の黎明期に位置する作品とは思えないほどの激闘で、そこかしこに功夫映画の影響を感じさせます。
映画としては非常に粗末な代物ですが、マーシャルアーツ映画ファンにとっては一見の価値がある作品と言えるでしょう。