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功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

迫れ!未公開格闘映画(2)『Expect to Die』

2017-10-11 16:35:21 | マーシャルアーツ映画:下
Expect to Die/Time to Die
製作:1997年

▼90年代におけるアメリカのマーシャルアーツ映画界は、ヴァンダムやセガールといった多くのスターに恵まれ、腕に覚えのある男たちが続々と名乗りを上げました。
そんな中、アクションの技量だけに頼らず、自らの企画力で業界を渡り歩いた風変わりなスターが存在します。彼の名はジャラル・メーリ…ブラジル生まれのテコンドー使いだった彼は、自分の会社で格闘映画の製作を手掛けました。
 彼は自らのスター性を過信せず、他の格闘スターと共演する事で作品に価値を持たせました。シンシア・ラスロックと楊斯(ボロ・ヤン)を起用した『タイガークロー』、ビリー・ブランクスと組んだ『キング・オブ・ドラゴン』などは、その典型と言えます。
本作もそうした作品のひとつで、『アメリカン忍者』の後期シリーズを支えたデビッド・ブラッドリーに加え、『アメリカン・キックボクサー』のエヴァン・ルーリを投入。彼らの活躍に期待を寄せたいところですが、その出来はというと…(汗

■米軍で極秘裏にVR(ヴァーチャル・リアリティ)を駆使した訓練装置の開発が行われていた。しかし被験者の死亡事故が相次ぎ、デビッドが開発したVR装置は企画もろとも破棄を命じられる。だが彼はこの結果に納得せず、秘かに行動を開始していく。
一方、NY市警のジャラルは兵器の密売現場に突入し、同僚を失いながらも取引されていたブツを押収した。ところが麻薬や銃器に混じって、奇妙なディスクが見つかる。
 解析の結果、ディスクにはゲームのデータと思しき物が記録されていた。やがて「Expect to Die」というゲームソフトとの関連が疑われ始め、ジャラルは新たな相棒のエヴァンとともに捜査へ乗り出す。
実はゲームの開発元の代表(先のVR装置開発にも関与)と密売を主導していたブローカー、そしてデビッドは裏で繋がっていたのである。デビッドはシステムの開発を強行し、被験者を誘拐しては装置の餌食にしていた。
事件の核心に迫るジャラルたちと、徐々に狂気にかられていくデビッド。やがて敵襲によりエヴァンを失ったジャラルは、誘拐された妻を助けるためにVR装置のクエストに挑戦せざるを得なくなる。果たして、恐るべきゲームの結末とは…!?

▲本作は『サイバー・ウォーズ』と同じく、仮想現実を扱った作品となっています。VRといえば最近になって普及してますが、劇中に登場する装置は今のVRゴーグルとそんなに変わっておらず、デザインだけなら割とリアルに感じました。
ただしVR装置のCGが恐ろしいほどショボく、そのクオリティは初期の天才てれびくん以下。背景のパターンも限られているようで、VRの中で繰り広げられるアクションシーンでは、カメラワークが完全に固定化されています。
 デザインのセンスも壊滅的で、剣道着を着た敵キャラが斧を持って襲いかかってきたり、お姫様みたいな恰好で捕えられてるヒロイン(しかも何故か透けチクビ)など、頭を抱えたくなる描写が頻出します(爆
ストーリーについても単調さが拭えず、ジャラルの捜査もデビッドの狂気も上手く表現できていません。ヒロインはただの脱ぎ要員だし、相棒であるエヴァンとの関係も非常に淡泊だったりと、個々のドラマも薄味な仕上がりとなっていました。

 こうなるとアクションに望みを託すほかありませんが、残念ながら格闘シーンも問題だらけ。ジャラルとエヴァンは刑事なので銃を撃ち、デビッドはVRの開発に集中しまくるため、素手でのファイトが一向に見られないのです。
途中、VR装置の被験者たちがバトルを見せるものの、そこまで大したものではありません。主役の刑事2人が格闘戦に挑むのは開始1時間を過ぎてからで、一番いい動きを見せたエヴァンはここで殉職します…って、何この展開?!
 このあとジャラルはVR装置に挑戦しますが、先述したカメラワークの問題で迫力が出ず、最後のジャラルVSデビッドも実に微妙(フラフラしながら殴ったり投げたりするだけ)でした。
確かにジャラルはキャスティングに対する拘りを持っています。が、肝心の作品は大味な出来になっている事が多く、その中でも本作は最悪に近いパターンだったと言えるでしょう。せめてVRに固執せず、普通に殴りあってくれれば良かったのになぁ…。
 なお、現在はすっかり名前を聞かなくなったジャラルですが、現在も映画界で活動中。2015年には久々の主演作となる『Risk Factor』を発表し、ローレン・アヴェドン(!)と久々に共演。どうやら今も相変わらずの調子でやってるようです(苦笑
さて、少々テンションがダウンしてしまったので、次回はお口直しに香港アクションとのコラボ作品をピックアップ! 世界的な功夫映画マニアが仕掛けた、意外な対戦カードとは…詳細は次回にて!

『デス・マッチ』(イアン・ジャクリン主演作)

2015-03-19 22:30:13 | マーシャルアーツ映画:下
「デス・マッチ」
原題:DEATH MATCH
製作:1994年

イアン・ジャクリンとニコラス・ヒルは腕自慢の親友同士で、定職に就けず浮ついた生活を送っていた。そんな暮らしをイアンは終わらせたかったが、あくまでニコラスは金儲けに固執しており、2人は喧嘩別れとなる。
取り残されたニコラスは、マフィアの大物であるマーティン・コーヴが主宰する格闘大会に参加。しかし「負けて殴り殺されろ」と強要され、それに反対したことで制裁を受けてしまう…。
 親友からのSOSを受け取ったイアンは、新聞記者のレニー・アマンと協力して捜索を開始する。やがて2人はマーティンの格闘大会へと行き付き、これに参加してニコラスの行方を追う事となった。
ベニー・ユキーデ(本人役)から指導を受け、順調に勝ち星を重ねていくイアン。そこにマーティンが現れ、自陣に引き込もうと接触してきた。イアンたちは敵の悪事を暴くため、連中の本拠地に潜入を試みようとする。
だが、重要な書類を奪ったはいいものの、たちどころに居場所がバレて捕まってしまった。大型船に幽閉されたイアンは脱出に成功し、仲間を助けに向かうが…?

 本作は裏社会の格闘大会を描いた、よくあるタイプのマーシャルアーツ作品です。しかし主役のイアンを筆頭に本物の格闘家が多数登場し、格闘スターも何人か出演しているのがポイント。その顔ぶれはなかなかのものでした。
『レイジング・サンダー』マシアス・ヒューズ『ブレード/妖剣伝説』スティーブ・ヴィンセント・リー『バトル・ファイター』ジョージ・リベロ『Weapons of Death』エリック・リー、そして我らのユキーデまで(ジェット・センターも登場)!
 ところがこの手の作品の通例なのか、ラスボスのマシアスと主人公に修行を施すユキーデ以外は扱いが悪く、まともなアクションひとつすら見せていません。
思わせぶりに登場するスティーブは戦わないどころか本筋に絡んでこないし、ジョージは登場してすぐ蜂の巣に。エリックにいたっては単なるホテルの受付係という有様です(涙
 一方、ストーリーは単調ですが登場人物はそこそこ個性的で、特徴的なWヒロイン(やり手の記者のレニー&強くてボーイッシュな少女)にも目を惹かれました。
しかしレニーは色々な過程をすっ飛ばして主人公と恋仲になり、ボーイッシュ少女はあっという間に出番が激減。こちらも格闘スターと同様に、料理の不味さが目立っています。

 なんだか嫌な予感がしてきましたが、格闘アクションに関しては全体的に平均以上のレベルを維持。登場するファイターたちはそれなりに個性があるし、イアンも所々で切れのいい蹴りを放っていました(ニコラスの方が動けていましたが)
ところが格闘大会でのイアンは積極性に欠けていて、どの試合も一方的に叩きのめされた後で逆転勝ちを得るという、かなり味気ない内容となっています。
 実は彼は過去に対戦相手を死なせてしまい、戦いに対してトラウマを抱いているという設定があるのです。おかげで試合はしょっぱくなり、勝ったとしても落ち込んでばかり。これでは盛り上がるものも盛り上がりません。
製作サイドとしてはドラマに深みを与えたつもりでしょうが、実際は完全にアクション演出の重荷となっています。なお、トラウマを克服するようなイベントなどはなく、後半からイアンは普通に敵を殴ったり殺したりしていました(爆
 ラストバトルの展開もなんだかなぁという感じで、2度にわたるイアンVSマシアスは格闘大会というイベントから逸脱し、勢いのあった前半からは想像できない規模にダウンしています。
ストーリーは特別ダメというわけではないし、アクションの質も全体を通してみれば悪くないのは確か。ただ、キャストの扱いやファイトシーンに対する配慮が圧倒的に足りておらず、様々な面で「惜しい」と思わせる作品でした。

『ディレイルド 暴走超特急』

2014-10-22 23:22:54 | マーシャルアーツ映画:下
「ディレイルド 暴走超特急」
「ヴァン・ダム IN ディレイルド 暴走超特急」
原題:DERAILED/TERROR TRAIN
製作:2002年

●東欧のスロバキアにある軍事施設から、女泥棒のローラ・エレナ・ハリングが細菌兵器を盗み出した。秘密工作員のジャン=クロード・ヴァン・ダムは彼女を護送すべく、家族との休暇を打ち切るはめになる。
どうにか軍の追跡を振り切った2人は、特急列車に乗り込んで目的地のミュンヘンへと向かった。だが細菌兵器を狙うテロリストが現れ、乗客やヴァンダムを追いかけてきた家族が人質になってしまう。
 彼は事態の収拾を図るが、トラブルにより細菌兵器が列車内に拡散。乗客に感染が広がる中、次々と降りかかるアクシデントにたった1人で対処していく。だが、そうこうしているうちに軍によって列車の爆破が決定され、刻一刻とその時が近づきつつあった。
果たしてヴァンダムは家族と乗客を救い、テロリストを一掃できるのだろうか!?

 90年代に最盛を極めたヴァンダムですが、00年代に入るとその勢いも衰えつつありました。本作はそんな苦闘の時期を象徴するような、あらゆる面でイケてない作品です。
ストーリー的には列車アクションにウィルス・パニックを絡め、一粒で二度おいしい路線を狙ったものと思われます。しかし全体的に演出が地味で、キャラクターの描写も薄味。この手の作品に必要なケレン味が圧倒的に足りていません。
 余計なシーンも多く、中盤にヴァンダムがバイクで列車から下車→再び乗車するシーンなどは完全に不要です。そもそも追ってきた敵は大体倒してるので降りる必要はないし、むしろ発症してないとはいえヴァンダムが細菌をまき散らしているような気が…(汗
おまけにラスボスとの最終決戦はあっさり終わるわ、クライマックスとなる列車停止も全く盛り上がらないわと散々。ヴァンダムが息子(演ずるはヴァンダムの実子であるクリストファー・ヴァン・ヴァレンバーグ)と再会するシーンもかなり淡泊でした。

 一方で、アクションシーンは全体的に並みのボリュームを保っており、派手なカーチェイスや列車爆破などの見せ場もあります。ところが格闘戦となると思い切りが足らず、肝心のラスボス戦も先述の有様です。
自慢の回し蹴りも今回は控えめで、逆に演出(画面の二分割など)のせいで迫力が削がれていました。同じ列車アクションである『暴走特急』が、セガールという素材を上手く生かしていたことを考えると、本作はまさに正反対の出来と言えるでしょう。
 のちにヴァンダムは『その男ヴァン・ダム』に出演し、吹っ切れて再びド派手なアクション映画へ出るようになるのですが、そこへ至るまでの時期に撮った作品はあまり見ていません。どれも肉弾アクションは控えめのようですが、今後はこれらの作品にも目を通していきたいと思います。
…ところで、本作のラスボスを担当した声優が若本規夫だったのは、もしや『暴走特急』へのオマージュ!?(違

『アラジンと魔神のランプ』

2014-09-10 22:22:31 | マーシャルアーツ映画:下
「アラジンと魔神のランプ」
原題:ALADDIN AND THE DEATH LAMP
製作:2012年

●かつて香港を拠点に活動していた白人功夫スターの中に、ダーレン・シャラヴィという男がいました。野性的な風貌と卓越した武術の腕を持つ彼は、今や世界中で名を轟かせています。
香港で下積みを重ねた際に『太極神拳』で呉京(ウー・ジン)と戦い、アメリカに渡ってからはゲイリー・ダニエルズ主演の『Blood Moon』や、セガールの『沈黙の復讐』でラスボスを担当しました。
 近年は『葉門 イップ・マン』『マキシマム・ブロウ』といった話題作に出演するなど、ますます知名度を高めてきているダーレン。ところが華々しい活躍とは裏腹に、代表的な主演作が1つも存在しないのです。
格闘映画で正義の味方に扮した作品といえば、助演だった『ネイビー・ストーム』ぐらい。濃いルックスや悪役の印象が強すぎる点などが、主演作を遠ざけている一因なのかもしれません。

 本作はそんな彼にとって数少ない、そして日本に上陸した2つの主演作のうちの1本です。ちなみにもう1本はドイツで撮った『ビヨンド・ザ・リミット』で、こちらは滅茶苦茶グロいホラー映画なのだとか…。
ホラーが苦手な私は当然のように本作を選んだわけですが、困ったことにこちらも違う意味で「見なきゃ良かった」と思わせる迷作でした(爆
 まず本作は、見てのとおり「アラジンと魔法のランプ」を元にしていますが、ストーリーはまったくの別物。一番の違いはランプの魔人で、本作では人間を喰らう怪物として猛威を振るいます(だから原題が「THE DEATH LAMP」)。
物語はダーレンが魔人を解き放ってしまい、様々な仲間とともに魔人を封印するための冒険に挑むというもの…なんですが、これがまた壮絶につまらないのです。
 まず目に付くのがセリフと実際の描写の落差でしょう。「世界一険しい山」が普通に登頂できたり、「絶対に見つからないように」と捨てたランプが簡単に見つかったりと、まるでツッコミ待ちのギャグみたいな光景が続きます。
後半の舞台となる「呪われた島」にいたっては、魔人の仲間を呼び寄せる魔界への扉があるくらいで、特に呪われてるようには見えない始末。アドベンチャーでは定番の罠や猛獣も、ここでは全く出てきません(猛獣は序盤と中盤だけ登場)。

 冒険の様子は淡々と歩き続けるだけで面白みがなく、クライマックスでは相棒のダメ男が裏切ったのを皮切りに、ストーリーのグダグダさが一気に加速してしまいます。
雑な描写のせいで突然狂ったようにしか見えないヒロイン、ご都合主義で死んだと思ったら生き返る魔術師、そして唐突に改心するダメ男…。これらの超展開とやっつけ気味のラストには、私も呆気にとられるばかりでした。
 作品自体がこんな調子なので、アクションも当然のごとく低クオリティ。スタッフにダーレンの動きを生かすという発想は無く、ひたすら古典的でぎこちないソードバトルが続きます。
後半には兄弟同然の関係だったダメ男とダーレンの対決があり、それなりに盛り上がりそうな展開に微かな期待を抱きました。が、すぐに魔人の横槍が入って中断してしまうのです。せっかく主役がダーレンなのに…こんなの無いよ!(涙
トレジャーハンターが主人公なのに、作品自体が”宝の持ち腐れ”という笑えない洒落をかましたド珍品。同じ香港下積み組のスコット・アドキンスらが主演作を連発する中、ダーレンにも頑張って欲しいのですが…やっぱり難しいのかなぁ?

『デビルズ・ストーム』

2014-01-28 22:12:55 | マーシャルアーツ映画:下
「デビルズ・ストーム」
原題:NATURE UNLEASHED: TORNADO
製作:2004年

▼90年代のアメリカでは多くの格闘俳優が誕生しましたが、安定した人気を保ち続けたスターは一握りしかいません。ピークを過ぎた俳優たちはマーシャルアーツ映画から卒業し、別のジャンルで自らの方向性を模索しました。
とりわけパニック映画とSF映画に出演する割合が高く、落ち目の格闘俳優たちが数多く参加しています。ドルフ・ラングレンは『レトログレイド2204』、ゲイリー・ダニエルズは『ターミネーターNEO』でSF映画に挑戦。あのマーク・ダカスコスも、最近はSF映画への出演が多くなっているようです。
一方、『コブラ・キラー』のロレンツォ・ラマスはパニック映画の常連となり、他にもブライアン・ジェネスなどが同ジャンルへ進出しています。『ブラッド・スポーツ2』ダニエル・バーンハードも例外ではなく、本作のようなB級パニック映画に何度か顔を出していました。

■父を竜巻で亡くした過去を持つカメラマンのダニエルは、取材でルーマニアへ行くこととなった。当初は気が進まなかったが、父の残した資料からロマ族(実在する少数民族)の伝承に行き着き、邪教集団が巨大竜巻で災厄を引き起こそうとしている事を知る。
彼は同僚のルース・プラット、ロマ族の占い師であるアンヤ・ラヒリと協力し、邪教集団のアジトを突き止めた。事件の黒幕はロマ族の保護を訴えていた大臣のラリー・デイで、本当の目的はロマ族の抹殺だったのだ(保護を訴えていたのは集会でロマ族を一網打尽にするため)。
伝説に記された巨大竜巻…メタ・テンペストが迫る中、ダニエルはロマ族を救うことが出来るのか!?

▲本作は竜巻をテーマにした災害パニック映画ですが、竜巻を自然現象ではなく操られた災厄として描いています。実際に突風を起こして車や物を飛ばしたり、本物の竜巻の映像を使用したりと、災害描写に関してはそれほど悪くありません(一部のCGはアレでしたが…)。
ちなみにメタ・テンペストとは、”悪魔の顔が浮かぶ竜巻”というケレン味あふれる代物。前兆として登場する竜巻にオカルト的な描写があり、メタ・テンペストがどれだけ猛威を振るうのか期待したのですが、まさかあんなにアッサリ消滅するとは思いもよりませんでした(笑
 この他にもツッコミどころの多い本作ですが、主役がダニエルということで格闘シーンもちゃんと用意されています。しかし、彼が闘うのは後半にアジトへ潜入した際と、ラリーの手下と戦うシーンの2つだけ。終盤には竜巻の目前でラリーと殴りあいますが、どれも大したアクションでは無かったですね。
本作のようなB級以下の作品に出演したスターのうち、先述のドルフやゲイリーは第一線に返り咲きました。私としては、ダニエルやダカスコスも第一線への復帰を望んでいるのですが…誰かこの手のキャストを勢揃いさせて、『ミニ・エクスペンダブルズ』でも撮ってくれないかなぁ?

『アメリカン・キックボクサー』

2013-12-12 23:00:27 | マーシャルアーツ映画:下
「アメリカン・キックボクサー」
原題:AMERICAN KICKBOXER/AMERICAN KICKBOXER 1
製作:1990年

●キックボクシングのミドル級王者であるジョン・バレットは、祝賀パーティで傲慢なキックボクサーのバード・モリスと口論になった際、止めに入った客を突き飛ばして死なせてしまう。
事故であることを主張するジョンだが、裁判所はバードの主張を認めて有罪判決を下した。それから10ヵ月後、釈放されたジョンはジムのオーナーの口利きで審判として復帰するが、彼に代わって王座に君臨したバードはなおも挑発を繰り返していく。
 その後、ジョンは友人でキックボクサーのキース・ヴィダリのトレーニングを受け持つが、色々あって喧嘩別れに。キースは彼が不在のままバードに挑むも、あえなく返り討ちにあってしまった。
更にはパーティの席でバードとケンカになり、手も足も出なかったジョンは突如として出奔。一方、彼とバードのメイクマッチを画策する新聞記者のテッド・ルプラットは、あの手この手を使ってお膳立てを行い、2人をリングへと引きずり出した。
キースや恋人のテリー・ノートンの励ましを受け、心身ともに立ち直ったジョン。…今、彼はすべての遺恨を精算するべく、憎き仇敵との決戦に挑む!

 本作は先日『スパルタンX』を見ていて、ふと「そういえばキースの出演作でまだ見てない作品があったなぁ」と思い、中古ビデオの山から掘り出して視聴した作品です。
実を言うと購入したのは随分と前なんですが、パッケージや粗筋を見て面白く無さそうだと判断し、そのまま放置していました。そこで今回、ようやく目を通してみましたが…やっぱり面白くありませんでした(爆
 ストーリーは『ロッキー3』を意識したものですが、テンションは元の作品より大幅に下がっています。原因は湿っぽい主人公、フラストレーションの溜まる悪役サイドの2つにあると言えるでしょう。
主人公のジョンは己の感情が抑え切れず、嫉妬深いという面倒臭い性格の人物。テリーとキースが親密なのが気に食わず、トレーニングで当り散らす様はかなり小物っぽく見えます。
対するバードは生意気かつダーティなキャラであり、どこぞの3兄弟を髣髴とさせるヒールっぷりを発揮します。その言動は見ていて非常にイラつきますが、おかげでラストバトルを盛り上げるのに一役買っていました。

 しかし、もう1人の悪役であるテッドはただひたすら鬱陶しく、見ていて嫌悪感しか感じません。野次を飛ばし、敵味方構わずに相手をコケにし、記者という立場を利用してジョンを煽るなど、バード以上に悪質な存在として猛威を振るいます。
テッドの暴走は終盤まで続き、最後の最後に報いを受けるのですが、なんとパンチ1発食らっただけで終了。私はてっきりバードに殴り殺されるのだろうと予想していたので、この結末には納得できなかったです。
 格闘シーンのクオリティも無難な出来で、飛びぬけて凄いと言えるシーンはこれといって無し。登場人物のファイトスタイルはバードを除いて差別化されておらず、延々と平凡な試合が続きます。
注目のキースは序盤からジョンと、中盤でバードと戦いますが、どの勝負も決め手に欠けていて薄味に仕上がっています。ファイト・コーディネーターはジョンとキース自身が担当しているのに、このような結果となってしまうとは…。
ストーリー、アクションともにひたすら単調な便乗作。続編の『リアル・キックボクサー』で方向転換したのも頷ける出来でした。もっとも、その『リアル~』も煮え切らない出来だったりするんですけどね(苦笑

GARY OF GOLDEN AGE(終)『エネミー・アクション2』

2013-10-27 22:35:22 | マーシャルアーツ映画:下
「エネミー・アクション2」
原題:QUEEN'S MESSENGER
製作:2000年

●英国特殊部隊SASに所属するゲイリー・ダニエルズは、外務大臣によって女王陛下のメッセージを伝達する「QUEEN'S MESSENGER」に任命された。今回の任務は、内戦が勃発しているカザフスタンの英国大使館に、とある重要な書類を届けるというものであった。
さっそくカザフスタンに飛んだゲイリーだが、いきなり空港で謎の刺客に襲われてしまう。刺客の正体は現政権を打倒しようとする反乱軍であり、書類を届けたあとも攻撃が終わることはなかった。
 その後、反乱軍は会談に向かおうとしていた大使のヘリをジャックし、ゲイリーともども捕縛。2人はアジトに連行されるが、そこには現地で知り合った美人レポーターのテレサ・シーラーも(取材という名目で)拉致されていた。
このままでは殺されるのも時間の問題だ。そこでゲイリーは装甲車を奪って脱出し、会談が行われる要塞に逃げ込むと、返す刀でアジトを壊滅させた。かくして反乱軍のボスは死亡し、事件は無事に解決…かと思いきや、今度は反乱軍の残党が攻めてきたからさぁ大変!どうするゲイリー!?

 以前から評判は聞いていましたが、本作はちょっと…というか非常にイマイチな代物で、作品の舞台と同じくらい寒々しさを感じさせる出来になっていました(爆
ストーリーは凡庸で抑揚がなく、石油の利権問題というテーマも取ってつけた感じがします。アクション描写はそれ以上に重症で、90年代の作品群とは比べ物にならない惨状が繰り広げられています。
 まず、本作のアクションは基本的にスピード感というものを意識していません。そのため、バイクが車を飛び越えても、本物の装甲車同士が撃ちあっても迫力は皆無。銃撃戦もダメダメで、冒頭の訓練シーンは何をしようとしているのか全く解らない状態でした。
格闘シーンも技を受けるザコのリアクションが弱く、最後にタイマンで闘えそうな相手(火傷を負った敵の幹部)はあっさり爆死してしまいます。まさかここまでアクションのツボを外しまくるとは…う~ん。

 このように、2000年以降のゲイリーは良い作品に恵まれず、長い停滞期に突入することとなります。『レトログレイド2204』でドルフ・ラングレンと、『沈黙の追撃』でスティーブン・セガールと競演するものの、その扱いは散々。もはや後は消え行くのみ…と思われました。
しかしゲイリーは燃え尽きていなかったのです。2009年の『TEKKEN』で息を吹き返した彼は、翌年に『エクスペンダブルズ』に参戦して健在ぶりをアピール。こちらでも扱いにやや難はあるものの、李連杰(ジェット・リー)やジェイソン・スティサムと拳を交えています。
続いて彼はウェズリー・スナイプス『ゲーム・オブ・デス』で戦い、スティーヴ・オースティン『ザ・ハンティング』で対決。『Forced to Fight』では久々に格闘映画の主演を飾り、今なお猛進を続けています。
 ゲイリーが90年代に主演した作品は、どれも派手なアクションシーンに彩られていました。作品の持つ迫力や規模などの点を考慮すると、彼の黄金期はまさしく90年代であったと言えるでしょう。
しかし、現在のゲイリーは様々な猛者たちと渡り合い、格闘スターとしてはより円熟味を増しているように思えます。確かに彼にとっての黄金期は過ぎ去りましたが、まだまだ大きな可能性を秘めているはずなのです。
90年代に全盛を極め、00年代を耐え忍んだゲイリー・ダニエルズ。そんな彼が2010年代にどんな活躍を見せてくれるのか――もしかすると新たなGOLDEN AGEは、すぐそこまで迫っているのかもしれません…。(特集、完)

GARY OF GOLDEN AGE(04)『ノー・トゥモロー』

2013-10-15 22:21:44 | マーシャルアーツ映画:下
「ノー・トゥモロー」
原題:NO TOMORROW
製作:1998年

●海運会社に勤めるゲイリー・ダニエルズは、あるとき仕事仲間から書類改竄の裏ビジネスを紹介される。この仕事を指示していたのは武器商人のゲイリー・ビジーで、彼は近々大きな取引を控えていた。
その取引とは、数百万ドル相当の兵器を過激派組織に売り込むというもので、中にはプルトニウム核弾頭も含まれているという。パム・グリア率いるFBIの捜査チームは、この不穏な動きをいち早く察知し、密かに潜入捜査官を派遣していた。
 一方、マフィアのマスターPは対立関係にあるビジーに奇襲を仕掛けたが、ゲイリーの機転によってビジーは脱出に成功する。彼を高く評価したビジーは、さっそく自分たちの仲間に引き入れようとするのだが…。
同じ頃、ゲイリーは今の仕事を辞めたいと考えており、娼婦のジョディ・ビアンカ・ワイズと男女の関係を結んでいた。FBI、武器商人、過激派組織、マフィア、そしてゲイリー…。それぞれの思いが交錯する中、遂に取引の日が訪れ、意外な事実が明かされる!

 PMエンターテイメントに帰ってきたゲイリーが、ベテラン俳優陣に囲まれて出演したコンゲーム風味のアクション映画です。様々な勢力が入り乱れるストーリーで、出演もしているマスターPが監督を兼任しています。
彼は序盤から火炎放射器を振りかざして暴れまわり、「これってマスターPの俺様映画!?」と見る者を不安にさせますが、ちゃんとゲイリーを中心にした群像劇として仕上がっていました。
 ストーリーは思ったほど複雑ではなく、マスターPの俺様演出も彼の登場場面のみ。途中でなんとなく読めてしまいますが、潜入捜査官の正体やラストのどんでん返しなど、出来に関しては悪くないといえます(最後のオチはちょっと蛇足かも)。
ところが、どういう訳か本作にはゲイリーの格闘シーンが一切ありません。彼が見せるアクションは銃撃戦やカーチェイスだけで、格闘シーンはパム・グリアとマスターPが1回ずつ披露するのみ。ゲイリーと同じ格闘俳優であるフランク・ザガリーノは、序盤に速攻で爆死してしまいます(苦笑
 ド派手な見せ場はそれなりにあるし(ヘリコプター爆発・炎上しながら着陸する飛行艇などなど)、普通のアクション映画として見るならボチボチの出来なんですが…やっぱりゲイリーの格闘が無いと物足りないよ!(涙
さて、華やかな90年代も終りに近付き、PMエンターテイメントの時代も終焉を迎えつつありました。そこでゲイリーは次なる出演作に、まるで本作での鬱憤を晴らすかのようなマーシャルアーツ・ムービーを選びます。監督の名は…そう、アイザック・フロレンティーン!

『沈黙の標的』

2013-05-07 22:39:01 | マーシャルアーツ映画:下
「沈黙の標的」
原題:Out for a Kill
製作:2003年

●数年前、私はyoutubeでスティーブン・セガールの動画を見たのですが、その中で少林僧?や猿拳使いが登場するカットがあり、ずっと何の作品なのか気になっていました。しばらくして件の映像が本作のものと分かり、さっそく視聴してみました…が、これは……。
物語は、麻薬密売を企むチャイニーズマフィアの陰謀に考古学者(元怪盗)のセガールが巻き込まれ、殺された助手と妻の敵を討つために戦うというもの。とてつもなくシンプルなプロットですが、何故か本作は全編に渡ってテンションが異様に低く、1つとして盛り上がるシーンが存在しません。
これは『ICHIGEKI 一撃』のように意図的に抑えた作風にしたのではなく、明らかに演出の不備によるものです。ストーリー展開は飛び飛び、映像はスタイリッシュを気取ろうとして大失敗、そして全体的に画面が暗いというオマケ付き。これらの欠点が災いし、単純なはずの話が更に分かりづらくなっていました。

 一方、ファイト・コレオグラファーを香港の武師である劉志豪(かの『ワイルド・ブリット』『ツイ・ハーク THE マジック・クレーン』の武術指導を務めた実力派)が担当しているので、劇中の格闘アクションはそこそこ見栄えがあります。
本作で最大の…というか数少ない見せ場は、先述のセガールVS少林僧、そしてVS猿拳使いの2つです。特にユニークなのがVS猿拳使いで、敵がワイヤーワークを駆使して香港映画チックに飛び回り、いつもより若干動けているセガールと戦いを繰り広げていました。
劉志豪はよく程小東(チン・シウトン)と組んで仕事をしており、この一戦は恐ろしくチープですが程小東の影響を感じさせるものになっています。しかし、それ以外の格闘シーンはまったくもって盛り上がらず、妻を殺した仇敵との決着も驚くほどアッサリしています(ラスボスの最期にいたってはギャグと紙一重)。

 セガールVSチャイニーズマフィア…味付け次第で化ける可能性はあったのに、このような結果で終わったのは残念至極。この時期のセガールは香港を意識した作品をいくつか撮っていますが、本作はその中でワーストの出来と言えるかもしれません。
ちなみに本作の監督であるマイケル・オブロウィッツは、香港系スタッフ抜きで作った『撃鉄 GEKITZ ワルシャワの標的』を手掛けていますが…こっちもかなり駄目そうだなぁ(汗

『デイ・オブ・ザ・ディシジョン2』

2012-11-07 22:39:37 | マーシャルアーツ映画:下
「デイ・オブ・ザ・ディシジョン2」
原題:SWAT: WARHEAD ONE
製作:2005年

●今回は、9月に紹介した底抜け格闘映画『デイ・オブ・ザ・ディシジョン3』の前作(ということになっている無関係の作品)を取り上げてみたいと思います。
かつて本作の予告編を見た際、私はクオリティに問題ありと判断して視聴を見送りましたが、このたび思い切って視聴に踏み切りました。「主演は『ネメシス』のオリビエ・グラナーなんだし、見どころの1つくらいはあるはず」と、見る前は思っていた訳ですが……。

 8年前、軍の特殊部隊に属していたオリビエは、テロリストによる核兵器強奪を阻止できなかった責任を問われて除隊。現在はSWATに再就職し、チャイニーズマフィアが絡む偽札製造事件を追っていた。しかし、やたらと問題行動を起こすオリビエに対し、彼の上司はTVリポーターのメル・ノヴァックにお目付け役を任せてしまい…。

 という感じの話なのですが、本作はそれ以前に大きな問題を抱えています。まず第1に、本作は全編に渡って他の映画から流用した映像と、ビデオ撮りと思しき風景のカット・実際の群集や警察の映像が混ぜこぜにされている…という点です。
この2つの映像とオリビエたちが登場する本編映像は明らかに画質が違い、見ていて違和感を感じずにはいられません。これらの映像を用いたのが何でもないシーンならいいんですが、マフィア同士の抗争という重要なシークエンスを、あろうことか本作は流用映像の垂れ流しで処理しているのです。
また、警官が爆弾で吹っ飛ぶシーンが終盤にあるのですが、なんと実際の警官の映像をムリヤリ合成して吹っ飛んだように見せるという、まるでMADムービーのようなカットがあって爆笑してしまいました(笑

 そして第2に、劇中で何度も使われるCGが恐ろしくショボい点が挙げられます。特に酷いのがクライマックスに登場するヘリの映像で、まるで冗談のような描写と結末を迎えます。第3に、映像面での酷さのせいであまり気になりませんが、ストーリーもかなり無茶苦茶でした。
主人公の行動がその最たるもので、優柔不断・命令無視は当たり前。マフィアが病院に立てこもり、人質の命が危険に晒されている状況でも、「中にいる妻を助けたいから俺を行かせてくれ」などと個人的な主張を通そうとします。型破りなリーダーとして演出したかったのでしょうが、いくらなんでもこれは…。

 本作の凄まじさはこれだけに止まりません。第4に、肝心の格闘シーンもイマイチなものとなっているのです。ファイト・コレオグラファーをオリビエ本人が、スタント・コーディネーターを敵に扮したジェラルド・オカムラとロン・ホールの両名が担当してますが、格闘描写は単なる平凡な殴り合いに止まっていました。
チャイニーズマフィアが敵なのでカンフー系のザコが出てきたりしますが、ボスのオカムラと腹心のロンはオリビエと拳を交えることはなく、呆気なく射殺されてしまいます(どっちも動ける人なのに…)。流用映像に登場していたジェームス・リューはいい動きをしていたんだけどなぁ…。

 『3』はクオリティこそ低いものの、演出・撮影・脚本・アクションは一貫性がありました。しかし本作には一貫性どころか、普通の映画が持ちえるはずの物が多くの面で欠けているのです。冗談抜きでフィルマーク映画に匹敵する歪さ…いくらなんでもこの惨状は酷すぎる!!(血涙
なお、本作の監督と製作を兼任したデヴィッド・ヒューイは、この他にもあらゆる面でヤバい作品をいくつか手掛けており、あの超怪作『ダイナソー・ファイター カンフーVS巨大恐竜』も彼の仕事の1つなのだそうです。