「オールドマスター 師父出馬」
原題:師父出馬
英題:The Old Master
製作:1979年
▼色んな意味で珍しい于占元の主演作だ。于占元とは、ご存知ジャッキーやサモハンら七小福を鍛え上げた京劇の師匠で、その道の大家だった方である。
本作が作られた当時、『少林寺への道』を作り出した台湾の巨匠・郭南宏(ジョセフ・クオ)は、コメディ功夫片の流行に乗ろうとジャッキー風の作品を何本か手掛けていた。だが、郭南宏の元には七小福出身の専属スターがおらず、主演に宛がわれたのは李藝民や劉家勇などの非・七小福系スターばかりであった。そこで郭南宏はジャッキーの師である于占元のネームバリューに目を付け、ついでに当時の七小福を引っ張り出すことで、自作に七小福の風を吹き込んだのだ。
本作が一風変わっているのは、当時としては珍しい海外ロケの現代劇という点である。普通なら流行りのコメディ功夫片を撮ればいいのに、どうして本作はわざわざ現代劇にしたのか?その答えは、同時期に郭南宏が製作していた他のジャッキー風作品の中にあった。
袁小田を担ぎ出した『ドランクマスター・酔仙拳』、黄正利を出演させた『迷拳三十六招』『五爪十八翻』、オードソックスな作風の『雙馬連環』等々…郭南宏がこれまで作ってきたジャッキースタイルの映画は、古典的なコメディ功夫片ばかりだった。そこで「今回も同じ様な作品にすれば印象が重複してしまう」と危惧した郭南宏は、思い切って本作を現代劇にしたのだと思われる。加えて、京劇界の大物である于占元の主演作を撮る以上、中途半端な作品にしてしまったら失礼千万だ。故に、郭南宏は並々ならぬ意気込みで本作を作り上げたものと思われるが、ではその肝心な内容はというと…?
■チャイナタウンの功夫道場を建て直すため、大師匠の于占元がニューヨークに降り立つ場面から物語は幕を開ける。于占元は弟子の指導に務める傍ら、次々と現れる武術家たちと熾烈な闘いを繰り広げていた。だが、実はこの戦いは現地の師父がゴロツキと共謀して仕組んだもので、于占元は格闘賭博の賭け対象にされていたのだ。この事実は、賭けに負け続けていた相手側がブチギレたことですぐに発覚。激怒した于占元は道場を出て行ってしまうが、門下生の1人・雷小虎が彼を呼び止めた。
雷小虎は真剣に功夫を習いたいと思っていた青年で、先の道場では下働きばかりさせられていたらしい。彼は于占元を自宅に招待すると、「オレっちに功夫を教えてくれ!」と強引に弟子入りを志願。彼の情熱に根負けした于占元は、マンツーマンで雷小虎に修行を施していくのだった。
働き口も見つかり、オフの日は遊びに出かけたりと異国での生活をエンジョイする于占元。実に楽しげな日々が続いたが、例のチンピラ連中は未だに彼らを付け狙っていた。「そろそろ香港に帰る時が来たようじゃのう…」これ以上のトラブルを避けるため、于占元は帰国する決意を固めつつあった。ところが、帰国の当日に雷小龍のいた道場がゴロツキどもにケンカを売られたとの一報が舞い込んできた。
こうなってしまったのは自業自得。そう一刀両断する于占元に対し、雷小虎はそれでも助けに行くべきだと主張。彼の言葉に突き動かされ、于占元と雷小虎は決戦に挑む!
▲展開される物語は特筆されるような内容ではないが、ほんわかと楽しい作品である。本作の目玉はやはり于占元先生にあり、本作では厳しくも茶目っ気のあるお師匠様に扮し、厳格すぎない親しみを感じるキャラクターを好演している。劇中ではコメディ功夫片っぽい修行を雷小虎に課し、彼と一緒に観光やジョギングに興じたりと、その姿はまるで「元気な親戚のおじいちゃん」といった感じで実に微笑ましい(笑
ただ、さすがにお年なのでアクションシーンではスタントダブルが多用され、于占元本人による功夫ファイトはあまり見ることができない(一応、ラストバトルでは本人が見事な棒術アクションを見せてます)。そこで師匠に代わり、後半のアクション不足を補うのが愛弟子・雷小虎だ!雷小虎は李小龍チックな動きとロボットダンス拳を駆使し、並み居る外人格闘家たちと熱戦を繰り広げている。これで、最後に強敵との一騎打ちならもっと盛り上がったんだけどなぁ……。
作品としては小粒ながら、于占元の暖かいキャラと雷小虎のインチキ李小龍アクションが楽しい佳作。やっぱり功夫映画はアクションが1番だけど、キャラクターの魅力も大切なのだと改めて実感しました。
原題:師父出馬
英題:The Old Master
製作:1979年
▼色んな意味で珍しい于占元の主演作だ。于占元とは、ご存知ジャッキーやサモハンら七小福を鍛え上げた京劇の師匠で、その道の大家だった方である。
本作が作られた当時、『少林寺への道』を作り出した台湾の巨匠・郭南宏(ジョセフ・クオ)は、コメディ功夫片の流行に乗ろうとジャッキー風の作品を何本か手掛けていた。だが、郭南宏の元には七小福出身の専属スターがおらず、主演に宛がわれたのは李藝民や劉家勇などの非・七小福系スターばかりであった。そこで郭南宏はジャッキーの師である于占元のネームバリューに目を付け、ついでに当時の七小福を引っ張り出すことで、自作に七小福の風を吹き込んだのだ。
本作が一風変わっているのは、当時としては珍しい海外ロケの現代劇という点である。普通なら流行りのコメディ功夫片を撮ればいいのに、どうして本作はわざわざ現代劇にしたのか?その答えは、同時期に郭南宏が製作していた他のジャッキー風作品の中にあった。
袁小田を担ぎ出した『ドランクマスター・酔仙拳』、黄正利を出演させた『迷拳三十六招』『五爪十八翻』、オードソックスな作風の『雙馬連環』等々…郭南宏がこれまで作ってきたジャッキースタイルの映画は、古典的なコメディ功夫片ばかりだった。そこで「今回も同じ様な作品にすれば印象が重複してしまう」と危惧した郭南宏は、思い切って本作を現代劇にしたのだと思われる。加えて、京劇界の大物である于占元の主演作を撮る以上、中途半端な作品にしてしまったら失礼千万だ。故に、郭南宏は並々ならぬ意気込みで本作を作り上げたものと思われるが、ではその肝心な内容はというと…?
■チャイナタウンの功夫道場を建て直すため、大師匠の于占元がニューヨークに降り立つ場面から物語は幕を開ける。于占元は弟子の指導に務める傍ら、次々と現れる武術家たちと熾烈な闘いを繰り広げていた。だが、実はこの戦いは現地の師父がゴロツキと共謀して仕組んだもので、于占元は格闘賭博の賭け対象にされていたのだ。この事実は、賭けに負け続けていた相手側がブチギレたことですぐに発覚。激怒した于占元は道場を出て行ってしまうが、門下生の1人・雷小虎が彼を呼び止めた。
雷小虎は真剣に功夫を習いたいと思っていた青年で、先の道場では下働きばかりさせられていたらしい。彼は于占元を自宅に招待すると、「オレっちに功夫を教えてくれ!」と強引に弟子入りを志願。彼の情熱に根負けした于占元は、マンツーマンで雷小虎に修行を施していくのだった。
働き口も見つかり、オフの日は遊びに出かけたりと異国での生活をエンジョイする于占元。実に楽しげな日々が続いたが、例のチンピラ連中は未だに彼らを付け狙っていた。「そろそろ香港に帰る時が来たようじゃのう…」これ以上のトラブルを避けるため、于占元は帰国する決意を固めつつあった。ところが、帰国の当日に雷小龍のいた道場がゴロツキどもにケンカを売られたとの一報が舞い込んできた。
こうなってしまったのは自業自得。そう一刀両断する于占元に対し、雷小虎はそれでも助けに行くべきだと主張。彼の言葉に突き動かされ、于占元と雷小虎は決戦に挑む!
▲展開される物語は特筆されるような内容ではないが、ほんわかと楽しい作品である。本作の目玉はやはり于占元先生にあり、本作では厳しくも茶目っ気のあるお師匠様に扮し、厳格すぎない親しみを感じるキャラクターを好演している。劇中ではコメディ功夫片っぽい修行を雷小虎に課し、彼と一緒に観光やジョギングに興じたりと、その姿はまるで「元気な親戚のおじいちゃん」といった感じで実に微笑ましい(笑
ただ、さすがにお年なのでアクションシーンではスタントダブルが多用され、于占元本人による功夫ファイトはあまり見ることができない(一応、ラストバトルでは本人が見事な棒術アクションを見せてます)。そこで師匠に代わり、後半のアクション不足を補うのが愛弟子・雷小虎だ!雷小虎は李小龍チックな動きとロボットダンス拳を駆使し、並み居る外人格闘家たちと熱戦を繰り広げている。これで、最後に強敵との一騎打ちならもっと盛り上がったんだけどなぁ……。
作品としては小粒ながら、于占元の暖かいキャラと雷小虎のインチキ李小龍アクションが楽しい佳作。やっぱり功夫映画はアクションが1番だけど、キャラクターの魅力も大切なのだと改めて実感しました。