功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『カンフー・ヨガ』

2018-01-20 20:32:16 | 成龍(ジャッキー・チェン)
「カンフー・ヨガ」
原題:功夫瑜伽/功夫瑜珈/神話2
英題:Kung Fu Yoga
製作:2017年

▼さて本日は久々…というか当ブログ初となるかもしれない、現在公開中の最新作をご紹介しましょう。なお、当ブログの記事は基本的にストーリーを追っていくスタイルなので、思いっきりネタバレをかましています。気になる方はご注意を。
この作品は、成龍(ジャッキー・チェン)が主演・製作総指揮・動作設計を兼ね、いつもの楽しいコミック・カンフーが満載の娯楽作に仕上がっています。タイと中国の合作という事もあり、キャストやスタッフは両国の人員が動員されていました。
 内容はジャッキーお得意の秘宝争奪戦で、『プロジェクト・イーグル』と『ライジング・ドラゴン』を足して2で割ったようなもの。この例えでは何のこっちゃと思われるでしょうが、ホントにそういう話なのだから仕方ありません(爆
しかし懸念すべき事項もあり、お宝探しで監督が唐季禮(スタンリー・トン)とくれば、どうしてもイマイチになった『神話』を思い出してしまいます。全体の雰囲気も個人的には乗れなかった『ライジング~』に近く、最初は期待できなかったのですが…。

■物語は、いきなり『真・三國無双』っぽいCGアニメ(!)でスタート。中国の考古学者であるジャッキーが、古代インドで反乱から落ち延びた軍勢が“秘宝”を持ち去り、崑崙山脈で消えたという伝説を語る場面から始まる。
そこにインドの美人学者(ディシャ・パタニ)が現れ、古ぼけた地図の鑑定を依頼。そこから例の伝説にまつわる“秘宝”の存在が浮上し、ジャッキーは助手の張藝興(レイ)ムチミヤ、そしてディシャとその助手を引き連れて崑崙山脈に向かった。
 トレジャーハンターの李治廷(アーリフ・リー)、掘削技師の曾志偉(エリック・ツァン)の協力により、一行は氷河の中に閉じ込められた秘宝を発見する。しかし、そこにソーヌー・スード率いる謎の一団が現れ、「秘宝を渡せ」と迫ってきた。
争奪戦の末、連中が求めていた“秘宝=シヴァの目”は李治廷が持ち去ってしまい、ジャッキーは大怪我を負うはめに。このままでは秘宝を盗んだ罪に問われかねないため、一行は“シヴァの目”が出品されるドバイのオークションへと急いだ。
 激しい入札合戦の結果、競り負けたソーヌーは力づくで秘宝を奪おうとする。対するジャッキーは高級車を乗り回して追いかけるが、最後にお宝を持ち去ったのはソーヌーではなく、なんとディシャだった。
実は彼女の正体は、秘宝の持ち主である古代インド王族の子孫で、ソーヌーは反乱を起こした一族の末裔だったのだ。“シヴァの目”は世界を征する財宝の鍵であり、改めてジャッキーたちは宝探しを請け負う事となる。
だが、あくどいソーヌーは李治廷たちを人質に取り、自らの指図で宝探しを始めた。やむなくジャッキーは従うが、果たして財宝の正体とは…!?

▲先述の通り、本作はドバイやインドで大々的なロケーションが行われ、巨大なセットでスケールの大きいアクションが展開されています。CGでの装飾も多く、派手さという点ではジャッキー作品でも最大級の規模と言えるでしょう。
しかし本作は、あまりにも映像の情報量が多く、視覚的に休まる暇がありません。映し出されるのは大都市・ドデカい遺跡・煌びやかな宮殿など、とかく絢爛豪華なシチュエーションが続くのです。
どんなに美味い料理でも、一気に食べたら腹を壊してしまう…という例えを『上海13』の項で述べましたが、本作も画作りという点で同じ問題を起こしています。確かにゴージャスな雰囲気は出ているものの、眼が疲れて疲れて…(苦笑
 また、『ライジング・ドラゴン』と同様にセットの作り物っぽさが拭えず、ストーリーも雑な部分が目に付きます(氷河での戦いでは明らかに勝ってたのにいきなり縛られててビックリ・苦笑)。
キャラクターの描写も役割分担ができていなかったりと、他にもツッコミたいことは無数にある本作。とはいえ、ジャッキーの十八番であるコミカルなアクションは堪能できるし、とにかく話を盛り上げようという気概は十分に伝わってきます。

 確かにストーリーや演出は大味です。が、『サンダーアーム』のように女がらみでモタついたり、『プロジェクト・イーグル』のように人があっさり死ぬシーンは一切ありません。
いわば本作はジャッキーによる大掛かりなお祭りであり、観客にスリルと興奮を提供し、スカッと爽快に終われる作品を目指したのです。この目論見は見事に成功し、ハッピーすぎるラストには私も小躍りしたくなってしまいました(笑
 かつて彼は、『ライジング~』でも人死に描写を省き、過去の悲劇を乗り越えるハッピーな作品を目指しています。が、この時は主人公の人物像に感情移入がしづらく、ライバルが洒落にならない外道だったため、試みは達成できませんでした。
同じく秘宝争奪戦モノの『神話』もストーリーに未整理な箇所があり、もしかすると本作は『神話』と『ライジング~』の雪辱戦的な意味合いがあったのかもしれません。

 アクションについても殺伐さとは無縁で、前半ではジャッキーVS李治廷の戯れるような対決、環境を生かしたお得意の立ち回りが楽しめます。
羅禮賢(ブルース・ロー)の指導によるカーチェイスも、例によって高級車を使い潰す豪快なものとなっていますが、そこにライオンと同乗という捻った設定をプラス。あまりカーチェイスが好きではない私も、この工夫のおかげで楽しく見れました。
 最終決戦は派手なギミックこそ無いものの、ラスボスを演じたソーヌーの動きはなかなか悪くなく、ジャッキーと真っ向からタイマン勝負を展開! 主要なキャストも全員で立ち回り、こちらも楽しさを強調した作りとなっています。
常に新しいことへ挑戦し、演技派としても磨きを掛けつつあるジャッキーですが、どんなに変わった役柄を演じようと「観客に楽しんでもらいたい!」という主義は何十年も変わっていません。
本作は、そんな彼の観客に対するサービス精神…ひいてはエンターテイナーっぷりが最も開花した作品と言えます。近年の主演作では『ドラゴン・ブレイド』に次ぐ快作なので、是非とも劇場での視聴をオススメいたします!

『水滸伝 決戦!白龍城』

2018-01-15 15:33:51 | カンフー映画:珍作
「水滸伝 決戦!白龍城」
「水滸伝 激戦!白龍城」
原題:李逵傅奇/黒旋風李逵
英題:Shui Hwu Legend/Black Whirlwind Li Kui
製作:2000年(1999年説あり)

●時は中国北宋時代の末期。黒旋風の異名で鳴らした豪傑・徐錦江(チョイ・カムコン)は、盗賊退治で賜った報奨金を哀れな未亡人・張[ロ含]に渡した。病弱な母親のため、彼は残った金で人参を買おうとするが、薬屋に安物の野草を掴まされてしまう。
その後、悶着を起こした徐錦江は出奔。江州で張[ロ含]と再会し、彼女の店に身を寄せる事となる。また、牢番の王建軍に気に入られて仕事を工面してもらったり、役人の林威(デビッド・ラム)と友情を築くなど、先行きは順風満帆に見えた。
 そんな中、江州の牢獄に梁山泊の中心人物・馬冠英が連行されてきた。徐錦江は王建軍を通じて彼と知り合うが、一方で純真さゆえに張[ロ含]の女心を理解できず、彼女を深く傷つけてしまう。
この状況に内心ほくそ笑んだのは、最初から張[ロ含]に目を付けていた林威だった。彼は2人の間を巧妙に立ち回り、徐錦江を言いくるめて自分と彼女の結婚を了承させた。だが、張[ロ含]は未だに徐錦江を慕っており、激怒した林威は何度となく暴力を振るった。
 さらに林威は、馬冠英が酔いに任せて書いた詩を謀反の証拠とし、梁山泊に助力を仰いだ王建軍ともども逮捕してしまう。徐錦江も捕縛され、刑場に引きずり出された馬冠英と王建軍の命運もこれまでか…と思われたその時、梁山泊の仲間たちが駆けつけた!
なんとか間に合った徐錦江の加勢もあり、江州からの脱出に成功した梁山泊一同。だが、張[ロ含]を助けに舞い戻った徐錦江の前に、卑劣な林威が立ちはだかる。果たして、決戦の結末は…!?

 本作は歴史小説「水滸伝」をベースにした中国映画ですが、監督を『酔拳』の助監督だった蕭龍が担当し、徐錦江や林威など香港映画系のキャストが名を連ねています。
徐錦江といえば、香港映画ではアクの強いキャラクターに扮することが多く、そのインパクトは唯一無二。憎々しい看守や驚愕のポコチン頭など、ファンキーな役柄を数多く演じてきました。
そんな彼が、本作では粗野だけど義に厚い熱血漢・李逵を好演。ヒロインとのロマンスや斧を使ったアクションなど、いつもの徐錦江らしからぬ堂々としたヒーローっぷりを見せています(李逵の性格設定はややマイルドに改変されているようですが)。
 これだけでも香港映画迷は一見の価値あり!…と言えなくもありませんが、一方でストーリーは華やかさに欠けていました。確かに起承転結こそしっかりしているものの、作りが大人しすぎて面白味が薄まっているのです。
これが香港映画なら勇壮なBGMをバンバン流し、豪快な殺陣が展開され、素っ頓狂なギャグで彩られたでしょう。しかし本作にはそうしたエンタメ成分が不足しており、話が進んでも一向に盛り上がりません。
また、ドラマ面では宋江(馬冠英)や戴宗(王建軍)が単純なミスでピンチに陥るため、梁山泊がとても頼りなさげに見えてしまいます。ただし、こちらは原典に準じた展開のようなので、ここは割り切って受け入れるのが正解なのかもしれません。

 アクションについても先述の通り、規模としてはボチボチ止まり。最後の徐錦江VS林威は落下スタントを交えて頑張っていますが、際立って凄いようなバトルではありません。
中国武術チャンプの王建軍、孫二娘役の高原圭子(現在は染野行雄氏の秘書として活動している模様)は健闘しているものの、それぞれの担当するファイトシーンが短く、やや消化不良な結果に終わっています。
 私としては徐錦江が王建軍と組み、林威と知事役の杜玉明(末期の張徹作品に出演。現在も活躍中の武打星)を相手に2VS2のバトルを挑むかと思っていたので、これにはちょっと肩透かしを食らってしまいました。
作品としては薄味ですが、徐錦江によるヒーロー映画という意外性が大きな一品。ちなみに余談ですが、日本版ビデオは監督の欄にプロデューサーの名前を誤記したり、パッケージを飾っているのが王建軍だったりと、かなりアバウトな作りになっています(苦笑

『ドーベルマン・コップ』

2018-01-12 14:53:04 | カンフー映画:佳作
「ドーベルマン・コップ」
原題:東方巨龍
英題:Ninjas, Condors 13/Knight Revenger/Ninja Condors
製作:1987年(1988年説あり)

●改めまして、新年明けましておめでとうございます! 去年は連続特集に追われて大忙しでしたが、今年はのんびりマイペース(でも更新はコンスタントに)に戻っていこうと思っています。
さて今年最初の更新は、戌年にちなんで犬にまつわる作品を紹介…したかったのですが、目ぼしい犬関連のタイトルはとっくの昔に紹介済み。なんとかコレクションを漁って出てきたのは本作だけでした(苦笑
 この作品は、台湾ニンジャ映画の代表格・羅鋭(アレクサンダー・ルー)の主演作で、こんな邦題ですが正真正銘のニンジャ映画です。キャストやスタッフも、そのほとんどが過去の羅鋭作品に関わった面々で構成されています。
ストーリーは父親を殺された主人公が暗殺組織に拾われ、足抜けを図って壮絶な死闘を展開するというもの。いわゆる“抜け忍”的な話ですが、よくよく考えると荒唐無稽な台湾ニンジャ映画の中では、最も本来の忍者に近いスタイルの作品なのかもしれません。
 しかし全体的に演出が粗く、人物関係の描き方はとても大雑把です。特に中盤でユージン・トーマスと羅鋭が初めて出会うシーンでは、適当な台詞回しのせいで2人がまったく初対面に見えないという珍事が起きていました。
とはいえ、羅鋭とユージンによるロードムービー的な要素は悪くないし、ストーリーも停滞せずテンポよく進みます。相変わらず血がドバドバ出てくる作風ではありますが、お色気シーンは控え目なのでクドさは感じませんでした。

 そして本作の売りとなるニンジャ・アクションですが、こちらもワイヤーワークや爆破スタントなどで彩られており、ハイテンションな立ち回りが堪能できます(武術指導は暗殺組織のナンバー2にも扮している李海興(アラン・リー)が担当)。
キビキビとした羅鋭の拳技、豪快な蹴りで迫るユージンに加え、組織のボスを演じたジョージ・ニコラスや師匠役の龍世家(ジャック・ロン)も大暴れ! ニンジャ的な立ち回りだけでなく、素面での格闘アクションも充実しています。
 一方、遊園地やスケートリンクでのニンジャ対決は実にシュールでしたが(笑)、クライマックスでは組織のアジトを舞台に銃撃戦が繰り広げられ、銃弾と手裏剣が飛び交う賑やかなアクションが炸裂していました。
最後は羅鋭VSジョージ、ユージンVS李海興の濃い肉弾戦がこれでもかと続き、アクション的にはとても満足のいく内容だったと思います(ただし、このラストバトルではニンジャ的なギミックが一切出てこないので、人によっては物足りなさを感じるかも)。
 全体に漂う安っぽさは払拭できないものの、最後まで一気に見られる勢いに満ちた作品。いまだに羅鋭作品には未開拓の部分がありますが、2018年はそうした未踏の作品にも着目しつつ、円滑なブログ運営を心掛けたいと考えています。
…ところで、主人公の羅鋭はニンジャの殺し者という役どころなんですが、邦題のドーベルマン・コップって誰のことなんでしょうか?(爆

更新履歴(2017年/12月)

2018-01-11 15:46:37 | Weblog
 新年あけましておめでとうございます!…と言うには随分と時季外れになってしまいましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
私は久々に静かな年末年始を送り、これといって大きなトラブルもなく仕事始めを迎えられました。きちんと英気を養えたので、明日からの更新再開もスムーズにこなせそうです。…まぁ、さすがに12月のような更新ペースは当分無理だと思いますが(爆
 なお2018年の予定ですが、去年の連続特集でやや燃え尽きた感があるため、しばらくは大掛かりな企画から距離を置くつもりです。ただ、いくつか細々とした構想を考えているので、近いうちに発表できるかと思います。
さて、今年から当ブログは11年目を迎えます。これからどうなっていくかは私にも解りませんが、この1年も出来る限り頑張っていくつもりです。それでは最後になりますが…皆さん、どうか今年も功夫電影専科をよろしくお願い致します!


12/06 更新履歴(2017年/11月)
12/07 王羽十選(1)『冷面虎 復讐のドラゴン』
12/09 王羽十選(2)『唐人票客』
12/10 王羽十選(3)『ドラゴンVS不死身の妖婆』
12/12 王羽十選(4)『いれずみドラゴン 嵐の決斗』
12/15 王羽十選(5)『極東黒社会』
12/17 王羽十選(6)『捜査官X』
12/21 王羽十選(7)『獵人』
12/22 王羽十選(8)『驚天動地/秋瑾/大漢英豪』
12/23 王羽十選(9)『獨臂侠大戰獨臂侠』
12/26 王羽十選(終)『ドラゴン修行房』
12/31 【功夫電影専科:功夫動作片番付!(2017年度)】