「カンフー・ヨガ」
原題:功夫瑜伽/功夫瑜珈/神話2
英題:Kung Fu Yoga
製作:2017年
▼さて本日は久々…というか当ブログ初となるかもしれない、現在公開中の最新作をご紹介しましょう。なお、当ブログの記事は基本的にストーリーを追っていくスタイルなので、思いっきりネタバレをかましています。気になる方はご注意を。
この作品は、成龍(ジャッキー・チェン)が主演・製作総指揮・動作設計を兼ね、いつもの楽しいコミック・カンフーが満載の娯楽作に仕上がっています。タイと中国の合作という事もあり、キャストやスタッフは両国の人員が動員されていました。
内容はジャッキーお得意の秘宝争奪戦で、『プロジェクト・イーグル』と『ライジング・ドラゴン』を足して2で割ったようなもの。この例えでは何のこっちゃと思われるでしょうが、ホントにそういう話なのだから仕方ありません(爆
しかし懸念すべき事項もあり、お宝探しで監督が唐季禮(スタンリー・トン)とくれば、どうしてもイマイチになった『神話』を思い出してしまいます。全体の雰囲気も個人的には乗れなかった『ライジング~』に近く、最初は期待できなかったのですが…。
■物語は、いきなり『真・三國無双』っぽいCGアニメ(!)でスタート。中国の考古学者であるジャッキーが、古代インドで反乱から落ち延びた軍勢が“秘宝”を持ち去り、崑崙山脈で消えたという伝説を語る場面から始まる。
そこにインドの美人学者(ディシャ・パタニ)が現れ、古ぼけた地図の鑑定を依頼。そこから例の伝説にまつわる“秘宝”の存在が浮上し、ジャッキーは助手の張藝興(レイ)とムチミヤ、そしてディシャとその助手を引き連れて崑崙山脈に向かった。
トレジャーハンターの李治廷(アーリフ・リー)、掘削技師の曾志偉(エリック・ツァン)の協力により、一行は氷河の中に閉じ込められた秘宝を発見する。しかし、そこにソーヌー・スード率いる謎の一団が現れ、「秘宝を渡せ」と迫ってきた。
争奪戦の末、連中が求めていた“秘宝=シヴァの目”は李治廷が持ち去ってしまい、ジャッキーは大怪我を負うはめに。このままでは秘宝を盗んだ罪に問われかねないため、一行は“シヴァの目”が出品されるドバイのオークションへと急いだ。
激しい入札合戦の結果、競り負けたソーヌーは力づくで秘宝を奪おうとする。対するジャッキーは高級車を乗り回して追いかけるが、最後にお宝を持ち去ったのはソーヌーではなく、なんとディシャだった。
実は彼女の正体は、秘宝の持ち主である古代インド王族の子孫で、ソーヌーは反乱を起こした一族の末裔だったのだ。“シヴァの目”は世界を征する財宝の鍵であり、改めてジャッキーたちは宝探しを請け負う事となる。
だが、あくどいソーヌーは李治廷たちを人質に取り、自らの指図で宝探しを始めた。やむなくジャッキーは従うが、果たして財宝の正体とは…!?
▲先述の通り、本作はドバイやインドで大々的なロケーションが行われ、巨大なセットでスケールの大きいアクションが展開されています。CGでの装飾も多く、派手さという点ではジャッキー作品でも最大級の規模と言えるでしょう。
しかし本作は、あまりにも映像の情報量が多く、視覚的に休まる暇がありません。映し出されるのは大都市・ドデカい遺跡・煌びやかな宮殿など、とかく絢爛豪華なシチュエーションが続くのです。
どんなに美味い料理でも、一気に食べたら腹を壊してしまう…という例えを『上海13』の項で述べましたが、本作も画作りという点で同じ問題を起こしています。確かにゴージャスな雰囲気は出ているものの、眼が疲れて疲れて…(苦笑
また、『ライジング・ドラゴン』と同様にセットの作り物っぽさが拭えず、ストーリーも雑な部分が目に付きます(氷河での戦いでは明らかに勝ってたのにいきなり縛られててビックリ・苦笑)。
キャラクターの描写も役割分担ができていなかったりと、他にもツッコミたいことは無数にある本作。とはいえ、ジャッキーの十八番であるコミカルなアクションは堪能できるし、とにかく話を盛り上げようという気概は十分に伝わってきます。
確かにストーリーや演出は大味です。が、『サンダーアーム』のように女がらみでモタついたり、『プロジェクト・イーグル』のように人があっさり死ぬシーンは一切ありません。
いわば本作はジャッキーによる大掛かりなお祭りであり、観客にスリルと興奮を提供し、スカッと爽快に終われる作品を目指したのです。この目論見は見事に成功し、ハッピーすぎるラストには私も小躍りしたくなってしまいました(笑
かつて彼は、『ライジング~』でも人死に描写を省き、過去の悲劇を乗り越えるハッピーな作品を目指しています。が、この時は主人公の人物像に感情移入がしづらく、ライバルが洒落にならない外道だったため、試みは達成できませんでした。
同じく秘宝争奪戦モノの『神話』もストーリーに未整理な箇所があり、もしかすると本作は『神話』と『ライジング~』の雪辱戦的な意味合いがあったのかもしれません。
アクションについても殺伐さとは無縁で、前半ではジャッキーVS李治廷の戯れるような対決、環境を生かしたお得意の立ち回りが楽しめます。
羅禮賢(ブルース・ロー)の指導によるカーチェイスも、例によって高級車を使い潰す豪快なものとなっていますが、そこにライオンと同乗という捻った設定をプラス。あまりカーチェイスが好きではない私も、この工夫のおかげで楽しく見れました。
最終決戦は派手なギミックこそ無いものの、ラスボスを演じたソーヌーの動きはなかなか悪くなく、ジャッキーと真っ向からタイマン勝負を展開! 主要なキャストも全員で立ち回り、こちらも楽しさを強調した作りとなっています。
常に新しいことへ挑戦し、演技派としても磨きを掛けつつあるジャッキーですが、どんなに変わった役柄を演じようと「観客に楽しんでもらいたい!」という主義は何十年も変わっていません。
本作は、そんな彼の観客に対するサービス精神…ひいてはエンターテイナーっぷりが最も開花した作品と言えます。近年の主演作では『ドラゴン・ブレイド』に次ぐ快作なので、是非とも劇場での視聴をオススメいたします!
原題:功夫瑜伽/功夫瑜珈/神話2
英題:Kung Fu Yoga
製作:2017年
▼さて本日は久々…というか当ブログ初となるかもしれない、現在公開中の最新作をご紹介しましょう。なお、当ブログの記事は基本的にストーリーを追っていくスタイルなので、思いっきりネタバレをかましています。気になる方はご注意を。
この作品は、成龍(ジャッキー・チェン)が主演・製作総指揮・動作設計を兼ね、いつもの楽しいコミック・カンフーが満載の娯楽作に仕上がっています。タイと中国の合作という事もあり、キャストやスタッフは両国の人員が動員されていました。
内容はジャッキーお得意の秘宝争奪戦で、『プロジェクト・イーグル』と『ライジング・ドラゴン』を足して2で割ったようなもの。この例えでは何のこっちゃと思われるでしょうが、ホントにそういう話なのだから仕方ありません(爆
しかし懸念すべき事項もあり、お宝探しで監督が唐季禮(スタンリー・トン)とくれば、どうしてもイマイチになった『神話』を思い出してしまいます。全体の雰囲気も個人的には乗れなかった『ライジング~』に近く、最初は期待できなかったのですが…。
■物語は、いきなり『真・三國無双』っぽいCGアニメ(!)でスタート。中国の考古学者であるジャッキーが、古代インドで反乱から落ち延びた軍勢が“秘宝”を持ち去り、崑崙山脈で消えたという伝説を語る場面から始まる。
そこにインドの美人学者(ディシャ・パタニ)が現れ、古ぼけた地図の鑑定を依頼。そこから例の伝説にまつわる“秘宝”の存在が浮上し、ジャッキーは助手の張藝興(レイ)とムチミヤ、そしてディシャとその助手を引き連れて崑崙山脈に向かった。
トレジャーハンターの李治廷(アーリフ・リー)、掘削技師の曾志偉(エリック・ツァン)の協力により、一行は氷河の中に閉じ込められた秘宝を発見する。しかし、そこにソーヌー・スード率いる謎の一団が現れ、「秘宝を渡せ」と迫ってきた。
争奪戦の末、連中が求めていた“秘宝=シヴァの目”は李治廷が持ち去ってしまい、ジャッキーは大怪我を負うはめに。このままでは秘宝を盗んだ罪に問われかねないため、一行は“シヴァの目”が出品されるドバイのオークションへと急いだ。
激しい入札合戦の結果、競り負けたソーヌーは力づくで秘宝を奪おうとする。対するジャッキーは高級車を乗り回して追いかけるが、最後にお宝を持ち去ったのはソーヌーではなく、なんとディシャだった。
実は彼女の正体は、秘宝の持ち主である古代インド王族の子孫で、ソーヌーは反乱を起こした一族の末裔だったのだ。“シヴァの目”は世界を征する財宝の鍵であり、改めてジャッキーたちは宝探しを請け負う事となる。
だが、あくどいソーヌーは李治廷たちを人質に取り、自らの指図で宝探しを始めた。やむなくジャッキーは従うが、果たして財宝の正体とは…!?
▲先述の通り、本作はドバイやインドで大々的なロケーションが行われ、巨大なセットでスケールの大きいアクションが展開されています。CGでの装飾も多く、派手さという点ではジャッキー作品でも最大級の規模と言えるでしょう。
しかし本作は、あまりにも映像の情報量が多く、視覚的に休まる暇がありません。映し出されるのは大都市・ドデカい遺跡・煌びやかな宮殿など、とかく絢爛豪華なシチュエーションが続くのです。
どんなに美味い料理でも、一気に食べたら腹を壊してしまう…という例えを『上海13』の項で述べましたが、本作も画作りという点で同じ問題を起こしています。確かにゴージャスな雰囲気は出ているものの、眼が疲れて疲れて…(苦笑
また、『ライジング・ドラゴン』と同様にセットの作り物っぽさが拭えず、ストーリーも雑な部分が目に付きます(氷河での戦いでは明らかに勝ってたのにいきなり縛られててビックリ・苦笑)。
キャラクターの描写も役割分担ができていなかったりと、他にもツッコミたいことは無数にある本作。とはいえ、ジャッキーの十八番であるコミカルなアクションは堪能できるし、とにかく話を盛り上げようという気概は十分に伝わってきます。
確かにストーリーや演出は大味です。が、『サンダーアーム』のように女がらみでモタついたり、『プロジェクト・イーグル』のように人があっさり死ぬシーンは一切ありません。
いわば本作はジャッキーによる大掛かりなお祭りであり、観客にスリルと興奮を提供し、スカッと爽快に終われる作品を目指したのです。この目論見は見事に成功し、ハッピーすぎるラストには私も小躍りしたくなってしまいました(笑
かつて彼は、『ライジング~』でも人死に描写を省き、過去の悲劇を乗り越えるハッピーな作品を目指しています。が、この時は主人公の人物像に感情移入がしづらく、ライバルが洒落にならない外道だったため、試みは達成できませんでした。
同じく秘宝争奪戦モノの『神話』もストーリーに未整理な箇所があり、もしかすると本作は『神話』と『ライジング~』の雪辱戦的な意味合いがあったのかもしれません。
アクションについても殺伐さとは無縁で、前半ではジャッキーVS李治廷の戯れるような対決、環境を生かしたお得意の立ち回りが楽しめます。
羅禮賢(ブルース・ロー)の指導によるカーチェイスも、例によって高級車を使い潰す豪快なものとなっていますが、そこにライオンと同乗という捻った設定をプラス。あまりカーチェイスが好きではない私も、この工夫のおかげで楽しく見れました。
最終決戦は派手なギミックこそ無いものの、ラスボスを演じたソーヌーの動きはなかなか悪くなく、ジャッキーと真っ向からタイマン勝負を展開! 主要なキャストも全員で立ち回り、こちらも楽しさを強調した作りとなっています。
常に新しいことへ挑戦し、演技派としても磨きを掛けつつあるジャッキーですが、どんなに変わった役柄を演じようと「観客に楽しんでもらいたい!」という主義は何十年も変わっていません。
本作は、そんな彼の観客に対するサービス精神…ひいてはエンターテイナーっぷりが最も開花した作品と言えます。近年の主演作では『ドラゴン・ブレイド』に次ぐ快作なので、是非とも劇場での視聴をオススメいたします!