功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

更新履歴(2011年/9月)

2011-09-30 22:30:37 | Weblog
 残暑が厳しくてたまらないと思っていたら、あっという間に秋の日和へ様変わりしてしまった9月でしたが、皆さんはいかがお過ごしだったでしょうか?
今月はマイナー系の作品をお送りしてきましたが、諸々の都合で4本までの紹介になってしまいました(修正作業の頻度も若干落ち気味…)。来月からはいつも通りの更新ペースに戻していこうと思っていますが、もしかしたら現状維持のままになってしまうかもしれません(爆
さて、定期的に組んできた隔月特集も11月でラスト。とりあえず何の縛りにするのかは考えていますが、それ以外にも解決しなければいけない事柄が山積み状態なので、なんとか10月も頑張っていこうと思っています。


09/13 『霊幻少女 帰ってきたテンテン』
09/16 『殺しのアーティスト』
09/26 『銀座ミッドナイトストーリー ゆーとぴあ 白い蕾』
09/28 『銀座ミッドナイトストーリー ゆーとぴあ 赤い蝶』
09/30 更新履歴(2011年/9月)

修正済み作品
 『タイガー・コネクション』
 『ドニー・イェン 邪神拳』
 『クライム・キーパー/香港捜査官』
 『ドラゴン酔太極拳』
 『ヒート HEAT』
 『ドラゴン・バーニング/怒火威龍』
 『かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート』
 『ドラゴン電光石火’98』
 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地雷鳴』
 『幻影拳/ザ・マジック・カンフー』
 『タイガー刑事』

 『真一文字 拳』
 『拳 FIST』
 『殴者 NAGURIMONO』
 『愛しのOYAJI』
 『新書ワル 復活篇』
 『人斬り観音唄』
 『野獣 地獄からの生還』
 『ワル 外伝』
 『狂犬 Mad Dog』

『銀座ミッドナイトストーリー ゆーとぴあ 赤い蝶』

2011-09-28 23:19:37 | 倉田保昭
「銀座ミッドナイトストーリー ゆーとぴあ 赤い蝶」
「銀座ミッドナイトストーリー ゆーとぴあ2」
製作:2000年

●ここは銀座の一角に建つ小さなクラブ・ゆーとぴあ。潰し屋を蹴散らした闘いから8ヵ月後…常連客だった不動産屋社長の死を乗り越え、桜庭あつこは今日もホステスの道を突き進んでいた。チーママと2人の男性を巡る三角関係、そして思わぬ事件に遭遇しながらも、彼女たちは充実した日々を送っている。
そんな時、一年前に桜庭の元から去った本宮泰風が、再び彼女たちの前に現れた。かつて遂げられなかった思いを胸に愛しあう桜庭と本宮…。だが、敵対していた高級クラブのオーナー・松田ケイジがまたもや行動を開始する。パー券を使用した嫌がらせに対し、ゆーとぴあのポーターである倉田保昭は松田に直訴し、彼は自分の間違いに気付いた。
こうして両者の争いにピリオドが打たれる…かと思われたが、潰し屋たちは徹底抗戦を主張。ゆーとぴあの常連客を誘拐するという暴挙に及んだのだ。桜庭たちホステスは、空手道場の先生である真樹日佐夫たちと共に、連中のアジトへと踏み込む!

 この作品は前回紹介した『銀座ミッドナイトストーリー ゆーとぴあ/白い蕾』の続編にあたり、前作で描かれたホステスや顧客たちのその後が描かれています。基本的に群像劇であるという点は変わりなく、今回はチーママの担当するエピソードが増加していました。
しかし、内容としては前作でカバーしきれなかった部分を補完している感が強く、そのせいか混血の先輩ホステスに関する話が減っています。また、本作では潰し屋たちによるSMショーが増加され、前作よりも更にアブノーマルな雰囲気になってしまっているのです。『無比人』ほど酷くはないんですけど、これも人によっては好き嫌いが別れそうです(汗
 格闘シーンの量も、前作では中盤と終盤で繰り広げられましたが、本作ではラストバトルのみ。こちらについても見せ場が減っていました。特に本宮の格闘シーンは1つも無く(あっても一瞬で決着してしまう)、ヒットマンの村上竜司(士道館に属する空手の師範)も呆気なく倒されてしまいます。
ラストバトルでは相変わらず無敵の強さを見せる倉田さんと、再び参戦した真樹センセイによるアクションもあるのですが、面白いのはそこぐらい。桜庭を始めとしたホステスたちも、あまり動けないので派手さは控えめとなっています。ホステス物語で格闘シーンを増やせと言うのは無茶な話ですが、欲を言えば倉田VS本宮倉田VS村上といった対決も見てみたかったなぁ…。

『銀座ミッドナイトストーリー ゆーとぴあ 白い蕾』

2011-09-26 23:18:46 | 倉田保昭
「銀座ミッドナイトストーリー ゆーとぴあ 白い蕾」
「銀座ミッドナイトストーリー ゆーとぴあ」
製作:2000年

●熱海の旅館で芸子をしていた桜庭あつこは、あるとき資産家の男から無理矢理手込めにされそうになったところを、旅行に来ていた銀座のクラブ・ゆーとぴあの面々に救われる。彼女はこれを機に芸子を辞め、ホステスとしてゆーとぴあで働く決意を固めるのだった。
空手の道場に通う先輩のホステス、本郷直樹と良い感じのチーママ、そしてママの児玉美ゆきに囲まれながら、桜庭はホステスの道を歩み始めていく。青年ヤクザ・本宮泰風との出会いと別れ、末期ガンに蝕まれた不動産屋社長との関係…彼女は短い期間で様々な経験を積み、他の仲間たちも多くのドラマを紡いでいった。
 そんな中、高級クラブのオーナーである松田ケイジが、「潰し屋」を雇ってゆーとぴあを潰そうと企んでいた。潰し屋とはSM嬢のような女を頭目とする武闘派集団で、目を付けた店を潰すためならどんな手段も辞さないという、なんとも過激な連中だ。
潰し屋は児玉の家に押し入ると強引に彼女へと襲い掛かったが、そこへ危機を察知したゆーとぴあの面々が到着!空手道場の師範も加勢し、雌雄を決する闘いが始まる!

 本作は真樹日佐夫プロデュースのVシネ作品で、ホステスを主役にした群像劇となっています。それぞれのキャラクターと顧客たちとの関係、それに関連して起こるトラブルや恋愛模様などを描いていて、他のアクションありきな真樹作品とは一線を画しているのです。
こんな題材なので濡れ場も多々ありますが、あくまでメインはホステスたちの生き方そのもの。新人ホステスが業界のイロハを学びながら成長していく…という作品ではなく、フィーチャーされているのは各々の公私に限られています(元芸子なので桜庭の成長はかなり早いです)。
 しかし、本作にはマキ印作品に不可欠なエキセントリックさが無く、ただ淡々とホステスたちの日常を描いているだけなので、物足りなさを感じてしまいました。潰し屋との対決という一貫した要素もあるのですが、敵勢が登場する頻度も少ないので、あまり印象には残らない結果となってしまいました。
そんなわけでマキ印としては味気ないような本作ですが、やはり注目すべきは倉田保昭の存在でしょう。倉田さんは功夫映画のみならず、日本のVシネ作品にも手広く出演しているのですが、これまで真樹センセイとは(映像作品においては)接点がありませんでした。本作では、そんな倉田さんと真樹作品の出演経験者たちが一堂に会しているのです。

 今回、倉田さんはゆーとぴあのポーターという役柄で、店を影から支える頼れる存在として描かれています。もちろん格闘シーンもあり、ラストで潰し屋を相手にビシバシと鉄拳を振るっていました。残念ながら倉田さんが闘うのはそこだけで、他の格闘俳優とは絡んでいません。本宮はヤクザ3人と戦い、岡崎礼も最終決戦に参加しているのですが…(ちなみに村上竜司は単なるチョイ役)。
 それ以外の見どころでは、空手道場の先生に扮した真樹センセイがラストバトルにも出ているという点が挙げられます。真樹センセイは自身の作品に重要な役で出演することが多いのですが、ストーリーに関わるような戦いに加わるのは稀でした。
本作では潰し屋で一番強そうな黒人空手家と立ち合い、敵の回し蹴りを軽々とガード。すぐに次の動作で軸足を蹴り飛ばし、貫録のある動作を披露しています。…ところで、あの黒人空手家は一体何者なんでしょうか??(真樹道場の関係者?)

『殺しのアーティスト』

2011-09-16 23:42:29 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「殺しのアーティスト」
原題:A Grande Arte/High Art
製作:1991年

▼今回紹介するのは、ナイフを題材とした異色のサスペンス映画です。
香港映画では1つの武器を取り扱った作品がよく作られていますが、それ以外の格闘映画などではあまり見かけません。そんな中で本作はナイフに着目しているので実に貴重な作品…なんですが、純粋なアクション活劇ではないため、いつも当ブログで紹介しているような作品とは若干毛色が違います。

■リオに滞在するカメラマンのピーター・コヨーテは、友人の娼婦から「変な男からディスクを渡せって脅されているの…」と相談を持ちかけられた。ところが、翌日になって娼婦は自室から遺体となって発見された。ピーターは役立たずの警察を尻目に捜査を行うが、ディスクを狙う刺客たちによって重傷を負ってしまう。
幸いにも一命は取り留めたが、この一件でピーターは本格的な復讐を決意。ナイフの名手であるチェッキー・カリョとコンタクトを取り、過酷な訓練に身を投じていく。恋人のアマンダ・ペイズに去られるも、次第に事件の核心へと近付いていくピーター。やがて敵の組織で内部分裂が起こり、事件の元凶となった存在が姿を現すのだが…?

▲前述したように、本作はアクション映画ではありません。後半に銃撃を受ける場面があるぐらいで、カーチェイスや爆破シーンといった派手なギミックは無し。格闘シーンも序盤と終盤の2つしか用意されていなかったりします。
監督のウォルター・サレス・Jrはドキュメンタリー出身の方で、本来はロードムービーやドラマを得意とする人物だそうです。本作でもドキュメンタリー調の演出が随所に見られ、普通のサスペンス映画とは一線を画す雰囲気を作り上げています。…とはいえ、恐怖感や緊迫感という点においては物足りない部分があり、冗長と思えるような箇所もいくつかありました。

 しかし、ナイフで修行する一連のシークエンスはとてもリアルに描かれています。鏡を使った捌き方の練習、物差しや線香を使用しての対人特訓など、実戦的な描写の数々には思わず見入ってしまいました(ピーターとカリョの動きもバッチリ!)。
ラストのピーターVS真犯人もこれまた見事で、ナイフの使い手同士によるスリリングなファイトが堪能できます。勝負自体はすぐに終わってしまうものの、かえってそれが本作の現実性をより強調させていました(唯一残念なのは、カリョとピーターの師弟対決が実現しなかったこと)。サスペンス映画としては微妙ですが、ナイフの扱いには光るものがある逸品です(ナイフだけに)

『霊幻少女 帰ってきたテンテン』

2011-09-13 21:22:53 | 女ドラゴン映画
「霊幻少女 帰ってきたテンテン」
原題:靈幻少女
製作:1992年

●今年はこれまでに「TVじゃない作品」「監獄アクション」「国内未公開の格闘映画」「黄家達」などの特集をお送りしてきましたが、9月は「マイナーな作品」というテーマでいきたいと思います。いわゆる未公開映画の類ではなく、国内で正式リリースされていて知名度に難アリという作品を取り上げます。
というわけで、まず最初は『来来!キョンシーズ』系列の最終章となる本作の紹介です。『来来~』はキョンシーブームが巻き起こっていた80年代後半にて、『霊幻道士』と人気を二分した大人気シリーズでした。『霊幻道士』がキョンシーそのものに重点を置いていたのに対し、『来来~』は劉致(シャドウ・リュウ)ら子供たちをメインにすることで人気を獲得したのです。

 シリーズは映画5本とTVドラマが作られましたが、本作は90年代に入ってから作られた最後の作品です。主要な人物はテンテン・トンボ(鄭同村)・金おじいさん(金塗)の3人となり、新たにまるちゃん(賀艾[女尼])という新キャラが加入。ストーリーは様々なトラブルに妖術で立ち向かうという話ですが、クライマックスで異様な展開が待ち構えています(詳細は後述)。
実を言うと私は『来来~』シリーズの直撃世代ではないため、個々のキャラクターにあまり感情移入が出来なかったのですが、それを差し引いてもキツいものがありました。自業自得なトラブルばかり引き起こすトンボ、何かと問題の種になるまるちゃん、弁解を聞こうとしない金おじいさん…特にトンボがお盆の幽霊に爆竹を投げつけるくだりは、正直言ってやりすぎです。

(以下、ネタバレ注意)

 物語は中盤に悲しき女幽霊(描写が『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』まんま)のエピソードを挟みますが、結末がウヤムヤになったあたりから作品の空気が変わり始めます。突然テンテンたちは異世界に飛ばされ、金おじいさんの宿敵であるクマラ(一切の伏線なしに登場)が大量の手下を連れて攻め入ってくるのです。
戦いは徐々にクマラ側が優勢となり、まるちゃんは背中を貫かれて死亡。トンボは洗脳された挙句に撲殺され、金おじいさんに至っては全身から血を噴き出して燃えながら息絶えます。テンテンは金おじいさんによって逃がされますが、こちらも重傷を負ったまま。最後は住んでいた屋敷も燃やされ、問答無用のバッドエンドで終幕となります。

 こういった救いの無い展開は、功夫片やキョンシー映画などでも稀にあります。ラストで主人公が狂う『癲螳螂』、最後に脇役が思わぬ行動を起こす『霊幻童子』のような作品も存在しますが…多くのファンに愛された人気シリーズの久々の続編にもかかわらず、ここまでゴアな展開にしてしまう製作者サイドには疑問を感じざるを得ません。
キョンシー映画ファンにとっては成長したテンテンたちの姿が、功夫映画ファンにとってはトンボの見せるアクロバティックなアクションが見どころとなるはずだったのに、ドラクエの強制敗北イベントみたいなオチに唖然としてしまう怪作。監督の王知政はスイカ頭を爆殺した前科があり、こうなってしまったのは彼に原因がありそうです。
ちなみに、クマラを演じたのは武術指導も兼任している李海興。『霊幻童子』でも彼がラスボスでしたが、本作で彼の吹替えを演じたのは人気声優の子安武人だったりします。声が合成されているので判別しづらいですが、個人的にはここが唯一にして最大のサプライズでした(爆