功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『湮報復/大報復』

2008-09-30 20:35:41 | バッタもん李小龍
湮報復/大報復
英題:Bruce Le's Greatest Revenge/Bruce Lee's Fists of Vengeance
製作:1978年

▼以前、『湮報復/大報復』かと思って『Bruce's Fist of Vengeance』というバッタを掴まされた事があったが、このたび正真正銘本物の『湮報復/大報復』を入手しました。
これでようやく本物を見ることが出来るのだが、まぁ呂小龍(ブルース・リ)作品なので期待しないで見ていました。ストーリーはまんまタイトルの通り。要するによくある抗日功夫片なのであるが、『達魔鐵指功』みたいな勝手に作った続編などではなく、ある種のセルフリメイク的な作品となっている。

■親元を離れた呂小龍は、劉鶴年の道場にお世話になる。劉鶴年が道場主という点で既に潰される事が前提となっているのはさておき(笑)、呂小龍は熱心に功夫修行に明け暮れていた。だが、呂小龍たちが住むこの町にも日本人の影は迫りつつあった。銃の密輸で財を成す日本人たちは港の労働者を迫害。周囲にも威張り散らしたりと無法の限りを尽くしていた。
労働者たちは劉鶴年に「日本人を見返したいから功夫を教えてくれ!」と訴えるが、劉鶴年は「功夫とはケンカの道具ではない」と一蹴。揉め事は起こさないようにと弟子たちにも忠告した。日本人側では韓国人?の山怪、白人のアレキサンダー、モンゴル人の楊斯(ヤン・スェ)ら用心棒を呼び寄せ、更なる横暴ぶりを見せていく。
呂小龍は「俺たちは立ち上がるべきなんだ!」と独断で日本人を蹴散らし、遂には日本人のアジトで大暴れを演じた。顔に泥を塗られた日本人たちは劉鶴年をおびき出し、毒の入った酒を飲ませて死に追いやった。悲しみに暮れる一同だったが、今度は葬儀の場に日本人たちが襲いかかってきた。
独断専行で謹慎処分を受けていた呂小龍が韓國材(ハン・クォツァイ)に呼ばれて帰ってきたが、既に李藝民(サイモン・リー)ら多くの弟子が命を落としていた。仲間たちの無念を晴らすべく、呂小龍は再び日本人たちのアジトへと殴り込む!

▲呂小龍にしては珍しくまともな作品だ。ストーリーに破綻はないし、キャラクターもそれなりに立っているし、功夫アクションも悪くは無い。出演者も馴染みの顔が多く出ているし、呂小龍の作品としてはかなり上位に入る出来ではなかろうか?
この作品とほぼ同キャストで作られた作品がある。それが何宗道(ホー・チョンドー)の『截拳鷹爪功』だ。この作品は役柄にも共通点が見られ、監督も同じ杜魯波なのだが、辻褄合わせがメチャクチャになっている変な作品だった。その点、本作はストレートな作りにしたおかげか、『截拳鷹爪功』の二の舞にはなっていない。
なお、武術指導を担当したのは出演もしている李藝民。精彩さに欠けてはいるものの、日本人のリーダー格である方野、頭突きの山怪、フェンシングのアレキサンダー、マッチョマンの楊斯と、きっちりキャラ分けが出来ている殺陣にした点は評価できる。
しかし驚いたのは最後の展開だ。ラストバトルは呂小龍VS谷峰の死闘なのだが、なんと途中で谷峰は逃亡!その谷峰に止めを刺し、あまつさえ最後は主役の呂小龍を差し置いて道場を継いでしまうなんて、彼(見てのお楽しみ・笑)にとってはかなりの儲け役となったことだろう。でもこんなに優遇をされておいて、『截拳鷹爪功』ではあんなヒドい役回りになってしまうなんて…彼と杜魯波との間で何かあったのだろうか?

『アルティメット・ディシジョン』

2008-09-28 19:50:06 | マーシャルアーツ映画:上
「アルティメット・ディシジョン」
原題:U.S. Seals II
製作:2001年

●『人質奪還/アラブテロVSアメリカ特殊部隊』は傑作である。映画の中で新鋭スコット・アドキンスが見せたアクションは、「もはやマーシャルアーツ映画も香港映画に負けないアクションを構築できる」と体を張って示した、そう言い切ってもいい素晴らしいバトルだった。そんな『人質奪還』の興奮再び!といえるのが本作だ。
かつて特殊部隊に属していたマイケル・ワース(!)。彼は同じく特殊部隊に属していながら外道へと堕ちた同僚ダミアン・チャパの事件が元で、現在は退役していた。ところがそのダミアンがテロ組織を率いて物理学者を拉致。核弾道を武器に10億ドルを要求してきた。ダミアンが根城にしている島はメタンガスの立ち込めた、銃器の一切使えない危険な孤島だ。ダミアンを倒すべく、依頼を受けたマイケルは仲間を集めて敵地へと殴りこむ!

正直、私は監督のアイザック・フロレンティーンにはあまりいい評価をしてはいなかった。
確かに『人質奪還』は面白い。だが、『ハイボルテージ』では李香凝(シャノン・リー)を起用しておいて、アクションの中心はガンファイトばかり。『ブラック・ソルジャー』では世界観にばかり気を配っていたせいで、肝心の格闘アクションも派手さが控えめという結果に終わっている。なので『人質奪還』意外のアイザック作品にはあまり高評価を下していなかったのだ。
さて、その点本作はというと…これがまさにど真ん中ストライクな出来だったのである!
ストーリーは『人質奪還』をちょっと膨らまし、特攻野郎Aチーム(どっちかというと『フォースファイブ』か?)が大活躍するという至極簡単なもの。だが本作はアクションの連続で画面を彩っており、おまけにメインの出演者ほぼ全員がスコット・アドキンス並みの実力者揃いなのが嬉しい。
部隊のメンバーはマイケルを筆頭に、日本刀のカレン・キム(日本人役)、棍術の黒人とナイフの白人、チェーンを振り回すアジア系に大型ナイフの殺し屋、『人質奪還』でも頑張っていたマーシャル・ティーグという顔ぶれ。一方、敵側には香港映画からソフィア・クロフォード、本作の武術指導も務めているアンディ・チェン(『ナイスガイ』等のジャッキー作品にも参加しているところを見るに、成家班出身か?)も出演している。
この面々が全編に渡って画面狭しと暴れまわるのだ、これで面白くないはずが無い!
本ブログとしては、やはりソフィア・クロフォードに注目しておこう。香港映画で見なくなってから10年ほど…さすがにちょっと老けたかな?とは思うものの、技のキレに関しては全く衰えを見せていない。幾多の猛者が登場する本作において、彼女はラストバトルでカレン・キムと対決する。
ここでソフィアは日本刀を振りかざすカレンと壮絶なソードバトルを展開するのだが、そのテンションはさながら『皇家師祖』系列の勢い!これには香港時代を知っているファンも、さぞ嬉しい事だろう。
それにしてもここまで楽しめる作品には久しぶりに会ったなぁ…どうやらアイザック監督の評価を下すのはまだ早かったようです。しかしこうなると、残るアイザック監督の未見作品『ザ・フォース』『デッドロック2』、そして最新作『ザ・プロテクター』も是非制覇してみたいところである。

『雙龍谷』

2008-09-26 20:39:29 | カンフー映画:珍作
雙龍谷
英題:Valley of the Double Dragon/Golden Leopard's Brutal Revenge/Kung Fu Of Tai Kwan Do
製作:1974年

▼本ブログ初登場となる、韓国系国際派スター・金振八(キム・シンパル)の主演作である。『ザ・カラテ2』で日本のスクリーンに登場したこともある金振八だが、本作はあの李小龍『ドラゴン怒りの鉄拳』のロバート・ベイカーが出演している事でも知られている作品である。
物語は典型的ではあるが、日本軍(ベイカーがこちら側…ハーケンクロイツのペンダントを着けていたので、ベイカーはドイツ軍将校らしい)VS抗日派(金振八がこちら側)という図式に、アメリカ軍の黒人捕虜が絡んでくるという、一風変わったものだ。

■金振八たち抗日派は、皆が皆日本軍によって肉親を殺されたりした者たちの集まりだった。
日本軍に捕まりそうになっていた黒人を助けた金振八は、彼を仲間に向かえて日本軍打倒のために活動していく。数々の関所を突破して決死行を続ける金振八一行だが、そんな彼らの前にベイカーが立ちはだかる。全員総出で立ち向かうがベイカーは強く、仲間の1人である馬場が犠牲になってしまった。
その後、金振八たちに協力してくれたベイカーの女(さる理由からベイカーの命を狙って近付いている)とその母もベイカーの手によって命を落とした。日本軍との攻防戦も激化の一途を辿り、脱出の手助けをしてくれたベイカーの女の父が殺され、仲間のヒロインとガキも捕らえられた。
「出てこなければこいつらを殺す!」とのたまう日本軍とベイカー。それに対し、仲間の張紀平が突破口を開いた。残った金振八と黒人は、人質になった二人を助けるべく、決死の戦いへと挑む!

▲当時様々なタイプの作品が登場した抗日功夫片だが、本作はその中でも異色の作品だ。
物語は金振八と日本軍+ベイカーとの攻防戦に徹しており、珍しくストーリー重視の作品である点は興味深い。また、先述の黒人の活躍が印象的で、金振八との人種を超えた友情と葛藤など、他の作品には無いような特色が見られる。個人的には、普段B級功夫片で三下悪役をやってる馬場と張紀平が、本作では仲間をかばって死んでいくおいしい役柄だったのが面白かったです(笑
さて、今回初接触となる金振八だが、この作品での彼はいまいち印象が薄い。本作は功夫アクション自体そんなに多いわけではなく、見どころもラストバトルぐらいしかないのが災いしたのだろう。
殺陣はそれなりのクオリティだったが、注目の金振八VSロバート・ベイカーは日本軍将校が間に入って消化不良な結果に終わっている。ベイカーに関しても持て余している感じが強く、『怒りの鉄拳』の時のような迫力は無かったと言える。
ヒネった話にしたはいいが、アクションが疎かになってしまった不幸な作品。もうちょっとストレートな作品にしてもよかったのでは?

『風魔忍群 血蜘蛛の十蔵』

2008-09-24 23:57:28 | 日本映画とVシネマ
「風魔忍群 血蜘蛛の十蔵」
「忍術伝 NINJASTAR」
製作:2003年

●『十福星』で劉徳華(アンディ・ラウ)やサモハンを相手取って戦い、『中華戦士』では楊紫瓊(ミシェール・ヨー)とも共演した日本人アクションスター・松井哲也。香港で活躍した彼は、日本でも特撮作品やVシネを中心に活躍を続け、現在はアクション指導家として現場に携わっています。
近年では『ジャスティライザー』や『セイザーX』などにも参加していますが、その彼がワイヤーアクション指導として関わったのがこの作品です。
 本宮泰風と柳沢真理亜は風魔一族の忍者で、親類たちとひっそり暮らしていた。だが、ある日柳生の忍者によって里が襲撃され、彼ら2人を残して一族は全滅してしまう。本宮は仇討ちを誓って里を降り、刺客を差し向けたバカ殿の首を見事に討ち取った。しかし、松田優をリーダーとする柳生の忍者軍団「七番星」が本宮を追う。孤独な逃避行を続ける中、意外な刺客が姿を見せ…。
…といった感じの時代劇ですが、アクションではチャンバラ以外にも素手でのファイトもあったりと充実。たまに華麗なスピンをしながら攻撃してくる刺客もいたりと、そこそこ派手に作ってありました。やはり香港映画に出演していた頃の経験が生きているのか、松井の指導した格闘シーンの数々は見事と言えます。…が、その一方で頂けないのはストーリーの方です。
 どこかで見たような台詞・どこかで見たような展開・どこかで見たようなキャラクターと、本作はこの映画ならではというポイントが全くありません。ストーリー展開はよくあるパターンの話ばかりで進んでいくため(顔を隠した女刺客の正体もバレバレ)、事あるごとに既視感を感じます。もっとストーリーをヒネればいいのに、まるで連続モノのVシネ作品のひとつに見えてしまいました(本作は映画祭で上映された劇場公開作品)。
その後、クライマックスでちょっとしたどんでん返しがあった後、忍者軍団のボスである松田優はとっとと逃走。本宮はそれを追って出奔…という、次回作を作る気満々のオチで締めくくられていますが、未だに続編の話は聞きません。本作の監督と脚本を務めた中田信一郎は大量のVシネ作品に関わっており、本作が連続モノのVシネっぽいのはその辺りに原因がありそうです。

『金色太陽』

2008-09-22 22:36:32 | バッタもん李小龍
金色太陽
英題:Dragon Dies Hard/Bruce Lee, We Miss You
製作:1977年

●何宗道と歐陽鐘(ちょっと田俊っぽい役)は功夫道場のツートップ。そんな彼らの元に李小龍(ブルース・リー)の訃報が舞い込んだ。スーパースターの死に深く落ち込む何宗道だが、その夜彼の枕元に李小龍の幽霊(何宗道の二役)が現れる。少林寺へ相談に出かけた何宗道は、交霊術によって李小龍が謀殺された事を知った。
その後、何宗道はクラブで知り合った女といい仲になるのだが、なにやら彼女の背後にはきな臭い連中の影が…。案の定、刺客に襲われたり怪しげな男から警告を受けたりするが、何宗道はこれを果敢にも跳ね除けていく。歐陽鐘が連れ去られて一時はあわやという場面もあったが、果たして何宗道たちを襲う連中は何者なのだろうか?
何宗道はふたたび少林寺に向かい、交霊術で呼び出した李小龍の霊の動きを手本に特訓を開始。続いて李小龍のコスプレをして敵陣に向かった何宗道は、敵の慌てようを見て彼らが李小龍の死に関係があることを確信する。そこでくだんの女を問い詰めたが、彼女は李小龍がのたうちまわって死んだ事しか知らないらしい。じゃあ一体誰が李小龍を…?
というわけで、後半30分になってようやく龍飛ら真の悪党たちが登場する。李小龍の死の真相に近付きつつある何宗道を、龍飛らが放っておくはずがない。手始めに配下(うち1人が『詠春興截拳』で何宗道と戦ったアフロ黒人)が向かい、続いて山茅、そして龍飛が何宗道の前に立ちはだかる!
本作は見ての通り、『ブルース・リーを探せ!』の劣化コピーみたいな話である。
李小龍の幽霊が化けて出てくる作品としてそこそこ知られている本作だが、正直言って見るに値しない作品であることは間違いない。キャストは何宗道と龍飛と山茅以外は無名の役者ばかりだし、功夫アクションも終始もっさり気味。バスを使ったスタントや、クライマックスでの龍飛や山茅との闘いではそれなりのファイトが見られるものの、特別面白い出来でない事だけは確かだ。
作品としては『ブルース・リーを探せ!』とどっこいどっこいの本作。こんなしょうもない作品に幽霊として担ぎ出されるなんて、それこそ当の李小龍本人も浮かばれまい…(合掌)。

『キックボクサー4』

2008-09-20 20:46:15 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「キックボクサー4」
原題:KICKBOXER 4: THE AGGRESSOR
製作:1993年

●『キックボクサー』シリーズ中唯一未見だったこの作品、遂に見ました!
これで『キックボクサー』シリーズは完全制覇。念願かなって見ることが叶ったんですが、監督は何誌強(ゴッドフリー・ホー)や藍乃才(ライ・ナイ・チョイ)に並んで私の中ではワースト監督として君臨している(苦笑)アルバート・ピュン…まぁ見る前から作品の出来は予想できてました。
主人公のサシャ・ミッチェルは現在刑務所暮らしの真っ最中。実はミッチェル、カメル・クリファ(前作のミシェル・クイシからトン・ポー役は交代)に陥れられて監獄送りとなり、妻も誘拐されてしまっていたのだ。
そんなミッチェルの元に麻薬取締局から、ある取引が舞いこんだ。今やカメルはメキシコで麻薬王としてブイブイいわせてるのだが、今度格闘大会を開くらしい。そこでミッチェルが潜入してカメルを始末して欲しいという。もちろんミッチェルはこれを承諾。道中出会った格闘少女や旧友ブラット・ソーントンと共に、ミッチェルは再び戦いの中に飛び込んでいくのだった。
かつてピュン作品である『キックボクサー2』では、クライマックスの戦いがほぼ全てスロー処理されるという疎き目にあったが、今回はちゃんと普通のアクションに仕上がっている。また、格闘大会ということで様々なファイターが絡んでくるため、格闘シーンもそれなりに充実。『3』を見たときは不安に思っていたが、ちゃんとキックボクサーらしいアクションに立ち返っていたのは感心だ。
相変わらずミッチェルの動きはいまひとつ冴えないものの、格闘少女やソーントンらの動きには目を見張るものがあり、ミシェル・クイシからトン・ポーを引き継いだカメルも違和感無くトン・ポーを演じている。残念ながらデニス・チャンも降板しているのは残念だが、本作はそれどころではないある問題を抱えている。

本作はとりあえず「マーシャルアーツ映画(中)」のカテゴリに入れているが、それは単にアクション面を評価しての事。問題なのはストーリーの方だ。
作中、ミッチェルは格闘大会に挑み、妻の奪還を試みてカメルのアジトに潜入する。しかし協力していたソーントン共々捕らえられ、大会で見せしめとして処刑されてしまう事に。だが、ハナっからカメルは参加者を生きて帰すつもりは無かった。生き残った参加者は反乱を起こし、ミッシェルはカメルと相対する…これが上記に記した以降の物語の展開である。
これはもうどこからどう見ても『燃えよドラゴン』以外の何物でもない。主人公が密約で異郷の地に渡り、潜入して敵の動向を探る。一方、仲間の1人は敵側の女といい感じになるが、その女も結局は命を落とす。最後は暴動が起き、主人公とラスボスの一騎打ち…と、ご覧のように完全にそのまんまといっていいぐらい、本作は『燃えよドラゴン』をパクっているのだ。
出だしと格闘大会で「ちょっと『燃えよドラゴン』に似てるなぁ…」と私は思ったが、まさかほぼ全編に渡って模倣に徹しているとは呆れるしかない。似たような作品でジャッキーの『神拳』そのままの物語だった『くノ一五人衆VS女ドラゴン』という作品があるが、あちらは「自分たちなりに面白い作品にしよう!」という作り手の熱意が感じられたのに対し、本作にはそういった意思は感じられなかった。
かつて私はシリーズの評価を『5』≧『1』>『3』>『2』としたが、ここに本作を入れるとすると『5』≧『1』>『3』>『4』>『2』となる。ストーリーを余り気にしないならそれなりに楽しめるかもしれないが…やっぱダメだなぁ、ピュン。

『螳螂鬥[奚隹]公/螳螂鬥灘公』

2008-09-18 23:48:31 | カンフー映画:佳作
螳螂鬥[奚隹]公/螳螂鬥公[奚隹]/螳螂鬥灘公/螳螂鬥公灘
英題:Death Duel of Mantis/Mantis Fights Cock/Strike of Mantis Fist/Death Dual of the Mantis
製作:1978年

▼特にどうってことないB級功夫片の一本だが、製作年度を見るに『酔拳』のヒットにいち早く便乗して作られた作品のようである。とはいえ、まだコテコテのコメディ功夫片にまでは至っていない。コメディ描写は少々あるが、至極まっとうな正統派の功夫片として仕上がっている。

■小間使いの丁華寵は、龍飛(ロン・フェイ)の元で働いている。もちろん連中がいい人である訳が無く、当然のようにやくざ者の集団だ。しかし丁華寵自身は悪い人間ではなく、ショバ代を請求されていた金燕飛を助けたりもしていた。そんな丁華寵、その金燕飛に恋をしてしまったご様子。アプローチを掛けてみるものの、金燕飛はめっぽう強くて手も足も出なかった。
一方、龍飛一味のショバ代請求は激しさを増し、丁華寵は貧しい人々が苦しむ姿を見て良心を痛めていた。そんな彼のために金燕飛とその父・茅敬順が一肌脱ぎ、悪徳銀行(ボスは柯佑民…ああ、この人が『翻山虎』の監督か)から大金を盗み出す手助けをしてくれた。これが新たな騒ぎの火種となることも知らず…。
柯佑民は金を盗んだのが龍飛一味の仕業と断定。馬場ら用心棒を引き連れ、龍飛のもとへ現れた。この一件は龍飛の手により決着が付いたが、柯佑民との間に禍根が残った。それから丁華寵は龍飛にニワトリ拳の修行を受けたり、再び金燕飛に挑んだりしていく。ここでニワトリ拳を見た茅敬順の顔色が変わるのだが…?
柯佑民との抗争で手柄を立てた丁華寵は、いつしか手下を従える身分にまで昇進していた。柯佑民は用心棒の萬里鵬と共に再び襲ってきたが、丁華寵が萬里鵬を撃退し、龍飛が柯佑民らを始末した。龍飛の非道さを目にした丁華寵は疑問を抱くようになるが、同様に龍飛も「丁華寵は警察のスパイでは?」という子分の指摘で、丁華寵の抹殺令を下した(ここらへん展開がちょっと急だなぁ)。
龍飛が殺しにやってくる事は必然だ。掘っ立て小屋に引っ越した金燕飛らの元に身を寄せた丁華寵は、蟷螂拳の特訓を始める。ニワトリ拳への対策は丁華寵自身が技を知っていたので万端だ。決戦の日、茅敬順と龍飛は旧敵同士だったことが判明する中、龍飛一味との死闘の幕が切って落とされる!

▲本作の武術指導は『鐵[月孛]子李勇』の蘇國[木梁]と林光榮ら三名の武師が担当。そのおかげか、全編に渡って手堅いアクションのオンパレードとなっている。様々な拳を披露する丁華寵、女ドラゴンっぷりが勇ましい金燕飛らの活躍も見逃せないが、本作で1番の注目どころは龍飛だろう。今回の龍飛はラスボスではあるものの、作中では普通にいい人として振舞っているのだ。
丁華寵が分け前をピンハネされた時は子分を叱り、丁華寵の不始末に関しても穏便に済ませ、拳法の特訓をしている丁華寵を見て微笑んだりと、本作に限って言えばいつもの龍飛ではない。だが製作サイドは、このまま龍飛をいい人にしていたら収拾が付かないと判断したのか、後半になって龍飛をいつもの悪役へと押し込めてしまっている。
演出によっては『少林寺木人拳』のジャッキーと金剛のような物語にできたのかもしれないが…ここに関してはとても惜しいと思っています。とはいえ、全体的にしっかりした作りである事は確か。あと一歩で傑作になり損ねた作品、という事だろうか。

『帰って来た少林寺厨房長/廚房長』

2008-09-16 21:04:28 | カンフー映画:珍作
帰って来た少林寺厨房長/廚房長
英題:Magnificent Natural Fist/Shaolin Fist Fighter
製作:1981年

●以前、鄭真化(エルトン・チョン)主演の韓国産コメディ功夫片『少林寺厨房長』なるものを紹介した事があるが、本作は何とその続編である。本家『酔拳』がその続編製作に至るまで間を置いたのに対し(『南北酔拳』というのがあるが、まぁそれは置いといて…)、こちらの続編はほぼ同年に製作されているところが興味深い。
前作で韓鷹(イーグル・ハン)を倒した鄭真化は、自立して奥さん(前作の金明兒に当たる役か?)と共に茶店を開いていた。ところがそこに、この地一帯を支配してしまおうと企む飛雲ら五人衆が現れる。前作で鍛えた腕もこの五人衆には敵わず、鄭真化は奥さんを殺されてしまった。
誰もがこの後、前作同様に王龍(マイク・ウォン)の修行を受けた鄭真化が、五人衆を次々と倒していく展開を想像するだろう。が、本作は謎の女宗教(教祖の陳樓利は王龍と同門らしい)が絡んできたり、なぜか王龍がいた寺に行って厨房係になったりと寄り道ばかりの物語になってしまっている。恐らくストレートな作りだった前作との差別化を図ったつもりなのだろうが、正直この脱線だらけのストーリーは頂けない。
また、前作に引き続いて師匠として登場する王龍は、本作でも仏頂面のドメスティック師匠のままで通している。温かみやユーモアの欠片もなく、怒るとすぐに鄭真化をしばき倒す等…前作以上にとっつきにくいキャラになっているのは大減点だ。1時間を過ぎたところでやっと笑顔を見せたりするが、そんなことなら最初からくだけた師匠でいてくれた方がもっとマシだっただろう。
後半になって鄭真化はようやく五人衆との戦いへ挑んでいく。この五人衆、1人として知っている顔はいないのだが、アクロバティックなアクションをそつなくこなしている様は圧巻だ。しかし殺陣は蹴り技一辺倒でメリハリが無いため、しばらくするとすぐに飽きてしまった。本作の殺陣は王龍自らが振付けているのだが、早回しを多様したりとあまり芸が無いのである。
結局、五人衆は全員倒したが王龍は死んでしまい、鄭真化がぐずりながら王龍の入った棺桶を運ぶという後味の悪いオチで本作は幕を閉じる。五人衆は個性的な面々が揃ってはいたが、迫力という点では明らかに前作の韓鷹に劣っていた。せめて1人だけでもビッグネームが出演してくれていたら、もっと画面が引き締まったに違いないが…改めて本作を顧みてみると、前作の成功がいかに韓鷹様々だったかということが窺い知れる。
全体としては悪い続編の見本みたいな作品。しかし各々のアクションシーンはそれなりに楽しめるので、そちらだけを楽しんだほうが無難だろう。とりあえず無理して見るほどの作品ではない事は確かです。

『復讐!少林蝴蝶拳』

2008-09-14 21:35:22 | カンフー映画:傑作
「復讐!少林蝴蝶拳」
原題:蝴蝶十八式
英題:Butterfly 18/Secret Shaolin Kung Fu/Secret of Shaolin Kung Fu/Invincible Shaolin Kung Fu
製作:1979年

▼台湾の功夫スター、李藝民(サイモン・リー)の主演作で、日本でソフト化された幾つか作品のうちのひとつである。本作以外に日本で公開された彼の作品は『少林の鉄爪 鷹拳』『ドランクマスター・酒仙拳』『少林寺列伝』ぐらいで、ある種貴重なタイトルであるともいえる。
ところで、李藝民といえばコメディ功夫片だが、本作は一筋縄ではいかないストーリーで成されているところがポイントだ。

■冒頭、手足の無い男(余松照)が神輿に担がれている場面から幕を開ける。
何やら余松照は18年前のある事件に関わっているようで、余松照と再会した陳慧樓や馬場は相次いで自殺し果てていった。一方、こちらは主人公の李藝民。武術家で盲目の祖父・古錚と暮らしており、いつもは茶店で働いている。イジワルな先輩の許不了とてんてこまいの日々を送っていたが、ひょんな事から奇妙な乞食の孫榮志と出会ったことで、彼の運命は大きく変わっていくのだった。
この孫榮志、酒飲みだが滅法強いコメディ功夫片おなじみのキャラ。李藝民にちょっかいをかけるが、ピンチに陥った彼を助けたりもする変な奴だ。ある日、乞食のグループが荊國忠らに殺される所を目撃した李藝民は、死に際の乞食から合言葉のようなメッセージを受け取る。そのことを聞いた孫榮志は顔色を変えて「忘れろ」と一喝。古錚にも話すが同様の反応が返ってきた。
実はこの乞食グループ殺害には黒幕がおり、殺された乞食たちは乞食党ともいうべき集団に属している者たちだった。乞食党は首領が不在で、彼らは事態を打開すべく首領を探す事にした。それを察知した黒幕は、配下に乞食たちの掃討を命令する。
そんな折、李藝民と孫榮志は乞食狩りをしていた荊國忠と遭遇。荊國忠は李藝民と戦闘になるが、李藝民の使っている技を見た孫榮志は何故か眼を丸くした。孫榮志は乞食党に李藝民の家に首領がいると伝える。李藝民の家へ乞食党が詰めかける中、古錚は兄弟子だった孫榮志の説得に応じ、事の全てを告白した。
…18年前、ある武術家が殺された。余松照が犯人であるという情報を掴んだ古錚は、仲間の陳慧樓や馬場と共に余松照を襲った。ところが余松照は無実で、彼は殺された武術家の遺児を伴っていた(この子供が李藝民)。罪の意識から古錚は自らの目を潰し、そして冒頭の展開へと至るのである。
武術家を殺したのは、現在乞食狩りを進めている明月会のボスと、裏で手を引いている黒幕の2人だという。全てを知った李藝民は明月会のボスを倒し、黒幕へと迫る。親の仇を取るべく、李藝民は邪悪な武術家である黒幕と最後の死闘を繰り広げる!

▲コメディ功夫片というものはコメディ要素とシリアス要素の割合を間違えると、途端におかしな作品になってしまうものだ。コメディとシリアスが上手く同居している作品といえば『酔拳』『笑拳』、ちょっとさじ加減が違う作品に『真説・モンキーカンフー』、完全にコメディとシリアスが分離してしまっている作品には『師兄師弟』『天才功夫』などがある。
本作はどちらかというと、コメディとシリアスのバランスがきちんととれている作品だ。ただし『雙馬連環』のようなストレートなものではなく、入り組んだ話にして他の作品と差別化を図っている点は評価に値する。
功夫アクションについても中々凝っており、少しもっさり気味だが及第点以上のファイトを構築。武術指導は孫樹培という人だが、『夢拳蘭花手』も手がけている。演者によるクオリティの違いはあるのだろうが(まぁ『夢拳』は荊國忠、本作は李藝民だし)、どこかもっさりしている所は孫樹培の持ち味なのだろうか?
李藝民主演作では今のところ『雙馬連環』と本作がベスト。これからも李藝民の作品は見ていきたです。

『三千大洋/搏命』

2008-09-12 20:49:40 | カンフー映画:傑作
三千大洋/搏命/強盜,妓女,錢
英題:The Damned/Bandits, Prostitutes and Silver
製作:1977年

▼二枚目スターの王道(ドン・ウォン)と茅瑛(アンジェラ・マオ)のGHコンビが主演を務めている本作は、『通天老虎』の女流監督、高寶樹(カオ・パオシュ)の監督作品である。
脚本に倪匡(イ・クオン)、武術指導に鹿村泰祥(!)と柯受良が参戦。これら充実した陣容を見ても解る通り、本作が『通天老虎』『嵐を呼ぶ必殺剣』同様、大いに力の入った作品である事が窺い知れる。

■馬車引きで功夫の達人である王道は、仕事帰りに聞江龍から勝負を挑まれた。
ムチでコインを叩き落とす王道だが、勢いあまって王侠にムチが直撃した。この王侠、街の顔役である羅烈(ロー・リェ)の部下で、当然悪人だ。怒った王侠は王道に襲い掛かるが、ピンチに陥った彼を聞江龍が助けた。
実は王道は娼館に彼女がいる。いずれは身請けして結ばれたいと思っている王道だが、彼女からは「あんまり揉め事起こさないでね」と言われていた。今日も娼館へ彼女に会いに来た王道だが、再び現れた王侠に殺されそうになった。
そこへ助けに入ったのは聞江龍。実は聞江龍は強盗であり、王道の実力に目を付けていたという。聞江龍は王侠の御用金を襲うと告げ、王道に強引に仲間になれと迫る。王侠のことが憎い王道は勢いでOKサインを出してしまうのだが…。
翌日…襲撃は成功したが、非道な聞江龍のやり方に王道が反発。聞江龍を倒した王道だったが、結果的に彼の手元には御用金が転がり込んだ。しかしそんな王道のところへ、同じく御用金を狙っていた高飛(コー・フェイ)&茅瑛ら盗賊団が姿を見せた。御用金を巡って熾烈な争いが繰り広げられたが、結局茅瑛が折れる形で決着が付いた。
だがその頃、羅烈と王侠は王道を潰すために御用金襲撃の犯人に仕立て上げていた。高飛と茅瑛は挑発でもしにきたのか(?)羅烈のところへ推参するが、逆に羅烈の空とぶギロチン簡易版によって殺されてしまった。弟子である林小虎と盗賊団の残党からそれぞれ事情を聞いた王道は、まず彼女を取り戻しに王侠のところへと攻め入った。
だが王侠を倒したと思った刹那、羅烈の空とぶギロチン簡易版によって彼女は死亡!怒りに震える王道と、悪らつな羅烈との決戦が始まる!

▲作品としては因果応報を描いた陰惨な物語ではあるが、本作はまさしく王道の一人舞台ともいえる内容に仕上がっている。
この作品で王道は全編に渡って激しいアクションのつるべ打ちを見せており、彼の素晴らしいファイトを存分に見ることが出来る。なにしろ本作には『南拳北腿』や『鷹爪蟷螂』のように自分の見せ場を奪うようなパートナーもいなければ、『地獄の刑事』や『形手螳螂腿』のように喰われてしまうような敵役もいないのだ。王道としては、かなりのびのびと演じられたのではないだろうか?
また、本作では『銀蕭月剣翠玉獅』では不十分な結果に終わっていた王道VS茅瑛のバトルがしっかり見られるし、高飛・聞江龍・王侠・羅烈といった猛者たちとも濃厚なバトルを展開してくれる。惜しむらくは北京語字幕なしのソフトで見たため、ストーリーが完全に把握できなかった点だが、私としては『勾魂針奪命拳』の次ぐらいに満足した作品。功夫迷は必見だ!