功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『ザ・セブン・グランド・マスター(虎豹龍蛇鷹)』

2018-02-18 23:30:16 | カンフー映画:傑作
「ザ・セブン・グランド・マスター」
原題:虎豹龍蛇鷹/虎豹龍蛇鷹絶拳
英題:The 7 Grandmasters
製作:1978年

▼今回も引き続き郭南宏(ジョセフ・クオ)作品の紹介ですが、こちらはコメディ功夫片ではありません。主人公のルックスや明朗な性格も、『酔拳』というよりは『蔡李佛小子』や『洪拳小子』などからの影響を感じます。
作品としては実にオーソドックスな功夫片であり、郭南宏らしいサプライズ展開も用意されていますが、注目すべきは武術指導に元奎(コーリー・ユエン)&袁祥仁(ユエン・チョンヤン)の両名がクレジットされている点です。
この2人は当時の袁家班における中心的存在で、彼らは同年に郭南宏の『ドラゴン太極拳』へ参加したばかり。キャストも一部が共通しており、いわば本作は『ドラゴン太極拳』の姉妹作といっても過言ではありません。

■正義門と呼ばれる道場を主宰し、高名な拳法家でもある龍世家(ジャック・ロン)は人々から慕われていた。彼はある祝祭で看板を授与されるが、そこで何者かに挑戦状?を叩き付けられる。
これを重く見た龍世家は、旅に出て各地の達人たちと戦うことを決意。龍冠武(マーク・ロン)を筆頭とした3人の高弟、娘の燕南希(ナンシー・イェン)を連れ、まずは龍飛(ロン・フェイ)と雌雄を決した。
 が、龍飛は勝負の直後に不審な死を遂げ、残された門下生たちは龍世家を怪しむが…。一方、当の龍世家はさまざまな達人と戦っていたが、そこに奇妙な青年・李藝民(サイモン・リー)が付いて回るようになる。
彼は何度も弟子入りを志願し、ドジを踏んでは突っぱねられ続けた。しかし、卑怯な武器の達人・元奎が放った刺客から龍世家を守ろうとしたことで、ようやく正式に弟子入りを認められるのだった。
 なにかと龍冠武から嫌がらせを受ける李藝民であったが、向上心の強い彼はメキメキと腕を上げ、いつしか高弟たちをも追い抜いていく。そして、弟子を動員した対抗戦に勝利した龍世家は、足かけ二年に及んだ旅を終え、ようやく正義門へと帰郷した。
ところが物語は急転直下の事態を見せる。実は李藝民は父親の仇討ちを誓っており、彼の父親こそ序盤で死んだ龍飛だったのである。李藝民は父殺しの容疑者・龍世家を倒すため、あえて彼に弟子入りして拳法を学んでいたのだ。
「待て、龍飛を殺したのは割って入った別の男だ!」「問答無用!いざ尋常に勝負だ!」 かくして、ここに望まざる師弟対決が始まるのだが…。

▲この作品は李藝民が主人公とされていますが、本格的に彼が登場するのは序盤を過ぎてから。全編に渡ってアクションシーンを牽引するのは龍世家であり、見方を変えれば彼こそが主役と言ってもいいでしょう。
龍世家といえば、台湾功夫片おなじみの顔であり、郭南宏の常連俳優としても知られた存在です。素面ではいかにもチンピラ風のルックス(爆)ですが、老けメイクをすると一転して温和な表情となり、温かみのある師匠役を得意としてきました。
 本作は、そんな彼が初めて師匠役を演じた作品のひとつで(同年の『四兩搏千斤』も師匠役ですが、主人公を導くキャラクターではありません)、郭南宏も彼を猛プッシュしている様子が窺えます。
龍世家自身も、時に厳しく、時に優しい師匠役を好演。アクションスターとしては自分よりも大きい役を演じ、ショウ・ブラザースで活躍してきた李藝民に負けじと、迫真の立ち回りを見せていました。

 アクションの出来も素晴らしく、袁家班タッチのスピーディーなバトルが楽しめます。主役サイド以外では、猿拳の達人を演じた錢月笙(チェン・ユーサン)、対抗戦で龍冠武を完封した馬金谷、多様な武器を操る元奎の動きに目を引かれます。
もちろん、彼らに対抗する李藝民たちの動作もキビキビとしており、大胆かつ流れるようなファイトシーンは『ドラゴン太極拳』にも勝るとも劣りません。不満らしい不満といえば、女ドラゴンの燕南希があまり目立ってない事ぐらいでしょうか。
 ラストの師弟対決では、ちゃんと両者が同じ拳法を使用し、続くVS徐忠信(アラン・ツィー)でもスタイルが統一されています。功夫片の中には、場当たり的な殺陣でお茶を濁すような作品もありますが、本作は殺陣への配慮が行き届いた逸品と断言できます。
ダイナミックなアクションと意外なストーリーで楽しませる台湾功夫片の傑作。『ドラゴン太極拳』が好きな人はもちろん、私のように師匠役の龍世家に安心感が持てる人には、是非ともオススメの作品です!(笑

中国産功夫片を追え!(終)『神州小劍侠』

2017-08-31 23:14:00 | カンフー映画:傑作
神州小劍侠
英題:Young swordsmen in china
製作:1989年

▼1986年、香港で映像機器の会社を興していたひとりの日本人が、日中合作による功夫片の製作へと着手しました。
中国からは武術家の王群や『武林志』の李俊峰が出演し、日本からはベテランの村川透が監督に着任。3D映画として製作されたその作品は、『侠女十三妹/カンフー艶舞』のタイトルで日本上陸を果たします。
 この作品を製作したのは日本人の辻真佐男氏で、彼は『侠女十三妹』に続いて日中合作映画第2弾を企画し、再び日本と中国から精鋭たちを呼び集めました。
そうして製作されたのが本作『神州小劍侠』なんですが、これが様々な意味で異色の作品となっているのです(詳しくは後述)。

■(字幕ナシで観賞したのでストーリーは多少推測が入ってます)
 物語は静かに暮らす少数民族(苗族?)の集落に、突如として政府の一軍が襲いくる場面から始まる。彼らを先導したのは、同じ一族でありながら裏切った王春元と杜偉和の兄弟だった。
一族の長は、生まれて間もない我が子に一族再興の願いを託し、長の証である金杯を持たせて密かに逃がした。かくして長とその近親者たちは殺され、遺児は王德明(中国武術七段の拳法家)とともに日本へ落ち延びた。
 それから10年後…忍者の頭領である鹿村泰祥(!)の庇護の元、残された遺児は少年忍者・鞏利峰へと成長。友達の高偉・宮炳華らと共に、厳しい修行の日々を送っていた。
そんな中、仙草探しのため中国へ渡る事になった鞏利峰は、城下町(ロケ地は恐らく東映太秦映画村)へと向かい、豪商・入江正徳の仲介で大陸へと出立する。
 のちに追ってきた高偉と宮炳華も加わるが、とある誘拐事件に遭遇したことで張子紅・張悦の姉弟と知り合う。彼らは仙草の自生地を知っており、道案内を買って出てくれた。
だが、実は目的地には件の滅ぼされた一族の集落があり、実権を握った王春元と杜偉和は金杯を持つ遺児を血眼で探していた(誘拐事件はその一環)。
 やがて砦に到着した鞏利峰たちであったが、敵に襲われたところを王德明に助けられ、すべての秘密を聞かされる事となる。
今回の旅路は一族再興の一環であり、鞏利峰の両親は王春元と社佛和に殺され、張子紅・張悦こそが王德明の実子なのだ…と。だが、張悦は年端もいかぬ弟が犠牲になっていた事を知らされたため、王德明に激しく反発する。
 やがて政府軍の将を討ち、各地に落ち延びた一族の残党を結集させた王德明は、一斉蜂起の機を窺っていた。しかし張悦が先走って捕えられ、助けに来た鞏利峰や王德明たちも捕まってしまう。
刻々と残党による蜂起が迫る中、果たして鞏利峰たちは窮地を切り抜けられるのだろうか…!?

▲ご覧のとおり、本作は香港映画で活躍した鹿村泰祥が出演しており、彼は武術指導と監督(中国側の羅[シ兪]中、日本側の高瀬昌弘と共同)、そして脚本も担当しています。
本作の鹿村さんは師匠ポジションながら王德明と戦い、ラストバトルでは美味しい活躍を見せたりと各所で活躍。彼の指導したアクションシーンも実に流麗で、主演の子役たちもアクロバティックな動きで応えています。
 アクションもさることながら、ストーリーも子供向けアドベンチャーとしてそつなく纏まっており、仇討ちというテーマを扱いつつも血生臭さや陰惨さを全く感じさせません。
仲間の1人とヒロインのロマンスが後半で忘れ去られていたりしますが、最後まで丁寧に作られているため、そこまで気に掛かるような事もありませんでした。

 しかし本作を異色作と呼ぶ要因は他にもあります。先述したように、劇中では東映太秦映画村でロケが行われており、鹿村さん以外にも日本人キャストが多数参加。驚いた事に、その中には深沢政雄氏の姿があったのです。
深沢氏は昭和ゴジラシリーズでミニラを演じ、“小人のマーチャン”の芸名でも知られています。本作では中国ロケ部分に少しだけ出演し、ノッポの相方と一緒にコソ泥の詐欺師に扮していますが、どんな経緯で氏は本作に関わったのでしょうか?
 そしてもう1つ、かつて『侠女十三妹』では3D方式が採用されていましたが、本作では一部のシーンをアニメーションで描くという実験的な描写が試みられています。
劇中では中国への航海と最終決戦でこの手法が使われていますが、その演出やタッチは明らかに日本製。残念ながらクレジットにアニメ制作会社の表記は無く、一体どこのプロダクションが作ったのか非常に気になります。
広大な中国山地のロケに加え、日本ロケに意外なキャストにアニメーション、そして鹿村さんのサプライズ出演に驚かされる逸品。単独の作品としても簡潔に仕上がっているので、決して見て損は無いでしょう。

 さて、そんなこんなで今月は日本未公開の中国産功夫片を追ってみましたが、そのバリエーションの豊かさには圧倒されてしまいました。
どの作品にも多彩なバックグラウンドがあり、きら星のような武術家たちの活躍があり、そして奥深い歴史が存在します。
 その広大さは香港映画にも引けを取っておらず、こうした切磋琢磨の連続が中国映画を世界でもトップクラスの市場に押し上げたのだと思うと、なんとも感慨深く思えてなりません。
とはいえ、私の中国映画への探求は始まったばかり。今回の特集はこれで終了となりますが、また機会があれば未開拓の中国映画に迫ってみたいと考えています。という訳で皆さん、本日はこれにて……(特集、終わり)

『カンフー仁義 ~復讐の刃~(空手入白刃)』

2015-05-16 22:45:56 | カンフー映画:傑作
「カンフー仁義 ~復讐の刃~」
原題:空手入白刃/虎胆殲仇
英題:Daggers 8
製作:1980年

孟元文(メン・ユンマン)は功夫が好きなお坊ちゃま。しかし祖父の張森はそれを許さず、彼の兄(孟元文の二役)が功夫勝負で死んだと知ると、「お前もこうなりたいのか!」と孟元文を軟禁してしまった。
祖父に功夫で身を立てられると認めてもらうため、そして何よりも自分自身が功夫を習うため、孟元文は出奔を決意をする。まず最初に彼が出会ったのは、露店を経営している武術の達人・陳龍(チェン・ロン)だった。
 さっそく弟子入りを志願し、腕や足腰のトレーニングに入る孟元文…であったが、突然現れた殺し屋・唐偉成(ウィルソン・タン)によって師匠を殺されてしまう。
その後も軽功の使い手・徐忠信(アラン・ツィ)、綿拳の名手・李麗麗(リリー・リー)に教えを乞うも、相次いで唐偉成に抹殺されていく。…実は一連の殺しを依頼したのは、なんと張森その人だったのだ。
彼は孫に功夫修行を諦めさせようと思っていたが、過去に買った恨みによって自らも唐偉成の手にかかった。因果応報と言えばそれまでだが、このまま黙っている孟元文ではない。全ての決着を付けるべく、彼は冷酷非道な唐偉成に挑むが…?

 今月は協利電影からもう1本、ご覧になった方も多いと思われる本作を視聴してみました。この作品の特色は、なんといっても“主人公の師匠が複数いる”というユニークな点でしょう。
演じるのは実力派の功夫俳優たちで、それぞれ異なった持ち味を発揮。監督&武術指導を兼任する唐偉成との戦いでも、手数の多いテクニカルな殺陣を見せています(オススメはメチャクチャ身軽な徐忠信VS唐偉成!)。
 主役の孟元文も負けておらず、ひたむきに功夫修行に打ち込む好青年を熱演。ラストバトルでは今まで習ってきた技を駆使し、七小福で鍛えたポテンシャルの高さを披露していました。
修行の描写も解りやすく、一見するとバラバラの拳法を学んでいるようでいながら、ちゃんと段階を踏んでいる(最初に腕力や脚を鍛える→次に身軽な動作を身に付ける→最後にやっと本格的な功夫の練習)のも実に見事です。
 ちなみに“主人公の師匠が複数いる”というアイデアは、劉忠良(ジョン・リュウ)の『好小子的下一招』でも使用されており、内容も本作と非常に似通っています。
最後に習得したすべての技を使用するところも同じですが、劉忠良の節操の無さは孟元文を完全に上回っているので(笑)、私はどちらかというと本作の方が好みですね。
タイトルにもなっている空手入白刃がどんな技か解りづらいのと、ヒロインの扱いが雑すぎる点を除けば至高の作品。質の高いアクションが目白押しなので、功夫映画ファンなら是非とも見ておきたい良作といえるでしょう。

『生死拳速』

2015-01-28 23:39:04 | カンフー映画:傑作
生死拳速
英題:Fist Power
製作:2000年

▼みなさんご無沙汰してました…年明けを無事に過ごせたと思っていたら、40度近い高熱を患った龍争こ門です。なんだか毎年この時期はいつも体調不良を引き起こしている気がしますが、ひょっとして祟りか何かなのでしょうか?(爆
と、そんな陰鬱した空気を吹き飛ばすべく、今回は現代アクションの快作をひとつ。本作は李連杰(リー・リンチェイ)が『ワンチャイ』シリーズを降板した際、主人公の座を引き継いだことで知られる趙文卓(ウィン・ツァオ)が主演した作品です。
趙文卓といえば、どうしても思い起こされるのが例のあの一件ですが、本作では八面六臂のアクションを披露。充実したキャスト陣とともに、ネガティブなイメージを払拭するほどの活躍を見せていました。

■1997年、香港は返還され英国統治の時代に幕を下ろした。これを機に黄秋生(アンソニー・ウォン)は軍を辞め、地道にトラック運転手として働きはじめるが、愛する息子を離婚した妻と再婚相手の成金(龍方)に奪われてしまう。
一方こちらは趙文卓。彼の仕事はガードマンの能力査定で、この日も自らビルに乗り込んで大立ち回りを演じていた。ある日、彼は出先に向かう途中で車が故障し、通りかかった黄秋生のトラックに乗せてもうことに。
 僅かな間に親交を深める2人の男だったが、黄秋生の状況は非常に切羽詰まっていた。龍方は子供をアメリカに連れて行こうと画策しており、返還を求めて訴えを起こすが相手にすらされない。「俺はただ息子といたかっただけなのに…どうして……!」
ついに我慢の限度に達した彼は、恐るべき行動に及んでいく。なんと昔の軍人仲間を招集すると、小学校に大量の爆弾を仕掛けて籠城。生徒や教師を人質にして、7時間以内に我が子を連れてくるよう要求したのだ。
 甥っ子がその小学校に通っていた趙文卓は、再会した黄秋生からその役目を強引に指名された。前日にお見合いパーティーで出会った記者の黎姿(ジジ・ライ)、黄秋生の仕事仲間だった李燦森(サム・リー)とともに、彼は香港の街を駆け抜けていく。
龍方の妨害が飛び交う中、果たして趙文卓たちは黄秋生の息子を連れてくることが出来るのだろうか?

▲本作は香港映画随一の奇才・王晶(バリー・ウォン)がプロデュースした作品で、清々しいまでにアクション推しの内容となっています。中盤からはその傾向が著しく、趙文卓はほぼノンストップで戦い続けていました。
そのテンションは『ナイス・ガイ』を彷彿とさせますが、対戦相手もシチュエーションもバラエティに富んでおり、ファイト・シーンでマンネリは感じさせません。っていうか龍方、いくらなんでも刺客を差し向けすぎ!(苦笑
 圧巻なのがラストバトルで、往生際の悪い龍方は小学校の中にまで惠天賜&麥徳羅(どちらもショウ・ブラザーズ出身)らを送り込みます。さすがの趙文卓も限界かと思われたその時、彼の家族たちが駆けつけるのです。
まず父親役が『少林寺三十六房』の劉家榮(リュー・チャーヨン)、母親役に『大酔侠』の鄭佩佩(チャン・ペイペイ)、そして姉役は『長輩』の惠英紅(クララ・ウェイ)! もう1人の胡智龍は武術指導家ですが、なんと通好みな顔ぶれでしょうか!
このあと趙文卓が黄秋生の要求をきちんと守り、事件は見事な決着を迎えるわけなんですが、功夫映画ファンとしてはコッチの大暴れの方しか頭に入ってきませんでした(笑
 さて、さっきからアクションのことばかり言及していますが、本筋の方もわりと好調です。シリアスとギャグのバランスが良く、無茶苦茶なプロットを一気に描き切る構成は『修羅を追え』(こっちほど深刻じゃないけど)を思わせます。
また、この手の作品では女子供が足を引っ張るケースが多々ありますが、本作はそういった不要な描写をバッサリとカット。黄秋生の息子は終始いい子にしてるし、黎姿もコメディエンヌとしての役割を全うしていました。
龍方と離婚した妻はきちんと痛い目にあうので、堅苦しい事を抜きにスッキリしたい人にはオススメの逸品。ショボいところもあるけど、趙文卓の主演作としては間違いなく傑作に入る部類だと思います。

『大教頭與騷娘子』

2014-10-16 23:26:54 | カンフー映画:傑作
大教頭與騷娘子
英題:Bruce and the Iron Finger/Bruce Against Iron Hand
製作:1979年

▼かつて『クローン人間ブルース・リー/怒りのスリー・ドラゴン』という無茶苦茶な作品がありました。これは李小龍のバッタもん俳優を集結させた怪作で、これ以外にも“ブルース”の名を持つ男たちが集った作品が存在します。
例えばブルース・ライこと何宗道(ホー・チョンドー)が監督&主演した『龍的影子』には、共同監督として呂小龍(ブルース・リ)が参加。そして本作では、何宗道があの梁小龍(ブルース・リャン)と顔を合わせているのです。
この2人は『Gメン75』の香港ロケシリーズに出演しており、他にも本作には『Gメン』出演者が何人か顔を出しています。これで江島と楊斯(ヤン・スー)も出ていれば最高だったんだけどなぁ…(笑

■香港で謎の覆面通り魔による連続殺人事件が発生する。被害者はみな首筋に鉄指拳を叩き込まれており、武館の師範(?)に続いてクラブに雇われていた怪力男・染野行雄も殺された。
刑事の何宗道は、現場に残されていたペンダントを手掛かりに捜査を開始。死の直前に染野と一夜を過ごした李海姫に話を聞くが、これといって有力な情報は聞けなかった。
 そうこうしているうちに、仲間の刑事から「谷峰(クー・フェン)が師範代をしている道場が怪しいのでは?」との情報が舞い込み、何宗道は門下生になりすまして潜入を試みる。
しかし目ぼしいネタは得られず、師範の娘に密会しようとしていた恋人?を助けたため、道場を追い出されてしまう。だが最後にペンダントを見せられた谷峰は、去りゆく何宗道の背中に怪しく目を光らせていて……。
 その後、次に何宗道が接触したのは鉄指拳道場の先生・梁小龍だった。両者は誤解から衝突するが、最終的に和解して捜査に協力してくれることに。しかし敵は卑怯な罠を仕掛けようと、密かに動き出していたのである。
もうバレバレなので先に言ってしまうが(爆)、覆面通り魔の正体は谷峰であった。彼は裏で人身売買を行っており、道場生の方野や宋金來とともに暗躍。例の連続殺人で殺した相手は、ほとんどが男癖の悪い愛人・李海姫の浮気相手だったのだ。
 何宗道が嗅ぎまわっているのに気付いた谷峰は、彼と何も知らない師範の娘を刺客に殺させようと画策。懲りずに浮気を続ける李海姫とその相手を始末し、仲間や商売道具ともども高飛びを謀った。
しかし刺客の李海生(リー・ハイサン)は何宗道に倒され、師範の娘は警察に保護された。死に際の李海姫が吐いたことで谷峰の容疑は確定的となり、何宗道と梁小龍は最後の戦いに向かう!

▲やたらと露骨なお色気シーンが多く、犯人が解りやすいのでサスペンスとしては微妙ですが、作品そのものは明るいタッチの快作に仕上がっています。
本作のカラーを晴れやかにしたのは、人間味のある主人公たちのキャラクターにあるといえるでしょう。お調子者の梁小龍はもちろん、真面目だけど捜査でミスってしまう何宗道の姿も微笑ましく感じました。
 この2人の共演は制作サイドもアピールしたかったようで、両者の対決も協利作品ばりにじっくりと描写されています。武術指導は梁小龍と梁小熊の兄弟コンビなので、クオリティに関しては何ら問題ありません。
何宗道の動きはいつも以上に鋭く、梁小龍も負けじと繊細な動作が要求される鉄指拳で対抗!そんな2人の前に立ちはだかるのが谷峰で、本作では虎拳に加えて鐵布杉らしき防御技まで身に付けていました。
 クライマックスでは2対1の戦いとなり、鐵布杉の弱点を突こうとする功夫片の黄金パターンへ移行しますが、これを現代劇でやると新鮮に見えるから不思議です(オチも倒して終わりではないのがミソ)。
梁小龍の出番は『大福星』のジャッキーに近いものの、出来に関しては上々。監督の杜魯波は梁小龍とのコンビ作が多いので、いつかはコンプリートしてみたいですね。

『帝戦 BAD BLOOD』

2014-09-03 23:12:13 | カンフー映画:傑作
「帝戦 BAD BLOOD」
原題:滅門
英題:Bad Blood
製作:2010年

●物語は、とある黒社会の一族が紙幣の原版を奪おうとする場面から始まる。この強奪計画はすんでのところで失敗し、逮捕されたボスの張兆輝(エディ・チャン)は銃殺刑に処された。
そこで組織のナンバー2・任達華(サイモン・ヤム)が暫定的にボスとなるが、張兆輝の遺書には「組織の財産は我が妹の廖碧兒(バーニス・リウ)と、弟の黎諾懿(クリス・ライ)で分け合うべし」との記述が…。
 納得のいかない任達華であったが、その直後に組織のお抱え弁護士・林雪(ラム・シュー)が謎の自殺を遂げた。続いて黎諾懿も自動車の爆発に巻き込まれて死亡し、組織の中に不穏な空気が立ち込めていく。
廖碧兒は弟の死によって別人のように変わり、一族の中で厄介者扱いを受けていた安志杰(アンディ・オン)と接触。一連の事件は任達華の仕業であると考え、彼の力を借りて任達華に近しい幹部を粛清していった。
 今まで辛い人生を送っていた安志杰は、これを機に組織のトップへ躍り出ようとする…のだが、突如として牙を剥いた廖碧兒に殺害されてしまう。実は遺書の内容は改ざんされており、すべては組織を支配しようとした彼女の計略だったのである。
最後に残っていた任達華も始末し、頂点へと君臨した廖碧兒は笑いが止まらない。――だが彼女は知らなかった。安志杰によって救われ、彼を慕い続けた女傑・蒋[王路]霞(ジャン・ルーシャー)の存在を…。

 様々な秀作がコンスタントに登場している黒社会アクションというジャンル。本作もその一篇ですが、これが90年代の香港映画を髣髴とさせるアクション重視の力作でした。
最初は人間関係が複雑そうに見えますが、ストーリーが動き出してからはバトルの連続で楽しませてくれます。そして何よりも黒社会アクションなのに銃撃戦が一切なく、徹底して格闘戦を貫き通す潔さが堪りません(涙
一方でツッコミどころが多々ある(廖碧兒の強さが明かされる展開が唐突・幹部が死にまくってるのに警察が動かない等)ものの、個人的には幕引きの問答無用さも含めて90年代らしさを強く感じました。
 アクションに関する描写は先述のとおりで、初っ端から安志杰と組織の幹部・盧惠光(ケネス・ロー)&熊欣欣(チョン・シンシン)が警官隊相手に大暴れ!掴みのファイトはバッチリです。
その後も安志杰は熊欣欣らと激突し、すっかりお爺さんとなった陳惠敏(チャーリー・チャン)と世代を超えた戦いを演じます。しかし本作の目玉は、なんといっても次世代の女ドラゴン・蒋[王路]霞の活躍ぶりです。
 彼女は体格こそ小柄ですが(ボーイッシュなところがちょっと林小樓っぽい)、全身のバネを生かして立ち回る様は見応えがあり、安志杰とともにアクションシーンを盛り立てていました。
最終決戦では大勢の手下を前に一歩も引かず、安志杰の「集団戦では決して囲まれずに相対せよ」という教えを守りながら奮戦。衝撃の結末が待つVS廖碧兒ともども、強烈な印象を残すバトルだったと思います。
『SPL 狼よ静かに死ね』からドラマの濃さを引き、功夫シーンのボリュームを足したような本作。長らく香港映画界には本格的な女ドラゴンが不在だったので、蒋[王路]霞の今後には是非とも期待したいですね。

『十八羅漢拳』

2014-02-20 22:10:00 | カンフー映画:傑作
十八羅漢拳
英題:18 Fatal Strikes/18 Deadly Strikes
製作:1978年

●少林僧の聞江龍は清朝政府の将軍・司馬龍とその手下に追われていた。司馬龍は恐るべき鷹拳の使い手で、十八羅漢拳を身に付けている聞江龍ですら歯が立たない。戦いの末に傷付いた彼は、山菜取りをしている董[王韋](トン・ワイ)と石天(ディーン・セキ)の兄弟に救われた。
あるとき2人は、めっぽう腕が立つ謎の女・沈海蓉と出会い、悪漢に襲われそうになった彼女を助けた。意気揚々とその場を立ち去る2人だが、待っていたのは先程の悪漢たちによる手痛いお礼(笑)だった。
 強くなりたいと思った董[王韋]たちは、全快した聞江龍から修行を受けることになる。徐々に力を付けてきた董[王韋]は、あるとき清朝の追っ手に襲われていた沈海蓉と再会し、窮地に陥っていた彼女を再び救い出した。実は彼女は反政府グループの一員だったのだ。
この時、董[王韋]の技を見た清朝の史仲田は聞江龍との関係を疑い、石天にも襲撃を仕掛けたが軽くいなされた。しかし司馬龍が直々に乗り出してきたことで、事態は一気に急転する。
石天の口を割らせようとした司馬龍は、彼が好いていた染物屋の娘を殺害。これに激怒した董[王韋]は史仲田を倒すが、司馬龍によって完膚なきまで叩きのめされ、自宅を放火された挙句に石天を殺されてしまった。
復讐に燃える董[王韋]は、石天たちの墓前で修行の仕上げに突入する。聞江龍が沈海蓉の叔父だと判明する中、敵の襲来を予感した董[王韋]たちは先手を打って罠を仕掛けた。遂に始まる最後の闘い…生き残るのは董[王韋]か!?司馬龍か!?

 明らかに低予算の功夫片ですが、高度なアクションと役者の頑張りによって支えられた作品です。欧米では人気が高いようで、司馬龍の異名である”シェイキング・イーグル”は本作で見せたファイトスタイルが由来となっているのだとか。
主演の董[王韋]は『燃えよドラゴン』で李小龍に指導を受けていた少年役で知られ、のちに武術指導家として大成。今も現役で活動を続けており、本作では武術指導を袁家班の袁祥仁(ユエン・チョンヤン)と共同で兼任しています。
 本作では明るい好青年を演じていますが、個人的には彼よりも石天の奮闘っぷりに目を惹かれました。本作の石天はお笑い担当のキャラですが、コメディ的な見せ場よりもアクションと演技に力を注いでいます。
特に、好きだった娘を殺された際の演技が印象的で、亡骸を抱きかかえながら荒野を往く姿には泣かされます。最終的には非業の死を遂げてしまいますが、コメディ功夫片とは一味違った石天の姿は、ファンならずとも必見といえるでしょう。
 このように演技面では石天に譲った董[王韋]ではありますが、彼と袁祥仁が共同で作り上げたアクションシーンは豪快そのもの。ダイナミックかつテクニカルな技の応酬は見応があり、こちらに関しては董[王韋]が主導権を得ていました。
ラストバトルでは手がつけられないほど強い司馬龍と、それでも立ち向かう董[王韋]による攻防戦がスリリングに描かれています。ストーリーは特にどうってことはないものの、この手の作品としては上々の出来だったのではないでしょうか。

『酔馬拳・クレージーホース』

2014-01-09 23:28:40 | カンフー映画:傑作
「酔馬拳・クレージーホース」
原題:癲馬靈猴
英題:Crazy Horse, Intelligent Monkey/Crazy Horse and Intelligent Monkey
製作:1982年(80年説あり)

▼新年明けましておめでとうございます!今日から功夫電影専科も再開いたしますので、2014年もどうぞよろしくお願いします。さて、今年の干支は午ということなので、新年最初の更新は”馬の拳法”が登場する本作をセレクトしてみましょう。
この作品は日本でTV放映されたコメディ功夫片で、長江電影の看板監督としても知られる魯俊谷が手掛けた作品です。出演者は地味ながら実力派が揃っており、例によって魯俊谷作品の常連である劉鶴年も顔を見せていました(苦笑

■お調子者の詐欺師・韓國材(ハン・クォツァイ)は、賭場でトラブっていた際に功夫青年の戚冠軍(チー・クワンチュン)と知り合う。彼は母親を捜し歩いており、興味を示した韓國材も同行することに。
道中、チンピラ(うち1人が『酔拳』の蒋金)とケンカになったり、謎の女・文雪兒と出会ったりする戚冠軍&韓國材。やがて2人はチンピラの葉天行と敵対するのだが、彼の父親こそが戚冠軍の叔父・朱鐵和であった。
 暖かい歓待を受ける凸凹コンビだが、なんだか様子がおかしい…。どうやら朱鐵和によると、戚冠軍の母親は3人組の悪党によって殺されたというのだ。すぐさま戚冠軍は仇討ちに向かったものの、たちまち劣勢に陥ってしまう。
その窮地を救ったのは、謎の老人・關海山(クワン・ホイサン)だった。彼の元には文雪兒もおり、母親殺しの真犯人は朱鐵和だと明かされる。朱鐵和の正体は悪党の親分で、戚冠軍の本当の叔父=文雪兒の父をも手に掛けていたのだ。
 全てを知った戚冠軍&韓國材は仇討ちを目指して修行に打ち込んでいく。一方、朱鐵和は邪魔になった3人組を抹殺し、修行途中で挑んできた戚冠軍たちを圧倒する強さを見せ付けた。
敵の強大さを痛感した2人は、それぞれ異なる拳法に活路を見出した。戚冠軍は酔っ払った馬の動きから酔馬拳を編み出し、韓國材は關海山の指導により猴拳を習得。改めて朱鐵和に挑戦状を送った2人は、文雪兒とともに最後の戦いへ挑む!

▲明らかに低予算の作品だし、コメディ功夫片にしてはギャグ度が低め(お笑い担当の俳優が韓國材しかいない)。ストーリーもやや単調ではありますが、質の高いアクションに目を見張る逸品です。
なにしろ、武術指導が独立プロで辣腕を振るった錢月笙・徐忠信・李超の3名ですから、作中の殺陣はリズミカルかつ力強いものとなっています。パワフルな動作を見せる戚冠軍、身の軽さを存分に発揮する韓國材、2人に負けじと奮闘する文雪兒など、役者陣の頑張りも並大抵ではありません。
 中盤の戚冠軍たちと3人組の対決も見事ですが、やはり面白いのがラストの戚冠軍&韓國材VS朱鐵和。スピーディな技の応酬が見もので、編み出した拳法が敵に通じない状況の中、酒を飲んでパワーの底上げを講じるという展開もユニークでした。
…それにしても、アクションと笑いの両方で奮闘している韓國材を見ていると、つくづくジャッキーとコメディ功夫片で共演できなかった事が悔やまれます。彼ほどの演技力と技量の持ち主なら、ジャッキーと絡んでも遜色はなかったはず。本格共演作が『燃えよジャッキー拳』だけというのは実に残念です。
 『酔拳』の亜流としても充実した出来を誇る本作。TV放映された作品には知らない物も多いので、今後もチェックしたいと思います。
ちなみに本作の劉鶴年は朱鐵和の配下(あまり強くない)に扮していますが、やはり”アレ”がないと物足りません。彼の代名詞ともいえる”アレ”については…次回をお楽しみに(笑

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝 天地笑覇』

2013-01-15 22:06:38 | カンフー映画:傑作
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝 天地笑覇」
原題:黄飛鴻笑傳
英題:Once Upon a Time a Hero in China
製作:1992年

▼新年、明けましておめでとうございます!正月早々いきなり家族全員で風邪にかかり、散々な元旦を送っていた龍争こ門です(爆)。去年はこれといった特集が組めず、何度もブログを中断していましたが、今年は頑張ってブログの更新をするつもりなので、どうか宜しくお願い致します。
というわけで今回は、新春にふさわしい笑いあふれる作品をチョイスしてみました。本作は李連杰(リー・リンチェイ)が『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズで伝説の武術家・黄飛鴻を演じ、再ブレイクを果たした頃に作られたものです。
タイトルは『ワンチャイ』のパロディっぽいですが、実際は黄飛鴻という人物そのものが題材となっており、出演者もなかなか豪華。実在の英雄をとことん扱き下ろした、実に香港映画らしい香港映画となっていました(苦笑

■黄飛鴻こと譚詠麟(アラン・タム)は、功夫すらできない料理好きの若輩であったが、人々からは達人として慕われていた。弟子である任達華(サイモン・ヤム)、曾志偉(エリック・ツァン)、呉孟達(ン・マンタ)の3人は譚詠麟が本当の達人になるのを望んでいたが、当の本人は素知らぬ顔だ。
そんな彼を疎ましく思う卑劣な拳法家・梁家輝(レオン・カーフェイ)は、商人のポール・フォノロフ(本家『天地大乱』ではイギリス領事に扮する)と結託し、勢力の拡大を目論んでいた。一方、譚詠麟の元には十三姨こと毛舜[竹均](テレサ・モウ)が訪れていた。玉の輿を狙う彼女と譚詠麟のおかしな関係は、徐々に進展していくが…。
 その頃、町では梁家輝によって阿片を扱う店が開かれ、人々の間に中毒が蔓延しつつあった。譚詠麟一行の手によって店は潰されたが、これにより梁家輝との対立は決定的に。その後もいざこざは続き、ついには譚詠麟の無力さの一端が敵に露呈してしまった。
彼を英雄と信じていた毛舜[竹均]と仲違いし、梁家輝との最終対決が迫る中、譚詠麟は覚悟を決めて修行に取り組む決意をする。頼みの綱は料理で鍛えた包丁捌き、そして鐵傘功だけだ。だが梁家輝によって毛舜[竹均]が人質に取られ、状況はより厳しさを増していく。果たして譚詠麟はこの戦いに勝ち、本当の達人となれるのか!?

▲あまり功夫アクションのできる俳優が出演していませんが、本作は上質のコメディ古装片に仕上がっています。とにかく本作で面白いのは、徹底的に茶化されまくっている黄飛鴻とその一行でしょう(笑)。お気楽な黄飛鴻、個性的な三大弟子、ドン退きするほど肉食系の毛舜[竹均]など、癖のありすぎる登場人物を見ているだけでも楽しめます。
次から次へと飛び出すギャグもユニークで、『ワンチャイ』系列のパロディもところどころで炸裂していました(譚詠麟が白連教に入門するくだりは爆笑!)。また、本作は未熟な主人公の成長物語としてもきちんと描かれており、単なるコメディ映画にとどまらない仕上がりを見せています。
 設定の都合上、譚詠麟本人が闘うのは後半以降からですが、作中の功夫ファイトは迫力満点です(武術指導は梁小熊)。クライマックスでは、相手と実力差のある譚詠麟が少ない特技で渡り合い、最後には本家『ワンチャイ』まんまの無影脚(吹替え版ではシャドーレスキックと呼称)でフィニッシュ!ここまでやってくれると実に爽快でした。
そんなわけで新春の初笑いにはピッタリな本作ですが、のちに同スタッフによって『黄飛鴻對黄飛鴻』なる続編も作られています。こっちには黄秋生(アンソニー・ウォン)が出演し、武術指導も袁祥仁(ユエン・チョンヤン)にバトンタッチされているとの事なので、是非とも見てみたいですね。

『浪子狄十三』

2012-12-06 22:28:19 | カンフー映画:傑作
浪子狄十三
Triumph of Two Kung Fu Arts/Triumph by Two Kung Fu Arts
製作:1977年

▼これまで功夫片はいろんなタイプの作品が作られてきましたが、アクションが主役で物語は添え物程度に扱われることも多く、ドラマ性を無視した稚拙な代物も時折見かけます。しかし、過去の製作者たちはナショナリズムを刺激したり、武侠片的な要素をプラスしたりと、様々な創意工夫を凝らすことで功夫片のドラマ性を高めてきました。
中でも、若者の儚い青春を描くことで支持を得た張徹(チャン・ツェー)、自身の武道哲学を映画に反映した李小龍(ブルース・リー)や劉家良(ラウ・カーリョン)らの作品は、その最たるものと言っていいでしょう。
そしてこの『浪子狄十三』も、ドラマ性が希薄になりがちな功夫片というジャンルでストーリー面を増強してみせた作品ですが、先に挙げた3名の作品とはまた違ったタイプの映画になっています。

■(※ストーリーは若干推測が入っています)
 歸亞蕾(『奇蹟』の花売りおばさん)は、5年前に「父の仇討ちをする」と言って家を飛び出した息子を探し歩いていた。彼女の持っていた人相書きを見た陸一龍は、自分の兄弟弟子だった陳惠敏(チャーリー・チャン)がその息子ではないかと思い、仲間たちと捜索を開始する。
陳惠敏は武術の使い手だが、今では身を持ち崩して用心棒のような仕事を生業としていた。彼はやはり歸亞蕾の息子だったが、仇討ちを果たすどころか自堕落な生活を送る自分の不甲斐なさに苦悩しているようだ。
 陸一龍の計らいで親子は再会を果たすが、この状況では素直に喜ぶこともできず…関係の修復には時間を要することとなった。その後、陳惠敏は修行を始め、仇敵である大悪党・金剛(カム・コン)との戦いに備えていく。そんな彼の身を案じた歸亞蕾は「仇討ちをせずに家へ帰りましょう」と優しく告げた。
だが、ずっと中途半端な生き方をしていた陳惠敏は「投げ出したら今までと同じだ」と悟り、たった1人で敵の根城へと向かった。彼は父の形見の短刀を振るって戦うが、奮戦むなしく金剛の拳によって死亡。怒りに燃える陸一龍は、仲間や師匠とともに金剛へ戦いを挑むが…。

▲ご覧のように、本作は”母と子”というテーマを扱った、実にドラマ色の強い作品でした。カメラワークも通常の功夫片とは異なり、風景や情景・登場人物の動きを丹念に追ったものとなっていて、どこか文芸作品のような雰囲気を漂わせています。
歸亞蕾と陳惠敏の母子が織り成すドラマも情緒的で、ラストの短刀を受け取ってからの仇討ちシーンは印象深いカットに仕上がっています。ベテラン女優の歸亞蕾を起用している事から見ても、製作者たちの「単純な功夫片にはさせない!」という強い思いを感じずにはいられません。
一方、功夫アクションは中盤以降に集中しており、前半はドラマ部分を邪魔しない程度の小競り合いに絞られています(憎々しげに振舞う金剛の演技に注目!)。本作を陳惠敏が暴れまわるストレートな功夫片…だと思って視聴した方は落胆するかも知れませんが、ドラマ性を強調した功夫片としては間違いなく秀作と呼べる1本です。
こういう映画こそ綺麗な画質で見たいんだけどなぁ…(私が持っているバージョンは画質が悪く、暗がりのシーンでは完全に真っ黒になってました・涙)。