功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

更新履歴(2013年/9月)

2013-09-30 22:42:02 | Weblog
 9月はようやくいつも通りの更新ペースに戻れました。そこで10月と11月は、思い切って温存していた特集を2ヵ月連続でお送りしようと思います。
10月はマーシャルアーツ映画の雄であるゲイリー・ダニエルズが主役!GARY OF GOLDEN AGEと題して、彼が最も華々しく活躍していた90年代の作品+αを集中紹介していく予定です。
11月は香港映画関連のちょっと懐かしい話題なのですが、こちらの詳細については来月末にお伝えします。1ヶ月まるまるゲイリー尽くしというのは若干キツい気がしますが(笑)、今後もこの調子で特集・企画等を充実させていきたいと考えています。


09/04 『レディーファイター/詠春拳伝説』
09/08 『カジノファイター/地獄の拳闘』
09/11 『ガーディアン・エンジェル』
09/16 『佛都有火/佛家小子』
09/19 『新書ワル2 挑戦篇』
09/26 『新書ワル3 激情篇』
09/30 更新履歴(2013年/9月)

『新書ワル3 激情篇』

2013-09-26 23:55:12 | 日本映画とVシネマ
「新書ワル3 激情篇」
「新書ワル Vol.3 激情篇」
製作:1993年

●巨大組織・大日本新宿同盟に真っ向から勝負を挑んだ氷室洋二(白竜)は、同盟総本部の向かいにあるビルに道場を構えていた。いまだ警察によって身動きの取れない総本部は、白竜を倒すために元極左グループの刺客・SABUを召喚する。
だがこの男がとんでもない曲者であった。SABUは白竜との勝負を邪魔する者は誰であろうと容赦せず、遂には勝手に刺客を送り込んでくる総本部と対立。一時休戦した彼は、白竜とともに傘下組織を次々と潰していく。
 この極悪コンビを止められる者は誰もおらず、青梅組・甲州会・明治一家の三組織はまたたく間に壊滅する。総本部を仕切る新海丈夫は2人に賞金を賭けて仕留めようとしたが、SABUの撃ったバーズカ砲(!)であえなく爆死するのだった。
まるで生き急ぐかのように無茶な行動を繰り返すSABU。そんな彼と白竜は、ついに雌雄を決する時を迎えるのだが…?

 『新書ワル』も今回で第3作となりますが、今回は監督を『カオルちゃん最強伝説』の宮坂武志が担当しています。どうやら本作が宮坂の監督デビュー作のようですが、その内容は…まるで強烈な劇薬のような作品と化していました(爆
とにかく本作で深い印象を残しているのが、白竜の対抗馬を演じるSABUです。常にギラついた眼をしていて、自分の命を紙切れのように扱うさまはクレイジーそのもの。挙句の果てにはケジメをつけるためと言って、自らの小指を食いちぎったりします。
 SABUの行動は先を読ませず、主役のはずの白竜も完全に食われるという凄まじさ。ラストで「彼は白竜に踊らされていたに過ぎなかった」と言われますが、どう見ても白竜が振り回されていたようにしか見えません。
彼以外にも本作はエキセントリックな人物が多く、刺客にいたっては忍者軍団や死人のような患者と看護婦など、尋常ならざる様子のキャラばかり登場します。これって原作にも出てくるキャラなんでしょうか?(当方は原作未読です)

 ちなみにアクション指導を原作者の真樹日佐夫が、武術指導を東郷秀信(斬心塾の主宰者である東郷氏?)が担当。前作でネックだったスローや早回しは抑えられ、上記の狂ったキャラたちによる戦いはテンションの高いものとなっています。
残念なのはSABUの武器がムチだったこと。あくまで個人的な見解ですが、ムチは九節鞭などと違って手首だけで操っている感があり、使い手自身の動きがそれほど派手ではないため、アクション映画においては剣や棍棒を用いる時よりも地味に見えてしまいます。
 そのため、実際に闘ってみると味気なく感じることが多く、本作で繰り広げられる白竜とSABUの戦いも少々盛り上がりに欠けていました。2人の動作自体は悪くないのですが…う~ん。
話としては傘下組織や総本部があらかた片付き、大ボスである高松英郎が登場するなど山場を迎えつつある本シリーズ。次作の『新書ワル4 決着篇』も宮坂監督が受け持っているそうなので、心の準備をしっかりしたうえで視聴したいと思います(笑

『新書ワル2 挑戦篇』

2013-09-19 23:00:23 | 日本映画とVシネマ
「新書ワル2 挑戦篇」
「新書ワル Vol.2 挑戦篇」
製作:1993年

▼本作は当ブログでもすっかりお馴染みとなった、真樹日佐夫原作の劇画作品を実写化したVシネシリーズの第2弾です(前作の感想はこちら、『ワル』シリーズについてはこちらを参照のこと)。
木剣使いでワルの異名を持つ侠客・氷室洋二(白竜)が、古巣の道場をヒロインの飯島直子とともに飛び出し、巨大組織・大日本新宿同盟に戦いを挑む!というのが本シリーズの粗筋。前作で支部を壊滅させた2人が、今回から総本部へ殴り込みをかけていきます。
キャストは刑事の望月太郎を始めとした続投組に加え、ナイフ投げの名手・ジョニー大倉と柔道の達人・菅田俊が参戦し、より激しい戦いが勃発していくのですが…。

■大日本新宿同盟の鷹ノ台進出を阻止した白竜と飯島は、ついに総本部のある新宿歌舞伎町へと上陸した。しかし総本部の元には、靖国興行・青梅組・甲州会・明治一家という四つの傘下組織が存在しており、一筋縄でいく相手ではない。
その一方で、同盟は台湾マフィアとも対立関係にあり、一触即発の状況にあった。そんな中で白竜は、両親を靖国興行によって殺された青年・根岸大介と協力し、何故か同盟ではなく台湾マフィアへの襲撃を繰り返していく。
 彼の目的は、台湾マフィアを焚き付けて同盟への襲撃を計画させ、警察を動かすことだった。警察が襲撃阻止のために総本部へ警備を置けば、同盟は派手に動けなくなる。そこを一気に叩こうとしたのだ。
これに対抗して靖国興行はジョニーを雇い入れるが、自慢のナイフも白竜の敵ではない。ジョニーをあっさり倒した彼は、続いて飯島を敵陣に潜入させようとするが、根岸が先走ったことで問題が発生する。
 やむなく白竜は標的を総本部から靖国興行に変更し、組長の松居千佳から根岸の両親殺しの詳細を吐かせた。そして白竜のバックアップのもと、根岸は靖国興行と対決して本懐を遂げるのであった。
かくして両親殺しの真相は白日のもとに晒され、松居の逮捕によって靖国興行は壊滅同然の状態となる。だが、今度は松居に仕えていた代貸し・菅田が最後の勝負を仕掛けてきた!

▲なんとなく前作はあやふやな印象を受けましたが、本作は様々な思惑が交錯するスリリングな作品となっていました。巨大組織を手玉に取り、ひたすら我が道を行く白竜の姿には、凄さを通り越して畏怖の念すら感じます。
そして白竜の本妻・大場久美子と飯島の関係(大場の笑顔が怖い!)、やや唐突ながらも意外な正体を見せる菅田など、サブストーリーも充実。残る傘下組織も曲者揃いのようで、今後の活躍を期待させます。
 さて格闘シーンの評価ですが、こちらは何故か長ったらしいスロー処理や不自然な早回しが使用されており、アクションから迫力が削がれています。この欠点が最も災いしたのがラストの白竜VS菅田で、余計な演出によって冗長さを感じてしまいました。
剣と柔道の変則マッチというユニークな対決なのに、このような結果となってしまったのは残念至極。台湾マフィアのザコ戦(相手がヌンチャクや青竜刀を使用)とかは良かったので、次回はもっとスッキリとした格闘アクションに仕上がっていることを祈りたいです。
ところで本作のエンドテロップに横山誠という名前がありましたが、これってAAC STUNTSの横山誠氏のことだったりするんでしょうか?どこに出ていたのかも含めて、ヒジョーに気になります。

『佛都有火/佛家小子』

2013-09-16 22:16:24 | ショウ・ブラザーズ
佛都有火/佛家小子
英題:The Boxer from the Temple
製作:1979年

●ある日、少林寺の前に1人の赤ん坊が捨てられていた。不憫に思った館長は、この子を寺で育てる事を決める。それから十数年が経ち、赤ん坊はやんちゃ坊主の呉元俊へと成長した。
功夫が習いたくて仕方ない呉元俊は、館長の計らいで十八羅漢拳の修行を受ける。しかし兄弟弟子とトラブルを起こしたため、彼は一時的に寺から追い出されてしまう。
 その後、呉元俊はとある小さな町に流れ着き、悪事を働く關鋒の一派を追い払った。町の人々に賞賛された彼は食道の店主となり、關鋒の経営する娼館から逃げてきた黄薇薇を保護。關鋒一派の反撃をいなしつつ、程なくして呉元俊は彼女と結ばれた。
だが、關鋒一派が殺し屋の劉鶴年を呼び寄せたことで、事態は急変する。劉鶴年によって黄薇薇とその弟、さらには呉元俊の部下だった劉晃世までもが殺されたのだ。激怒する呉元俊は、下山する際に館長から言われた戒めを破り、復讐に燃えるが…。

 本作はショウ・ブラザーズがコメディ功夫片ブームにぶつけた便乗作の1つですが、終盤で思いっきり失速してしまった作品です。
ストーリーは典型的なコメディ作品のパターンで、途中から主人公がヒロインと結婚するという、ほんわか幸せなシークエンスへと突入します。このへんの和やかな雰囲気は悪くありませんが、劉鶴年が登場した途端に陰惨な方向へとシフトしてしまいます。
 「積み重ねた雰囲気を壊して血生臭い展開に走る」…これと同様の作風を持った作品に『癲螳螂』(伝説の大怪作)がありますが、本作はそこまで鮮烈な印象は残せておらず、単に後味が悪いだけの作品と化しています。普通にコメディに徹していれば亜流なりに面白くなっていたはずなのに…。
ショウブラ作品なのでセットやエキストラは豪勢ですが、作品自体がこんな出来なので援護には至らず。これまで取り上げてきたショウブラ産コメディ功夫片の中でも、本作は特にマズい出来だったと思います。
 一方の功夫アクションについても、袁和平(ユエン・ウーピン)を意識した…というかマネた立ち回りを見せていて、やや個性に欠けていました。しかし、クライマックスでコメディ色が無くなると同時に、作中のアクションは一段と激しさを増していきます。
 ザコの棍棒をかわし、蹴り技を放つ劉鶴年を跳ね除け、最後は扇子を振るう關鋒と激突!この一連のファイトシーンでは、七小福出身である呉元俊の伸びやかな動きが生かされ、華麗な激闘が繰り広げられていました。
この他にも、本来は武術指導家である劉晃世や黄薇薇も活躍するのですが、コメディ演出をやめた途端にアクションレベルが上がるとは、なんとも皮肉な話です(ちなみに武術指導は本家『酔拳』の徐蝦と、ショウブラ系の元&徐發)。
とはいえ、本作が失敗作であることに変わりはありません。同じ羅馬(ロー・マ)の監督作なら、私は『唐山五虎』のほうが好きですね。

『ガーディアン・エンジェル』

2013-09-11 22:40:12 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ガーディアン・エンジェル」
原題:GUARDIAN ANGEL
製作:1994年(93年説あり)

●刑事のシンシア・ラスロックは、同僚で恋人のマーシャル・ティーグと共に偽札事件を追っていた。しかし、偽札製造の主要メンバーだったリディ・デニアを逮捕するものの、彼女によってマーシャルが殺されてしまう。
それから半年後、恋人の死をきっかけに警察を辞めたシンシアは、1人でボディガードの仕事をしていた。ある日、実業家のダニエル・マクヴィカーから警護の依頼が舞い込んできた。実は彼はリディの元恋人であり、刑務所を脱獄した彼女に狙われているというのだ。
 シンシアは依頼を拒もうとするが、成り行きからダニエルのガードを担当する事となる。そのころ、リディは逮捕された際に消えた偽札の原版を血眼で探していた。どうやら原版はダニエルの元にあるらしいが…。
果たして原版の行方は?そしてダニエルに惹かれつつあるシンシアの想いは?予期せぬ敵が姿を現す中、最後の戦いの幕が切って落とされる!

 前回に引き続き、今回もリチャード・W・マンチキンがPMエンターテイメントで監督した作品の登場です。本作は格闘シーンに偏重しすぎた『カジノファイター/地獄の拳闘』とは違い、まっとうなアクション映画に仕上がっていました。
物語は前半の30分が刑事アクション、後半の1時間が恋愛を絡めた活劇という2部構成になっています。主演のシンシアは格闘シーンだけではなく、珍しく恋に思い悩む姿を披露しており、いつも戦ってばかりの彼女とは違う一面を見ることができます。
 格闘シーンについては、ファイトコレオグラファーがあのリチャード・ノートンなので、序盤からスピーディーな技の応酬が見られます。中盤は息切れしてスロー気味になるものの、最後のシンシアVSケン・マクレオド(『ショウダウン』)は上々の出来でした。
本作はこの他にもカースタントやボートチェイス、馬に引き回される危険なスタントなど、PMエンターテイメントらしい見栄えのするアクションを盛り込んでいます。傑作というわけではありませんが、安定した面白さを持っている作品だと私は思います。
 ちなみにリチャード監督は、『キング・オブ・キックボクサー3』『リング・オブ・ファイア/炎の鉄拳』、そしてアクション以外は難ありの『カジノファイター』といった微妙な格闘映画を多数撮っています(苦笑
今のところ、氏が監督した格闘映画(国内発売作品)で未見なのは『キング・オブ・キックボクサー2』だけですが、少なくとも現時点では本作がベスト。『キング・オブ~2』はあまりいい評判を聞きませんが、いつかは目を通してみたいですね。

『カジノファイター/地獄の拳闘』

2013-09-08 23:34:53 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「カジノファイター/地獄の拳闘」
原題:DEADLY BET
製作:1992年(91年・93年説あり)

▼以前、B級映画プロダクションのPMエンターテイメントと、格闘俳優のジェフ・ウィンコットが組んだ『刑事ベルモア 共謀者』を紹介しました。内容は凡庸な刑事アクションですが、同じタッグによる格闘映画がもう1本あったことをすっかり忘れていました(苦笑
本作は格闘試合に生きる男たちを描いたもので、全編に渡って大量の格闘シーンが挿入されています。反対にPMエンターテイメント名物のカーチェイスや爆破スタントが一切無く、どれほど本作が格闘シーンを重視していたか(予算がなかったか)が解ります。
さらには、出演者が『ハードブロー』のスティーヴン・ヴィンセント・リーといった猛者揃いなのもポイント。彼らの見せるアクションを見ているだけでも面白い――と言いたいところなのですが…。

■ラスベガスで暮らすジェフは、恋人であるチャーリー・ティルトンとの結婚を目前に控えていた。しかし、ギャンブル好きの彼は無謀にも賭け格闘試合に挑み、スティーヴに大金とチャーリーを奪われてしまう。
身を持ち崩したジェフは、その後もギャンブルから足を洗うことが出来ず、借金は膨れていくばかり。遂には借金取りの片棒まで担ぐはめになるが、一念発起してトレーニングを開始。色々と吹っ切れた彼は、ラスベガスから去ろうとした。
そんな時、スティーヴが主催する格闘トーナメントの話が持ち上がり、いまだ借金のあるジェフはこれに挑戦することになる。全てはスティーヴへのリベンジと、チャーリーを取り戻すため…。今、戦いのゴングは鳴った!

▲まず最初に目玉の格闘アクションですが、これがなかなか良い感じでした。アクション指導はドン・ウィルソン作品でおなじみのエリック・リー&アート・カマチョですが、様々な格闘技と動ける役者を揃えたおかげで、とても充実しています。
また、主軸となるジェフVSスティーヴのバトルも熱いのですが、いきなり序盤に登場するゲイリー・ダニエルズ、珍しくアクションを見せるジェラルド・オカムラなど、多彩な格闘俳優たちの競演も見どころの1つといえるでしょう。
 しかし、ストーリーについては散々な出来栄えで、正直言って全然面白くないのです。作り手としては挫折と栄光のドラマを描きたかったのでしょうが、肝心の主人公がギャンブル狂のダメ男では感情移入のしようがありません。
どれくらいダメダメかというと、酒とギャンブルから抜け出せない描写が一時間も続く(!)ほどのダメっぷり。終盤以降もギャンブル癖が抜けておらず、彼女とよりを戻した後も同じ失敗を繰り返すんだろうなぁ…と思ってしまいました(苦笑
 対するスティーヴに関しても、悪役らしい行為はほとんど見せておらず(終盤に強盗を使って悪巧みするくらい)、相対的にジェフのダメっぷりが強調される結果を招いています。
そんなわけで、アクションは良好ですがストーリーに難ありという、困った内容の本作。ちなみに監督のリチャード・W・マンチキンは他にも幾つか作品を撮っており、こちらは次回紹介したいと思います。

『レディーファイター/詠春拳伝説』

2013-09-04 21:59:19 | 甄子丹(ドニー・イェン)
「レディーファイター/詠春拳伝説」
「ミシェール・ヨーの詠春拳伝説」
「詠春拳」
原題:詠春/紅粉金剛
英題:Wing Chun/The Beautiful Secret Agent
製作:1994年(93年説あり)

●厳詠春こと楊紫瓊(ミシェール・ヨー)は、若くして武術を習得した女傑であった。しかし、拳の道を志すために女としての幸せを捨てており、いつも男のような格好で暮らしていた。
そんなある日、彼女と口うるさい叔母・苑瓊丹の経営する豆腐屋に、薄幸の未亡人・洪欣が転がり込んできた。町の人々はその美しさに目を奪われ、楊紫瓊にアプローチしていた李子雄(レイ・チーホン)も、いつの間にか彼女へと乗り換えてしまう(笑
 さらには楊紫瓊の幼馴染だった甄子丹(ドニー・イェン)が現れ、洪欣を厳詠春と勘違いしたことからトラブルが発生。一方で、前々から楊紫瓊に何度も煮え湯を飲まされてきた山賊たちが、ここにきて大きな行動を起こそうとしていた。
山賊の首領である徐少強(ノーマン・ツイ)は、洪欣を誘拐して楊紫瓊との一騎打ちを迫る。この戦いは楊紫瓊が征し、なんとか洪欣の奪還に成功したものの、拳の腕前では徐少強が一枚も二枚も上手であった。
数日後に改めて再戦することになった楊紫瓊は、師である鄭佩佩(チャン・ペイペイ)のもとへと向かう。果たして彼女は、戦いと己の恋路に決着をつけることができるのだろうか?

 80~90年代に日本でリリースされた香港映画の中には、何故か中古市場に出回りにくい作品が幾つかあります。本作もその1つで、DVD化もされているのになかなか見つからず、個人的に幻の逸品と化していました。
そして昨年、幸運にも発見に至ったわけですが、同じような入手経路を辿った『無敵のゴッドファーザー』が微妙だったこともあり、身構えながらの視聴となりました。その結果はというと…とても素晴らしかったです!
 まず本作がユニークなのは、詠春拳の成り立ちを描く!みたいな小難しい話ではなく、明るいラブコメに徹している点でしょう。話の主軸は楊紫瓊たち女性陣による恋愛模様で、その雰囲気はとってもほのぼの。人死にも最低限に抑えられています。
監督の袁和平(ユエン・ウーピン)はコメディ系の映画を何本も手掛けていますが、本作のようなラブコメを撮るのは稀です。功夫片では恋愛要素があっても蔑ろにされがちですが、本作はきちんと結末まで描いており、最後まで楽しく見られました。
 また、功夫アクションもワイヤーとリアルファイトを適度に織り交ぜ、迫力の立ち回りを構築しています。この手の作品によくある「○○を取られたら負け」ルールのバトル、槍と短刀による武器戦など、どの戦いも実にバラエティ豊かでした。
ラストバトルも圧巻で、しがらみを捨てて女性に戻った楊紫瓊が、大ベテランの徐少強を相手に一進一退の攻防を展開!もちろん甄子丹の見せ場も存在し、この頃から既にマッハ・カンフーの片鱗を見せています。
製作に大陸資本の銀都機構有限公司が噛んでいることもあって、スケール感も抜群の快作。こういう作品こそ廉価版でリリースして欲しいんだけどなぁ…。ちなみに本作のDVDパッケージによると、袁信義の英名はイーグルなのだそうです(爆