功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

更新履歴(2012年/2月)

2012-02-29 22:35:04 | Weblog
 年明けからぶり返してきた寒さが治まり、ようやく気候が落ち着いて……来る気配が微塵も感じられなかった2月ですが、皆さんいかがお過ごしでしたでしょうか?(爆
今月はボチボチな作品が多かったものの、香港からアメリカまで様々な国の映画に触れてきました。来月はせめて文章だけでも暖かくしておきたいので、なるだけ元気の出る作品を中心にお送りする予定です。また、先月ようやく念願の東映チャンネルに加入できたので、ここのところご無沙汰だったJACの空手映画についての感想も書きたいと思っています!


02/05 『龍拳』
02/09 『中華警花/霸王花之中華警花』
02/15 『關東五大侠/大狂犬』
02/19 『スティーヴ・オースティン ザ・ハンティング』
02/23 『忍邪』
02/29 更新履歴(2012年/2月)

『忍邪』

2012-02-23 23:33:49 | 日本映画とVシネマ
「忍邪」
製作:2010年

●時は天正時代、織田の軍勢が伊賀忍者を滅ぼさんとしていた時のこと…。伊賀忍者の下忍である合田雅吏・虎牙光揮・永倉大輔の3人は、上忍の命を受けて謎の下忍・柏原収史を甲賀の国境まで連れて行くという任務に当たっていた。
この任務には不可思議な点が多く、虎牙と永倉の2人は次第に疑問を抱いていくが、リーダー格の合田は黙して語ろうとしない。そんな中、何故か仲間であるはずの伊賀忍者から襲撃を受けるという異常事態が発生。不信感はさらに高まり、遂に任務の詳細が明かされる事となった。
 実はこの柏原という男、生まれながらに奇怪な死病を患っている一族の者で、上忍たちはその病を利用して甲賀&織田軍の動きを牽制しようとしていたのである。死病は既に合田たちにも感染しており、彼らは今日中に任務を終えて里に戻り、薬を服用しないと死んでしまうという。
一行は足早に甲賀の国境へと辿り着き、予定よりも早く目的地に到着した。あとは柏原と死病の存在を甲賀忍者の前に知らせ、警告を促せば全ては終わると思われた。だが……。

 本作は『抜け忍』を作った監督・千葉誠治と、アクション指導・下村勇二コンビによる作品です。『抜け忍』ではアクション主体でストーリーが進んでいましたが、本作では互いの腹の内を探りあうディスカッションが中心となっています。
もともと千葉監督はそっちの方が得意で、『伊賀の乱』シリーズ(未見)も同様の形式で作られているそうです。殺陣より会話劇がメインで、なおかつグロい死病まで出てくるとなると内容が気掛かりですが、本作は忍者の悲哀を描いた秀作に仕上がっていました(ラストで何も得られないと思われた合田が、あるものを得るシーンは特に印象的です)。
 そしてドニー門下の下村氏によるアクションは今回も絶好調。華麗なチャンバラを見せる合田、素手格闘を交えて戦う虎牙、低い体勢から奇抜な攻撃を繰り出す永倉など、登場人物たちの個性を殺陣に反映させています。格闘シーンの数こそ少ないものの、香港系と時代劇の動作をミックスさせたファイトは見応え十分でした。
尺は短いけど、息をつかせぬストーリーに引き込まれてしまう1本。千葉監督の忍者映画はまだまだ見ていない作品が多いので、今後も同氏の作品に期待していきたいです!

『スティーヴ・オースティン ザ・ハンティング』

2012-02-19 23:42:25 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「スティーヴ・オースティン ザ・ハンティング」
原題:HUNT TO KILL
製作:2010年

▼近年、『エクスペンダブルズ』の影響によってスター同士の共演が続々と実現し、日本にも多くの作品が輸入されています。本作は『エクス~』で悪役を演じたスティーブ・オースティン、エリック・ロバーツ、ゲイリー・ダニエルズの3人が再結集していて、この顔ぶれこそが最大の売りとなっています(ただしエリックの出番は序盤だけ)。
タイトルを見ると人間狩り映画のようですが、実際は不仲の親子が事件に巻き込まれるというシンプルな話だったりします。監督はセガール作品常連のキオニ・ワックスマンなので、格闘アクション的な見せ場もちゃんと用意されていました。

ギル・ベローズ率いる銀行強盗グループは、カジノを襲って1000万ドルの大金を手に入れていた。ところが、ボスのマイケル・ホーガンがそれをネコババし、森林地帯から越境してカナダへと逃走を図ったのである。
強盗グループは裏切り者を追うため、国境付近の保安官事務所を襲撃。偶然居合わせた国境警備員のスティーヴと娘のマリー・アヴゲロプロスは、彼らの案内を強いられてしまう。道中、スティーヴは何度か逆襲を試みるが失敗。強盗グループ同士の空気も険悪になる中、ようやくマイケルを発見した。
 肝心の大金は崖下に落ちており、スティーヴがこれの回収に向かう。しかし、崖を上って金を渡したところをギルに撃たれ、彼は数メートル下の河へと滑落。泣き叫ぶマリーだが、生き抜くために強盗グループの道案内を引き継ぐのだった。
一方、なんとか生きていたスティーヴは、怪我の応急処置を済ませると即座に反撃へと転じた。山と森を知り尽くしている彼は、手製の武器と拾ったボーガンで次々と強盗グループを撃破!最後に残ったギルは、カナダへ到着するとマリーを突き放してバギーで逃げ出していった。
スティーヴは愛娘との再会を喜ぶと、極悪非道のギルを追撃していく。果たして、最後に狩られるのはどちらなのだろうか…?

▲ご覧の通り、ストーリーはかなりベタベタな作りです。特にこれといって盛り上がる場面はなく、ただ淡々と森の中を歩き続けるだけなので、シチュエーション的にはかなり辛いものがありました(たまたま拾ったバッグの中にボーガン一式が入っていたりと、都合の良すぎる展開も目に付きます)。
しかし、スティーヴとゲイリーによるガチンコ勝負がちゃんと実現しているので、この2人が目当ての方は押さえといても損は無いでしょう。ゲイリーは強盗グループの1人を演じ、無口な兄ちゃんを演じています。今回の彼はあまりアクションを見せませんが、ストーリー後半で猛追してきたスティーヴと激突を果たすのです。
 ゲイリーが蹴り技主体なのは『ゲーム・オブ・デス』と同じですが、今回は相手がスティーヴなので生半可な攻撃は通じません!『ゲーム~』の最終対決が拳VS足だったのに対し、本作はパワーVSスピードという図式を構築。殺陣に冗長さは無く、両雄の個性を生かした好勝負だったと思います。
スティーヴは今年も絶賛活躍中で、以前紹介したセガールとの共演作『Maximum Conviction』や、ドルフ・ラングレン&ジェリー・トリンブルとのトリプルスクラムで挑む『The Package』など、話題作が目白押しです。これらの作品も、本作のように是非とも日本上陸を果たして欲しいですね。

『關東五大侠/大狂犬』

2012-02-15 22:03:48 | カンフー映画:珍作
關東五大侠/大狂犬
英題:5 Kung Fu Daredevil Heroes/Kung-Fu Versus Madness/Wu Tang vs the Nation
製作:1977年

●さてさて、本作は当ブログでは本当に久々となる孟飛(メン・フェイ)の主演作?です。どうしてクエスチョンが付いているのかと言いますと、この作品はタイトルにある5人の登場人物が中心となって話が進むのですが、どのキャラの描き方も中途半端であり、誰が主役なのか全く解らないのです(爆
物語は要約すると、清朝末期の中国で皇帝とロシア人総督を討つ!というもの。孟飛は皇帝の護衛を勤めつつ、裏で打倒清朝を企んでいる反逆者という役柄で、皇帝の娘と恋仲である游天龍も彼の仲間。これに外部から皇帝の命を狙う李中堅・金剛(カム・コン)・高飛(コー・フェイ)が加わり、關東五大侠の結成と相成ります。
 ところが、各員とも皇帝暗殺に集中しすぎたためか、暗殺以外にドラマらしいドラマがほとんどありません。チベット系の金剛・僧侶の高飛といった人物設定は個性的ですが、全ての行動が謀略と暗殺に占められているので、あまりストーリーに広がりが見られないのです。
一応、皇帝の娘と游天龍による悲恋というエピソードが挿入されますが、皇帝の娘が死んでも游天龍はリアクション無しという有様。個性どころか笑顔すら見せず、アクションシーンにおいても一切の差別化が成されなかった孟飛に対しても、扱いが悪すぎたと言わざるを得ませんでした。
 ただ、アクションに関しては游天龍が直接指導しているので、それなりに手堅いものを作り上げています。いつもは体の硬さが気になる金剛も、本作ではムチを振るいながら伸びやかなアクションを披露!終盤では、皇帝を裏切った梁家仁(レオン・カーヤン)&ロシアの特使・羅烈(ロー・リェ)たちが、孟飛らと激突します。
全体的に殺陣は地味ですが、この戦いでは邪魔者を一掃せんとする皇帝の企みや、孟飛たちが自作の砲台を使おうと奮闘する様など、色々な工夫が盛り込んであります。しかし私が一番気になったのは、違和感バリバリな羅烈の金髪姿でしょうか(笑)。なぜ彼がこんな頭にしていたのかは不明ですが…もしかして羅烈、ロシア人役のつもり!?

『中華警花/霸王花之中華警花』

2012-02-09 23:03:50 | 女ドラゴン映画
中華警花/霸王花之中華警花
英題:China Heat
製作:1992年

●中国警察の特殊部隊でリーダーを務める胡慧中(シベール・フー)は、国際的なマフィアの一員にして麻薬密売犯である藍海瀚(本作の武術指導も兼任)を追っていた。敵は追跡を振り切って海外に逃亡するが、ニューヨークで身柄を拘束されたという。胡慧中は部下(男1人と女2人)と共に渡米し、藍海瀚の身柄引き渡しへと望んだ。
だが、返還直前にマフィアが護送車を急襲し、藍海瀚は奪還されてしまった。その際、胡慧中の部下が藍海瀚の所有していた指輪を偶然手に入れるが、実はこの指輪は麻薬取引時に合図として使われる重要な代物だったのだ。藍海瀚は胡慧中の部下たちを次々と誘拐し、指輪を返すよう迫った。
その後、部下3人のうち男隊員が犠牲となるも、女隊員の1人が脱出に成功。胡慧中と合流し、マフィアの親分から藍海瀚の居場所を聞き出すと、囚われていたもう1人の女隊員も救出した。同じ頃、憎き藍海瀚は指輪ナシのまま麻薬取引を行おうとしていた。胡慧中たちはNY市警の刑事(演者については後述)と共に、最後の決戦へ挑む!

 90年代に大量生産された女性アクション映画の1本です。別タイトルに「霸王花」とありますが、かの『レディ・スクワッド』シリーズとは無関係。本作は実際にアメリカ(カナダ?)でロケが行われていて、それなりに金のかかった作品であったことが窺えます。が、ストーリーやアクションは非常に雑で、テンションの低い作品となっているのです。
しかも残念なことに、スケジュールの都合なのか、主役であるはずの胡慧中がいきなり姿を見せなくなるシーンが散見されます。彼女の不在時が何でもないような場面ならいいのですが、よりによって最終決戦でも姿を消してしまうのだから堪りません(出番は最後の最後に満身創痍の藍海瀚をボコるだけ)。
 そんな彼女の不在を支えるのが、NY市警の刑事として登場するマイケル・デパスカルJrです。彼は『キング・オブ・キックボクサー』の冒頭で殺される主人公の兄を演じていますが、その本職は警察機関などで護身術を指導する柔術道場の師範。そして彼の父親はアメリカ初の日本公認柔術道場を設立した伝説級の人物なのだそうです。
本作でマイケルはマーク・ホートンと闘い、ラストでは藍海瀚とのタイマン勝負を引き受け、なかなかのファイトを見せていました。しかし、そのVS藍海瀚も途中からグダグダな展開になり果ててしまいます(この対決は高所で闘う危険なシークエンスなのですが、撮り方が悪くて迫力が皆無に…)。
胡慧中とマイケルを充分に生かせなかった…本作の失敗は、まさにこの一点にあるといっても過言では無いのです。

『龍拳』

2012-02-05 22:49:43 | 成龍(ジャッキー・チェン)
「龍拳」
原題:龍拳
英題:Dragon fist
製作:1978年

▼本作は、ジャッキーが羅維(ロー・ウェイ)のプロダクションに在籍していた頃の作品です。当時の彼は李小龍の後追いを強要され、武侠片でミスマッチな英雄を演じさせられた挙句、どの作品も泣かず飛ばずの結果に終わっていました。
最終的に外部で作られた『蛇拳』『酔拳』が大ヒットし、なんとかスターの仲間入りを果たすのですが、ボスの羅維は未だに悲劇のヒーロー像を求めていました。時代がコメディ功夫片を選ぼうとしていた時に、あえて彼はシリアスな作品を世に送り出したのです。

■武術大会に優勝した道場主・徐蝦の前に、武術家の任世官が現れた。彼は徐蝦を死闘の末に殺し、道場の看板をも破壊する。徐蝦の弟子だったジャッキーは、必ずや復讐を果たすと固く誓った。一方、任世官が自宅に帰ってみると、妻が遺書を残して自殺していた。自分の傲慢さで妻が死んだと知った彼は、側にあった刃を手に取り…。
三年後、ジャッキーは師の妻と娘(苗可秀)を伴って、任世官の住む地へと降り立った。一行は仇敵の道場へ向かうが、どうも様子がおかしい。実は任世官、全ての責任を償うために自らの足を切り、過去の罪を悔いていたのだ。師の妻は復讐を諦めるが、行き場の無い憎しみを抱えたジャッキーは、ただ慟哭するしかなかった。
 この時、任世官は悪事を重ねる高強一派と対立していたのだが、その高強がジャッキーを利用せんと動き出した。師の妻が奇病にかかったのをいいことに、薬をちらつかせて彼を束縛。自陣に用心棒として引き入れてしまったのである。
任世官たちから非難を受け、高強たちの悪事を目前にしつつも、師の妻の為に従い続けるジャッキー。だが、高強一味の計略と凶行により、全面対決の時が迫ろうとしていた。憎しみが憎しみを呼び、誰も望んでいなかった形による決闘が始まるのだが…?

▲案の定、本作は興行的に失敗してしまいますが、決して悪い作品ではありません。中でもジャッキーの悲しみに満ちた表情はとても印象的で、復讐と正義の間で揺れる好漢を見事に演じ切っています。本作のジャッキーは意図的に笑顔を封印し、幾らか笑顔を見せていた他のシリアス功夫片(『木人拳』『成龍拳』)とは一線を画しているのです。
そして本作のもう1つの特色が韓国ロケです。もともと羅維プロ時代のジャッキー作品には韓国ロケを行ったシーンが多いんですが、この作品では序盤以外のほぼ全編が韓国ロケで占められています。韓国系の俳優も多数参加していて(韓鷹林銀珠など)、独特の雰囲気を作り上げていました。
 残念なのはラストにおける急展開の数々でしょうか。ここでもジャッキーは苦悩の中にあり、任世官たちから本気で殺されかけます。この状況は高強の種明かしで打開されるのですが、重要なネタバレがほとんどジャッキー関連なので任世官たちが単なる傍観者になり下がってしまいます(物語の発端となる重要なキャラクターだったのに…)。
また、必要以上に種明かしをする高強一味の言動も不自然で、ジャッキーが寝返るシーンも唐突さが先立っていました。このへんの展開をもっと簡潔にまとめられていれば、時流にそぐわなくても佳作になりえたはず。この後に待ち構えるラストバトルが見事なだけに、余計にそう思ってなりません。
それにしても苗可秀と田俊(ジェームス・ティエン)、メインキャストのわりに扱い小さかったなぁ…(汗