「妖魔伝」
原題:靈幻童子
英題:Kung fu Wonder child
製作:1986年(1989年説あり)
▼『上海エクスプレス』で香港映画デビューを果たした大島由加里は、同年にシネマシティ製作の動作片『悪漢列伝』に出演すべく台湾に渡り、続いてこの『妖魔伝』にも参加している。当時、林小樓(リン・シャオロウ)や羅鋭(アレクサンダー・ルー)作品を多く手がけていた台湾の巨匠・李作楠(リー・ツォーナム)が本作のメガホンを取っており、新進気鋭の大島嬢をバックアップするために入念な体勢を取っていたことが伺える。
しかし、当時の李作楠は往年の勢いを失ってしまったのか、凡作ばかりを連発するようになっていた。功夫映画時代の李作楠作品といえば、巧みなストーリーと良質な功夫アクションが大きな魅力であった。…が、林小樓や羅鋭と関わって以降の李作楠作品は、その魅力が大きく削がれているのだ。
『ゴーストパワーを持つ少女』『新桃太郎3』『新キョンシーズ』…これらは李作楠が監督やプロデューサーとして関わった作品だが、どれも以前の傑作のような切れ味は息を潜めており、作品的にも「今ひとつ」な物が多くを占めている。本作においてもパッとしない作風が尾を引いており、娯楽作品としてはそれなりに見られる内容ではあるものの、李作楠作品としては不満の多い出来になっている。
功夫片からニンジャ映画へ作風を変え、羅鋭作品に携わるようになった李作楠に、果たして何が起こったのだろうか?
■林小樓は北派茅山術の学校で料理人を務めている龍世家(ジャック・ロン)の孫娘で、北派によって根絶やしにされた南派茅山術の使い手であった。
学校では落ちこぼれコンビと仲が良く、たびたびトラブルに巻き込まれる事もあったが、それなりに楽しい日々を送っていた。そんなある日、幽霊が出ると噂の裏山に出向いた3人は、怪しげな術を駆使する悪の道士・李海興と遭遇する。李海興は延命術のために人々の魂を奪っており、更には異形の怪物・常山を従えていた。
3人は龍世家と大島由加里(彼女の父と妹が李海興に捕らえられている)に助けられて逃げ出すが、実は李海興の正体は茅山学校の学長であった。時を同じくして、学長は学校の中に南派茅山術の使い手がいることを知り、疑いの眼差しを龍世家と林小樓に向けた。一方その頃、林小樓は大島から「李海興に捕まっている父と妹の魂を助けたい」との話を聞き、再び裏山へと赴く。常山の妨害こそあったものの、妹の幽霊を助け出した林小樓は龍世家や落ちこぼれコンビと協力し、彼女を大島の元に連れて行こうと尽力する事に。
だが、学長らの妨害を受けたため計画は頓挫。妹の幽霊は敵の手に落ち、明後日には延命術が完成してしまうという。そうなれば父と妹の幽霊を助ける事は不可能だ…林小樓・龍世家・大島・そして落ちこぼれコンビは一致団結し、邪悪な学長と常山に決戦を挑むのだった。ところが…。
▲本作で目を引かれるのは、やはり大島嬢の美しさだろう。父と妹の魂を奪われ、形勢不利でも戦い抜こうとする儚さは本作に花を添えており、台湾進出第2弾としては上々の活躍っぷりであったと言えよう。
ただし物語はヒネリが無く、李作楠作品とは思えないほどシンプルな作りになっている。本筋とは関係の無いキョンシー親子を出したり、各所で繰り広げられるドタバタに面白みが欠けていたりと、余計な演出もところどころで目に付く。また、全体的に子供向けのタッチで描かれてはいるものの、台湾映画らしく流血アリ人死にアリという無法地帯だったのも頂けない。
最後の最後に落ちこぼれコンビが凄まじい行動に打って出るのだが、あまりにもやりすぎなオチのせいで誰しも唖然とすることは間違いないはずだ(ネタバレ防止のため多くは語れませんが、少なくとも子供向け映画のオチではありません・爆)。
功夫アクションは李海興と羅鋭(本作では「羅長安」名義)が担当しているため、激しさと勢いだけは一級品。殺陣に工夫は見られないが、ワイヤーワークとSFXを入り混ぜたアクションで頑張っており、ある程度の質は保証されている。ラストバトルでは李海興が龍世家や大島嬢を相手取って大暴れを演じるが、ここでファン驚愕のとんでもないシーンがある。というのも、この戦いの最中に李海興が竜に変身してしまう場面があるのだ。
しかもこの竜というのがハリボテで作った模型などではなく、なんとアニメーション製でビックリ!今まで様々な作品で色んな功夫アクションを見てきたが、敵自らがアニメの竜になっちゃうなんて初めて見たなぁ…(笑
大島嬢の美しさと、アニメの竜になった李海興に驚かされるが、全体的には凡庸な作品。莊胤建か張建佶が監督したっていうのならこの出来も納得だが、これで李作楠の監督作とは…『鷹爪蟷螂』や『勾魂針奪命拳』に熱狂した身としては、あんまり信じたくないところです。
原題:靈幻童子
英題:Kung fu Wonder child
製作:1986年(1989年説あり)
▼『上海エクスプレス』で香港映画デビューを果たした大島由加里は、同年にシネマシティ製作の動作片『悪漢列伝』に出演すべく台湾に渡り、続いてこの『妖魔伝』にも参加している。当時、林小樓(リン・シャオロウ)や羅鋭(アレクサンダー・ルー)作品を多く手がけていた台湾の巨匠・李作楠(リー・ツォーナム)が本作のメガホンを取っており、新進気鋭の大島嬢をバックアップするために入念な体勢を取っていたことが伺える。
しかし、当時の李作楠は往年の勢いを失ってしまったのか、凡作ばかりを連発するようになっていた。功夫映画時代の李作楠作品といえば、巧みなストーリーと良質な功夫アクションが大きな魅力であった。…が、林小樓や羅鋭と関わって以降の李作楠作品は、その魅力が大きく削がれているのだ。
『ゴーストパワーを持つ少女』『新桃太郎3』『新キョンシーズ』…これらは李作楠が監督やプロデューサーとして関わった作品だが、どれも以前の傑作のような切れ味は息を潜めており、作品的にも「今ひとつ」な物が多くを占めている。本作においてもパッとしない作風が尾を引いており、娯楽作品としてはそれなりに見られる内容ではあるものの、李作楠作品としては不満の多い出来になっている。
功夫片からニンジャ映画へ作風を変え、羅鋭作品に携わるようになった李作楠に、果たして何が起こったのだろうか?
■林小樓は北派茅山術の学校で料理人を務めている龍世家(ジャック・ロン)の孫娘で、北派によって根絶やしにされた南派茅山術の使い手であった。
学校では落ちこぼれコンビと仲が良く、たびたびトラブルに巻き込まれる事もあったが、それなりに楽しい日々を送っていた。そんなある日、幽霊が出ると噂の裏山に出向いた3人は、怪しげな術を駆使する悪の道士・李海興と遭遇する。李海興は延命術のために人々の魂を奪っており、更には異形の怪物・常山を従えていた。
3人は龍世家と大島由加里(彼女の父と妹が李海興に捕らえられている)に助けられて逃げ出すが、実は李海興の正体は茅山学校の学長であった。時を同じくして、学長は学校の中に南派茅山術の使い手がいることを知り、疑いの眼差しを龍世家と林小樓に向けた。一方その頃、林小樓は大島から「李海興に捕まっている父と妹の魂を助けたい」との話を聞き、再び裏山へと赴く。常山の妨害こそあったものの、妹の幽霊を助け出した林小樓は龍世家や落ちこぼれコンビと協力し、彼女を大島の元に連れて行こうと尽力する事に。
だが、学長らの妨害を受けたため計画は頓挫。妹の幽霊は敵の手に落ち、明後日には延命術が完成してしまうという。そうなれば父と妹の幽霊を助ける事は不可能だ…林小樓・龍世家・大島・そして落ちこぼれコンビは一致団結し、邪悪な学長と常山に決戦を挑むのだった。ところが…。
▲本作で目を引かれるのは、やはり大島嬢の美しさだろう。父と妹の魂を奪われ、形勢不利でも戦い抜こうとする儚さは本作に花を添えており、台湾進出第2弾としては上々の活躍っぷりであったと言えよう。
ただし物語はヒネリが無く、李作楠作品とは思えないほどシンプルな作りになっている。本筋とは関係の無いキョンシー親子を出したり、各所で繰り広げられるドタバタに面白みが欠けていたりと、余計な演出もところどころで目に付く。また、全体的に子供向けのタッチで描かれてはいるものの、台湾映画らしく流血アリ人死にアリという無法地帯だったのも頂けない。
最後の最後に落ちこぼれコンビが凄まじい行動に打って出るのだが、あまりにもやりすぎなオチのせいで誰しも唖然とすることは間違いないはずだ(ネタバレ防止のため多くは語れませんが、少なくとも子供向け映画のオチではありません・爆)。
功夫アクションは李海興と羅鋭(本作では「羅長安」名義)が担当しているため、激しさと勢いだけは一級品。殺陣に工夫は見られないが、ワイヤーワークとSFXを入り混ぜたアクションで頑張っており、ある程度の質は保証されている。ラストバトルでは李海興が龍世家や大島嬢を相手取って大暴れを演じるが、ここでファン驚愕のとんでもないシーンがある。というのも、この戦いの最中に李海興が竜に変身してしまう場面があるのだ。
しかもこの竜というのがハリボテで作った模型などではなく、なんとアニメーション製でビックリ!今まで様々な作品で色んな功夫アクションを見てきたが、敵自らがアニメの竜になっちゃうなんて初めて見たなぁ…(笑
大島嬢の美しさと、アニメの竜になった李海興に驚かされるが、全体的には凡庸な作品。莊胤建か張建佶が監督したっていうのならこの出来も納得だが、これで李作楠の監督作とは…『鷹爪蟷螂』や『勾魂針奪命拳』に熱狂した身としては、あんまり信じたくないところです。