功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『クライム・キーパー/香港捜査官』

2009-10-04 20:35:53 | 甄子丹(ドニー・イェン)
「クライム・キーパー/香港捜査官」
原題:皇家師姐4直撃證人/皇家師姐4直撃証人
英題:IN THE LINE OF DUTY IV
製作:1989年

▼遂に見ました、皇家師姐シリーズ第4弾!これで皇家師姐シリーズは全て制覇した事になるのですが、とりあえずシリーズ全体のおさらいを…。
 第1作の『レディ・ハード/香港大捜査線』はD&Bの処女作で、楊紫瓊(ミシェール・ヨー)の初主演作でもありました。続く『皇家戦士』は日本から真田広之を招集し、白鷹(パイ・イン)といった往年のスターを起用してスケール感を演出。第3作の『香港・東京特捜刑事』では藤岡弘を招き、主役が楊麗青(シンシア・カーン)へと交代します。
第5作は楊麗青が韓国に渡る『皇家師姐5中間人』で、こちらはラストの楊麗青VSキム・マリー・ペン戦が見もの。第6作の『地下兵工廠』は香港・台湾・中国の刑事トリオが銃の密売組織に挑み、最終作『海狼』は楊麗青が脇に回って徐少強の組織と対決するというストーリーでした。この皇家師姐シリーズは、どの作品にも必ず見所が存在し、安心して楽しむことの出来るシリーズであったのです。
ただ、第2弾以降の続編が一度も『レディ・ハード』に匹敵するアクションを作れなかったことだけは実に残念です。確かに第2作以降の作品にいいファイトを見せる場面もありましたが、『レディ・ハード』のような凄まじい殺陣には誰も追いつけなかったのです…そう、本作を除いては。

■今回、楊麗青は甄子丹(ドニー・イェン)と共にシアトルで麻薬組織を追っていた。組織の黒幕はCIAのお偉方なのだが、悪事の証拠を収めたフィルムが不法移民者の袁日初の手に渡り、そのまま紛失してしまう。お陰で麻薬組織からは「フィルムはどこだ!」と襲われ、警察からは「お前殺人犯だろ!」と追われてしまい、袁日初は命からがら香港へ亡命。楊麗青&甄子丹と王敏徳(マイケル・ウォン)は、彼を追って香港へ飛んだ。
一時は警察に身柄を確保される袁日初であったが、麻薬組織は袁日初を意地でも捕まえようと暗躍する。で、お察しの通り王敏徳は裏切り者の悪党であり、袁日初が黒幕の正体を見たと知るや、標的をフィルムから袁日初の命へと変更。邪魔な楊麗青&甄子丹を排除すべく、両者を犯罪者に仕立て上げて消し去ろうとする王敏徳。そんな悪党に対し、楊麗青たちは誘拐された袁日初の母親を救うために敵陣へ乗り込む!

▲本作はシリーズ中、最も国際色豊かな作品造りに務めた一本です。海外ロケーションや大量の外人アクターの投入など、規模に関してはシリーズ中でも破格の内容を誇っています。ストーリーこそ皇家師姐シリーズにありがちな「陥れられたけどそうはいきませんよ」的な内容で代わり映えしないものの、袁和平(ユエン・ウーピン)が手がけた動作片の中では最も面白い作品の1つに数えられるのです。
正直、私は本作の暴力刑事な甄子丹にはあんまり感情移入できないんですが(苦笑)、功夫アクションは袁和平らしくボリューム満点の出来。趣向を凝らしたファイトの数々は正に功夫シーンの見本市で、袁和平の真骨頂を見ることができます。中でも特筆は甄子丹VSマイケル・ウッズの一戦で、他の作品でも何度か闘っている両者にとって、恐らく今回の対戦がベストバウトだと思いました。
 強靭な肉体とパワーで甄子丹を圧倒するウッズ。しかし甄子丹はスピードとテクニックで相手を翻弄し、次第に勝負を自分のペースに引き寄せていく。徐々に防戦一方となってくウッズだが、このままでは勝てぬと悟り、防御を捨てて捨て身の戦いに持ち込んだ。結果、甄子丹も力に力で対抗せざるを得なくなり……と、このように今回のバトルは目まぐるしく優劣が入れ替わる内容になっています。
お互いの攻防や心情の変化などが解りやすく描写されており、実にスリリングな展開を見せます。他にも、楊麗青VS一見弱そうで強い曹榮、テンション高すぎなジョン・サルベティなどなど、この作品には濃厚なファイトが沢山ありました。これなら『レディ・ハード』に匹敵すると言っても過言ではないはずです。
個人的には『タイガー刑事』『タイガー・コネクション』よりも気に入った逸品ですが、そういえばその『タイガー刑事』にも第3弾となる『冷面狙撃手』という作品があります。甄子丹が不在のこの作品、果たして出来の方はどうなんでしょうか…?

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7 コメント

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Unknown (蛇形酔歩)
2009-10-05 01:44:51
こんにちは。 ついに直撃証人の登場ですか!
私もこの映画はタイガー刑事やタイガーコネクション比べてすきなんですよ。ドニーの粗暴な捜査ぶりは相変わらずでもそれほど気にならない構成ですよね 袁日初が逮捕されて母親に会いに行く場面とシンシアが病室で戦う場面のドニーの行動などでマイルドになっているように私は思います。 個人的にはドニーと日初の追いかけっこの場面でドアに貼ってあるソウルオリンピックの日本語表記ポスターが「タイガーコネクション」の夜のヒットスタジオの二階建てバスと並んで二大「不意に飛び込んでくる日本語」シーンとして記憶に残ってますがね(笑)
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返信! (龍争こ門)
2009-10-07 22:35:10
蛇形酔歩さんこんばんは!

>ドニーの粗暴な捜査ぶりは相変わらずでもそれほど気にならない構成ですよね
仰るように、本作での甄子丹は幾分かフォローが入っていましたね。おかげで『ドラゴン電光石火98』や『天地雷鳴』よりマシになってたのは良かったです。

>ソウルオリンピックの日本語表記ポスター
これも気になるんですよねぇ(笑)。シアトルの場面はカナダでロケをしたそうですが、カナダに何故日本語のポスターが貼ってあったのか大いなる謎です。
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虎籠屋は冷麺の味だけイマイチ  (白扇仔)
2009-10-08 22:32:15
龍争こ門様こんばんは。
メールは届いたその日に読みましたよ。そゆことで今後もよろしくです。

この作品は一昨年CSで見ました。
この作品で○○の名前と顔が一致しました。この作品の彼のように、強そうには見えないルックスの奴がメチャクチャ強い、っていう設定(「九龍の眼」のアパアパさんとか)が大好きです。
ラスボスが王敏徳ってことで期待してなかったんでんですが、○○がかなり頑張ってくれてたんでクライマックスは見応えありました。僕個人はドニーとウッズの闘いより○○が闘うシーンの方が良かったです。
他には、ジョン・サルベッティには笑ってしまいました。でも彼は結局何なんだったんだ?

タイガーなんたらの第三弾の『冷面狙撃手』なんですが、張敏様の大ファンである私、画質の悪いダビのレンタルVで昔見ました。が正直言って何も記憶に残っていません。
ただハッキリ言えることは、前2作と比べると全体的にガクっと劣る感じでした。メンツ的にもそうなんですが、日本でV化されなかったのも当然かな って感じでした。
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返信!(1) (龍争こ門)
2009-10-11 00:42:04
白扇仔さんこんばんは!
ちょっと私用でメールをお送りしましたのでご確認下さい(笑

>この作品で○○の名前と顔が一致しました。
○○というと…あの人ですね。彼は『衛斯理之霸王卸甲』で徐小明とどつき合ってましたが、私もこの手のキャラは好きですね。ただ○○は袁日初が翻弄されながらも倒す…という流れなら尚良かったかと思います。楊麗青には別の外人さんが付いてましたので、どうせなら袁日初に最後の華(映画出演は本作が最後だった模様)を持たせてあげたかったですね。
サルベティは…ほんとに何だったんでしょうね、あの構えは(笑

>『冷面狙撃手』
情報ありがとうございます。張午郎ぐらいしか手練れがいないので大丈夫かなぁ…とは思っていましたが、やはりそんな感じでしたか。このへんのD&B末期作品は辛い出来の作品が多いのですが、袁和平でもダメだったとは…う~ん残念。
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タイトル (亜州影帝)
2009-10-15 07:19:26
お久しぶりです。


このシリーズでずっと思ってた事がありまして、なぜ2作目は「皇家師姐2」ではないのかということ、しかも1作目の英題は“yes madam”なのに3作目からは“IN THE LINE OF DUTY3”に変わったこと。

ま、タイトルが変わることもありますから、最初は「皇家戦士」がパート2だと思ってたのですが、松竹から発売されている国内版ビデオを観て納得しました。
本編は英語吹き替えによるインターナショナルバージョンとでもいいましょうか。(サモが出演しているシーンがカットされたりして短くなってはいます)

で、オープニングタイトルが英題のみの「IN THE LINE OF DUTY 2」となっています。
海外で公開するにあたって題名のみ変更したバージョン2.0といったところでしょうか。

で、題名を繋げたまま「香港・東京特捜刑事」(3作目)を作ったって感じですね。
ま、ミシェール姐さんも出演していることだし、「皇家戦士」が師姐シリーズでも問題はないと思いますけどね。

すいません。たいした話題じゃないんですけど(苦笑)
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追加です。 (亜州影帝)
2009-10-15 07:53:56
松竹から発売のビデオは「レディハード 香港大捜査線」のことです。


いきなりパート2表記だったりするので、たとえば他にレディースアクションもので「IN THE LINE OF DUTY」の英題がつく作品があるのかとか気になってしまいますね。

ちなみに国内で発売されてるD&B作品のビデオは英語吹き替えバージョン収録されてるものが多いです。

「レディハード」「皇家戦士」「チャイニーズ・ウォリアーズ」「香港・東京特捜刑事」「黒い女豹」「レディソルジャー/エリツィン暗殺計画」などなど。
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返信!(1) (龍争こ門)
2009-10-18 00:55:23
亜州影帝さんこんばんは!

>なぜ2作目は「皇家師姐2」ではないのかということ
そういえば不思議な話ですよね。時系列順に並べると『レディ・ハード』が第1作で『皇家戦士』が第2作にならなければならないのに、英題の“IN THE LINE OF DUTY”名義では逆の順番になっています。この混乱の原因は私にもよく解りませんが、何故こうなったのかは大体予想が付きます。
これは憶測になりますが、恐らく“IN THE LINE OF DUTY”というタイトルが生まれたのは、『香港・東京特捜刑事』が製作された際ではないかと思われます。この『香港・東京~』は楊紫瓊の後釜として登場した楊麗青を売り出すため、藤岡弘を招いたり『五福星』キャストのカメオ出演を取り込むなど、様々な趣向が凝らされました。しかし、作品としてはいまひとつパンチに欠ける出来であったのも事実です。
そこでD&B首脳陣は『香港・東京~』を『皇家戦士』の続編とし、楊麗青を楊紫瓊2世として強く印象付ける策を取ったのだと思います。『皇家戦士』も日本人キャストの客演など『香港・東京~』と似通った点が多く、勝手に続編扱いにしても問題はないと思われたのでしょう。
更に箔を付けるため『レディ・ハード』もシリーズの一つということになったが、そのために『レディ・ハード』が第2作で『皇家戦士』が第1作という奇妙な位置付けになってしまったのでしょう。…無論、これらは私の推測に過ぎませんし、単に海外で最初に売られたのが『皇家戦士』だったからという事かもしれません。

>yes madam
実は皇家師姐のタイトル絡みでもう1つ妙な話があります。『危情追蹤』という作品があるのですが、こちらの英題が何故か『Yes Madam 5』となっているのです。皇家師姐シリーズには『中間人』という第5作があるし、そもそも「Yes Madam 2」とか「Yes Madam 3」は存在しないはずなのに、何故突然「Yes Madam 5」なのかも意味不明です。
主演は皇家師姐シリーズと同じ楊麗青で、勝手に作られた続編との見方も出来るのですが、この『危情追蹤』が作られたのは1996年のこと。D&Bが消えて5年も経っているというのに、しかも時代は古装片ブームに湧いていた時期というのに、何故このタイミングで皇家師姐シリーズの名を使用しようとしたのか?まったくもって妙な作品であります。

>ちなみに国内で発売されてるD&B作品のビデオは英語吹き替えバージョン収録されてるものが多いです。
そういえば『タイガー・コネクション』なんかも英語版のビデオでしたね。確か『タイガー刑事』は広東語だった記憶がありますが、昔の記憶なのでちょっと曖昧です(笑
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