功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『生死拳速』

2015-01-28 23:39:04 | カンフー映画:傑作
生死拳速
英題:Fist Power
製作:2000年

▼みなさんご無沙汰してました…年明けを無事に過ごせたと思っていたら、40度近い高熱を患った龍争こ門です。なんだか毎年この時期はいつも体調不良を引き起こしている気がしますが、ひょっとして祟りか何かなのでしょうか?(爆
と、そんな陰鬱した空気を吹き飛ばすべく、今回は現代アクションの快作をひとつ。本作は李連杰(リー・リンチェイ)が『ワンチャイ』シリーズを降板した際、主人公の座を引き継いだことで知られる趙文卓(ウィン・ツァオ)が主演した作品です。
趙文卓といえば、どうしても思い起こされるのが例のあの一件ですが、本作では八面六臂のアクションを披露。充実したキャスト陣とともに、ネガティブなイメージを払拭するほどの活躍を見せていました。

■1997年、香港は返還され英国統治の時代に幕を下ろした。これを機に黄秋生(アンソニー・ウォン)は軍を辞め、地道にトラック運転手として働きはじめるが、愛する息子を離婚した妻と再婚相手の成金(龍方)に奪われてしまう。
一方こちらは趙文卓。彼の仕事はガードマンの能力査定で、この日も自らビルに乗り込んで大立ち回りを演じていた。ある日、彼は出先に向かう途中で車が故障し、通りかかった黄秋生のトラックに乗せてもうことに。
 僅かな間に親交を深める2人の男だったが、黄秋生の状況は非常に切羽詰まっていた。龍方は子供をアメリカに連れて行こうと画策しており、返還を求めて訴えを起こすが相手にすらされない。「俺はただ息子といたかっただけなのに…どうして……!」
ついに我慢の限度に達した彼は、恐るべき行動に及んでいく。なんと昔の軍人仲間を招集すると、小学校に大量の爆弾を仕掛けて籠城。生徒や教師を人質にして、7時間以内に我が子を連れてくるよう要求したのだ。
 甥っ子がその小学校に通っていた趙文卓は、再会した黄秋生からその役目を強引に指名された。前日にお見合いパーティーで出会った記者の黎姿(ジジ・ライ)、黄秋生の仕事仲間だった李燦森(サム・リー)とともに、彼は香港の街を駆け抜けていく。
龍方の妨害が飛び交う中、果たして趙文卓たちは黄秋生の息子を連れてくることが出来るのだろうか?

▲本作は香港映画随一の奇才・王晶(バリー・ウォン)がプロデュースした作品で、清々しいまでにアクション推しの内容となっています。中盤からはその傾向が著しく、趙文卓はほぼノンストップで戦い続けていました。
そのテンションは『ナイス・ガイ』を彷彿とさせますが、対戦相手もシチュエーションもバラエティに富んでおり、ファイト・シーンでマンネリは感じさせません。っていうか龍方、いくらなんでも刺客を差し向けすぎ!(苦笑
 圧巻なのがラストバトルで、往生際の悪い龍方は小学校の中にまで惠天賜&麥徳羅(どちらもショウ・ブラザーズ出身)らを送り込みます。さすがの趙文卓も限界かと思われたその時、彼の家族たちが駆けつけるのです。
まず父親役が『少林寺三十六房』の劉家榮(リュー・チャーヨン)、母親役に『大酔侠』の鄭佩佩(チャン・ペイペイ)、そして姉役は『長輩』の惠英紅(クララ・ウェイ)! もう1人の胡智龍は武術指導家ですが、なんと通好みな顔ぶれでしょうか!
このあと趙文卓が黄秋生の要求をきちんと守り、事件は見事な決着を迎えるわけなんですが、功夫映画ファンとしてはコッチの大暴れの方しか頭に入ってきませんでした(笑
 さて、さっきからアクションのことばかり言及していますが、本筋の方もわりと好調です。シリアスとギャグのバランスが良く、無茶苦茶なプロットを一気に描き切る構成は『修羅を追え』(こっちほど深刻じゃないけど)を思わせます。
また、この手の作品では女子供が足を引っ張るケースが多々ありますが、本作はそういった不要な描写をバッサリとカット。黄秋生の息子は終始いい子にしてるし、黎姿もコメディエンヌとしての役割を全うしていました。
龍方と離婚した妻はきちんと痛い目にあうので、堅苦しい事を抜きにスッキリしたい人にはオススメの逸品。ショボいところもあるけど、趙文卓の主演作としては間違いなく傑作に入る部類だと思います。

『シャドウ・ファイター』

2015-01-16 21:49:55 | 女ドラゴン映画
「シャドウ・ファイター」
原題:赤色追撃/米高比爾
英題:Shadowguard/Blood Bond
製作:2011年

●正義の守護者である周鳳凰(フェニックス・ヴァレン)は、老師のもとで厳しい修行を受けていた。そんな折、老師から「お主には影を感じる。ここに来るまでの経緯を教えてくれないか」と訪ねられ、ある出来事を語り始めた。
…今から4年前、彼女は反乱軍によって平和を乱されたアジア某国で、平和活動家の師を警護していた。だが反乱軍の襲撃によって師は重傷を負わされ、しかも特殊な血液型であることが判明する。
 彼を救うには一刻も早くドナーを連れてこなければならない。そこで周鳳凰は、ドナーの1人であるマイケル・ビーンと接触すべく、反乱軍の支配地域へと潜入した。
反乱軍のボス・任達華(サイモン・ヤム)が迫る中、周鳳凰とマイケルは必死の逃避行を続けていく。果たして死線の中で彼女が見たものとは? そして戦いの行方は…?

 年明けからしばしの休息を挟んでいた功夫電影専科ですが、いよいよ本日から更新を再開したいと思います。さて今回は新年最初の更新という事で、景気よく傑作の紹介を…と思っていましたが、あえて地味めの作品をチョイスしてみました。
本作は『ターミネーター』のマイケル・ビーンが監督を務め、世界的な功夫映画マニアのベイ・ローガンが製作に参加。この2人は『ドラゴン・スクワッド』で共演しており、その縁から本作で組むことになったと考えられます。
 しかし肝心の作品はとても薄味で、実に淡泊な仕上がりとなっていました。致命的なのが登場人物たちのテンションが低く、宗教的・哲学的な観念を語るシーンに尺を割きすぎたためか、いまいち盛り上がりに欠けている点です。
それでも話がしっかりしていれば良いんですが、正直言ってこちらも微妙…。例えば、後半で敵兵を射殺した周鳳凰がショックを受けるシーンがあるんですが、ここまで何人も素手で殺しているので「何を今さら」としか思えません(大体ずっとこんな調子)。
プロットも『ラスト・ブラッド/修羅を追え』の劣化コピーだし、アクション以外にあまり見るべきものが無い作品といえるでしょう。ちなみに本作の脚本にはベイも関わってるんですが、恐らく彼のことだから確信犯なんだろうなぁ…(爆

 ただしアクションの演出は悪くなく、カーチェイスや銃撃戦も並以上の迫力がありました。肉弾戦では樊少皇(ルイス・ファン)の武術指導が幸いし、本格的なアクション女優でない周鳳凰を強く見せることに成功しています。
彼女自身も太極拳の指導を受けたようで、その成果は全編に渡って繰り広げられるファイトシーンで確認できます。ちなみにマイケルは素手の戦いとなるとあまり動けておらず、個人的には最後のVS任達華を周鳳凰に譲って欲しかったですね(苦笑
と、そんなわけで微妙な新春一発目となってしまいましたが、2015年も国内外の様々な作品に目を通していく予定です。果たして今年はどんな傑作・駄作との出会いが待っているのか…兎にも角にも皆さん、また今年も宜しくお願い申し上げます!