功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『ボディガード牙』(大和武士主演作)

2009-03-29 19:52:41 | 日本映画とVシネマ
「ボディガード牙」
製作:1993年

●主人公・牙直人は空手道徹心会に在籍する空手の達人だが、その正体は巨額の報酬で動く凄腕ボディガードである。師・大東徹源の命によって任務を遂行する直人は、今日も様々な空手家たちと壮絶な死闘を繰り広げるのであった……。以上は『空手バカ一代』の梶原一騎が手掛けた空手アクション劇画、『ボディガード牙』の大まかな概要です。
ハードな内容と迫力のあるアクション描写が売りの活劇だったようで、のちに本編の過去を描いた『新・ボディガード牙/カラテ地獄変』、そして大東徹源の若き日を描いた『新・カラテ地獄変』といった派生作品が作られていきました(…が、私はどの作品も見た事がありません・爆)。
 好評により実写映画も作られ、『燃えよドラゴン』によってカンフー熱が燃え盛る前の1973年に、『ボディガード牙』『ボディガード牙/必殺三角飛び』が千葉真一主演で製作されています。本作は梶原の七回忌を記念して作られたVシネ作品で、今回は主人公の牙直人を大和武士(『BACK FIRE/強制奪還』)が、大東徹源を真樹日佐夫が直々に演じています。

 舞台は沖縄県那覇市。ヤクザの金を持ち逃げし、幹部(須藤正裕)を刺して服役していた長倉大介は、大和に護衛を依頼してきた。長倉は持ち逃げして隠した五億円の金を回収し、沖縄に置いてきた田中忍を連れ立って脱出しようと画策。しかしヤクザは金を取り返そうと、琉球空手の刺客を差し向けたりと姑息な手段に打って出ていた。
敵の追っ手を交わしつつ、一行はどうにか田中と再会できた…のだが、彼女はヤクザの仲間になって長倉を陥れようとしていた。琉球空手使いの刑事・松田優と共に敵地へ飛び込んだ大和と長倉は、全てのケリをつけようと組長に挑む!

 三池崇史が監督を務めているのでエログロな場面もあり、物語も中盤で間延び気味になってしまいますが、格闘映画としては十分面白い作品です。大和は『強制奪還』の時よりもスリムで、鋭く突き刺さるような空手アクションは一見の価値があります。もちろん助演の松田優もいいファイトを見せていて、最後には大和VS松田のガチンコバトルが実現していたりします。
また、大和の仲間である倉田プロ出身の咲田めぐみ(ファイブイエロー!)も見事なファイトを披露し、琉球空手の挑戦を受けた真樹センセイの勝負も見逃せません。唯一残念なのはラストの大和VS松田がアッサリ目だった事で、この2人の勝負はもっとじっくり見てみたかったなぁ…と思ってしまいました。とはいえ、全体のアクションレベルは上々のものなので、格闘映画ファンにはオススメの作品と言えます。

※…本作はDVD化されていまですが、タイトルが続編と同じ『ボディガード牙/修羅の黙示録』と改題されているので、レンタルや購入の際は気を付けてください。ちなみに続編の方は『ボディガード牙/修羅の黙示録2』というタイトルに変わっている模様。

『ザ・格闘王2』

2009-03-27 20:44:09 | 日本映画とVシネマ
「ザ・格闘王2」
製作:1994年

●本作はケイン・コスギ主演の『ザ・格闘王』の続編で、あの感動ぶち壊しオチからどうなるのかなぁ…と思っていたら、その雰囲気をそのまま引きずってしまった不幸な作品です。

 前作は、父(宮内洋)を殺されたケインが格闘トーナメントで闘うという話でしたが、最後にヒロインが殺害されるという酷いオチで終わっていました。本作はその直後から始まりますが、アジアンマフィアによって捕まったケインが拷問を受け、全身ズタズタになった挙句に麻薬中毒になるという凄惨な展開からスタートします。
何とか脱出したケインは敵が横浜にアジトを移した事を知り、色々あって陶芸家で武術の達人・清水宏次朗の元へ身を寄せた。自力で麻薬の誘惑を断ち切る(!)と、彼は捕まっている清水の義理の娘&友人の女性記者(実はマフィア首領の情婦)を救うため、2人で敵地へと突入。死闘の果てに清水の義理の娘は助け出したが、この戦闘で女性記者と清水は死亡してしまう。再び胴着に身を包んだケインは、マフィア首領の邸宅へと乗り込む!

 …と、このように本作は前作からの落差が非常に激しいものとなっています。ストーリーは単なるケインの復讐記になっているし、立ちはだかる敵の格闘家もたった2人しかいません。前作では倉田保昭や宮内洋を筆頭に、サイモン・リーなどの外人ファイター、石橋雅史や天本英世といった渋いゲストが出演していました。しかし本作には清水宏次朗ぐらいしか有名どころがおらず、画的にも非常に辛いものがあります。
このスケールダウンは前作で豪華なキャストを揃えたせいで、予算を使い過ぎてしまったことが原因だったのではないでしょうか?実際のところは監督のショー・コスギにしか解りませんが、そう思ってしまうほど本作のスケールダウンは著しいものでありました。

 唯一、本作が前作に勝っているのはメインキャラの死亡者だけと思われます。本作ではケインの恋人と友人を始め、彼に関わった多くの人物が死んでいきます。その陰惨な雰囲気はさながらD&B(香港映画の中堅プロダクションで、よく鬱展開を好む)を髣髴とさせるもので、ダブル主演の清水すら死んでしまいます。劇中でもケインが「もう友の死は見たくない」と言う場面もあるので、このへんは本当にどうにかして欲しかったです。
しかし格闘シーンは全体的に質が高く、何よりも清水とケインによる夢の競演&対決が実現しただけでも、本作は価値があったと言えます。清水は『極道ステーキ』などのVシネ格闘アクションに出演していますが、実力の見合う相手とは中々巡りあえませんでした。本作ではその鬱憤を晴らすかの如く立ち回り、ハイテンションなバトルを見せています(少なくとも私が見た清水の出演作の中でも、1・2を争う動きの良さでした)。
暗い展開や尻切れトンボのラストなど、ショー・コスギの監督としての技量はあまり評価できないかもしれませんが、ケイン自身の可能性はまだ未知数。このまま未知数のままで終わっては欲しくないのですが、果たして今後ケインはどのような活躍を見せていくのか、座して期待したいところです。

『火燒紅蓮寺』

2009-03-24 22:02:41 | カンフー映画:駄作
火燒紅蓮寺/呂萱良火燒紅蓮寺
英題:The Story in Temple Red Lily/Battle In Red Temple
製作:1979年

●まず本作はタイトルを見て欲しい。「火燒紅蓮寺」とあるが、いかにも少林寺焼き討ちを連想させる題名ではないか。なので私は『少林寺炎上』の嘉凌(ジュディ・リー)が出演しているので、それに便乗した少林寺焼き討ち映画かと思っていました(事実、彼女の衣装もよく似ている)。だが、本当のところは少林寺と関係の無い武侠小説が元となっているらしく、劇中に僧兵は出てくるが少林寺とはまったく無関係のようだ(主要武器が何と血滴子!)。
他にメインキャストには董力(トン・リー…実質的な主役)や譚道良(タン・タオリャン)が並んでいるが、その他の出演者は龍飛(ロン・フェイ)などショボい連中ばかりで、作品そのものも非常にまどろっこしい出来だ。ストーリー展開は会話シーンがメインで、しかも功夫シーンは少ないので凄まじく見づらい。悪の巣窟である紅蓮寺と嘉凌ら一派の闘いが物語の根本のようだが、演出がタル過ぎて全然面白くないのである(原作を知っていれば見方は幾分か違うかもしれないが…)。
こうなると数少ない功夫アクションに一分の望みを抱くしかなくなるのだが、そっちに関しても期待外れすぎて腹立たしい事この上ない。というのも、主役であるはずの董力・嘉凌・譚道良ら3人が前半はまったく登場せず、出てきてもほとんどアクションを披露してくれないのだ。董力らが本格的に活躍しだすのは開始40分を過ぎてからで、譚道良に至っては数シーンに出てきただけで何の説明も無く退場してしまう。オープニングのクレジットには嘉凌と並んで思いっきり譚道良の名が表記されているのにもかかわらず、だ。
私としては譚道良を目当てに視聴していた事と、本作が少林寺焼き討ち映画だと思っていた事で、不満と不信感は最高潮。しかも視聴したVCDが動作不良でクライマックスがまともに見られないというアクシデントも重なった結果、本作の評価は下の下へとガタ落ちになってしまいました。
ちなみに監督は『夢拳蘭花手』『銀蕭月剣翠玉獅』などのパッとしない作品作りに定評のある廖江霖(カール・リャオ)。『銀蕭月剣翠玉獅』の時もそうだったが、どうしてこの人はまともに撮れば面白そうな素材をわざわざこじらせてしまうのだろうか?しかも本作の場合は、荊國忠が驚きの主演を飾った『夢拳蘭花手』、王道(ドン・ウォン)と茅瑛(アンジェラ・マオ)が共演した『銀蕭月剣翠玉獅』のように、売りになるようなポイントが何ひとつ存在していない。むしろ目に付くのはマイナスポイントばかりであり、いっそのこと廖江霖を「香港のアルバート・ピュン」と言ってしまいたいところだ。
しかし、唯一未見の廖江霖作品『大鷹王』をチェックせずして結論は出せない。廖江霖への正当な評価を下すには、まず『大鷹王』を見なければならないのだが…正直、私はまったく見る気が起きません(爆

『ブラッド・スポーツ2』

2009-03-22 19:55:26 | マーシャルアーツ映画:上
「ブラッド・スポーツ2」
原題:BLOODSPORT II/BLOODSPORT 2: The Next Kumite
製作:1995年

▼格闘大会という題材はマーシャルアーツ映画ではとても重宝されてきた。
手っ取り早く格闘シーンを出せる事が最大の利点であり、若きジャンルであるマーシャルアーツ映画(『CIA殺しの報酬』の項を参照)にとって、この即物的なイベントは今も愛用され続けている。だが、格闘大会とは異なる種類の格闘技が集う総合格闘技の場でもある。そのため構成も似たり寄ったりなものになりがちだが、そこで重要となってくるのが「いかに他の作品と一線を画す作品を作れるか否か」ということである。
もちろん格闘シーン自体のクオリティも大切で、『クエスト』や『ファイナルファイト/最後の一撃』『スーパー・ファイト』は、各々のファイトスタイルをきちんと区別して描いている。他にも『ファイヤー・パワー』は武器支給システムを導入し、『ストリートファイター 2050』はアクション超人であるマット・マリンズを担ぎ出し、『12 TWELVE』は視聴者を観戦者へ導く新境地を打ち立てた。しかし、その素材を持て余して三流作品に陥るケースも少なくなく、アルバート・ピュンの『アルティメット・マシーン』や『キックボクサー4』などはいずれも失敗の典型だ。
格闘シーンの見せ方と独創性のある差別化…これが格闘大会系のマーシャルアーツ映画に必要不可欠な、そして重んじるべき命題なのである。

■ダニエル・バーンハードは類稀なる格闘センスの持ち主だが、悪友のフィリップ・タンと共に悪事を繰り返していた。
ところがパット・モリタの所持していた伝説の宝刀を盗んだ際、フィリップの裏切りで刑務所にブチ込まれてしまう。刑務所内では看守であるオン・ソー・ハン(『キング・オブ・キックボクサー』でローレン・アヴェドンに勝負を挑まれたムエタイの人)が睨みを利かせていたが、武術の達人であるジェームズ・ホンがダニエルの前に現れる。彼に師事したダニエルは精神的にも肉体的にも成長を遂げ、ホンから聞いた格闘大会"クミテ"に参加したいと思うようになった。
そんな時、あのモリタがダニエルを保釈して「過去の事は水に流し、あの刀を取り戻してきてくれ」と依頼してきた。かくして、ダニエルは宝刀の奪還と"クミテ"での優勝を目指して闘っていくことになるのだが、"クミテ"にはオン・ソー・ハンも参加しており…。

▲本作はヴァンダム主演の『ブラッド・スポーツ』の続編だが、共通しているのは"クミテ"ぐらいで物語的な繋がりは薄く、前作を見ていなくても楽しめるようになっている。
ストーリーも大筋は上記に挙げただけのもので、あとはひたすら格闘アクションが続いていくのだが…これが本当に凄い!ダニエル以下、参加している選手たちは全員動きが機敏で、加えて先述の要素をどちらもクリアしており、まさしくマーシャルアーツ映画の傑作として華々しい完成度を誇っているのだ。キックボクシング・柔道・中国拳法(虎拳)・テコンドー・空手・ムエタイなど、出場する選手の流派も実に多種多様。それでいて皆が皆持ち味を遺憾なく発揮している様は実に素晴らしい。
時にリアルヒッティング系の殺陣も飛び出したりする中、特に凄かったのがテコンドーVSカポエラの試合だ。このバトルでカポエラ使いの黒人が見せる足技が驚異的で、ここだけの出番ながら見事な立ち回りを見せている。私はまだ『オンリー・ザ・ストロング』や『トム・ヤム・クン』などは見ていないが、ここのファイトには本当に圧倒されました(ちなみにフィリップ・タンは思ったような活躍を見せなかったものの、本作で彼は助監督やアクション・コーディネーターとして八面六臂の活躍をしている)。
細かいアラは少々あるが、余計なサブエピソードを挟む事も無く、信じた道を突き進むダニエルの姿は爽快さすら感じさせる。本作はその後も第4作まで作られたというが、どこか日本のメーカーでソフト化して欲しい!…と思わざるを得ないところである(笑

『リアル・キックボクサー』

2009-03-20 19:34:36 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「リアル・キックボクサー」
原題:AMERICAN KICKBOXER 2
製作:1993年

●突然現れた謎の男たちによって、キャシー・シャワーは我が子を目の前で誘拐されてしまう。多額の身代金を要求されて警察も頼れぬ中、キャシーは2人の男に望みを託した。1人は彼女の離婚した夫であるデイル・"アポロ"・クック、もう1人は彼女の元恋人で
あるエヴァン・ルーリーだ。2人とも腕っ節の方は文句なしの実力者だが、過去の確執で決して馴れ合おうとはしなかった。しかし連れ去られた娘はクックかエヴァンどちらかの子であるため、2人は協力して敵に立ち向かっていく。ところが、真の黒幕は意外なところに姿を見せ…。
『 バトル・ウルフ』に続き、再びクックの主演作の登場だ。原題を見ても解るとおり『アメリカン・キックボクサー』の続編である…ようだが、キックボクサーすら出てこないのでタイトルだけの続編ということなのだろう。
作品自体はひと捻りを加え、単なる格闘映画ではないストーリーを作り上げている。が、本作は最初の30分が全く面白くない。なにしろ短気な暴力夫のクックを筆頭に、女の事しか考えていないロクデナシのエヴァン、浮気しまくりなキャシーと、登場人物が揃いも揃ってアホキャラばかりなのだ。そのため前半30分がとても見辛くて鬼門なのだが、クックとエヴァンが協力し合うところから徐々に話は盛り上がりを見せていく。
 作中の格闘シーンは上質で、クックとエヴァンのファイトスタイルもきちんと差別化が図れており、受けのスタントも含めて上々の出来である。特に素晴らしい動きを見せていたのがエヴァンで、ラストではクックを差し置いて格闘シーンの見せ場を一人占めしている。彼は他にも『ダブル・インパクト』『アンダー・カバー』『タイガークロー2(未公開作)』等、幾多の格闘映画に関わってきた経歴を持つ。いっそのこと、クックじゃなくてエヴァンが主役でも良かったと思うが(苦笑)きちんと2人の対戦も用意されており、格闘シーンへの配慮も行き届いている。
ただし、ラストバトルがゴチャゴチャしていてこれといった山場が無く、前述した登場人物の不備も含めて不満は若干残る。キャシーを巡るやり取りを半分ぐらいカットし、そのぶん格闘シーンに凝っていれば更に面白くなったはず。流石に『バトル・ウルフ』並みの傑作ではないが、この手の作品では良質な部類に入るのではないだろうか。

『Thunder Ninja Kids: Wonderful Mission』

2009-03-18 23:57:31 | カンフー映画:駄作
Thunder Ninja Kids: Wonderful Mission
別題:Thunder Kids 2: Wonderful Mission
製作:1990年

●IFDお得意のニコイチニンジャ映画のひとつで、何誌強(ゴッドフリー・ホー)がチャールズ・リー名義で手がけた作品だ。無論、本作がまともな作品でない事はタイトルを見ても一目瞭然。他にも『Thunder Ninja Kids』のタイトルを冠した作品があり、シリーズのように売られていた様子が伺える。
さて、そんな本作は『Zombie vs Ninja』と同様に、韓国産の功夫片に手を加えて作られている。しかし『Zombie vs Ninja』の時は鄭真化(エルトン・チョン)が出ていたおかげで元ネタが解ったが、今回の功夫片には知っている顔がほとんどおらず、解ったのは趙春(『蛇鶴八拳』の冒頭でジャッキーにケンカを売ったハゲの人)や白黄基だけという有様。なので今回はさすがに元ネタの特定までには至りませんでした。
話のほうは毎度の如く、カンフーキッド三人組の復讐記にニンジャトリオのバトルを挟み込んだブツ切りストーリーだ。元ネタのストーリーは黄金の仏像を狙う趙春の一団&日本人の軍団に、覆面を被った少年たちが立ち向かうというもので、本作はそこに新撮部分を加えて作られている。韓国映画にも好小子が存在したという事実には驚いたが、さすがにアクションのスケールは黄一龍などには及んでおらず、無愛想なのも減点だ(苦笑
また、作中における功夫アクションもそんなに多いわけではなく、突然パッと消えたりするなどヘンな動作が多いのも特徴である。本作がニンジャ映画に流用されたのは、ここらへんのアクションがニンジャ映画のものに近く、ニンジャ映画にしても違和感が少ない事などから選ばれたのだろうと思われる(事実、オリジナル部分にもニンジャらしきキャラが登場します)。
しかし本作で注目すべきなのは、元ネタよりもむしろ新撮部分の方である。いつもはリチャード・ハリソンとかブルース・バロンなどが使いまわされる新撮部分だが、今回はなんとスチュアート・スミス、ケン・グッドマン、スティーブ・タータリアという、少し豪華な連中が顔を見せているのだ。

スチュアートはフィルマークやIFD系のスターだが、たまに『ファイナルファイト/最後の一撃』のような普通の作品にも顔を出す人。ケンは『プロジェクト・イーグル』などに出演しているゴツめの人で、スティーブは『ワンチャイ/天地黎明』でユンピョウと闘ったキックボクサーといえばすぐ解るだろう。そんな彼らのおかげなのか、新撮のアクションシーンはそれなりに激しいアクションを展開しており、いつものようなひょろいチャンバラにはなっていない。
思い起こせば『Ninja Empire』でも、マイク・アボットがニンジャの格好で頑張っていた。スティーブたちのような外人スターが成功するまでには、こういうアンダーワールドな仕事を仕方なくやっていた時期もあるんだろうな…と、どことなく感慨深げな気持ちにならずにはいられません。これで作品が面白かったら報われてるんですが、まぁIFDと何誌強じゃあねぇ(爆

『武僧』

2009-03-16 22:27:29 | カンフー映画:珍作
武僧
英題:Ninja Vs Shaolin Guards/Guards of Shaolin
製作:1984年

●前々回、羅鋭(アレクサンダー・ルー)のニンジャ映画のマンネリ化について多々触れたが、今回はその一因になっている出演陣へ注目してみよう。
『ニンジャ・シティ』のレビューでも書いた通り、羅鋭作品はいつも似たようなキャストがヘビーローテーションで動員されている。主に功夫片の場合は龍世家(ジャック・ロン)&龍冠武(マーク・ロン)が、現代劇の場合はユージン・トーマスが必ず登場し、これに常山&唐龍や五毒の江生&鹿峰が続く。言わば彼らは羅鋭レギュラーズともいうべき存在なのだが、今回はレギュラー陣を一切排除した画期的な作品で(スタッフには羅鋭作品常連の戴徹がいるが)、加えて韓国への遠征ロケを果たしている。その特異なロケーション効果の為か、本作はいつもの羅鋭作品とは少々タッチが違っているのだ。
さてその内容だが、ハッキリ言って本作はスケールの小さい『少林寺・怒りの大地』である。韓鷹(イーグル・ハン…『少林寺・怒りの大地』における干光榮(ユー・ロングァン)の役回り)とその仲間によって少林寺が襲撃され、羅鋭ら四人の弟子(というか羅鋭たち四人しか弟子がいない・笑)は死に際の館長から秘伝書を譲り受けた。韓鷹によって羅鋭たちは館長殺しの犯人とされ、次々と放たれる刺客と戦っていくのだが…と、話の内容はこれだけ。あとは延々と刺客との戦いが続いていくだけで、ストーリー面の評価はあまり良いものではない。
本作の監督である張旗は『大武士與小[金票]客』『詠春興截拳』等の呉思遠的な作品を手がけた人だが、それらと比べると本作はかなり落ちる。とはいえ、戴徹が関わっているだけあって功夫ファイトの方は良好だ。仲間の1人に王龍(マイク・ウォン)が、刺客の1人に羅鋭作品の縁の下の力持ち・李海興(アラン・リー)が扮しており、彼らが立ち会うアクションは中々面白い。しかも今回はあの早回し効果がほとんど使用されていないので、簡素な作風と相まって(いい意味での)オードソックスささえ感じるのだ。
ところでこの作品、「なぜ突然韓国ロケ?」と思うところだが、改めて羅鋭作品を振り返ると『ニンジャ・ハンター』の王龍や『ニンジャ・シティ』の李芸敏&崔旻奎、『スーパーニンジャ』の張一道など、韓国勢との共演がいくつか見られる事に気付かされる。これら韓国系の共演者を見るに、羅鋭作品には韓国と何らかの繋がりが存在していた事が伺える。そして今回のサプライズはあの韓鷹が出演している事だろう。
ラストでは羅鋭VS韓鷹という濃厚な顔合わせによるファイトが見られるが、先述した物語面での惰弱さがどうしても鼻に付く。張旗・戴徹・羅鋭・韓鷹という布陣なら、もうちょっとマシな作品が出来そうだっただけに惜しい限りである。

『極道おとこ塾』

2009-03-14 22:28:49 | 日本映画とVシネマ
「極道おとこ塾」
製作:1995年

▼主演は『極道ステーキ』の清水宏次朗!助演には松田優!…ということでレンタルしてみた作品なんですが、これはちょっと期待外れ。内容的には『極道ステーキ』のようなバリバリの格闘アクションではなく、どちらかというとありふれたヤクザVシネの1つみたいな趣の作品でした。いちおう格闘シーンもあるにはありますが、数が少ない上に精鋭さに欠けていたような気がします(アクション指導は『ウルトラマンレオ』の二家本辰巳)。

■清水は黄桜組に属するやくざ者。そして仁義を重んじる好人物なのだが、現在黄桜組は横暴な若頭が組長の不在(入院中)をいいことにやりたい放題という状況だった。贔屓にしていた映画館が取り潰され、別の組と合併しようとするなど、そのやり方は清水にとって外道以外の何物でもなかった。
そこで組長に直談判した清水は、舎弟と共に枝分かれ(所属する組から独立し、以後は系列となり独立して活動すること)を決意する。清水は自分のような意思を持つ男たちを集め、真の極道を目指す「おとこ塾」設立を目指した(ちなみに本作は某ジャンプ漫画とは何ら関係ありません・爆)。
ところが仲間集めをしていた矢先、組長が突然病院で自殺したとの一報が転がり込んできた。もちろんこれはあの若頭の仕業だ。怒りに燃える清水は若頭を討ち、しばし塀の向こうへ行く事になった(ただし若頭は一命を取り留めた)。それから一年後、復帰した清水は仲間たちを引き連れ、黄桜組との対決へ乗り出すのだが、当然これが一筋縄でいくはずが無く…。

▲原作がある以上は仕方が無のですが、劇中で繰り広げられる物語はどれも既視感漂うものばかり。特に清水の舎弟が「今度おいらに子供が生まれるんスよ!名前は兄貴のを頂戴しました!」と語り、思いっきり嫌な予感がする展開になったときは思わず苦笑してしまいました(もちろんこの後はみなさんの予想通りの話で進みます)。
それに、あれだけ個性的な仲間を揃えておきながら、結果的に活躍したのはギャンブラーの眼鏡・格闘担当の松田優だけだったのも"持て余している"感じがして、あまり面白くありません。ラストは清水が敵地に乗り込んで憎き若頭を倒しますが、その結末に何の新鮮味も感じられなかったのは惜しいと思いました(やっている事は中盤と同じだし…)。
 良くも悪くも"よくある作品"としか言えない本作ですが、そんな中で清水と松田はそれなりに格闘アクションで奮闘しています。襲撃された清水の元に松田が駆けつけるシーンはかなり盛り上がるし、最後の殴りこみで清水と松田の最強コンビが肩を並べて突入していく様も実に痛快です(ここでポン刀を抜く清水と、オープンフィンガー・グローブを装着する松田がとても格好良く撮れています)。
しかし若頭を含めて黄桜組にはザコしかおらず、ラストで組は清水たちによって瞬く間に壊滅してしまいます。せめて清水たちに対抗できるような好敵手がいれば、このような拍子抜けな展開にならなかったはず。キャスト面ではゲスト出演の梅宮辰夫がなかなかいい味を出していましたが、こんなことになるのなら梅宮がラスボスでも良かったのでは?

『アレクサンダー・ルーのザ・ニンジャ・シティ』

2009-03-12 21:58:18 | カンフー映画:珍作
「アレクサンダー・ルーのザ・ニンジャ・シティ」
原題:猛龍殺星("殺"は旧字)/忍者在美国
英題:Ninja In The U.S.A.
製作:1985年(87年?)

▼羅鋭(アレクサンダー・ルー)のニンジャ映画は2つの種類に大別できる。
ひとつは『ニンジャ・ハンター』のように功夫映画へニンジャをプラスアルファした作品、もうひとつは『スーパー・ニンジャ』のように現代を舞台にした現代動作片だ。前者は香港での公開も視野に入れた内容であり、後者は海外市場向けに国際的なムードを取り入れ、マンネリにならないように差別化を図っている。本作は後者に属する作品で、アメリカを舞台に外人のキャストが多く参加しており、作品としては『スーパー・ニンジャ』に近い。
だがこの2つは方向性こそ違えど、根っこの部分は全く同じだ。アクションはいつもの過剰な早回しファイトだし、出演者も羅鋭作品で見た連中ばかり。作品自体のテイストも同様で、血とおっぱいと暴力の乱れ打ちという点は一貫されている。監督は『ニンジャ・ハンター』に続いて呉國仁が担当しているが、何故か今回の英名はデニーズ・ウー名義になっている(HKMDBによるとジェームズ・ウーという英名だったはずだが…?)。

■ニューヨークで続発する黒社会の抗争事件…その影には巨大麻薬組織を率いるジョージ・ニコラス・アルバーゴ(腹心にユージン・トーマスと唐龍)と、彼の指揮するニンジャ軍団が存在した。
捜査官の常山はこの事件を追うが、彼にとってジョージはベトナム戦争時に自分たちの命を救ってくれた恩人でもある。ジョージは事件の容疑者であったが、常山は過去の恩義から彼を疑う事は出来なかった。一方、常山と共にジョージに助けられた過去を持つ羅鋭は、李芸敏と崔旻奎(!)の元で静かに暮らしていた。記者の妻と結婚して幸せの絶頂にあった羅鋭。だが、ふとした偶然で手にしたフィルムを見たことで、羅鋭はジョージが麻薬組織の首領であることを知ってしまう。
フィルムの奪還を目論む組織は崔旻奎を叩きのめして羅鋭の妻を誘拐。羅鋭はジョージの組織に全面戦争を挑むが、立場と意見の相違から友人である羅鋭と常山は対立してしまう。その後、和解した2人はジョージと組織を一網打尽にすべく、襲い来る敵と死闘を繰り広げていった。
だが、組織から妻が乱暴される様を記録したビデオが届けられ、羅鋭は単身組織へ直接殴りこみする決意を固める。羅鋭はかつて江生(すっかり老人役がお似合いになってます・涙)から受けた教えを思い出し、ニンジャへ姿を変えるとジョージのお抱えニンジャ軍団を殲滅。ユージン・トーマスら幹部も始末し、いよいよ因縁のジョージとの対決を向かえる!

▲前置きから話は続くが、羅鋭のニンジャ作品はいずれも同じタッチで作られており、ロケ地もキャストの顔ぶれも功夫アクションも、ほぼ全部の点において大差は無い。また、本作では李芸敏と崔旻奎という韓国功夫片おなじみの顔がゲスト出演している点で目を惹かれるが、アクションをひとつも披露しないので何の意味も成していない(江生は『ニンジャ・キッズ』でも共演済みだし…)。
善役として羅鋭をサポートする常山、意外とキレのいい技を見せるジョージなど、見られる部分もあるにはある。が、それらがワンパターンな作品構成の中に埋没してしまっているのは頂けない。マンネリ回避の為に様々な策を弄してはいるものの、作品として新しいものは何一つ生み出せなかった…これが羅鋭のニンジャ作品に共通する欠点の全てである。
羅鋭はニンジャ映画以降、次第にサブキャストや武術指導に徹するようになるが、果たして彼にとってニンジャ映画とはどのような世界であったのだろうか。

『ヒューマノイド』

2009-03-10 21:54:18 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ヒューマノイド」
原題:DISPLACDE
製作:2006年

●数百年前より、地球は2組の宇宙人によって監視されていた。宇宙人たちは地球に一切干渉しない事を旨としていたが、一方の宇宙人が地球の重要人物に接触し、極秘裏に勢力を拡大しつつあった。そこでもう一方の宇宙人の代表者が地球に行き、敵の悪事を探ろうとしたのだが捕らえられてしまう。彼を奪還すべく、代表者の息子であるマーク・ストレンジは地球に降り立つのだが、そのころ地球では秘密組織による内紛が発生していた…。
本作は『12 TWELVE』のスタッフによって作られた作品だ。元は自主制作の短編映画から始まった企画であり、場面ごとに作調が違うように見えるのはそのためなのだろう。
しかし結論から言わせてもらうなら、本作には2つの大きな欠点が存在する。ひとつは物語の冒頭に挿入される世界観の説明と、もうひとつはアクションシーンにおける編集についてだ。世界観の説明は劇中でも再度行われるため、わざわざオープニングに持ってくる必要は無い。更に問題なのがアクションシーンの演出で、こちらはカット割りが多すぎて何が何だか解らなくなってしまっているのだ(気を付けないとマジで映像酔いしてしまうので、初見の方はご注意を)。
前者はともかく後者の問題はとても酷いのだが、本作はそれらマイナスポイントに対して余りある程、格闘アクションの出来は良い。なにしろ『12 TWELVE』のスタッフが作っている上に、格闘シーンではマークの教え子(つまり格闘家やスタントマンの卵)たちが参加しており、質に関しては何の問題も無いのだ。中でもマークの活躍っぷりは『12 TWELVE』よりも凄いもので、彼は主人公だけではなく敵側の人造兵士も演じている。
人造兵士は書類を奪った一味を追い、競売会場や森を駆け抜け次々と敵を駆逐していく。この追跡劇がとてもテンポ良く、一度に2~3人を相手に闘う姿はとても素晴らしい。これで最後はマークVS人造兵士の壮絶なバトルで終われば最高だったのだが…そう、マークと人造兵士は同一人物。よって2人は一度も顔をあわせることも無いまま物語は終り、人造兵士に至ってはマークの協力者である人間の男にあっさり仕留められてしまうのだ。その代わりマークと敵の一味のボスとの対戦が用意されているが、人造兵士の前で右往左往しているだけだったボスには何の威圧感も無かった(動きは悪くないのだが)。
う~ん…これは評価の難しい作品だ。自主制作映画と考えれば上々の出来だが、普通に評価するとダメダメな演出に閉口してしまうし…。とりあえず映画としては『12 TWELVE』が圧倒的に上で、格闘シーンのクオリティなら本作といったところだろうか。もし同スタッフで第3作を作るのなら、果たしてどんな作品になっているのだろうか?