「ブラッド・ブラザーズ」
原題:Blood Brothers/No Retreat, No Surrender 3: Blood Brothers/Karate Tiger 3
中文題:親兄弟
製作:1990年
▼独立プロダクションの雄として活躍し、陳星(チン・セイ)や成龍(ジャッキー・チェン)などのスターを育て上げてきた呉思遠(ン・シーユエン)は、80年代の半ばに新たな挑戦を始めました。
まだ香港映画界が成熟期の只中にあった頃、彼は海外市場への本格的な進出を決意。流行をたくみに取り入れ、そこにカンフー映画のテイストを織り交ぜた“香港資本の格闘映画”の製作に着手します。
『シンデレラ・ボーイ』では李小龍(ブルース・リー)を、『キング・オブ・キックボクサー』では功夫映画タッチの修行を盛り込み、『キング・オブ・キックボクサー/ファイナル』では少林寺を舞台にしました。
そんな中、本作では東洋的なビジュアルを完全に廃し、スケール感の大きなストーリーを設定。『レイジング・サンダー』のローレン・アヴェドンと、キックの世界王者であるキース・ヴィダリを主演に迎えたのです。
■空手道場の指導員であるローレンと、CIA捜査官のキースは不仲の兄弟。今日は元CIAエージェントの父(ジョセフ・キャンパネラ)の誕生会だったが、ここでも口論になってしまう。
だが、その日の晩にテロリストのリオン・ハンターが現れ、襲撃されたジョセフは非業の死を遂げた。ローレンたちは仇討ちを誓うが、両者が手を取りあうことは決して無かった。
まずキースはCIA本部から「この件から手を引け」と忠告されるが、父の遺した資料からリオンの足取りを掴んだ。この資料を見たローレンは兄を出し抜き、フロリダに飛ぶと密かにテロ組織へ潜入した。
遅れて到着したキースは、元恋人でテロリストの一員だったワンダ・アキューナの力を借り、テロ組織に近付こうとする。その動きを察知したリオンは、新入りのローレンに彼の暗殺を命じた。
この事態は兄弟の機転によって解決するが、意外な黒幕の登場によってローレンの正体が暴かれてしまった。芋づる式にキースも捕まり、2人は「空港に来るモザンビークの大使を襲撃しろ」と強要されてしまうことに…。
だが、この事件の裏にはアメリカ大統領暗殺と、さらなる陰謀が隠されていた。血を分けた兄弟=ブラッド・ブラザーズは、国家の危機を救えるのだろうか!?
▲実を言うと、本作は私が呉思遠プロデュースの格闘映画で唯一見ることの出来なかった作品でした。このタイトルを探して市外や隣県のレンタル店、ネットの通販やオークションサイト、果ては大阪・東京の中古ビデオ屋まで足を運んだものです。
ところが、必死の捜索にも関わらず『ブラッド・ブラザーズ』は発見できず、もう視聴は無理かな…と諦めかけていましたが、数年前に某氏の厚意により入手することが出来ました。誠に恐縮ですが、この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。
さて作品についてですが、やはり呉思遠にハズレなし! 今回も濃厚な格闘アクションが何度も繰り広げられ、加えて主人公ふたりのキャラクターもしっかり立っていました。
兄弟が仲直りするまでのシークエンスが雑だったり、展開が強引なところも幾つかありますが、全体としては破綻もなく纏まっています。動員されたエキストラやロケーションの規模も半端ではなく、呉思遠の力の入れようが窺えます。
そして肝心のアクションシーンでは、梁小熊(トニー・リャン)の指導による派手な立ち回りが展開! ローレンのバネの良さ、キースの華麗な蹴りが十二分に生かされており、前半では駐車場での集団戦が印象に残りました。
また、単にハードなだけのアクションに拘らず、時には茶目っ気のあるファイトで息抜きを挟むこともあります(キース暗殺の顛末など)。やや作品のタッチから浮いている感がありますが、これも作品が深刻になりすぎないための措置なのでしょう。
注目はラストバトルで、ローレンとキースの前にテロの首謀者・リオンとその腹心が立ちはだかります。ここから始まる2VS2の目まぐるしい乱戦、足場を使った立体的な殺陣は、まさに本作最大のクライマックスといえます。
ラスボスを担当したリオンは中国拳法を駆使し、主役2人を圧倒する姿はまさに現代の白眉道人! 決着の付け方だけは不満ですが、実力派のアクションスターを相手に一歩も引かない暴れっぷりは、実に堂々たるものでした。
細かな粗はあるものの、最初から最後まで丁寧に作られている“香港資本の格闘映画”有数の傑作。ぜひともDVD化を望みたいですが…そういえば飛行機に乗せて放置されたモザンビークの大使って、あの後どうなったんでしょうか?(爆
原題:Blood Brothers/No Retreat, No Surrender 3: Blood Brothers/Karate Tiger 3
中文題:親兄弟
製作:1990年
▼独立プロダクションの雄として活躍し、陳星(チン・セイ)や成龍(ジャッキー・チェン)などのスターを育て上げてきた呉思遠(ン・シーユエン)は、80年代の半ばに新たな挑戦を始めました。
まだ香港映画界が成熟期の只中にあった頃、彼は海外市場への本格的な進出を決意。流行をたくみに取り入れ、そこにカンフー映画のテイストを織り交ぜた“香港資本の格闘映画”の製作に着手します。
『シンデレラ・ボーイ』では李小龍(ブルース・リー)を、『キング・オブ・キックボクサー』では功夫映画タッチの修行を盛り込み、『キング・オブ・キックボクサー/ファイナル』では少林寺を舞台にしました。
そんな中、本作では東洋的なビジュアルを完全に廃し、スケール感の大きなストーリーを設定。『レイジング・サンダー』のローレン・アヴェドンと、キックの世界王者であるキース・ヴィダリを主演に迎えたのです。
■空手道場の指導員であるローレンと、CIA捜査官のキースは不仲の兄弟。今日は元CIAエージェントの父(ジョセフ・キャンパネラ)の誕生会だったが、ここでも口論になってしまう。
だが、その日の晩にテロリストのリオン・ハンターが現れ、襲撃されたジョセフは非業の死を遂げた。ローレンたちは仇討ちを誓うが、両者が手を取りあうことは決して無かった。
まずキースはCIA本部から「この件から手を引け」と忠告されるが、父の遺した資料からリオンの足取りを掴んだ。この資料を見たローレンは兄を出し抜き、フロリダに飛ぶと密かにテロ組織へ潜入した。
遅れて到着したキースは、元恋人でテロリストの一員だったワンダ・アキューナの力を借り、テロ組織に近付こうとする。その動きを察知したリオンは、新入りのローレンに彼の暗殺を命じた。
この事態は兄弟の機転によって解決するが、意外な黒幕の登場によってローレンの正体が暴かれてしまった。芋づる式にキースも捕まり、2人は「空港に来るモザンビークの大使を襲撃しろ」と強要されてしまうことに…。
だが、この事件の裏にはアメリカ大統領暗殺と、さらなる陰謀が隠されていた。血を分けた兄弟=ブラッド・ブラザーズは、国家の危機を救えるのだろうか!?
▲実を言うと、本作は私が呉思遠プロデュースの格闘映画で唯一見ることの出来なかった作品でした。このタイトルを探して市外や隣県のレンタル店、ネットの通販やオークションサイト、果ては大阪・東京の中古ビデオ屋まで足を運んだものです。
ところが、必死の捜索にも関わらず『ブラッド・ブラザーズ』は発見できず、もう視聴は無理かな…と諦めかけていましたが、数年前に某氏の厚意により入手することが出来ました。誠に恐縮ですが、この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。
さて作品についてですが、やはり呉思遠にハズレなし! 今回も濃厚な格闘アクションが何度も繰り広げられ、加えて主人公ふたりのキャラクターもしっかり立っていました。
兄弟が仲直りするまでのシークエンスが雑だったり、展開が強引なところも幾つかありますが、全体としては破綻もなく纏まっています。動員されたエキストラやロケーションの規模も半端ではなく、呉思遠の力の入れようが窺えます。
そして肝心のアクションシーンでは、梁小熊(トニー・リャン)の指導による派手な立ち回りが展開! ローレンのバネの良さ、キースの華麗な蹴りが十二分に生かされており、前半では駐車場での集団戦が印象に残りました。
また、単にハードなだけのアクションに拘らず、時には茶目っ気のあるファイトで息抜きを挟むこともあります(キース暗殺の顛末など)。やや作品のタッチから浮いている感がありますが、これも作品が深刻になりすぎないための措置なのでしょう。
注目はラストバトルで、ローレンとキースの前にテロの首謀者・リオンとその腹心が立ちはだかります。ここから始まる2VS2の目まぐるしい乱戦、足場を使った立体的な殺陣は、まさに本作最大のクライマックスといえます。
ラスボスを担当したリオンは中国拳法を駆使し、主役2人を圧倒する姿はまさに現代の白眉道人! 決着の付け方だけは不満ですが、実力派のアクションスターを相手に一歩も引かない暴れっぷりは、実に堂々たるものでした。
細かな粗はあるものの、最初から最後まで丁寧に作られている“香港資本の格闘映画”有数の傑作。ぜひともDVD化を望みたいですが…そういえば飛行機に乗せて放置されたモザンビークの大使って、あの後どうなったんでしょうか?(爆