功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『ブルドッグ』

2010-04-30 22:43:22 | 倉田保昭
「ブルドッグ」
原題:ABOVE THE WAR
製作:1992年

●さて、今月は日本っぽい作品を中心に紹介してきましたが、そのラストとなる今回は和製ドラゴン・倉田保昭の主演作をお送りします。
この作品は、80年代から脈々と作られ続けてきたB級コマンドアクションものの1本で、倉田さんを筆頭にフィリピンのB級スターが大挙して出演している。豪華スター共演のオールスター作品と言えば聞こえは良いが、倉田さん以外は地味でショボくれた連中ばかり(爆)。私も初見の際はダサいと思ったものだが、紛れもなく彼らは一時代を築いたスターたちなのである。
 時は80年代下半期。不況なんて人事だった頃の日本では、ビデオショップに大量の映画が溢れかえっていた。世に言う「ビデオバブル」時代であるが、その到来と共にB級映画が大量に陸揚げされるという現象を招き、様々なブームが巻き起こった。未公開ホラー映画の横行、アクション映画の氾濫、そして当ブログで何度も語ってきたニンジャ映画ブーム等々…後先考えずに様々な映画が店頭へ並び、ファンは一喜一憂しつつも時代に酔いしれていた。
そんな中、コマンドアクションというジャンルも日本へと流れ込んできていた。中でもフィリピンなどの東南アジア地域で製作された安物映画は、まさしく十把一絡げの勢いで洋画のアクション映画コーナーを支配していった。『ブルドッグ』で倉田さんと共演した方々は、そのコマンドアクションで活躍していた大スターたちなのだ。
リチャード・ハリソンはヨーロッパから香港に流れ着き、フィルマークのニンジャ映画からフィリピンのシルバースター・フィルムへと漂着。以後はブルース・バロンらと共にニンジャ映画やコマンドアクションで活躍した。マイク・モンティも同じくシルバースター組の一員で、ロン・マルチーニやジム・ゲインズらと一緒にフィリピンを駆け抜けたうちの1人である。ロマノ・クリストフはニンジャ映画のスターとして(一部で)有名な人で、『Bruce's Fist of Vengeance』では呂小龍(ブルース・リ)とタイマン勝負を繰り広げている。
 …と、このような連中が一同に会し、日本から倉田保昭と『ファイナル・ファイト/最後の一撃』の小野進也を召集したのが本作である。ニンジャもどきを演じていたリチャードたちが、本場日本のニンジャスター・倉田と共演しているだけでも、本作には大きな意義があったといえるだろう。さて、作品についての評価だが、単刀直入に申し上げますと……………すっごくつまんないです(爆
ストーリーはベトナム軍にケンカを売った倉田さんたちが、お宝を巡って右往左往するというものなのだが、これが異常に面白くない。話のテンポもグダグダだし、銃撃戦やアクションシーンにも迫力が無いし、あまつさえ倉田さんのアクションもワンカットしかない(相手を1回蹴るだけ)。せっかくの豪華共演もこれでは無駄でしかなく、『烈火のヒーロー』以来となるトラウマを植えつけられた映画として、私としても忘れられない作品だったりします(涙

 なお、B級コマンドアクションは90年代を境に失速し、レンタルショップの主役をVシネマへと明け渡した。Vシネ全盛期の90年代初頭は、東南アジアでロケーションを行った作品が多く存在していたが、その中にロマノ・クリストフらフィリピン勢の勇姿が確認できる。時代に取り残されようとも、誰からも忘れ去られようとしていても、それでも彼らは必死になって踏ん張り続けたのだ。
だが現在はDVDの時代が到来し、レンタルショップにかつてのような熱気は無くなった。ビデオソフトも根こそぎ撤去され、アクション映画コーナーはB級以下のインディーズ作品に占領されている。
『サイボーグ2』のように、かつてのB級映画がDVD化されて生き残っている場合もあるが、コマンドアクションは全くと言っていいほど顧みられていない。今や、本作に出演した人々で生き残っているのは倉田さんだけになってしまったが、果たしてリチャード・ハリソンやマイク・モンティたちは、フィリピンの大地で戦った日々の事をどう思っているのだろうか?

『ブルース・リの復讐』

2010-04-26 22:29:37 | バッタもん李小龍
「ブルース・リの復讐」
原題:凶終/猛龍反撃
英題:Bruce Strikes Back/The Ninja Strikes Back/Eye of the Dragon
製作:1982年

●単刀直入に言おう、この作品は傑作である。映画作品としては三流レベルだが、あくまで呂小龍(ブルース・リ)の主演作として見るならトップクラスの物と断言しても良い。いつもならナルシズムしか無い呂小龍作品だが、それほどまでにバラエティに富んだ作品なのである。
かつてマフィアの一員だった呂小龍は、ムショから出所したのを契機に足を洗ったが、当のマフィアはそれを許そうとはしなかった。彼らは非情にも呂小龍の父親を殺し、その妹をも連れ去ってしまう。これに激怒した呂小龍は、組織の用心棒たちを相手に世界を駆け巡る!というのが本作のあらましである。いつもの呂小龍作品らしく、実に荒唐無稽かつ一人よがりなストーリーだが、映画そのものはそれほど悪くはない。
 まず驚かされるのが、作中でたびたび登場するローマの風景だ。粗製濫造がまかり通っているバッタもん作品にしては珍しく、実際にローマでロケーションが行われており、ラストでは本物のコロセウムまで登場する。しかも、無謀にもラストではコロセウムで実際にアクションシーンを撮影しており(もちろん無断撮影!)、まさにこれは香港映画史に残る暴挙と言っても過言ではないだろう(笑
この場面は、単なる偽物でしかなかった呂小龍が一瞬だけ本物を越えたシーンとして評価すべき所だが、思ったよりロケーションの効果は発揮されていない。なぜなら、照明などが完備されているセットで撮ったのと、薄暗い石組みの路地で撮ったのでは、どちらが視覚的に映えるものとなるかは一目瞭然。ちょっと惜しい気もするが、まぁ所詮バッタもんはバッタもんですからねぇ…(苦笑
 また、一方でキャスティングにも力が入ってるのが本作の特徴で、製作元のフィルマークも随分と奮発していた様子が伺える。組織の用心棒に黄正利(ウォン・チェン・リー)&楊斯(ボロ・ヤン)といったバッタもん映画の常連を配したかと思えば、『007』のハロルド坂田を起用して国際色を強調。香港パートでは呂小龍の協力者として[上下]薩伐(カサノヴァ・ウォン)と趙志凌(すぐ死ぬ)が顔を見せ、作品の底上げに貢献している。
フィルマークらしくニンジャやおっぱいがポコポコ登場するものの、功夫アクションも(呂小龍作品にしては)上出来だ。特にラストの呂小龍VS黄正利は出色モノで、過去に何度か戦ってきた両者としては今回のバトルがベストだったのではないだろうか?しかもこのシーンはゲリラ撮影だったので、スタッフ一同はコロセウムに長時間留まることは出来なかったはず。となれば、このバトルは文字通り一発撮りの大勝負だったことが考えられる(このへんのエピソードがマジで気になります)。
 豪華ゲストあり・ローマロケあり・ニンジャあり・オッパイありと、極めてサービス精神旺盛な呂小龍の最高傑作。バッタもん作品が気になる方は、是非とも本作から視聴してみる事をオススメ致します。…ただし、あくまで本作は「呂小龍作品として傑作」だという事を念頭に置いとかないと、後で泣きを見るかも知れません(爆

『アフロ忍者』

2010-04-23 22:18:59 | マーシャルアーツ映画:下
「アフロ忍者」
原題:AFRO NINJA
製作:2009年

●カンフー映画オタクのマーク・ヒックスは、勤め先の郵便局で奇妙な荷物を見つけた。その中にはヌンチャクが入っていたのだが、突然現れた強盗に狼狽したヒックスは、その場でバク宙をして自爆してしまう。このときの動画がネットに流出し、世界中の笑い物にされてしまうヒックス。ところが、ヒックスはヌンチャクのパワーでムキムキアフロになり、アフロ忍者として活躍していく事になっていくのだが…。

 この映画は、スタントマンのマーク・ヒックスによる自作自演ムービーである(本作が作られることになった顛末に関しては、有名なので割愛)。タイトルを見ると爆笑コメディのようなものを予想してしまうが、実際の作品は非常にヌルい。ワンアイディアで映画を作ろうとして、大失敗してしまったパターンの典型である。
事実、本作におけるドラマ部分はあまりにも薄っぺらい。ストーリーの根本となるエピソードも、ヌンチャクの正体を探る話&何かを企んでいるジェームズ・ブラックの話だけで、サブエピソードも何もないのだ。こんなスカスカな内容で1時間半の映画が作れるはずも無く、初監督だったヒックスの腕前も影響してか、笑うに笑えないコメディと化している。
 実は本作とよく似た内容の作品が存在している。主人公が忍者で、それでいてダメ人間で、そのダメ人間が成長していく過程を描いていて、更に忍者とカンフーを混同している点も全く同じな『ビバリーヒルズ忍者』がそれだ。
ただし、『ビバリーヒルズ忍者』のコメディ描写は視覚的なものが多く、物語もエンターティメントに徹していた。一方、本作の場合はエンタメにも何にもなりきれていない。これで格闘シーンがマシだったら多少は救われるのだが、ヒックスの力量は「まあまあ」レベル。武器の扱いは上手いようだが、敵にロクなのがいないので面白味に欠けている(ボス戦は短いし、用心棒との対決はすぐに和解するし…)。
特別ヒドい作品ではないのだが、素人監督に主導権を預けてしまったがために、完全な出オチ映画になってしまった残念な一作。この完成度ではジム・ケリーと西脇美智子のゲスト出演も焼け石に水。セカンド・ユニット監督にジェームズ・リューの名前が確認できるが、底抜けフェイク・ドキュメント『18 Fingers of Death』を撮った前科があるので、火に油を注いだだけにしか思えません(爆

【Gメン82in香港カラテ③】『香港の女必殺拳』

2010-04-20 23:32:47 | Gメン75&82・香港カラテシリーズ
「香港の女必殺拳」
製作:1982年

▼最初の『燃えよ!香港少林寺』『吼えろ!香港少林寺』で大失敗し、続く『赤いサソリVS香港少林寺』で持ち直したかに見えた『Gメン82』の香港カラテシリーズであるが、今回は一気に急降下していました(爆
時期的にも打ち切りが目前に迫っていたので、そのへんの事情も影響しているものかと思われるのだが…っていうか、これがシリーズ最後の香港ロケなのか……なんか非常にやりきれない気分にさせてくれますが、まずは粗筋を。

■今回はヘロイン密輸に絡んだ物語で、タイのバンコックから香港へと売られる麻薬を追って、Gメンの江波杏子が香港入りするところから始まる。
江波は運び屋の女・吉岡ひとみを尾行し、その流通ルートを探った上で摘発しようとしていたのだが、謎の刺客に襲撃を受けて目を負傷。失明の危機に陥ってしまう(この人、香港に来るたびに災難に遭ってばっかりだなぁ)。捜査は同行していた三浦浩一が引き継ごうとするが、江波は絶対に麻薬シンジケートを摘発しようと決意していた。
ヘロインは人形の中に詰め込まれて密輸されており、吉岡はそれをタイから元締めの小林稔侍の元へ運んでいる。そこで三浦は人形をすり替えることに成功し、これをエサに敵と取り引きしようと考えていた。一方、作戦のとばっちりを喰らった吉岡は小林の逆鱗に触れ、用心棒・阿藤快によって殺されてしまう。
 三浦は、麻薬を片手に仲介人の石橋雅史(!)の元へ接触したが、彼らの前にあの三妹(サン・ムイ)が姿を見せる。しかし彼女は江波に襲い掛かり、麻薬の入った人形を奪い去ってしまった。奇妙な行動を見せる三妹に疑問を抱く三浦たち…だが、その背後に阿藤が迫っていた。実は、三浦が石橋に見せたヘロインは純度が高く、バンコックでしか作れないという特徴があった(要するに奪ったヘロインを持っていたのがバレた)のだ。阿藤に捕まった三浦は、ボコボコにされた挙句に東シナ海へと放り込まれてしまう。
窮地に立たされた三浦だが、そんな彼を助けたのは三妹であった。三妹は「私は麻薬シンジケートに兄を殺された。人形を奪ったのは貴方たちを助けるためだった」と告げ、シンジケートの一掃を誓って手を取り合った。
 そのころ、病院にいた江波のもとに石橋と阿藤が現れ、麻薬を取り返そうと血眼になって襲いかかってきた。倉庫へと逃げ込んだ江波と三浦は、追ってきた阿藤を高圧電流の機械に叩き込んで撃破!江波の目も回復してホッとしたのも束の間、今度は小林稔侍がやって来た!
三妹は三浦と協力してこれを叩きのめしたが、最後に江波を襲撃した刺客が現れた。江波の機転で反撃に転じたが、そこで意外な刺客の正体が判明する!

▲…と、話はこんな感じである。麻薬がらみの話になってしまうのは、原点回帰だと考えれば悪くは無い。香港側のゲストが2人しかいないのも、末期だから仕方が無いとする。敵のボスと用心棒が功夫のできない日本人であるのも仕方ない……訳が無いよ!(泣
本作は、ストーリーこそコレといって普通の話だが、あらゆる面でのミスキャストっぷりが際立っている。まず小林稔侍がボスで阿藤海がカラテ使いの殺し屋という時点で間違っている。『燃えよ!香港少林寺』のストロング金剛にも随分と参ったが、彼の場合はアクションを演じられるのでギリギリ許せた。だが、小林と阿藤は功夫アクションが全く出来ない普通の俳優さんだ。せっかく香港でロケまでしておいて、メインの悪役が動けない日本人では全く意味が無いではないか!
 一応、石橋雅史や竜咲隼人といった動ける人員も出演しているが、彼らに関する扱いも極端に悪い。
石橋はクライマックスで三妹と対戦するのだが、阿藤に「三浦たちを追え」と促したシーンを最後に姿を消してしまうのだ(このあとカメラは阿藤ばかりを映し続け、ようやく阿藤の出番が終わったと思ったら、何事も無かったかのように三妹が登場している)。石橋にとっては2度目の香港勢との対戦であり、それまで良いファイトを展開していただけに、結末どころか退場する描写すら見せずに終りというのは、いくらなんでも酷すぎる。
竜咲に至っては、石橋のジムでトレーニングしているだけのエキストラ同然な扱いで、当然アクションは見せていない。そして、三妹と並んでゲスト出演している陳惠敏(チャーリー・チャン)だが、ラストバトルを除くと見せ場は一切無し!まぁ、役柄が役柄だけにしょうがない部分があるかもしれませんが…。
しかし、「動ける奴を放置して動けない奴を動かす」というヘマを、よりによって香港カラテシリーズの最終回にやらかしてしまった罪は限りなく重い。番組の打ち切りが決まって、監督がメガホンを東シナ海に放り投げたのかと思ってしまうような、そんな出来のエピソードである。それにしても、何度も言うけどこれがシリーズの最後だなんて…そりゃ番組も打ち切りになりますよね(号泣

 ところでタイトルに「女必殺拳」とあるが、三妹の兄が潜入捜査の末に死亡したという設定や、麻薬シンジケートの密輸方法がヘンテコだったり、石橋雅史が出演していたりと、内容もなんとなく『女必殺拳』を連想させる内容になっている。これは製作に東映が加わっていた影響か?

【Gメン82in香港カラテ②】『赤いサソリVS香港少林寺』

2010-04-17 23:35:34 | Gメン75&82・香港カラテシリーズ
「赤いサソリVS香港少林寺」
製作:1982年

▼波乱の船出となった『Gメン82』の香港カラテシリーズだが、通算3回目となる今回は一風変わった内容になっている。タイトルにあるとおり『少林寺』を意識した内容で、香港側のキャストの一部が丸坊主にされているのだ。
メインとなるゲストは名悪役の高飛(コー・フェイ)で、楊斯(ヤン・スェ)に次ぐ香港ロケの顔役・江島(チャン・タオ)も復活。そのほかには唐天希と竜咲隼人が前回の『吼えよ!香港少林寺』から引き続き登場している。注目すべきは高飛の動きで、前回の陳觀泰(チェン・カンタイ)は色々と難のあるキャスティングだったのに比べ、今回はキレキレの功夫アクションを披露してます。

■とある組織の内部抗争によって、一人の男が香港警察に留置された。逮捕された男・高飛は秘密結社・赤いサソリの一員であり、Gメンの清水健太郎は赤いサソリの実体解明&誘拐された妹を救出するため、彼に接触を試みるのだった。
高飛と同じ牢屋に送り込まれた清水は、脱獄しないかと高飛を誘いにかけ、外におびき出すと手錠で互いの手を繋いだ。もちろん高飛は激しく抵抗したのだが、清水の目的が妹の救出だと知り、自らの身の上を語りだした。高飛は妹と共にベトナムから疎開してきた中国人で、生きるために赤いサソリの仲間になったのだが、組織が人身売買を始めると聞いて反抗したというのだ。
その際、高飛の妹は組織に捕らわれてしまったため、彼は組織に刃向かったのである。それぞれの事情を明かした清水と高飛は、手錠を捨てて組織の壊滅を誓い合った。
 妹たちを助けるため、2人はまず赤いサソリのボス・江島(表向きは慈善家の大富豪)の娘を捕まえ、彼女と引き換えに妹たちを助けようとしていた。だが、高飛の不在時に竜咲隼人らが現れ、江島の娘もろともアジト(ロケ地はいつものタイガー・パーム・ガーデン)に連れ去られてしまう。一方、江島の娘は清水たちから真実を聞かされており、父親である江島に疑問を持ちつつあった。
そして、時を同じくしてGメンの三浦浩一と合流した高飛は、清水たちを救い出すためにアジトへと潜り込んだ。だが、高飛も捕らわれの身になってしまい…と、そこへ江島の娘が現れた。江島の娘は清水と高飛を助け出し、妹たちの居場所を2人に告げた。清水は地下牢へ向かうと、自分の妹と高飛の妹を救出!高飛は竜咲や唐天希たちを叩きのめすと、最後に残った江島に立ち向かうのだった。

▲これまで、香港カラテシリーズは人質交換と麻薬のみで話を進めてきたが、『Gメン75』の終盤あたりから次第に新たな物語を模索していくようになる。
前回の『燃えよ!香港少林寺』前後編は宝石の争奪戦を主軸とした話で、今回は刑事ドラマによくある「手錠のままの脱獄」的なストーリーを辿っている。無論、それだけでは日本でもやれる内容なのだが、高飛に難民の悲哀を語らせることで香港ロケの必要性を強調し、一応の体裁を整えている。
清水と高飛の友情も爽やかだし、一筋縄ではいかない敵の描写もなかなかのもの。ただ、欲を言えば江島の娘の顛末をもっと細かく描いて欲しかったし、最後に高飛とその妹が再会するシーンも入れて欲しかったところである(正直、「敵を倒して終り」というB級カンフー映画みたいなラストを『Gメン』でやってもらいたくなかったです)。
 功夫アクションはさすがに面白く、オープニングから高飛によるハイスピードなバトルが炸裂!なかなかレアな高飛VS竜咲隼人という対戦や、前回は陳觀泰とリズムが合わなかった唐天希との接戦、そして最後の高飛VS江島に至るまで、燃えるファイトに仕上がっていました。
そして、清水のアクションも前回からボリュームアップしているのが特筆で、今回は高飛と立ち会ったり、手錠に繋がれたまま敵と闘うなど、おいしい見せ場が幾つも登場している。上記の高飛との友情なども含めて、なかなかの好印象を残しています。

【Gメン82in香港カラテ①】『燃えよ!香港少林寺』&『吼えろ!香港少林寺』

2010-04-14 22:21:10 | Gメン75&82・香港カラテシリーズ
「燃えよ!香港少林寺」
「吼えろ!香港少林寺」
製作:1982年

▼去年は『Gメン75』の香港ロケ編を特集で紹介しましたが、まだまだGメンの香港カラテシリーズは数が尽きません。そんなわけで(?)、今回は『Gメン82』の香港編を3回に渡ってレビューしていきたいと思います。

 長年親しまれてきた人気刑事ドラマ『Gメン75』だが、その物語も一応の区切りをつける時がやって来た。そして『75』終了から程なくして、『Gメン82』はブラウン管へと帰って来た。
新規参入のニューフェイス、重厚なストーリーなどは前作から変わらなかったが、対抗馬として『西部警察PART2』が存在した事で、Gメンたちは苦境に立たされてしまう。野性味溢れるアクションと派手なスタントシーンで一世を風靡した『西部警察』…ハードボイルド路線を貫いていた『Gメン』にとって、どんな犯罪組織よりも手強い強敵の出現であった。
『Gメン82』は様々な試みに挑むことで対抗していたが、人気が延びずに17話で終了してしまう。その1クールちょっとの中に、香港カラテシリーズは4本も製作されている。
いわゆる「テコ入れ」というやつだが、それまで『Gメン75』が得意としてきた李小龍(ブルース・リー)的なアクションは、1982年の時点では完全に時代遅れとなっていた。当時はジャッキーがコミックカンフー路線で活躍し、李連杰(リー・リンチェイ)が本場の功夫で登場していた時期にあたる。そこで『Gメン82』でも、タイトルに少林寺の名を冠することで流れに乗ろうと画策していたようだが…。

■日本で500万ドルの宝石を強奪した堀田真三&中田譲治ら兄弟(なんて濃い兄弟だ・笑)は、宝石鑑定士を殺して香港へ逃走。Gメンの篠田三郎・清水健太郎・三浦浩一の3人は、強盗殺人犯の兄弟を追って香港へと渡った。
今回はフレンドリーな香港警察&陳觀泰(チェン・カンタイ)の協力を得て、Gメンはあっさりと中田の逮捕に成功する。しかし、堀田が香港シンジケートに「中田を助けてくれ」と依頼したことから、事態はGメンとの全面抗争に発展してしまう。香港シンジケートのボス・陳惠敏(チャーリー・チャン)の元には、ストロング金剛、楊斯(ヤン・スェ)、竜咲隼人らカラテ使いの殺し屋たちがいた。まず陳惠敏は中田を奪い返すために、なんと警察署を真正面から襲撃!これによって陳觀泰の兄が人質にされてしまった…って展開が無茶すぎるぞ!(笑
 立てこもったストロング金剛らは、中田の釈放を要求。篠田たちは無視を決め込むが、結局は釈放を許してしまう。なんとか陳觀泰の兄は救出されたが、代わりに人質となった清水が窮地に立たされてしまった。しかし、そこに謎の女ドラゴン・三妹(誰?)が救援に現れ、陳觀泰もまんまと楊斯から宝石を奪い返した。
そして、三妹が陳觀泰の兄弟弟子であり、日本で殺された宝石鑑定士の娘であり、被害者かと思われた宝石商が香港シンジケートの仲間だったことが判明する。陳觀泰の兄は宝石商を始末するが、堀田と中田の手によって殺されてしまう。怒りに燃える陳觀泰は、三妹やGメンたちと共に敵地へ乗り込むと、カラテ使いたちを一網打尽にするのだった。

 …だが、これで引き下がる香港シンジケートではない。顔に泥を塗られた陳惠敏は、Gメンから500万ドルの宝石を奪い返そうと動き出していた。今回は逮捕されたカラテ使いたちに代わって、新たに唐天希(タン・テンシー…『小覇王』のハゲヤクザ)が参戦。香港へ立ち寄った警視庁副総監の娘を誘拐し、奪い返された宝石とカラテ使いたちの解放を目論んだのだ。
その後、楊斯とストロング金剛は牢獄から解き放たれ、宝石もGメンの江波杏子が受け渡しに向かうこととなった。ところが、身代金の宝石は突然現れた陳觀泰によって奪われてしまう。この陳觀泰、自分の境遇に絶望して自暴自棄になっていたようで、三妹はそんな陳觀泰を叱咤する。宝石は三妹が取り返してくれたので事なきを得たが、実はこの事件には内通者がいたのだ。その内通者というのが、誰であろう香港警察の本部長その人であった。
事が露見し、Gメンや副総監の説得で改心した本部長だったが、その直後に香港シンジケートの刃に貫かれてしまう。陳觀泰が現場に復帰し、香港シンジケートから取り引きの最後通告が言い渡される中、Gメンと香港シンジケートの最終決戦の幕が切って落とされた。ストロング金剛・唐天希を一蹴し、陳觀泰VS陳惠敏&三妹VS楊斯の死闘が始まる!

▲色々と疑問の尽きない作品だが、あえて言わせてもらいたい…どうしてこうなった!?(涙
まず最初にストーリー面の評価をしたいが、今回のGメンはあまりにも役立たずだ。これまでの香港カラテシリーズでもないがしろにされることの多かったGメンだが、この前後編での扱いは特に酷い。『燃えよ!香港少林寺』では、香港の警察署に襲撃を受けた際に人質の命をスルーし(銃で撃たれて死にそうになっている警官もいるのに)、なすすべ無く犯人を返還。もし三妹が助けに入らなければ、人質になった清水も死んでいた可能性が非常に高い。
『吼えろ!香港少林寺』では更に悪化していて、いとも簡単に副総監の娘を奪われる江波から始まって、三浦と清水が尾行に失敗し、陳觀泰にあっさり宝石を横取りされ、最終決戦には江波を除いて誰も参加しない(!)など、その醜態は目を覆うばかりだ。香港警察の本部長は「彼ら(Gメン)に一体何ができる?」「なぜ人質を助けない?」と発言していたが、まったくもってその通りだ。
 そんな役立たずのGメンに代わって、本筋を引っ張るのが陳觀泰と三妹なのだが、こちらもまた魅力に乏しい。
陳觀泰は身を持ち崩してギャンブル漬けになっているというキャラで、自分の殻にこもっているという点では『Gメン75』に登場した梁小龍(ブルース・リャン)に近いと言えなくもない。だが、よく解らない目的で宝石を奪ったり、途中で三妹に負けてしまったりするなど、完全にダメ中年にしか見えない。三妹もそんなに可愛くないし、いくらなんでもこれはなぁ…。
香港警察の本部長が裏切り者だったという展開や、陳觀泰の兄が家族のことを語った次の場面で殺されるあたりも強引だし、全体的にぼやけた作りになっているのは本当に残念だ。こんなテコ入れじゃ、人気が出なかった理由が何となく分かる気がする。

 功夫アクションはそこそこ頑張っているが、一番のネックは陳觀泰の存在だ。今までの香港カラテシリーズでは、旬の過ぎたスターが出ることもあったが、それなりの技量を見せてクオリティを保っていた。しかし、この作品の陳觀泰は腹が出ていて、技のキレも全盛期と比べて格段に劣っている。同期のスターである陳惠敏と比較すれば一目瞭然で、これでは盛り上がるものも盛り上がれない。
また、楊斯がメインの悪役になっていないことも問題ではないだろうか。『Gメン82』には初登場となる楊斯だが、唐天希やストロング金剛などと同格の扱われ方をしていて、ラストバトルでは陳觀泰に相手をさせてもらうことすら許されていない。楊斯にとって、この前後編は『Gメン82』に出演した唯一のエピソードだっただけに、この仕打ちは不可解だ。
あんまり動けていないストロング金剛の存在意義、出番が少なすぎる陳惠敏など、問題を挙げていけばキリが無いが、『Gメン』の香港カラテシリーズってこんなに質が低かったっけ?最初の香港ロケがこんな出来じゃ、先が思いやられるというか何というか…(爆

『ワル 正伝』

2010-04-11 22:57:48 | 日本映画とVシネマ
「ワル 正伝」
製作:1996年

▼さて、今回は当ブログでもお馴染みとなった、真樹日佐夫原作の『ワル』系列を再び追っていきたいと思います(詳細については『ワル外伝』『新書ワル』の項を参照のこと)。
Vシネにおける最初の『ワル』実写化作品だった『新書ワル』シリーズは、実に5本も続くロングランを記録しました。同時期に『ボディガード牙』『六本木ソルジャー』等も実写化され、この流れに乗って『新書ワル』の続編たる『ワル 正伝』の実写化も実現していきます。
しかし、残念ながら本作はたった1本で終わってしまいました。この短命の原因は不明ですが、本作は決しては悪いものではありません。氷室洋二に扮した清水宏次朗もなかなかハマっているし、共演の安岡力也も渋い役柄を好演しています。正直、たった1本で終わらせてしまうには惜しいと思わざるを得ない作品なのです。

■色々あって西多摩刑務所に収監されていた清水は、そこで謎の大男・力也と知り合った。出所後、清水は力也から熱烈なラブコールを受け、彼が始めようとしている大仕事への協力を承諾する。彼は地平同というグループを率いている猛者で、清水の力を借りて「世直しの悪人退治」を計画していたのだ。
この話に乗った清水は、手始めに香港マフィアの仲介人を仕留めるよう依頼されるが、その周囲には11人の護衛が控えていた。清水は護衛たちと次々闘っていくが、最後の1人の正体が解らない。力也の配下・遠藤憲一いろんな意味で滅茶苦茶なキャラ・笑)が刺客をいぶり出そうとするも、その正体は解らずじまいであった。
 一方、新たな活動拠点を得た清水は、そこで踊り子の杉浦美雪と出会った。彼女と奇妙な関係を育みつつ、不良グループを舎弟にしたりと相変わらずの行動を見せていく清水。しかし、警視庁の刑事・真樹日佐夫(『ワル外伝』の彼とは別人)が虎視眈々と彼の逮捕を計画していた。
そんな中、敵は兵隊を大勢雇い入れて決戦を挑んできた。たった1人で立ち向かった清水は、力也と遠藤の協力によって一網打尽に成功する。だが、最後に清水の前へ11人目の刺客・豊嶋稔(『拳鬼』にも出演)が現れた!

▲本作における氷室洋二は、『新書ワル』や『ワル外伝』のときよりも人間味のあるキャラクターとして描かれています。基本的に冷酷な人物である事に変わりはなぢですが、序盤では同居人・原久美子を抱き寄せたり、杉浦を自発的に助けたり(これまでの作品ならウラがありそうな展開だが、本作を見る限りでは普通の人助け)しています。
そもそも、力也から依頼された仕事も悪事というわけではないし、今回の氷室は「きれいな氷室」と言ってもいいのかもしれません(もしかしたら原作読者なら違う意見になるかも)。
 また、ストーリーは氷室が面倒事に首を突っ込むといういつものパターンですが、話のまとまり方に関しては前二作よりも簡潔になっていました(監督が『新書ワル』の第1作と同じ佐々木正人なのは、シリーズ化を視野に入れていた名残…だったりするのかな?)。
ただし、先述のとおり主人公が「きれいな氷室」であるため、いつものギラついた殺気は抑えられています。ここは好みが分かれるところですが、私としてはこういう氷室洋二も十分アリですね。

 そして重要な格闘アクションですが、やはり清水宏次朗は一味違いました!どことなく浮ついた感じの本宮泰風、わりと動けるというレベルだった白竜(彼は『狂犬』で清水と「ワル」対決を行っています)らよりも断然動けていて、見事な格闘シーンを演じています。
しかも今回は相手が香港マフィアということで、敵に動ける功夫使いが多数登場しているのがポイント。殺陣の呼吸が若干あっていないような気がするものの、立ち回りの派手さは清水の主演作史上トップクラスのものに仕上がっていました。
 そして本作には李連杰(ジェット・リー)と同じ武術学校で拳法を学び、様々な大会で武術チャンプとして活躍した王建軍が出演しています。クライマックスで三節棍を持って出てくるのが彼なんですが、他の刺客たちと明らかに違う動きを見せており、いっそのこと王建軍がラスボスでも良かったのでは?とさえ思ってしまいました(笑
とはいえ、そのラスボスを担当する豊嶋稔もかなりの猛者で、実際にテコンドー&少林寺拳法の有段者という本物の実力者。ラストバトルでは清水に力強い蹴りを連発で放ち、なかなかの迫力を感じさせています。
 なお、原作ではこのあと宗教団体や殺し屋たちとのバトルに突入し、舞台は台湾へと移動。力也が殺され、激闘の果てに氷室は海中に没する…という話が展開されるんですが、このあたりのエピソードが製作されなかったのは実に残念です。
これらのシーンは、のちに哀川翔の『悪 WARU』で映像化にこぎつけたそうですが、できれば清水宏次朗主演で見てみたかったです(涙

『必殺!バトルロード 妖剣女刺客』

2010-04-05 23:23:15 | 日本映画とVシネマ
「必殺!バトルロード 妖剣女刺客」
製作:2005年

▼去る2月中旬、多くのドラマで名を馳せた名優・藤田まことがこの世を去りました。彼の代表作といえば『はぐれ刑事 純情派』『剣客商売』などが挙げられますが、中でも一番有名なのは『必殺仕事人』を始めたとした『必殺』シリーズで間違いありません。
当ブログでも『必殺4 恨みはらします』を紹介した事がありますが、同シリーズは様々な方面へ影響を及ぼし、現在に至るもフォロワーを生み続けています。本作はその『必殺』を彷彿とさせる痛快アクション映画(一部サイトでは時代劇にカテゴライズされているが、これは誤り)なのです。

中島史恵・秋本つばさ・船木誠勝の3人は、ヤクザの大親分からカタギとなった中条きよし三味線屋勇次!)の元で、悪人を始末する裏家業を営んでいた。
今日も老人から大金をむしり取った詐欺グループを始末していたが、その背後で不穏な動きが起きつつあった。詐欺グループの親玉であるヤクザの親分・堀田真三が上海から偽装職人を拉致し、偽札作りで巨万の富を得ようとしていたのだ。
悪徳政治家と結託して至福を肥やし、差し押さえた印刷所の主人を殺害し、更にその娘を略奪するなど、堀田らの愚行は次第にエスカレートしていく。偽造職人の奪還を命じられて上海から来た刑事・岸本祐二は、堀田に接近する過程で中条たちと接触。彼らと共に、共通の敵である堀田たちに闘いを挑んでいくのだった…。

▲…と、このように本作は「悪人を仕事人がぶった切るだけ」の話であり、単純明快なストーリーが展開されます。やっていることは『必殺』の1エピソードにありそうな内容で、それだけにとても安心して楽しめました。これでエロ要素さえ無ければ良かったんだけどなぁ…(R指定の作品だけあって濃い濡れ場が2回もあります・苦笑)。
 アクションに関してはそれぞれの個性を重視したものになっていて、主人公の中島は逆手に持った日本刀で、秋本はカポエラ系の足技がメイン。格闘アクション担当の船木が拳を振るえば、功夫使いの岸本がそれに続き、中条もクライマックスで貫録十分の立ち回りを見せています。
特に岸本の動きは抜群で、中盤でカジノを舞台にした集団戦で見事な功夫アクションを披露!ラストの乱戦では拳銃を持たされ、素手のバトルを船木に譲る形となりますが、その動作は強い印象を残していました。
 取り立てて凄い作品でない事は確かだし、エロ描写や残酷描写が爽快感を阻害していることも否めません。ですが、格闘アクションもストーリーもテンポが良く、下手に着飾らずに『必殺』を意識したストレートな物語に仕上げた点は大いに評価できると言えます。
ちなみに本作には続編があり、これには松田優なども参加しているそうなので、是非とも視聴してみたいですね(岸本VS松田や、船木VS松田があったりするのかな?)。

更新履歴(2010/3月)

2010-04-01 23:23:33 | Weblog
 今日からいよいよ新年度ということで、色々と慌ただしい龍争こ門です(挨拶)
3月は久し振りに、「功夫電影専科」らしいバラエティに富んだレビューをお送りする事が出来ましたが、今月はちょっと違う趣向を懲らそうと考えています。以前にもチラッと触れましたが、4月は「日本格闘映画月間」と銘打ちまして(※特集ではありません)、邦画作品や日本が関連した作品を紹介していくつもりです。
今のところ、高木淳也の○○や香港カラテ編の最終章、倉田保昭の某作品などをピックアップする予定です。もちろんそれに関連した香港映画やマーシャルアーツ映画などもレビューしていくので、今年度もより「功夫電影専科」らしい更新を続けていきたいと思っています!

03/02 更新履歴(2010/2月)
03/05 『天空伝説/ハンサム・シビリング』
03/08 『抜け忍』
03/12 『少林寺破戒大師伝説』
03/16 『Devon's Ghost: Legend of the Bloody Boy』
03/20 『南北酔拳』
03/24 『侠客シラソニ』
03/28 『激突!合気道』