「香港の女必殺拳」
製作:1982年
▼最初の『燃えよ!香港少林寺』『吼えろ!香港少林寺』で大失敗し、続く『赤いサソリVS香港少林寺』で持ち直したかに見えた『Gメン82』の香港カラテシリーズであるが、今回は一気に急降下していました(爆
時期的にも打ち切りが目前に迫っていたので、そのへんの事情も影響しているものかと思われるのだが…っていうか、これがシリーズ最後の香港ロケなのか……なんか非常にやりきれない気分にさせてくれますが、まずは粗筋を。
■今回はヘロイン密輸に絡んだ物語で、タイのバンコックから香港へと売られる麻薬を追って、Gメンの江波杏子が香港入りするところから始まる。
江波は運び屋の女・吉岡ひとみを尾行し、その流通ルートを探った上で摘発しようとしていたのだが、謎の刺客に襲撃を受けて目を負傷。失明の危機に陥ってしまう(この人、香港に来るたびに災難に遭ってばっかりだなぁ)。捜査は同行していた三浦浩一が引き継ごうとするが、江波は絶対に麻薬シンジケートを摘発しようと決意していた。
ヘロインは人形の中に詰め込まれて密輸されており、吉岡はそれをタイから元締めの小林稔侍の元へ運んでいる。そこで三浦は人形をすり替えることに成功し、これをエサに敵と取り引きしようと考えていた。一方、作戦のとばっちりを喰らった吉岡は小林の逆鱗に触れ、用心棒・阿藤快によって殺されてしまう。
三浦は、麻薬を片手に仲介人の石橋雅史(!)の元へ接触したが、彼らの前にあの三妹(サン・ムイ)が姿を見せる。しかし彼女は江波に襲い掛かり、麻薬の入った人形を奪い去ってしまった。奇妙な行動を見せる三妹に疑問を抱く三浦たち…だが、その背後に阿藤が迫っていた。実は、三浦が石橋に見せたヘロインは純度が高く、バンコックでしか作れないという特徴があった(要するに奪ったヘロインを持っていたのがバレた)のだ。阿藤に捕まった三浦は、ボコボコにされた挙句に東シナ海へと放り込まれてしまう。
窮地に立たされた三浦だが、そんな彼を助けたのは三妹であった。三妹は「私は麻薬シンジケートに兄を殺された。人形を奪ったのは貴方たちを助けるためだった」と告げ、シンジケートの一掃を誓って手を取り合った。
そのころ、病院にいた江波のもとに石橋と阿藤が現れ、麻薬を取り返そうと血眼になって襲いかかってきた。倉庫へと逃げ込んだ江波と三浦は、追ってきた阿藤を高圧電流の機械に叩き込んで撃破!江波の目も回復してホッとしたのも束の間、今度は小林稔侍がやって来た!
三妹は三浦と協力してこれを叩きのめしたが、最後に江波を襲撃した刺客が現れた。江波の機転で反撃に転じたが、そこで意外な刺客の正体が判明する!
▲…と、話はこんな感じである。麻薬がらみの話になってしまうのは、原点回帰だと考えれば悪くは無い。香港側のゲストが2人しかいないのも、末期だから仕方が無いとする。敵のボスと用心棒が功夫のできない日本人であるのも仕方ない……訳が無いよ!(泣
本作は、ストーリーこそコレといって普通の話だが、あらゆる面でのミスキャストっぷりが際立っている。まず小林稔侍がボスで阿藤海がカラテ使いの殺し屋という時点で間違っている。『燃えよ!香港少林寺』のストロング金剛にも随分と参ったが、彼の場合はアクションを演じられるのでギリギリ許せた。だが、小林と阿藤は功夫アクションが全く出来ない普通の俳優さんだ。せっかく香港でロケまでしておいて、メインの悪役が動けない日本人では全く意味が無いではないか!
一応、石橋雅史や竜咲隼人といった動ける人員も出演しているが、彼らに関する扱いも極端に悪い。
石橋はクライマックスで三妹と対戦するのだが、阿藤に「三浦たちを追え」と促したシーンを最後に姿を消してしまうのだ(このあとカメラは阿藤ばかりを映し続け、ようやく阿藤の出番が終わったと思ったら、何事も無かったかのように三妹が登場している)。石橋にとっては2度目の香港勢との対戦であり、それまで良いファイトを展開していただけに、結末どころか退場する描写すら見せずに終りというのは、いくらなんでも酷すぎる。
竜咲に至っては、石橋のジムでトレーニングしているだけのエキストラ同然な扱いで、当然アクションは見せていない。そして、三妹と並んでゲスト出演している陳惠敏(チャーリー・チャン)だが、ラストバトルを除くと見せ場は一切無し!まぁ、役柄が役柄だけにしょうがない部分があるかもしれませんが…。
しかし、「動ける奴を放置して動けない奴を動かす」というヘマを、よりによって香港カラテシリーズの最終回にやらかしてしまった罪は限りなく重い。番組の打ち切りが決まって、監督がメガホンを東シナ海に放り投げたのかと思ってしまうような、そんな出来のエピソードである。それにしても、何度も言うけどこれがシリーズの最後だなんて…そりゃ番組も打ち切りになりますよね(号泣
ところでタイトルに「女必殺拳」とあるが、三妹の兄が潜入捜査の末に死亡したという設定や、麻薬シンジケートの密輸方法がヘンテコだったり、石橋雅史が出演していたりと、内容もなんとなく『女必殺拳』を連想させる内容になっている。これは製作に東映が加わっていた影響か?
製作:1982年
▼最初の『燃えよ!香港少林寺』『吼えろ!香港少林寺』で大失敗し、続く『赤いサソリVS香港少林寺』で持ち直したかに見えた『Gメン82』の香港カラテシリーズであるが、今回は一気に急降下していました(爆
時期的にも打ち切りが目前に迫っていたので、そのへんの事情も影響しているものかと思われるのだが…っていうか、これがシリーズ最後の香港ロケなのか……なんか非常にやりきれない気分にさせてくれますが、まずは粗筋を。
■今回はヘロイン密輸に絡んだ物語で、タイのバンコックから香港へと売られる麻薬を追って、Gメンの江波杏子が香港入りするところから始まる。
江波は運び屋の女・吉岡ひとみを尾行し、その流通ルートを探った上で摘発しようとしていたのだが、謎の刺客に襲撃を受けて目を負傷。失明の危機に陥ってしまう(この人、香港に来るたびに災難に遭ってばっかりだなぁ)。捜査は同行していた三浦浩一が引き継ごうとするが、江波は絶対に麻薬シンジケートを摘発しようと決意していた。
ヘロインは人形の中に詰め込まれて密輸されており、吉岡はそれをタイから元締めの小林稔侍の元へ運んでいる。そこで三浦は人形をすり替えることに成功し、これをエサに敵と取り引きしようと考えていた。一方、作戦のとばっちりを喰らった吉岡は小林の逆鱗に触れ、用心棒・阿藤快によって殺されてしまう。
三浦は、麻薬を片手に仲介人の石橋雅史(!)の元へ接触したが、彼らの前にあの三妹(サン・ムイ)が姿を見せる。しかし彼女は江波に襲い掛かり、麻薬の入った人形を奪い去ってしまった。奇妙な行動を見せる三妹に疑問を抱く三浦たち…だが、その背後に阿藤が迫っていた。実は、三浦が石橋に見せたヘロインは純度が高く、バンコックでしか作れないという特徴があった(要するに奪ったヘロインを持っていたのがバレた)のだ。阿藤に捕まった三浦は、ボコボコにされた挙句に東シナ海へと放り込まれてしまう。
窮地に立たされた三浦だが、そんな彼を助けたのは三妹であった。三妹は「私は麻薬シンジケートに兄を殺された。人形を奪ったのは貴方たちを助けるためだった」と告げ、シンジケートの一掃を誓って手を取り合った。
そのころ、病院にいた江波のもとに石橋と阿藤が現れ、麻薬を取り返そうと血眼になって襲いかかってきた。倉庫へと逃げ込んだ江波と三浦は、追ってきた阿藤を高圧電流の機械に叩き込んで撃破!江波の目も回復してホッとしたのも束の間、今度は小林稔侍がやって来た!
三妹は三浦と協力してこれを叩きのめしたが、最後に江波を襲撃した刺客が現れた。江波の機転で反撃に転じたが、そこで意外な刺客の正体が判明する!
▲…と、話はこんな感じである。麻薬がらみの話になってしまうのは、原点回帰だと考えれば悪くは無い。香港側のゲストが2人しかいないのも、末期だから仕方が無いとする。敵のボスと用心棒が功夫のできない日本人であるのも仕方ない……訳が無いよ!(泣
本作は、ストーリーこそコレといって普通の話だが、あらゆる面でのミスキャストっぷりが際立っている。まず小林稔侍がボスで阿藤海がカラテ使いの殺し屋という時点で間違っている。『燃えよ!香港少林寺』のストロング金剛にも随分と参ったが、彼の場合はアクションを演じられるのでギリギリ許せた。だが、小林と阿藤は功夫アクションが全く出来ない普通の俳優さんだ。せっかく香港でロケまでしておいて、メインの悪役が動けない日本人では全く意味が無いではないか!
一応、石橋雅史や竜咲隼人といった動ける人員も出演しているが、彼らに関する扱いも極端に悪い。
石橋はクライマックスで三妹と対戦するのだが、阿藤に「三浦たちを追え」と促したシーンを最後に姿を消してしまうのだ(このあとカメラは阿藤ばかりを映し続け、ようやく阿藤の出番が終わったと思ったら、何事も無かったかのように三妹が登場している)。石橋にとっては2度目の香港勢との対戦であり、それまで良いファイトを展開していただけに、結末どころか退場する描写すら見せずに終りというのは、いくらなんでも酷すぎる。
竜咲に至っては、石橋のジムでトレーニングしているだけのエキストラ同然な扱いで、当然アクションは見せていない。そして、三妹と並んでゲスト出演している陳惠敏(チャーリー・チャン)だが、ラストバトルを除くと見せ場は一切無し!まぁ、役柄が役柄だけにしょうがない部分があるかもしれませんが…。
しかし、「動ける奴を放置して動けない奴を動かす」というヘマを、よりによって香港カラテシリーズの最終回にやらかしてしまった罪は限りなく重い。番組の打ち切りが決まって、監督がメガホンを東シナ海に放り投げたのかと思ってしまうような、そんな出来のエピソードである。それにしても、何度も言うけどこれがシリーズの最後だなんて…そりゃ番組も打ち切りになりますよね(号泣
ところでタイトルに「女必殺拳」とあるが、三妹の兄が潜入捜査の末に死亡したという設定や、麻薬シンジケートの密輸方法がヘンテコだったり、石橋雅史が出演していたりと、内容もなんとなく『女必殺拳』を連想させる内容になっている。これは製作に東映が加わっていた影響か?