功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

マーシャルアーツ映画特集・最終回『人質奪還/アラブテロVSアメリカ特殊部隊』

2007-05-31 00:20:50 | マーシャルアーツ映画:上
「人質奪還/アラブテロVSアメリカ特殊部隊」
SPECIAL FORCES
2002

●いくらなんでも邦題投げやりすぎ(爆
話の内容はタイトル通り、人質奪還の為に5人のアメリカ特殊部隊+SASのイギリス人が協力して独裁者からパツキン姉ちゃんを助けだすお話である(ちなみにタイトルのアラブテロは冒頭チラッと出てきただけで、ほんとは旧ソ連から独立した小国の白髪オヤジ率いる軍が敵)。
本作で一番注目なのがSASのイギリス人ことスコット・アドキンス君…マーシャルアーツ四天王最後の1人だ。
このスコット君がとにかくもの凄く強い&速いのだ!主役であるはずのアメリカ特殊部隊もそこそこ活躍するのだが、スコット君の活躍の前には霞みまくり(苦笑)ラストバトルで独裁者の腹心との対決では『ドラゴンカンフー/龍虎八拳』で[上下]薩伐(カサノバ・ウォン)が見せた両端の敵を蹴り、さらに空中でもう一度右の敵を蹴るという技をさらっと出しているのには驚いた。
このラストバトルだけ妙に気合いが入っていて、さながら本場の香港アクションを彷彿とさせる素晴らしい出来!…なんだけど、物語全体は"人質奪還するだけ"の話なのでドラマなんて無きが如し。製作が02年でこの話の薄さというのも問題なので、そこらへんの評価は低い。
実はアクション指導には以前紹介した『DRIVE/破壊王』でも見事なアクションを構築していたアルファスタントが参加しており、妙にクオリティの高いアクションはそれ故ということなのだ。

…そう、香港映画が尽き果てることのないアクションスターを排出したように、マーシャルアーツ映画も次世代のアクションスターが存在する。彼以外にも、『トランスポーター』での活躍が目覚ましいジェイソン・スティサム、『アルティメット』でポテンシャルの高さを示したシリル・ラファエリ、そして少し違うが『マッハ!』のトニー・ジャーも彼らと同じく、新たな世代のアクションスターだ。
彼ら新世代のマーシャルアーツスターや三巨頭達がいる限り、マーシャルアーツ映画は果てしなく続いていくのである…。

マーシャルアーツ映画特集・その9『ドラッグマスター』

2007-05-30 23:54:46 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ドラッグマスター」
WHITE TIGER
1996

●かつて実写版『北斗の拳』でケンシロウに扮した男がいた。その映画は散々な出来映えで、原作ファンからは煙たがられ、格闘映画ファンからはあまり注目を得られないまま終わった。しかしその男はその後も戦い続けたのである…。
…と、なんだか思わせぶりな出だしですが、今日紹介するマーシャルアーツ四天王3人目は、ゲイリー・ダニエルズであります。
ゲイリーはキックボクサー出身のスターで、かのジャッキー主演『シティーハンター』でリチャード・ノートンの部下を演じて以降、次第にその名を挙げていきます。本作はゲイリーが最も輝いていた90年代の作品で、低予算ながらなかなかのアクションを見せています。
ストーリーは親友を殺された麻薬捜査官のゲイリーが、ケイリー=ヒロユキ・タガワ率いるチャイニーズマフィアと戦っていくというもの。はっきり言って薄っぺらい話ではあるのですが、ラストでのゲイリーVSケイリーの対決はこの手の映画では上出来な迫力。あとはヒロイン関連の話を膨らますことができれば、もうちょっと話に奥行きが出来たかも…と思います。
ちなみにゲイリーは00年代以降もそこそこ出演を続けていくのですが、すこぶる作品に恵まれなくなっていき、とうとうある時期から映画出演自体が少なくなっていくのです。ようやく久しぶりに彼の姿を見たと思ったら、セガールの『沈黙の追撃』で無様に倒されるザコ役に成り果てていました…(泣
考えてみると、これまで紹介してきたマーシャルアーツ映画のスターたちは、皆例外なく絶頂期と落ち目の時期が両極端で、しかも全盛期があまり長く続きません。果たして、こんな調子で未来のマーシャルアーツ映画界はどうなってしまうのか?
その答えは、次回の最後の特集にて…。

マーシャルアーツ映画特集・その8『キング・オブ・フィスト』

2007-05-29 10:22:10 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「キング・オブ・フィスト」
Live by The Fist
1993

●格闘アクションというものは演じる俳優の技術も大事だが、それを受け止めてくれる受け手側の技量も重要である。例えば同じ蹴り技を喰らうとしても、蹴られてそのまま呻くよりも大回転して倒れたほうが迫力が増す…攻め手がいくらいい動きをしても、受け手がそれを受け止めないと絵にならないという事だ。
香港映画はこの2つの要素が十分色濃いので安心して見ることができるが、欧米のマーシャルアーツ作品では2つの要素自体が疎かになっている場合がよくある(最近の作品はそれほどでもない)。その点から考えれば、本作はギリギリこの2つの要素をクリアしているといえるだろう。
主演は『ハード・ブラッド』で李連杰とも対決したジェリー・トリンブルだ。彼自身もかなりのセンスの持ち主であるが、カレン・シェパード主演の『ターミネーター・コップ』などでは武術指導の力量不足か、あまり満足のいくアクションは披露してくれなかった。だが本作は前述の通り、ちゃんと見られる殺陣になっている。
この映画はスケープゴートで罪を着せられたトリンブルが、刑務所内で様々な抵抗に遭いながらも脱出するという監獄アクションだ。そこに人種間の差別云々といった問題を組み込んでいるが、話のテンポが後半に入ってからガクンと落ちてしまうのが惜しい。アジア系囚人のリーダー格を演じたジョージ・タケイの演技も光るが、結局はトリンブルのアクションだけが浮き足立つ結果に終わってしまった。あっちがダメならこっちがダメ…映画というものはなかなか上手くいかないものである。

マーシャルアーツ映画特集・その7『DRIVE/破壊王』

2007-05-29 09:45:50 | マーシャルアーツ映画:上
「DRIVE/破壊王」
DRIVE
1997

●これまでにノリスや最強の51歳、そして三巨頭を紹介してきたが、マーシャルアーツ映画の世界にはまだまだスゴいヤツがいる!…のですが、彼らを全部紹介するとなるとキリがなくなるので、その猛者の中から4人を厳選して紹介したいと思います。
その"マーシャルアーツ四天王"(勝手に命名)トップバッターはマーク・ダカスコスです。ダカスコスは実際に少林拳をマスターした達人でもあり、他のキックボクサーあがりのファイターとは一線を画す実力の持ち主です。近年では『ジェヴォーダンの獣』やブランドン・リーの後を受けて出演した『クロウ』シリーズにも出演していますが、やはり功夫映画ファンとしては『SPY_N』での香港映画参戦や、『ブラック・ダイヤモンド』における李連杰(ジェット・リー)との対決も記憶に新しいことかと思います。
本作は日米合作によるアクション映画で、ある組織によって超人にされたダカスコスが、道中出会った黒人のカディム・ハーディソンと珍道中を繰り広げつつ、組織の追っ手である加藤雅也(!)と戦うという、なんだか『仮面ライダー』チックな話である。
実は、本作はあの『北斗の拳』から流れを継いでいる作品でもあるのだ。『北斗の拳』と言ってもあの有名なアニメや漫画の方ではなく、ゲイリー・ダニエルズ主演で制作されたあのトホホな実写版のことだ(泣
実は東映は『北斗の拳』の失敗にたじろぐこともなく、実写版映画第2弾として池上遼一の漫画が原作の『クライング・フリーマン』という新たな実写版を制作していたのだ。この映画はあまりパッとした出来ではなく、アクション自体もそれほど際立ったものではなかったが、東映はそこで類い希なる才能を持つダカスコスと出会ったのである。
結局、本作はアルファ・スタント(海外を中心に活躍する日本人のアクション集団…『パワーレンジャー』や『人質奪還/アラブテロVSアメリカ特殊部隊』などで素晴らしいワークを披露している)の奮闘も虚しく、次回作を匂わせるオチだったにも関わらずそれが作られることはなかった。
しかし、本作のダカスコスのアクションは素晴らしい!靴や警棒、家具といった道具を使ったアクションをさらりとこなし、滑車を使ったスタントもやってのけ、最後の加藤雅也(本当はそのほとんどがスタントダブル)とのバトルは迫力満点であった。その立ち振る舞いたるや、まさにジャッキーのようにしなやかな動きで、彼のポテンシャルの高さを示して見せている。
この他、ダカスコスは『マーシャル・ロー』でサモハンとも闘い、初主演作の『オンリー・ザ・ストロング』ではトニー・ジャーも舌を巻くようなカポエラアクションを披露している。
こういう人が出てくるから、マーシャルアーツ映画はやめられないのである。

マーシャルアーツ映画特集・その6『リトルトウキョー殺人課』

2007-05-26 21:22:07 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「リトルトウキョー殺人課」
SHOWDOWN IN LITTLE TOKYO
1991

●これまで紹介してきたヴァンダムとセガールは日本でも一般的な認知度は高い。しかしこの三巨頭最後の1人であるドルフ・ラングレンは、いまいち知名度不足という不運を背負っている。
原因は色々考えられるが、まず第1に、TV放映や劇場公開された作品が他の2人に比べて少ないのと、無骨なファイターばかりを演じる彼のスタイルが地味に見えてしまうという事も大きいと考えられる。
実際に彼の出演作で比較的よく知られているのはスタローンの敵役として鮮烈にスクリーンデビューした『ロッキー4/炎の友情』や、ヴァンダムと夢の対決を展開した『ユニバーサル・ソルジャー』くらいでしか印象に残る活躍はしてない(あくまで一般的な認知についての話)。
実はかなりの数の主演作が日本でビデオリリースされており、今回彼の主演作から取り上げたこの映画もその中の一つである。
本作はドルフ主演作というより、むしろバカ映画の1つとして有名だ。というのも、作中における珍妙な日本描写の数々や、アクの濃すぎるキャラクターなどがその所以である(爆
だが、本作で李小龍の息子である李國豪(ブランドン・リー)と共演した事は彼にとっても快挙であり、決してアクションも悪くはない。彼は極真流空手を習得しており、本来ならセガールやヴァンダムともヒケをとらないほどの技量を持っているのだ(でもやっぱりこの映画、ヒドすぎる日本描写の方がインパクト強すぎてドルフの存在感がますます薄くなっていたような…)。
どちらにしろ、"静"のセガール、"動"のヴァンダム、そしてドルフ。彼らの活躍があったからこそ、今日のマーシャルアーツ映画が存在するのである。(強引な締め)

※…次回からはマーク・ダカスコスやゲイリー・ダニエルズら、"マーシャルアーツ四天王"(勝手に命名)を紹介していきます!

マーシャルアーツ映画特集・その5『レプリカント』

2007-05-26 20:30:05 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「レプリカント」
REPLICANT
2001

▲続いてはマーシャルアーツ映画界三巨頭の1人、ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演作の紹介だ。
ヴァンダムは『シンデレラ・ボーイ』で呉思遠に見初められてデビューし、立て続けに格闘アクション映画に主演し続けた、三巨頭中最も活躍していた男である。更に、彼は香港映画に興味を持っていたらしく、徐克(ツイ・ハーク)ら香港から来た監督の作品に出続け、二度に渡って楊斯(ヤン・スェ)と闘い、その他にもショー・コスギとも渡り合った。
しかし寄る年波には勝てないのか、最近の彼の出演作は軒並み小物だったりビデオスルーだったりと、なかなか作品に恵まれていない。そんな中で今回紹介するこの映画は、そこそこ健闘した方と思われる。

■子持ちのシングルマザーばかりを狙い、殺害したあと家に放火するという残忍極まりない殺人犯のヴァンダムは、今日も熟年刑事の追跡を振り切って意気揚々と逃げていた。
一向に進展しない捜査に苛立ちを募らせる熟年刑事…そんな彼の元にある組織から連絡が入った。わけも分からぬままにとある研究所に足を運んだ彼が見たものは、あの殺人犯のクローンであるヴァンダム(一人二役)だった。研究員らによると、クローンはモノホンと同じ思考能力を持っているから彼を捜査に協力させれば必ず殺人犯を捕まえられるという。
…何か色々ムリあり過ぎの設定だと思うのは気のせい(爆)?クローンがいきなり大人の姿で生成できないだろうし、ましてやDNAレベルで潜在意識が同じパターンを辿るというのも無茶苦茶だと思うのだけども…(本作の監督はヴァンダムと何度も組んできた林嶺東(リンゴ・ラム)である)。
善のヴァンダムは生まれたばかりなので右も左も分からない子供同然。熟年刑事はしぶしぶ協力することになったが、目の前にいる男が自分が追っている悪いヴァンダムのクローンであり、いつ悪に覚醒するかも分からないため気が気ではなかった。
刑事の自宅での誤解や歓楽街での乱闘などのイベントを経て、ついに善と悪…二人のヴァンダムが初めてまみえた。悪ヴァンダムは自分そっくりの善ヴァンダムに驚きつつも、薄々クローンだと気づき始め、悪への誘いを囁きかける。戸惑う善ヴァンダム…そんな時、熟年刑事と善ヴァンダムは悪ヴァンダムの秘密を知った。
悪ヴァンダムの母親は彼が幼い頃虐待をしていて、悪ヴァンダムは当時の経験が尾を引き、我が子に暴力を働く女性を見ると無性に殺したくなるという特異な感情を抱くにいたったのである。
早速二人は悪ヴァンダムの母親が入院している病院へ向かうと、悪ヴァンダムが自分の母を殺していた!クローンとはいえ自分の母親を殺された善ヴァンダムは悪ヴァンダムに立ち向かう!善と悪、二人のヴァンダムの死闘が始まった!

▼ヴァンダムといえば忘れてならないのが開脚である。とにかく、どの出演作でもこれ見よがしに披露するのだが、見た目のインパクトだけのあまり意味のないパフォーマンスかと思うのだけど…(爆
さて、本作はSFや推理サスペンスなど様々な要素を組み込もうとした結果、よくわからない出来になってしまった感が強い。とはいえ、これまで何度も"一人二役"を演じ続けてきたヴァンダムによる"一人二役"映画としてはおそらく一番の完成度だろう。
格闘アクションも三巨頭の中では一番の良い動きを誇り、その景気の良い蹴り技は彼の代表作である『キックボクサー』などでも遺憾なく発揮されている。
セガールを"静"と表するのなら、さしずめヴァンダムは"動"である。では三巨頭残りの1人、ドルフ・ラングレンは…?それは次のレビューに続きます。

マーシャルアーツ映画特集・その4『刑事ニコ/法の死角』

2007-05-26 19:58:49 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「刑事ニコ/法の死角」
Above the Law
1988

●なかなか更新できなかったので、今日は一気に3つのレビューをお送りします。
さて、マーシャルアーツ映画には欠かせない三巨頭がいることをご存じでしょうか?1人はジャン=クロード・ヴァン・ダム、もう1人は人間核弾頭ことドルフ・ラングレン。そしてあと1人が、かの有名なスティーブン・セガールだ。
そして本作こそセガールの原点で彼のデビュー作でもある。
見てみたところびっくりしたのが、セガールが凄くスリムであるという事だ(爆
それも含めた話だが、最初の主演作という事で、今のセガール映画からは想像のつかないような場面がいくつかあったりする。
まず、本作は社会派サスペンスであるということ。非行少女を捜していたら、麻薬の事件にぶつかり、それが政界をも巻き込んだ巨大な闇が相手であることが解ると、セガールは単身立ち向う…というものだ。今のどこか軽いセガール作品を見慣れた人なら、後半にかけて難しいセリフの飛び交う難解なシーンに戸惑う事は間違いないだろう。
次に、本作のセガールは決して無敵ではないという事。彼の作品では傑作と呼び声の高い『暴走特急』では狙撃されてもカスリ傷だった彼が、物語終盤に敵勢に捕まってボコボコにされるという場面が登場する。
今回の彼は元CIAで、日本で合気道も学んだ経験がある刑事という、セガール自身に近い設定となっている。確かに敵を自慢の武術でぶちのめすシーンもある…が、その後の彼の活躍と比べてみると、どうにも地味な印象を受ける。これは作品自体の色合いも大きく影響しているようだ。
本作は刑事アクションではなく、格闘アクションのある刑事ドラマのような感じ。従って物語自体も印象は暗い。しかしその後数々の作品で悪党共の手首をひねりつづけるセガールの原点がここにあると見ればなかなかに興味深いものである。
なお、セガールのアクションは合気道を基礎とした相手を張り倒すスタイルのため、ヴァンダムその他と比べるとアクションに華はない。だが、他ではあまり見ない関節主体に狙っての攻撃や、そしてなによりも彼独自の存在感が全てを駆逐し、今では一種のブランドにまで認知されている。この手のスターでは間違いなく一番の出世頭と言えよう(今は落ち目だけど)。
そういえばこんな人が香港にもいたような…確かジミー・ウォ(省略

マーシャルアーツ映画特集・その3『チャック・ノリスの地獄の復讐』

2007-05-24 22:37:19 | マーシャルアーツ映画:上
「チャック・ノリスの地獄の復讐」
FORCED VENGEANCE
1982

▲李小龍(ブルース・リー)の登場は世界中に衝撃を巻き起こした。ヌンチャクが舞い、目にも止まらぬ技の応酬に人々は歓喜した。そして、李小龍と同じく格闘技者だった者達は、リーに続けといわんばかりに映画界へと飛びこんでいった。
しかし時間というのは無常なもので、李小龍のブームも過ぎ去り、ジャッキーがアメリカ進出に失敗したことで、海外の格闘映画は衰退の一途をたどった。そんな中においても、ただひとり我が道を行き、現在のマーシャルアーツ映画の基盤を作った偉大なる男がいた…その男こそ誰であろう、『ドラゴンへの道』で李小龍と戦ったあの男、チャック・ノリスである!
本作はそんなノリスが遠き香港の地で挑んだ復讐劇であり、敵の巨大な日系人には日本人の坂口征二が扮している(彼はかつてアントニオ猪木としのぎを削りあったプロレスラーで、現在は某プロレス協会の会長をやってるらしい)。

■ノリスの今回の役は香港カジノのバウンザー(用心棒)で、恩義ある社長とその息子と共に香港でカジノを経営していた。しかしマフィアに目をつけられ、カジノは買収を迫られる。一代で築き上げた愛着あるカジノを手放したくない社長はマフィアの申し出を拒否する。これに激怒したマフィアは早速社長とその息子を血祭りに上げ、さらにその容疑をノリスに擦り付けた。
ベトナム帰りの友人に社長の娘とガールフレンドを預け、未だ実態の分からないマフィアを探るべく行動を開始したノリスは、事件の核心に迫る。だが、追っ手の坂口一味によって友人はボコボコにされ、ガールフレンドは暴行され、社長の娘は敵陣にさらわれる(友人ぜんぜん頼りになりませんでした)。
怒りに燃えるノリスは、唐突に居合わせた秘密捜査官のオッサンと共に敵のボスの腹心が乗るボートを襲撃する。腹心は棒術でノリスを苦しめるものの、結局は敵わず水中に没した。丘に上がり、敵の本拠地である孤島に乗り込んだノリスは、車椅子に座するボスを発見する。だが、そこには最後の砦・坂口征二が!ボスが見守る中、地獄の復讐の火蓋が斬って落とされた!

▼製作は『2001年宇宙の旅』などで知られるライオンシンボルの大手・MGMで、ノリスの初のメジャー出演作品だ(興行成績は中ヒットだったらしい)。
アクションはシーンごとによってクオリティの高低差が激しく、アクションを指導した人が現地の人とアメリカのクルーとが混合されていたのではないかと思われる。ラストの坂口征二戦は、双方動きは鈍く時間も短いものの、"血で血を洗う壮絶ファイト"として成り立っており、80年代初期のノリス作品ではベストと思われる(と言っても、自分はあまりノリス作品には馴染みが無いので更に面白い作品があるかもしれません。そういう意味ではこれから楽しみです)。
最後に、本作にはとても有名なあの功夫スターが出演している事を付け加えておこう。
劇中ノリスが社長の娘を訪ねるシーンで、娘のボーイフレンドとして登場し、ノリスにガン飛ばされて去っていくという小さい役の人だが…実は彼こそが、のちのリチャード・ノートンなのだ!この頃はまだデビュー間もなかったのか、こんな役です(苦笑
これの他は『オクタゴン』ぐらいでしか共演していないこの二人。『麒麟掌』での李小龍と倉田保昭のツーショットとまでとはいかないが、貴重な一瞬である。

マーシャルアーツ映画特集・その2『キング・オブ・キックボクサー』

2007-05-23 23:01:34 | マーシャルアーツ映画:上
「キング・オブ・キックボクサー」
THE KING OF THE KICKBOXERS
1991

▲マーシャルアーツ映画には、しばし意外な人が出演していたりする。
例えばハリウッド女優アンジェリーナ・ジョリーはブレイク前に『サイボーグ2』でバリバリのアクションを披露していたりする。そして本作には、最近通販番組で話題の"最強の51歳"ことビリー・ブランクスが出演している。
ちなみに本作、マーシャルアーツ映画の特集と銘打っておきながら、実は香港映画(海外資本向けとして作られた映画…ヴァンダムの『シンデレラ・ボーイ』も同様)なのである。ちなみに制作は『酔拳』を作った呉思遠のプロダクションが制作。主演のローレン・アヴェドンは、この他にも同じシーゾナルの『レイジング・サンダー』にも出演している。

■10年前、タイで格闘大会に優勝した兄を地元の凄腕ファイター、ビリー・ブランクスに殺されたニューヨーク市警の問題警官のローレンは、今日も潜入捜査中に問題を起こして鬼部長に大目玉を食らっていた。
そんなトラブルメーカーな彼に、部長は国際警察から依頼されていたタイのシンジゲートの事件にローレンを向かわせようとする。だが、彼は因縁の地であるタイに行くことを拒否した。
この事件はアクション映画に見せかけた殺人ビデオ(要はスナッフフィルム)を流通させている組織の摘発および壊滅だった。一応資料として支給された組織の映画に目を通したが、その中に兄を殺した男・ビリーが映っているではないか!さっそく部長を説き伏せ、ローレンはタイに飛んだ。
捜査を続けるうちに、彼はヒロインを助けたり、ムエタイ道場で道場破りなどして組織に接近する。その過程でローレンはキース・クックと出会う。キースはパッと見飲んだくれだが、実は武道の達人で、かつてビリーに敗北した経験を持っていた。今はひっそりとボロ小屋で猿と暮らしているが…う~ん、なんだかどこかで見た光景だぞ?(爆
ローレンはビリーを倒すべくキースに弟子入りし、彼の過酷な(そしてどこかで見た様な)特訓を受ける。途中、衝突を繰り返しながらも確実に成長して行くローレン。そこへ部長がやってきた。部長はこれ以上ローレンを事件に深入りさせたくないというが、現地の情報屋が進言したことからしぶしぶ承諾。ローレンはシンジケートの制作による自分の出演作が撮影されるロケ地へと向かう。
木枠で組まれた大きなドームに舞台が設置され、いよいよ撮影開始=戦闘開始となった。雑魚を一蹴し、ビリーをコロシアムに引きずり出そうとするローレンだが、ビリーはヒロインと殺害したキースを人質に現れた!
嫌がおうにも怒りが高まるローレンを前に、クライマックスのゴングが鳴らされた!

▼パッと見、本作はキックボクサー映画と思われるかも知れないが、その実は演者を外人にした『酔拳』である。兄を殺された少年時代のローレンがビリーに圧倒される場面も、まんま同じ事を『酔拳』でジャッキーと黄正利がやっていた。
アクションについては殺陣は良いものの、役者がついていけてない感が強い。だが、その一方でラストのキック対決は結構見ものであり、武術指導を担当した梁小熊(トニー・リャン)の手腕が光る良いバトルとなっている。
しかしストーリーはチグハグで、クライマックスでキースが殺されてしまった場面も唐突過ぎ、あまり感情移入ができないまま話が進んでいってしまう。あるいは強大なビリーに、ローレンとキースの二人で協力するという『蛇拳』パターンもあり得たのではないだろうか?
ちなみに本作は、以後続編の2から4までがリリースされたが、それらはストーリーもまったく関係のない似たテイストの作品なのでご注意を(呉思遠が関わったものは『キング・オブ・キックボクサー/ファイナル』だけ)。

マーシャルアーツ映画特集・その1『ミッション・ターミネート』

2007-05-22 15:38:36 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ミッション・ターミネート」
MISSION TERMINATE
1987

▲そもそも私がマーシャルアーツ映画にハマるきっかけとなったのがこの映画。そしてまさかのリチャード・ノートン主演作でもある。
この映画は安っぽい戦争モノだが出演陣が凄まじく、主演のノートンを始め、狄威(ディック・ウェイ)、呂小龍(ブルース・ライ!)らが登場して画面を盛り上げてくれます。
ちなみに一応戦場アクションということなのだが、監督のアンソニー・マハラジの手腕ゆえか、非常にまったりとした仕上がりになっています(笑

■1970年、ベトナム戦争時に密かに金塊をゲリラの村から強奪したアメリカ軍の連中がいた。ところがそれから数年後、次から次にその連中が闇討ちされていく事件が発生する。その金塊を奪った部隊のリーダーだった士官は、闇討ち犯人を始末して、ついでに上層部への事実発覚の隠蔽もするため、軍の本部から離れたはみだし者のリチャード・ノートンを呼び寄せた。
ノートンはまず手始めに、友人であり士官の元部下であった男を訪ねるが、そいつは何かを知っていながら隠し事をしている様子。そして士官の元部下でありながら、元部隊の名簿に載っていなかった男・呂小龍を尋ねに香港へと飛ぶが、事件に関わりたくないとして聴取を拒否する。
一方、闇討ち犯人の狄威は極秘ゲリラ部隊の指導員であり、その狄威はというとベトナムの山奥にある伊賀忍者の寺でむかし弟弟子(呂小龍のこと)と共に修業していたが、破門された経歴を持っていた(なんじゃそりゃ!?)。そして、ゲリラ組織内の狄威の様子を見ていたかつての師匠は、その狄威にボコボコにされてしまう。
師匠危篤の知らせを聞いた呂小龍はベトナムへ飛び、死に際の師匠から伝家の宝刀を授かり(ちなみにこの刀はその後出番なし)、打倒狄威を誓ってノートンと力を合わせることに。ノートンは、呂小龍から師匠から聞いたというある山中へと赴き、そこで過酷な特訓(といっても訓練施設がショボ過ぎる)に励むゲリラ達の姿を確認する。
組織の存在を確認したはいいが、国境付近にある同基地を米軍に攻撃してもらうわけにもいかず、ノートンは友人が隊長をやってるタイの一個小隊に協力を依頼し、仲間と共に敵陣に乗り込む。果たしてノートン、呂小龍はゲリラ部隊を殲滅することができるのか!?

▼非常に淡泊。要は当時流行した『ランボー』を倣って作られた"ベトナム帰還兵"モノである。この手の安上がりな戦争アクションは80年代後半に狂ったように作られ、東南アジアの森林でムサいおっさんが適当に銃をブッ放すだけの映画が多く作られた。
本作も話はノートン捜査→呂小龍仲間に→突入して決戦…と、これだけだ。
そんなこの映画を大きく支えているのは、やはり狄威らを始めとした香港勢の存在感であろう。クライマックスでは呂小龍VS狄威、ノートンVS狄威という異色の対決が見られるだけでも、本作の価値は大きいと思われる。
あれ?マーシャルアーツ映画を紹介するはずが、何故にこんな流れに…?(爆