功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『奪還2.0』

2012-08-18 23:47:01 | マーシャルアーツ映画:下
「奪還2.0」
原題:HALF PAST DEAD 2
製作:2007年

●かつて、スティーブン・セガールが刑務所で戦う『奪還 DAKKAN アルカトラズ』という映画がありました。従来の監獄アクションの枠を超えようとした意欲作であり、香港から熊欣欣(チョン・シンシン)が武術指導として参加したことで知られていますが、本作はその正式な続編です。
この手の格闘映画の続編は前作を無視するパターンが多く、時には大幅な劣化を伴う場合もあります。『キックボクサー2』しかり、『タイム・コップ2』しかり、『ユニバーサル・ソルジャー/ザ・リターン』しかり…。しかし、本作はそれなりに前作との繋がりを尊重した作りとなっていました。
 まず主演の1人は前作で脇役だったクルプトですし、序盤には前作の舞台となった新アルカトラズが出てきます(例の鬼所長なども特別出演)。所々で回想シーンが流れたり、前作でキーポイントとなった大金塊が再登場するなど、前作と密接な関係が構築されているのです。
ただ、主役が『~ザ・リターン』でマイケル・ジェイ・ホワイトの見せ場を奪ったビル・ゴールドバーグ、そして監督が『リアル・ファイト 最強の鉄拳伝説』を監督したアート・カマチョなので、見る前は非常に嫌な予感がしていました…(爆

 ストーリーは前作と同様に、監獄アクションの定番をヒネったものとなっています。通常、監獄アクションは「無実の主人公(あるいは潜入捜査官)が収監される→悪徳所長や牢名主と敵対する→同室の仲間が殺される→色々あって暴動が発生→悪が倒れて大団円」という流れが一般的です。
前作では「刑務所外から第三者が介入する」という新機軸を用意しましたが、本作は「早い段階で暴動が発生して刑務所が無法地帯になる」という手でパターンを崩していました。
ですが、あまりに早く暴動を発生させてしまったためか、ストーリーはかなり大雑把。話があっちこっちにブレまくるため、前作以上の大失敗を引き起こしています。まぁ、『リアル・ファイト』や『DRAGON BATTLE EVOLUTION』と比べたら随分マシではあるんですが…。

 また、本作には熊欣欣がいないので格闘アクションは典型的なパワー押しのファイトばかり。プロレス技を取り入れたりと工夫は見られるものの、変わり映えしないザコ敵との闘いが延々と続きます(ちなみにアクション指導もやっぱりアート・カマチョ…)。
正直言って前作も大した映画ではなかったのですが(爆)、それでもセガールの存在感やキャラクター描写で随分と救われていました。しかし本作は状況設定などに凝ってみたはいいものの、アクションやストーリーを惰性で描ききってしまい、このような結果に陥ってしまったのです。
終幕のタイミングを決めかねて蛇足だらけになったラストといい、まさに失敗した続編映画の見本のような本作。やはりカマチョの監督としての腕前は油断ならざるものがあるようです(汗

『スー・チー in トラブル・セブン』

2012-08-14 23:43:42 | 女ドラゴン映画
「スー・チー in トラブル・セブン」
原題:我愛777
英題:My Loving Trouble 7
製作:1999年

▼3年前、私はアイドル女優の舒淇(スー・チー)が主演した『スー・チー in ミスター・パーフェクト』という作品を紹介しました。この作品、DVDのパッケージや解説では本格的なスパイ映画っぽく紹介されていすが、実際は南国を舞台にした典型的なコメディ活劇でした。
本作もそんな「看板に偽りアリ」な一本で、パッケージこそシリアス系のデザインでありながら、その正体は完全なコメディ映画という困った作品です(笑)。ただし『ミスター・パーフェクト』とは違い、本作での舒淇はちゃんとスパイらしいクールな姿を見せています。

■国際的なスパイである舒淇は、今回の任務を最後に引退しようと考えていた。ところが、同僚の王合喜(ケン・ウォン)から新しい任務を言い渡され、オマケに能天気な新人スパイ・天心(ティン・サム)の世話を押し付けられてしまう。
足手まといの相棒とのミッションに頭を抱える舒淇。…だが、そんな彼女に熱い眼差しを向ける1人の男がいた。CMディレクターの譚耀文(パトリック・タム)は、仕事中に偶然見かけた舒淇に一目惚れし、なんとか彼女に接近しようと試みていたのである。
舒淇の住所を突き止め、監視カメラと盗聴器で様子を探ろうとする譚耀文であったが、どこからどう見ても犯罪行為なのは明白だ(爆)。そうとは知らない舒淇は天心を鍛え、任務である大企業の重要機密を手に入れようとするが、この一件には大きな秘密が隠されていた…。

▲前述の通り、この作品は『ミスター・パーフェクト』と同じコメディ映画ですが、コメディとしての完成度は本作の方が上。作中のギャグは下ネタが多く、アイドル相手でも遠慮しない香港映画らしい笑いが溢れています。
なにしろ製作に『古惑仔』シリーズの文雋(マンフレッド・ウォン)が関与しているのですから、ある程度の質は保証されていると言っていいでしょう。また、譚耀文とのラブストーリーやスパイ組織との対決など、コメディ以外にも様々な要素が盛りだくさんとなっていました。
 ただし功夫アクションについては非常に少なく、舒淇が譚耀文の目を盗んで暴漢を退治するシーンと、中盤での脱出時におけるバトルしか見せ場はありません。確かに潜入工作が専門のスパイなら無駄な戦闘は極力避けるべきでしょう。でも、だからといってクライマックスがただ単に敵の目をごまかしただけというのは流石にショボすぎます。
王合喜を筆頭に、舒淇の元同僚に呉君如(サンドラ・ウン)、スパイ組織のボスに樓學賢(ジャクソン・ルー)が扮しているので、彼らが暴れてくれればなお面白かったのですが…。そんなわけで、アクションなら『ミスター・パーフェクト』、コメディと舒淇目当てなら本作がオススメです!

『スティーヴ・オースティン S.W.A.T.』

2012-08-06 23:27:48 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「スティーヴ・オースティン S.W.A.T.」
原題:TACTICAL FORCE
製作:2011年

スティーヴ・オースティン率いるロス市警のSWATチームは、超が付くほどの暴れん坊ぞろい。今日もコンビニ強盗と一緒に人質まで一網打尽にしてしまい、上司から大目玉を食らっていた。彼らは罰として廃屋での訓練を命ぜられ、渋々ながら目的地に向かうのだった。
だが、当の廃屋では隠された大事なブツを巡り、ロシアとイタリアのマフィアが火花を散らしていた。連中はスティーヴたちが突然現れたことで慌てるが、相手が訓練用の装備しか持っていないと知って反撃を開始する。
絶体絶命のスティーヴたちと、仲間の増減で優劣が二転三転する2組のマフィア…。果たして、三者の中で生き残るのは誰なのか!?

 今回はまたもや『エクスペンダブルズ』以降に続々と実現した、ドリームマッチを主題とした作品の登場です。これまで同系統の作品は『沈黙の復讐』『ゲーム・オブ・デス』『ザ・ハンティング』などを紹介してきましたが、本作はいささかボルテージの低いものとなっています。
内容は限定空間を舞台にした駆け引き重視のアクション映画…なのですが、作品の肝となる駆け引きの描写がちょっと甘い出来で、正直言ってかなり退屈でした(爆)。一応、後半からは攻守逆転が頻繁に起こってくるので割と楽しめるのですが、最後の種明かしは蛇足だったかな?
 しかし、本作のメインはあくまで猛者同士によるドリームマッチにあります。本作では後半でマイケル・ジェイ・ホワイト(『ブラッド&ボーン』)VSダレン・シャラヴィ(『葉門』)が、ラストではスティーヴVSキース・ジャーディン(シウバとも戦った総合格闘家)がそれぞれ拳を交えていました。
しかし、これらのバトルにおいて各々のファイトスタイルに変化が無く、個別化が図れていません。『ゲーム・オブ・デス』や『ザ・ハンティング』で夢の対決が行われた際は、きちんと敵味方で戦法が違いました。スタイルの違いは両者の個性を引き出し、アクションに更なる激しさを加味することができるのですが、本作はそれを怠ってしまったのです。
 その結果、全体的にアクションの出来は今一歩。殺陣と演出次第では素晴らしい勝負になれたはずなので、この程度に終わってしまったのは惜しい限りです(特にマイケルVSダレン)。今さら言っても仕方ないですが、このキャストでスティーヴVSマイケルが無いというのも残念でした。
充実した出演者とは裏腹に、凡庸な出来になってしまった佳作。従来のドリームマッチが軽んじられていた時代のことを思うと、今回のドリームマッチは実現しただけでも快挙と呼べる出来事なのですが…。