功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

Once Upon a Time(終)亜流電影と消えない情熱

2017-05-31 22:52:33 | 李連杰(ジェット・リー)
 ひょんな事から『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』に魅了された私は、徐克(ツイ・ハーク)が手掛けたワンチャイシリーズの制覇に乗り出しました。
しかし、あくまで私が興味を持ったのはワンチャイというシリーズそのものであり、李連杰(リー・リンチェイ)が主演した他の映画には目もくれなかったと記憶しています。
 その後、私はワンチャイシリーズの本家を制覇すると、今度は亜流作品にまで手を出し始めました。まず最初に見たのは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝 アイアン・モンキー』で、こちらは本家と同じ徐克が製作を担当しています。
主演は甄子丹(ドニー・イェン)と干光榮(ユー・ロングァン)で、物語は黄飛鴻の父・黄麒英と義賊・鉄猿が朝廷の悪人と戦う!というもの。ストーリーもさることながら、重力を無視したワイヤーワークも素晴らしく、外伝としては一級品の傑作でした。

 続いて視聴した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝 鬼脚』は、反対に徐克が関わっていない完全な亜流作品であり、内容はあまり洗練されているとは言えません。
しかし、主演の元彪(ユン・ピョウ)による立ち回りはとても軽快で、加えて任世官(ニン・シークワン)や元華(ユン・ワー)といった実力派スターが投入されており、アクションに関しては本家にも負けない健闘を見せています。
 そして最後に見た『ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ/烈火風雲』は、久々となる李連杰の黄飛鴻が楽しめる番外編。こちらは李連杰が自身のプロダクションで製作した作品で、あの王晶(バリー・ウォン)がメガホンを取っています。
おかげで本家よりもコメディ描写が多く、残酷なシーンも無駄に充実していますが、アクションシーンについては上々の出来です。ただ、当時の私は劉家輝(ゴードン・リュウ)や徐忠信(アラン・ツィー)については全く知りませんでした(苦笑

 さて、こうして私のワンチャイシリーズに対する情熱は持続していた訳ですが、そんな状況に冷や水を浴びせる事件が起きます。
ひと通りシリーズに目を通した私は、『天地発狂』や『アイアンモンキー・グレート』といった怪しい作品に手を出そうか悩んでいました。するとその時、突如としてレンタルショップに本家スタッフによる新作が続々と入荷されてきたのです。
「まだシリーズは続いていたんだ!」と喜びながらレンタルした私は、その中の1つをワクワクしながら見たんですが…そこに映されていたのはフィルム撮りではない違和感のある画面、淡々と進むストーリー、暗い演出の数々でした。
 実はこの作品は、電視劇(TVドラマ)として製作されたものの再編集版。私が見たのは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 八大天王』で、監督は『ブラック・マスク』の李仁港(ダニエル・リー)が担当しています。
李仁港といえば凝った映像に拘る監督として有名ですが、この作品ではビデオ撮影&暗い画面でスローを多用したため、アクションの迫力は本家どころか亜流作品にも及んでいません。
 また、今まで親しんできた日本語吹き替えのキャストが一新されており(『天地風雲』では池田秀一だけギリギリ残ってくれましたが…)、この状況に大変なショックを受けた私は、ワンチャイシリーズに対する熱意を急速に失っていくことになります。
結局、それ以外の再編集版である『理想年代』や『辛亥革命』は見る気になれず、まだチェックしていない亜流作品に対する興味も無くなってしまいました(特に電視劇の再編集版については未だに手を出していません)。
しかし、このまま香港映画に対する情熱を失うかに見えたその時、私を奮い立たせたのは李連杰の先達である2人のドラゴンでした。彼らと出会ったのはまたしてもBS2の映画番組で、その作品は連続して放送されたのです。

 1つは少林寺の名誉を守り、妹の敵を討つために戦う壮絶なアクション大作。もう1つは飄々とした若者が酔いどれ師匠に修行を受け、恐るべき足技の達人と雌雄を決する作品です。
そう、前者は李小龍(ブルース・リー)主演の『燃えよドラゴン』! 後者は成龍(ジャッキー・チェン)主演の『ドランクモンキー 酔拳』! この歴史的傑作と間髪入れずに出会ったことで、再び私の香港映画熱が燃え始めます。
「まだまだ香港映画には凄い作品が沢山ある!」と悟った私は、果てしない香港映画への探求を始め、その途中で日本の空手映画や欧米の格闘映画と遭遇。より深く、より広く知ろうとしました。
 そして今、アクション映画への情熱をブログという形で発信するようになり、いつの間にやら10年が経ってしまいました。その情熱は未だに冷めることはなく、新たなアクション映画との出会いを常に求め続けています。
Once Upon a Time...もはや遠い過去の出来事となりましたが、『天地大乱』の出会いとそれにまつわる悲喜交々は、今でも私の心に思い出としてシッカリと刻まれているのです。
香港映画に対する情熱がいつまで続くかは自分でも解りません。ですが、『天地大乱』から受けた衝撃は私の情熱の原動力として、今も…そしてこれからも燃え続けることでしょう。銀幕を力強く駆け抜けた、あの黄飛鴻のように―――(特集、終わり)

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
果てなき功夫ワールド! (亜州影帝)
2017-06-01 05:26:09
特集、お疲れ様でした。

「ワンチャイ 天地大乱」に最初に出会って良かったですね~。「新少林寺伝説」あたりだったらもう観てなかったかもしれませんね(笑)

天地大乱はやっぱ面白いですよね。私も劇場では観ていないですが、当時レンタル店に借りに行き、貸し出し中で1週間待ちきれなかった思い出があります。
当時ワイヤーアクションにハマって「方世玉」や「大地無限」なんかも必死に観てましたよ(笑)

90年代はレンタルばっかりで、今みたいに海外からDVDを取り寄せたりしていなかったので、功夫映画自体も日本で紹介された作品以外はそんなには観ていなかったですね。
全ての功夫映画を観ることは叶わないかもしれないけど、これからも見続けていきたいですね。ま、けっこう観てますがね(苦笑)

「ライズ・オブ・レジェンド 炎虎乱舞」はご覧になりましたか?
若き黄飛鴻のお話ですけど、なんかリアルになりすぎた感じでまた別物ですね。
サモハン出てきますが、リンチェイの無影脚みたいなありえない技の方がやっぱり映画的面白みがありますね💦
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提督という肩書きがかっこいい (二白桃)
2017-06-03 12:32:10
特集楽しく拝見しました。

同シリーズで同じ演者が違う役を演じることがあるのが、香港映画と牙狼の面白いところであり、困ったところでもありますね。
(片腕必殺剣シリーズの田豊や牙狼シリーズの津田寛治は特に困った例)

甄子丹はワンチャイシリーズで黄飛鴻の敵役、鉄猿と組む黄飛鴻の父役、鉄猿役とやっていて、ややこしくならなかったのかなと思います。
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こんばんは。 (ひろき)
2017-06-05 20:41:53
龍争こ門さん、こんばんは。
いつもお世話になります。
よろしくお願い致します。

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱」の特集、お疲れ様でした。
大変興味深く読ませて頂きました^^
熱いレビュー、ありがとうございました。
龍争こ門さんの「~天地大乱」への情熱が、火傷する位に伝わって来て、感動しました。
「~アイアンモンキー」(こちらも、劇場公開時、映画館で観ました。)は、ドニー・イェンとユエン・ウーピンが、タッグを組んだ作品なので、ストーリーの素晴らしさもさることながら、アクションの出来栄えが抜群でしたね。リズミカルな京劇スタイルと重力を無視したワイヤーアクションと高速の連続蹴り(無影脚)やかつてのカサノバ・ウォンを彷彿とさせるような、ドニー・イェンの空中開脚蹴りも、芸術的で、お見事でした。
ユエン・ウーピンは、カンフー映画=芸術であることを認識させてくれましたね。
少年時代の黄飛鴻の役者さん(実は少女)のアクションも、素晴らしくて、棍棒を蹴って敵の体にぶち当てたり、開脚して、敵の胸板に混合を打つシーンなんか、実にユエン・ウーピンらしいアクロバティックな振り付けで、しびれました。
「ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ/烈火風雲」の「ドラゴン太極拳」や「カンフー仁義 復讐の刃」で、素晴らしい体技を披露してくれたアラン・ツィーとのラストバトルも、燃えましたね。リー・リンチェイ(現・ジェット・リー)版の酔拳も、良かったのですが、バク転倒立連続蹴りからのハンドスプリングが、とてもカッコ良くて、印象に残っています。
ユン・ピョウは、「モンキーフィスト猿拳」の全編ノーワイヤー?の超人的なアクロバットカンフーが、大好きなので、「~鬼脚」や「黒影」も、良かったのですが、やはり、ユン・ピョウ主演作品に関しては、ノーワイヤーの作品の方が、個人的には好きですね。
日本語吹き替え版は、リー・リンチェイの声は、シャアの池田秀一がピッタリですね。
ユン・ピョウは、アムロの古谷徹さんが、良いですね。
「ドラゴンカンフー・龍虎八拳」のピーター・チャンの吹き替えも、お見事でした。

>成龍(ジャッキー・チェン)主演の『ドランクモンキー 酔拳』! この歴史的傑作と間髪入れずに出会ったことで、再び私の香港映画熱が燃え始めます。

僕も、ジャッキー・チェンと出会ったことで、カンフー映画熱が燃え始めました。
とにかく、ジャッキー・チェンと初代タイガーマスクは、子供の頃の大ヒーローでしたからね。
初めて、お二人を見たとき、それぞれ、「こんなことが、人間に出来るのか!」みたいな、衝撃を受けました。
殴ったり、蹴ったりするだけの単調な拳脚アクションよりも、随所にアクロバティックな動きやユーモアを交えた動きを絡ませながら、「~拳」的な型にはまった、まるで、舞踏のような、京劇をベースにした、リズミカルなカンフーアクションに魅了されました。
「ドランクモンキー・酔拳」のラストバトルでのジャッキー・チェンと黄正利のまるで、お二人がダンスでも、踊っているかのような、美しい動きが素晴らしくて、録画した日本語吹き替え版を、今でも、何度も、繰り返して、見ています。

「イップ・マン 継承」は、現時点では、未見ですが、予告編を見てみると、「~序章」や「~葉問」に比べて、アクション監督が、ユエン・ウーピンに交代したことにより、流れるような、洗練された、芸術性の高いカンフーアクションを構築しているように見えます。(まだ、未見なので、ハッキリとは言えませんが。)

>~『天地大乱』から受けた衝撃は私の情熱の原動力として、今も…そしてこれからも燃え続けることでしょう。銀幕を力強く駆け抜けた、あの黄飛鴻のように―――(特集、終わり)

これからも、様々なカンフー映画、マーシャルアーツ映画のレビューを期待しています。
今後も、よろしくお願い致します。

それでは、失礼致します。
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返信。 (龍争こ門)
2017-06-08 13:08:05
亜州影帝さんこんにちは、お返事大変お待たせ致しました。
このたびは特集をご覧になって頂き、ありがとうございます。

>「新少林寺伝説」あたりだったらもう観てなかったかもしれませんね(笑)
 『新少林寺伝説』は悪くないところもあるんですが、『天地大乱』と比べても比べなくてもイマイチな作品なので、その可能性は高いですね(笑
やはりダイナミックなアクションとストーリーがあったからこそ、私は同作に惹かれたのだと思います。

>90年代はレンタルばっかりで、今みたいに海外からDVDを取り寄せたりしていなかったので、功夫映画自体も日本で紹介された作品以外はそんなには観ていなかったですね。
 私も通販サイトで海外のDVDを購入するようになったのは、『天地大乱』ショックから随分と経ってからでした。
当時はレンタルビデオ店こそが生命線だったんですが、現在はDVD化の波によってVHSが撤去され、味気ない品揃えの店ばかりになってしまいました。嗚呼、あの頃の店に戻りたい…(涙

>「ライズ・オブ・レジェンド 炎虎乱舞」はご覧になりましたか?
 こちらは色々と話題になっていますね。まだ視聴していませんが、サモハンがらみとなると期待しないわけにはいきません。
ただ、功夫片にしては尺が長過ぎる(ノーカット版の『天地黎明』より長い!)のが、ちょっと心配です。
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返信。 (龍争こ門)
2017-06-08 13:09:15
二白桃さんこんにちは、お返事大変お待たせ致しました。
このたびは特集をご覧になって頂き、ありがとうございます。

>甄子丹はワンチャイシリーズで黄飛鴻の敵役、鉄猿と組む黄飛鴻の父役、鉄猿役とやっていて、ややこしくならなかったのかなと思います。
 そういえば『天地大乱』は悪役、『アイアンモンキー』は義賊ということで演じ分けが出来てましたが、甄子丹にとって『グレート』の鐡猿はどういう位置付けのキャラクターだったのかが気になりますね。
『アイアンモンキー』の鐡猿とかけ離れた設定、ワンチャイシリーズのフォロワーかどうかすら怪しい内容など、『グレート』はあらゆる意味でハチャメチャでした。
ひょっとしたら、傑作だった『アイアンモンキー』と落差のありすぎる『グレート』に対し、甄子丹も戸惑いながら演技していたのかもしれませんね(苦笑
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返信。 (龍争こ門)
2017-06-08 13:32:47
ひろきさんこんにちは、お返事大変お待たせ致しました。
このたびは特集をご覧になって頂き、ありがとうございます。

>ユエン・ウーピンは、カンフー映画=芸術であることを認識させてくれましたね。
 思えば、私が『天地大乱』で香港映画に目覚めたキッカケは作品自体の質もさることながら、袁和平による武術指導も大きかったと思います。
その後も当記事にある通り、『酔拳』でまたもや袁和平の殺陣にカルチャーショックを受け、以後も様々な作品で同氏の仕事を目にし続けるのですから、彼がいなければ今の私は居なかったかもしれませんね。

>殴ったり、蹴ったりするだけの単調な拳脚アクションよりも、随所にアクロバティックな動きやユーモアを交えた動きを絡ませながら、「~拳」的な型にはまった、まるで、舞踏のような、京劇をベースにした、リズミカルなカンフーアクションに魅了されました。
 ジャッキーの強みはまさにここですね。李小龍と同じことをやっても勝てる見込みはありませんし、アクロバットな動作を突き詰めていこうという考えは大正解だったと言えるでしょう。
ただ、もし同じアクロバットに優れた五毒や、ユーモアでは引けを取らないサモハンがジャッキーより先に日本上陸を果たしていたら、日本における香港映画の勢力図は大きく変わっていた…かもしれませんね。

>「イップ・マン 継承」
 こちらは公開時に足を運べなかったので、私も今のところソフト化を待っています(そういえば『トリプルX:再起動』も未入手だった!)。
今回もマイク・タイソンを始めとした個性的な面子が揃い、そこに袁和平がどんな味付けをしたかが非常に気になりますね。
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