大教頭與騷娘子
英題:Bruce and the Iron Finger/Bruce Against Iron Hand
製作:1979年
▼かつて
『クローン人間ブルース・リー/怒りのスリー・ドラゴン』という無茶苦茶な作品がありました。これは李小龍のバッタもん俳優を集結させた怪作で、これ以外にも
“ブルース”の名を持つ男たちが集った作品が存在します。
例えばブルース・ライこと
何宗道(ホー・チョンドー)が監督&主演した『龍的影子』には、共同監督として呂小龍(ブルース・リ)が参加。そして本作では、何宗道があの
梁小龍(ブルース・リャン)と顔を合わせているのです。
この2人は『Gメン75』の香港ロケシリーズに出演しており、他にも本作には『Gメン』出演者が何人か顔を出しています。これで江島と楊斯(ヤン・スー)も出ていれば最高だったんだけどなぁ…(笑
■香港で謎の覆面通り魔による連続殺人事件が発生する。被害者はみな首筋に鉄指拳を叩き込まれており、武館の師範(?)に続いてクラブに雇われていた怪力男・
染野行雄も殺された。
刑事の何宗道は、現場に残されていたペンダントを手掛かりに捜査を開始。死の直前に染野と一夜を過ごした
李海姫に話を聞くが、これといって有力な情報は聞けなかった。
そうこうしているうちに、仲間の刑事から「
谷峰(クー・フェン)が師範代をしている道場が怪しいのでは?」との情報が舞い込み、何宗道は門下生になりすまして潜入を試みる。
しかし目ぼしいネタは得られず、師範の娘に密会しようとしていた恋人?を助けたため、道場を追い出されてしまう。だが最後にペンダントを見せられた谷峰は、去りゆく何宗道の背中に怪しく目を光らせていて……。
その後、次に何宗道が接触したのは鉄指拳道場の先生・梁小龍だった。両者は誤解から衝突するが、最終的に和解して捜査に協力してくれることに。しかし敵は卑怯な罠を仕掛けようと、密かに動き出していたのである。
もうバレバレなので先に言ってしまうが(爆)、覆面通り魔の正体は谷峰であった。彼は裏で人身売買を行っており、道場生の
方野や宋金來とともに暗躍。例の連続殺人で殺した相手は、ほとんどが男癖の悪い愛人・李海姫の浮気相手だったのだ。
何宗道が嗅ぎまわっているのに気付いた谷峰は、彼と何も知らない師範の娘を刺客に殺させようと画策。懲りずに浮気を続ける李海姫とその相手を始末し、仲間や商売道具ともども高飛びを謀った。
しかし刺客の
李海生(リー・ハイサン)は何宗道に倒され、師範の娘は警察に保護された。死に際の李海姫が吐いたことで谷峰の容疑は確定的となり、何宗道と梁小龍は最後の戦いに向かう!
▲やたらと露骨なお色気シーンが多く、犯人が解りやすいのでサスペンスとしては微妙ですが、作品そのものは
明るいタッチの快作に仕上がっています。
本作のカラーを晴れやかにしたのは、人間味のある主人公たちのキャラクターにあるといえるでしょう。お調子者の梁小龍はもちろん、真面目だけど捜査でミスってしまう何宗道の姿も微笑ましく感じました。
この2人の共演は制作サイドもアピールしたかったようで、両者の対決も協利作品ばりにじっくりと描写されています。武術指導は
梁小龍と梁小熊の兄弟コンビなので、クオリティに関しては何ら問題ありません。
何宗道の動きはいつも以上に鋭く、梁小龍も負けじと繊細な動作が要求される鉄指拳で対抗!そんな2人の前に立ちはだかるのが谷峰で、本作では虎拳に加えて鐵布杉らしき防御技まで身に付けていました。
クライマックスでは2対1の戦いとなり、
鐵布杉の弱点を突こうとする功夫片の黄金パターンへ移行しますが、これを現代劇でやると新鮮に見えるから不思議です(オチも倒して終わりではないのがミソ)。
梁小龍の出番は『大福星』のジャッキーに近いものの、出来に関しては上々。監督の
杜魯波は梁小龍とのコンビ作が多いので、いつかはコンプリートしてみたいですね。