功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

※…緊急連絡

2009-01-31 13:38:21 | Weblog
突然ですが、諸々の都合により数日中の更新は停止させていただきます。
というのも、荒れ模様の天候の為に自宅の電線が切れてしまい、ネットが使えない状況となりそうなのです(この文はネカフェから投稿しています)。恐らくは一日二日で復旧するかと思われますが、コメントの返答やメールの返信等はしばらく先送りということになってしまうかと思われますので、あらかじめご了承ください。


管理人:龍争こ門

『ソードキング』

2009-01-29 21:23:40 | マーシャルアーツ映画:下
「ソードキング」
原題:THE KING MAKER
制作:2005年

▼ここ最近、私は新しいマーシャルアーツ映画をコンスタントに見ている。しかしパッケージやタイトルがどれも似たり寄ったりというのはちょっとなぁ…。『ダークブレイド』みたいに便乗する気満々のジャケなんかを見ると言い様の無い脱力感を感じるが、こういうゴミの中から面白い作品なんかに出会った時は、かなり嬉しかったりするものである。
この作品も何か壮大な歴史ファンタジーのようなジャケだが、裏の解説で忍者らしき男が手裏剣を投げているカットがあったので、僅かな望みを抱いてレンタルを決意した。実は、以前『ワイルド・スマッシャー』でも「敵は少林寺!」という解説に興味を惹かれ、中古で入手して悲惨な結果を味わった経験がある。今回も同じ末路を辿るのでは…と警戒したものの、ついついレンタルショップのクリスマスセール(視聴したのは年末)という甘い誘惑に誘われ借りてしまったのだ。
で、その結果はというと…この作品のカテゴリを見れば一目瞭然、期待してた結果がこれだよ!(涙

■時は中世ぐらいの時代。軍人のゲイリー・ストレッチは乗っていた船が沈み、見知らぬアジアの小国に流れ着いた。そこで都合良く同郷のねーちゃんに助けられたりなんかしちゃう訳だが、この国は戦乱の真っ只中。ストレッチは大勢の兵士たちと共に戦争に参加する事になり、手柄を立てて皇帝の親衛隊にまで出世したりするあたりは非常にご都合的だ。
しかし、その一方でお妃様は皇帝に相手にされずお怒りのご様子。それをいいことに間男と浮気を続けていたが、ある日その男と"デキちゃった"ことで国を乗っ取ろうと企む。日本のニンジャやねーちゃんのパパ(実はストレッチの親の敵)を利用しまくり、とうとう遂には皇帝の暗殺に成功。芝居を打って邪魔なストレッチたちを幽閉し、間男を新たな皇帝に祭り上げて全てを手に入れてしまった。余興としてストレッチと友人の兵士を戦わせようとするお妃様だが、もちろん悪事の結末には天罰が待っていまして…。

▲この作品、冒頭に「この物語は事実をもとにしています」という前置きがあり、史劇であることが明示される。
しかし本作の一番トンチキなのがこの国の描写で、これによって史劇という説得力が皆無になっているのだ。この国には外人地区が点在している模様で、紹介したとおり日本人も出てくる。だが、その国の光景が日本・タイ・マレーシア・インドなどがごちゃごちゃになったような闇鍋のようなもので、当然戦争にもこれらの国々が参加している。
インドとかマレーシア勢はまだ違和感が無いが、甲冑とチョンマゲ姿のサムライが中心の日本勢が凄まじく場違いだ(笑)。そもそも、小国といえども外国の軍勢を多く従えた多国籍軍なんて、本当に当時はありえたのか?と疑問を抱かずにはいられない。ドルフの『ブラック・ソルジャー』みたいにファンタジーとして割り切った描き方をしてくれたなら飲み込めたが、これで史劇だって言われてもなぁ…。
なお、本作は剣でのアクションが大部分を占めるが、たまにワイヤーを使ったアクションなども登場。特にストレッチが奴隷市場から逃走を図る場面の出来がとても良く、小道具を使ったアクションなどはジャッキー映画のそれを髣髴とさせる。これで最初はおおいに期待したが、いざソードアクションになると途端に動きが悪くなったのには相当落胆させられました(萎
ストレッチ自身は十分動ける人なのだが、どうしてこんなにモタつく結果を生んでしまったのか定かではない。ワイヤーアクションもニンジャの演出も手慣れてない感じがしたが、やっぱりこうなったのはアクション指導の責任なのだろうか。もし香港系の武師(郭振鋒とか梁小熊とか)が関わっていたなら、それこそ素晴らしいアクションが見られたのかもしれないが…。

『少林キッズ』

2009-01-26 21:24:55 | カンフー映画:珍作
「少林キッズ」
原題:小醉拳
英題:THE LITTLE DRUNKEN MASTERS
制作:1995年

●ここは天下の少林寺。18人の小坊主たちが今日も修行に明け暮れていたが、クーデターを目論む朝廷の将軍・熊欣欣(チョン・シンシン)が現れ、「病床の皇帝を助けるために生き仏を差し出せ!」と押し入ってきた。
この混乱で館長ら幾人の少林僧が倒れ、たまたま少林寺に居合わせていた李若[丹三](カルメン・リー)は、小坊主たちと共に生き仏の秘密を知る三徳和尚(!)を求めて決死行に挑んだ。
 道中、ケチな人形遣いの季天笙と出会った一行は旅費稼ぎに奔走するが、熊欣欣と追っ手たちは追及の手を緩めない。そうこうしているうちに李若[丹三]と小坊主たちがアクシデントで離散し、たちまち敵兵に捕まってしまった。
季天笙はたった1人で敵陣へ救出に向かい、三徳和尚(劉錫明)の救援によってどうにか皆を救う事が出来た。しかし野望に燃える熊欣欣は、一行が隠れていた酒蔵へと悪鬼の如き形相で現れるのだが…。

 本作は日本で『少林サッカー』が公開された際、どさくさに紛れてリリースされた作品です。見ての通り、邦題は明らかに『少林サッカー』を意識していますが、実際は90年代に製作された『酔拳2』の便乗作だったりします(苦笑
キャストには黄飛鴻映画にゆかりのある俳優が揃えられており、『酔拳3』で主人公に扮した季天笙や、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地雷鳴』でラスボスを演じた熊欣欣が似たような役柄で起用されていました。
 しかし看板に偽りありとはこの事で、「小醉拳」というタイトルなのに酔拳はほとんど活躍しません。何度か小坊主たちが演武を披露するシーンはありますが、酔拳らしい酔拳を見ることができるのはここだけで、ラストバトルでは影も形も無いのです。
武術指導は袁家班の袁祥仁(ユエン・チョンヤン)が受け持っているため、アクションのクオリティはそれなりに高いレベルを維持しています。ただしストーリーについては統一感に欠け、コメディタッチの展開から突然悲惨な展開になったりと、かなりチグハグな印象を受けました。
三徳和尚という大物キャラが子供の笑い物にされる点や、本当に90年代の映画なのかと思ってしまうほど古臭い作風など、様々な部分に疑問符がつきまとう本作。とはいえ、こうして90年代も好小子の系譜が密かに守られ続けていた…その一点だけは評価してもいいのではないでしょうか。

『達磨神功/達摩神功』

2009-01-25 19:52:03 | カンフー映画:珍作
達磨神功/達摩神功
英題:Grand Master of Shaolin Kung Fu
制作:1981年(78年?)

●韓国のテコンドースター・張一道の主演作(もちろん韓国映画)だが、香港から金剛(カム・カン)が出稼ぎ出演していることでも知られている作品だ。香港映画では韓国でロケをすることが度々あったので、その繋がりから韓国産功夫片に香港や台湾のスターが出演する事もあった。そうして劉家輝・羅烈・陳惠敏・元秋・楊斯・高飛などが異郷の地に渡って戦いを繰り広げた訳だが、いったいどういう基準でゲストを選んでいるのか気になるところである。
ある夜、「これで武林の覇権はワシのもんじゃ!」とのたまう豪族が殺され、小さな宝玉が盗み出された。この宝玉は、伝説の奥義書が隠された仏殿の封印を開く鍵で、ふとした事から旅の武芸者・張一道はそれを手に入れ、奥義書を巡る争乱に巻き込まれてしまうのだった。
宝玉を狙って林子虎ら武林の猛者たちが暗躍する中、張一道は仏殿へと辿り着く。そこで待っていたのは、仏殿の管理者・崔峰だった。「何故お主は力を欲する?」と問う崔峰に、張一道は父母の仇である怪しいペンダントを持った男を追っていることを明かす。思いっきり復讐目的なのにも関わらず、崔峰は奥義の伝授にOKサインを出した(いいのかよ!?)。
その後、張一道の婚約者・林銀珠が合流し、金剛らの一団との戦いへと物語は雪崩れ込んでいく。一緒に修行も同時進行で続けるのだが、その奥義というのが完全に超能力そのもの。『地獄十二關門』でも似た感じの描写があったが、韓国産の武侠片はどうしてもこういう特殊効果がチープになってしまう傾向が強いようだ(爆)。その後、張一道は金剛の一団に奥義書を奪われ、奪還に向かった林銀珠もあわやというところまで追い詰められる。間一髪で駆けつけた張一道は金剛を打ち倒すが、そこに真の黒幕で張一道の仇敵でもある李康助が襲い掛かってくるのだった…。
韓国映画に金剛が出るということで、私としては「テコンドー出身の金剛の足技が見られるのでは?」と期待していた。しかし実際は見ての通り、ラスボス前哨戦の相手として結構アッサリ目に倒されてしまうという、ちょっと残念な結果に終わっている。功夫アクションは特に悪くない出来で、最後の張一道&林銀珠VS李康助の対決もそれなりには見られた。だが、張一道が苦労して体得した超能力を最後まで使わなかったり、張一道も歯が立たなかった權一銖&趙春を林銀珠が倒したりと、各所で不都合が生じているのだ。
ストーリーはごくごく普通の復讐劇で、アクションもごくごく普通のクオリティ。そのため作品のアラが余計に目立つこととなってしまったのだろう。どうせなら金剛をラスボスにして大暴れさせれば面白かったのだろうが…。

『赤龍の女』

2009-01-23 22:02:01 | 日本映画とVシネマ
「赤龍の女」
制作:2006年

●10年前に黒澤組の遠藤憲一によって両親を惨殺された美崎悠。彼女は大葉健二の元に引き取られ、復讐の為に彼の指南で剣の修行に明け暮れていた。次々と黒澤組の組員を辻斬りしていく美崎だったが、自分に好意を寄せている黒澤組の組員・武智健二に惹かれつつあった。
一方、遠藤は辻斬りの犯人を捜そうと我修院達也(!?)ら殺し屋トリオを放っていた。この殺し屋トリオ、馬鹿げた風貌とは裏腹に残酷な連中で、たちどころに美崎たちの正体が知れることとなった。武智は遠藤に懇願して美崎だけは見逃してもらうが、大葉は間も無く処刑されようとしている。「君は逃げるんだ」と武智は言うが、彼女は大勢の兵隊が待ち受ける敵陣へ、父の形見の日本刀を手にして突き進むのだった…。

 要するに本作はスケールの小さい『Kill Bill』です。主演の美崎悠はモデルが本業の方なんですが、なんといっても本作は大葉健二というビッグネームに惹かれます。大葉はJACに所属して多くの作品に参加。代表作は『宇宙刑事ギャバン』『バトルフィーバーJ』と数知れず、全盛期のJAC映画では真田広之や黒崎輝といった面子と共に第一線で活躍するなど、日本を代表するアクションスターでもありました。
この手の作品だと、大物スターはすぐに退場してしまいそうな(あるいは最初と最後にだけ出演して終わるような)印象がありますが、本作で大葉さんは全編に渡って活躍しています。ちなみに本作の格闘シーンはソードバトルが中心。アクション指導は戦隊シリーズや仮面ライダーに参加したJACの藤榮史哉(大葉さんの直弟子!)が担当し、その殺陣はかなり迫力があります。美崎も十分な頑張りようを見せていますが、やはり大葉さんに完全に喰われていました(爆
 大葉さんのアクションシーンにおける見せ場は3つあり、どれもイイ動きで応えています。1つ目は美崎を鍛えるシーンの立ち回りで、ここでの大葉さんの厳しい指導っぷりは「JAC時代もこんな感じで後輩を鍛えていたのかな…」と思わせてくれます。
2つ目は喫茶店に押し入ってきた我修院らとの対決で、こちらでは打点の高い蹴りを放ったりと年齢を感じさせないファイトを展開。最後はクライマックスの乱闘において、両手を手錠で繋がれたままキレキレな動作を見せていました。やはり元JAC、年は取ってもアクションにいささかの衰えも感じさせません!(嬉
 ただ、美崎VS和泉奈保との一戦には不満が残ります。和泉は遠藤の片腕として実力者ぶりを見せ付けており、最後に立ちはだかる強敵として期待させる存在でした。ところが戦いの途中でラリった遠藤に撃たれ、美崎VS和泉の対戦はあっという間に終了。では遠藤が立ちはだかるのかと思いきや……まさかあんな結末にしてしまうとは、ちょっと残念に思えました。
エロいパッケージとは裏腹に、53歳(2009年現在…ジャッキーとは1つ違い!)を迎える大葉さんの活躍ぶりが多いに光る一本。けど、美崎目当てに見るには少し微妙かも…?

『ストリートファイター 2050』

2009-01-21 21:34:16 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ストリートファイター 2050」
原題:BLOODFIST 2050
制作:2005年

●昨年(2008年)の9月26日、エクスプロイテーション・ムービーの雄であり、B級映画の帝王ロジャー・コーマンの片腕として活躍していた男がこの世を去った。彼の名はシリオ・H・サンチャゴ…多くのB級映画に足跡を残してきた男で、当ブログでも監督作の『ザ・フューチャー・ハンター』『キング・オブ・フィスト』等々を紹介している。その作風は良くも悪くもB級的なものばかりだが、格闘映画・コマンドアクション・コメディ・SF・ホラーから女囚モノまで手広く手がけており、この手のジャンルの象徴ともいえるような存在の人物でもあったのだ。
本作は、そんなサンチャゴの日本に上陸した(現時点で)最後の作品である。この作品が作られた当時、格闘映画界はトニー・ジャーの登場によって震撼させられ、同時に多くのアクション超人が誕生していた。2004年に『アルティメット』でシリル・ラファエリが、その翌年にはマティス・ラントヴェアーが『バレット・フィスト』で市場を席巻。2006年にはマルコ・ザロールが『Kiltro』で彗星の如く現れた。無論、この流れにサンチャゴとコーマンも便乗し、本作のような格闘映画が完成したのだ。
荒廃しきった近未来のロサンゼルス。そこへ兄を探して現れたマット・マリンズは、兄がロスの闘技場でファイターとして活躍していた事と、その兄が何者かによって殺された事を知る。ストリッパーのねーちゃん(脱ぎ要員)と気のいいファイター(最強の敵への噛ませ犬要員)から話を聞いたマットは警察に駆け込むが、当然の如く役に立たず。そこで出会った不良刑事(ちょっと『アカギ』の安岡っぽい)の助言で、犯人を探すために闘技場へ参戦するのだが…。
別の映画から持ってきた流用映像で始まるオープニング、使い古された舞台設定と展開、絶えず裸のねーちゃんが乱舞する物語…とまぁ、ご覧の通り本作はバリバリのB級映画だ。ストーリーに真新しいものは何一つ無く、その既視感は『NO RULES/ノー・ルール』とタメを張るほど。だが、それでも本作がそれなりに見ていられるのは、良質な格闘アクションの連発で画面を彩ってもたせているからに他ならない。

主演のマット・マリンズは本物の格闘チャンプで、アクロバティックな動作もそつなくこなすオールラウンドタイプの猛者。その技量は他のアクション超人たちと比較しても何ら遜色無いものだが、この人、ちょっと個性に乏しいのだ。シリル・ラファエリには野性味溢れる魅力があったし、マティス・ラントヴェアーは顔も技もキレる人だった。ではマットはどうだろうか?…と、改めて本作の彼を見てみると、単なるアクションの凄い人としか見えないではないか!
この先、恐らく格闘映画界には幾多のアクション超人が現れるはずだが、そうなったらアクション超人たちのインフレが発生する危険性がある。もしその時が来た時に生き残れるのは(当たり前だが)他とは違う個性の強いスターだけだ。本作を見る限りマットの技量に問題は無いが、スター性や個性という点では明らかに既存のアクション超人たちよりも劣っている。現在マットはアメリカ版『仮面ライダー龍騎』などで活動を続けているようだが、願わくば更なる躍進を期待したい。

ちなみにストーリーはクライマックスまでお決まりの展開をなぞるが、ラストでちょっとしたどんでん返しがあるのが見もの。もし本作がヒットしていたなら、そしてサンチャゴが存命していたのであれば、ドン・ウィルソンを担ぎ出した時と同様に、マットを主演に添えて大量の格闘映画を製作したのかもしれない…(合掌)

『ナイト・ウォリアー』

2009-01-19 20:26:02 | マーシャルアーツ映画:下
「ナイト・ウォリアー」
原題:NIGHT OF THE WARRIOR
制作:1990年

●本作はある意味マーシャルアーツ映画版『空手ヘラクレス』といっていいぐらい、主人公が「戦おうとしない」作品だ。こっちとしてはマーシャルアーツ映画を見ているんだから、とっとと戦って格闘アクションの1つや2つぐらい見せて欲しいものだが…ま、それに関しては後述にて。
主人公のロレンツォ・ラマスはマフィアから借りた借金を返済すべく、日々闇の格闘試合で戦っていた。どうにか完済したラマスは、趣味の写真撮影に精を出したり、キャスリーン・キンモント(ラマスの妻)にアプローチをかけたりとハネを伸ばしはじめる。ところがマフィアはラマスを死の決闘に呼び戻そうと、再び動き始めたのだった。
やっとこさ綺麗な体になれた上に、これからカタギの生活をエンジョイしようという矢先だったので、もちろんラマスはマフィアの「また戻って闘え」という要求を跳ね除ける。当然これに怒ったマフィアは、ラマスに殺人の濡れ衣を被せたりと揺さぶりを仕掛けてきた。それでも勇敢にマフィアからの警告に反抗するラマス…しかし、キャスリーンが人質として誘拐されるに至って、とうとうラマスは闘いの舞台へと足を踏み入れてしまう…。
…というわけでこの作品、ラマスがなかなか闘いたがらないため、メインイベントとなる決闘は後半20分くらいになってようやく登場する。ここまで引っ張ってくれたんだから、さぞ凄い闘いが繰り広げられるのだろうなと思っていたのだが、事実上のクライマックスとなるVSジェームス・リュー戦は、真っ暗な空間の戦いなので見づらいことこの上なし。殺陣自体も単調だったため、これにはかなりガッカリしてしまいました。
また、このあとラマスがマフィアと蹴りをつける展開になるのだが、こちらもモタつきまくってて全然面白くない。あのデカブツ黒人とのタイマン勝負があるのかと思いきや、こちらでも思いっきり腰砕けな結末を用意してあるなど、ほとんど嫌がらせかと思うぐらいストーリー展開がゴタゴタしているのである。
ラマスが闘いたがらないなら、そのシチュエーションに符合したアクションを加味すればいい(例えば、ラマスの元へザコが何人か嫌がらせに現れて、それをラマスが蹴散らすなど)。だが本作は、その部分をアクション以外の要素で埋め合わせてしまっている。本作の大きな欠点は、この部分とラスト間際の未整理な展開の2つであったと言えよう。
ところで本作、製作と脚本に『タイムコップ2』のトーマス・イアン・グリフィスが関わっている。どうせならトーマスには本編にも出てきてもらったらよかった…と思うのは私だけ?

『忍者』

2009-01-17 21:32:11 | 女ドラゴン映画
「忍者」
原題:終極忍者/戰神再現
英題:Lethal Ninja/The Wild Ninja
制作:2004年

▼かつて、香港映画にニンジャ映画というジャンルが存在した。
アメリカでのニンジャブームに便乗する形で産声を上げた香港ニンジャは、恐るべきポテンシャルを持つ羅鋭(アレクサンダー・ルー)が闘い、フィルマークが製作したゴミ映画の数々で(良くも悪くも)一躍有名になった。しかし時が移り変わると共に香港ニンジャは衰退し、今ではニンジャ映画という存在そのものを知らない香港映画ファンも増えてきてしまっている。そんな現代において、久々に香港ニンジャを見ることが出来るのが本作である。

■日本との合作で作られただけあって、作品そのものはしっかりしている。
世界征服を目論む悪の組織の首領・李子雄(レイ・チーホン)は、科学者の手から万能ワクチンが入った箱を強奪する。しかしその箱を開けるには黄子華という売れないミュージシャンが鍵となっていたのだ。当の黄子華は何の事だかサッパリだが、彼を巡って伊賀忍者の黄聖依・くノ一の白田久子・李子雄の部下であるK1ファイターの魔裟斗の三者が三つ巴の戦いを繰り広げる。最終的に黄聖依の父・高雄(エディ・コー)が現れ、黄子華・黄聖依・白田は忍者の隠れ里へと逃げ延びた。
ここから忍者の隠れ里で黄子華たちの交流が描かれるが、ここで物語のテンションがダウンしてしまうのが残念だ。それから色々あって高雄がワクチンの奪取に成功するものの、敵の逆襲に遭って里は大きな打撃を受けてしまう。襲撃の中で高雄は死に、黄子華が自ら投降することで混乱に決着が付いたが、もちろんこのままでは終われない。黄子華を助け、高雄らの仇を討つために、黄聖依と白田は敵地へと向かうが、そこで意外な結末が待ち構えていた…。

▲本作は恐らく香港映画でも珍しい、真面目な正統派ニンジャ映画である。
香港ニンジャ映画といえば先にも挙げた羅鋭やフィルマーク作品を連想するが、これらはどこか杜撰な雰囲気の漂う作品ばかりで、香港ニンジャ映画=バカ映画という図式が今でも認知されている。
そんな中で正統派の香港ニンジャ映画となると、日本との合作で作られた『龍の忍者』『忍者&ドラゴン』、ショウブラの『少林寺VS忍者』『五遁忍術』くらいのものであろう(人によってはどれもバカ映画に見えるかもしれませんが…)。まだ私は未見だが、倉田保昭の『忍者外伝』などもギリギリ正統派のニンジャ映画といえるはずだ。
こうして見てみると、真面目な香港ニンジャ映画というのは非常にマイノリティであることが解る。本作はストーリーや演出にモタつくところがあり、ラストに関しても黄聖依と再会しないで、黄子華のモノローグで終わっていればスッキリできたと思っている。が、本作は一般的な香港ニンジャ映画のイメージである「バカ映画」ではないのである(必ずしも、という訳ではないのだが…ってどっちやねん・笑)。
しかし、正統派となった代わりに本作は大きな代償を払っている。本作が無くしてしまったもの…それは香港ニンジャ映画に存在した"いかがわしさ"だ!正統派の香港ニンジャとして挙げた『龍の忍者』『五遁忍術』、そして羅鋭のニンジャ映画には、えも言われぬいかがわしさが存在し、それが香港ニンジャ映画をより一層神秘的なものへと引き立たせていた。だが本作はその毒気がすっかり抜けてしまっており、なんとも味気無いものになっているのだ。完成度が高いのも良し悪し、である。

本作の武術指導を一手に引き受けたのは成家班出身の李忠志。おかげで劇中の功夫アクションは見応えがあり、特に中盤での高雄VS魔裟斗という異色の対決は興味深い。そういえば高雄は『孔雀王』で日本と香港の合作映画に出演し、『ポストマン・ファイツ・バック』ではニンジャに扮した経験を持つ。本作に高雄が出演したのも必然だったという事なのだろうか。
ちなみに成家班繋がりなのか、黄子華の借金を取り立てるチンピラに慮恵光(ロー・ワイコン)がカメオ出演している…のだが、残念ながらアクションは1つも披露していない。
実は慮恵光、日本が関わるといつもロクな事にならないというジンクスが存在する。『覇拳』では青竜刀を持たされて持ち味である足技が使えず、『マッスルヒート』では哀川翔の前座にされたりと、どちらのケースも慮恵光が宝の持ち腐れ状態に陥っている(『イントゥ・ザ・サン』はまだマシな方か)。もしも慮恵光がまた日本が関わる映画に出るなら、今度はもっと良い役で出て欲しいと切に願っています(涙

『NO RULES/ノー・ルール』

2009-01-15 22:01:20 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「NO RULES/ノー・ルール」
原題:RING OF DEATH
制作:2008年

●マーシャルアーツ映画において、裏世界の闘技場と潜入捜査モノという2つのジャンルは定番中の定番だった。『アンダー・カバー』系列を例に挙げるまでも無く、『サイバー・ウォーズ』『キングオブドラゴン』など、2つの要素を含んだ作品は無数に存在する。本作もそのうちのひとつなのだが、内容は90年代からまったく進歩していないシンプルな作風で…というか、ここまで単純で良いのか?と思うほどのスカスカな作品である(笑
 ジョニー・メスナーは元・武闘派捜査官で、現在は妻と別居中の身。そんな彼の元に、FBIで働いているかつての相棒から、ある事件の潜入捜査を持ちかけられた。
曰く、ステイシー・キーチが所長を務める刑務所で異様な数の囚人が死亡しており、この異常の原因を調べて欲しい…というもの。説得されたジョニーは、妻や子にも真実を伝えぬまま悪の巣窟へと飛び込んだ。その刑務所では秘密裏に秘密の闘技場でデスマッチが行われており、ネットで配信されて巨額の金が動いていた。身分を隠して捜査を続けるジョニーはこのデスマッチに挑むのだが…。
 無論、このあとはジョニーと一緒に刑務所に来た貧弱くんが死んだり、刑務所で仲良くなった男が「出所したら家族とよろしくやるんだ…」と語った直後にデスマッチで死亡したり、身分がバレて妻と子が人質に取られたりするのはご想像の通り。とにかくお決まりのパターンばかりで物語は進んでいく。これが94年ごろにPMエンターティメントあたりが作った作品ならまだしも、本作は2008年に作られたバリバリの最新作だ。なのにここまで新鮮味の無い展開ばかりというのは凄いのではないだろうか(苦笑
まぁこの辺はご愛嬌と言える許容範囲内なのだからまだいいが、個人的にはラストの結末がちょっと納得ができなかった。あの後、キーチが収監された先の牢で相部屋になったのがあのデカブツ黒人だった…なんてオチがあればスカッと出来たのだが、結局キーチは自分の王国に帰ってきてニヤニヤしたまま幕は下りる。一応は社会的な制裁こそ受けたのだろうが、根源悪たるキーチが五体満足で健在なのではフラストレーションが残りっぱなし。これだけはどうにかして欲しかったなぁ…。
 格闘シーンについては拳闘というかケンカアクション的なスタイルが中心であり、編集も最近はよく見られるチャカチャカしたタイプのもの。しかし血みどろで繰り広げられる戦いは壮絶であり、まさしく「血で血を洗う」という言葉が相応しいバトルが展開されている。ジョニーの動きも悪くは無く、ラスボスとして立ちはだかるデカブツ黒人も体格の割には見られるアクションを見せていた。こちらについては及第点一個上といった感じである。

『怒女金剛/漂之七[兆鼓]郎/漂ノ七發郎』

2009-01-13 22:08:21 | カンフー映画:駄作
怒女金剛/漂之七[兆鼓]郎/漂ノ七發郎
英題:Handsome Vagabond/Street Fighters II
制作:1982年

●『歹路不可行』に引き続き、李小飛・馬沙・陳麗雲のトリプルスクラムで製作された作品だ。同キャストが起用されたということは『歹路不可行』もそれなりにウケたということなのか?なお、本作はフィルマークの製作ということになっているが(スタッフ欄にはまたトーマス・タンの名前が…)もちろんこれは嘘っぱちだろう。
本作のジャンルは功夫片ではなく黒社会(香港ノワール)ということになっているが、作品としては『歹路不可行』よりも幾分かマシになっているという程度(むしろ、功夫アクションについては本作の方が充実しているかも)。ヤクザの馬沙を助けた李小飛がヤクザの世界でトントン拍子に出世街道を突き進んでいく様子を描いた物で、雰囲気はなんとなく日本のVシネっぽい感じだ。
様々な組織やチンピラ連中が交錯する中、ある日李小飛はお偉いさんを守ろうとしてチンピラの1人を殺してしまう。3年のお勤めを終えた李小飛はシャバに戻ってきたが、塀の向こうにいた間にお偉いさんは何者かによって殺害され、身の回りの状況も一変してしまっていた。果たして黒社会を引っ掻き回している者の正体は?そしてその黒幕は…!?
…とまぁ、気力を振り絞って粗筋を書いてみたが、この物語が物凄くかったるい。功夫片じゃないので作品の内容は察しが付いていたのだが、とにかく演出が間延びしていて全然面白くないのだ(馬沙の散り際は良かったが)。
『歹路不可行』はあれでも活劇の連続でまだ見られたものの、本作の場合はドラマが平坦なので詰まらない事この上ない。劉忠良の『好小子的下一招』を撮った張智超が本作の監督だが、『好小子的下一招』はこんなに面白くなくはなかったはず。『歹路不可行』の件でも気になっていたけど、功夫片の監督は現代動作片は苦手なんだろうか?
ちなみに私の所有するDVDは例のSATURNレーベルから発売されているバージョンだが、どうやらVHSからダビングされたもののようで、とにかく画質が悪い(まぁこれはSATURNレーベル全てに共通した話なのだが)。ところが作中に日本語で「巻き戻し」と表示される場面があるのだ。もしかして素材となったVHSは日本の功夫映画ファンの方がダビングしたもので、それをSATURNレーベルが素材として使用したのかもしれない。
色々と疑問の尽きない不思議な作品だが、血眼になってまで見るようなものではありません。どうしても表示される「巻き戻し」を確認したいという方だけはどうぞ!(爆