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功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『廣東鐵橋三』

2018-04-13 21:21:31 | カンフー映画:佳作
廣東鐵橋三
英題:Cantonen Iron Kung Fu/Iron Fisted Warrior/The Iron Hand Boxer
製作:1979年

梁家仁(リャン・カーヤン)は町の運送屋で働く力自慢の若者。ケンカの腕もめっぽう強く、今日も友人の胖三(パン・サン)や丁華寵たちとダベったり、八百屋の李超(本作の監督も兼任)と腕比べをしていた。
そんな彼らの前に、馬金谷がリーダーを務める謎の一団が現れる。連中は謎の黒幕に命じられ、武術大会を主催して挑戦者を募りはじめた。どうやら誰かを探しているらしく、最近になって町に来た王鐘(ワン・チン)は意味深な反応を見せる。
 案の定、武術大会は馬金谷たちが勝ち続け、挑戦した李超も重傷を負ってしまう。友の仇を討つべく、梁家仁は町の有力者にして武術の達人・王侠のもとで武術の特訓を始めるのだった。
しかし、リベンジしたい気持ちが先走った梁家仁は、修行も満足に受けていない状態で大会に参戦。おかげで強大な馬金谷には歯が立たず、さらには容体の悪化した李超が死亡してしまう。彼は自らの行いを反省し、修行に集中することを誓った。
 一方、武術大会では馬金谷に代わって李登財が挑戦を受けていたが、達人である王鐘の前に完敗する。これを機に馬金谷たちは暗躍を開始し、梁家仁の友人たちが次々と犠牲になっていく(なぜ梁家仁の友人たちが襲われたのかは不明)。
敵の内情を探ろうとした丁華寵が、そして王侠までもが敵の魔手に倒れ、これに気を良くした黒幕・高飛(コー・フェイ)が遂に姿を現した。しかし梁家仁も黙ってはおらず、憎き馬金谷との対決に挑もうとする。
 戦いは一進一退で進むが、そこに突如として王鐘が介入。実は彼こそが馬金谷たちの探していた人物であり、高飛と敵対する存在だったのだ。梁家仁は死闘の末に馬金谷を倒し、本懐を遂げると修行の日々へ戻っていった。
そのころ、王鐘は高飛との最終決戦に臨んでいたが、実力は相手が一枚も二枚も上手。たちまち劣勢に立たされ、助太刀に現れた梁家仁が立ち向かうのだが…!?

 本作は『飛竜カンフー』で監督デビューを飾り、この直後に『必殺のダブルドラゴン』を手掛けることになる李超の監督作です。当時流行していた『酔拳』の便乗作で、実在の拳法家・鐵橋三を扱ったコメディ功夫片として作られています。
このスタッフとキャストなら『必殺の~』と同じハイテンションな快作を期待してしまいますが、実際の作品はわりと大人しめ。笑える描写はそこそこありますが、本筋はシリアスかつ人死にが多いため、コメディとしては微妙な出来です。
 恐らく、監督の李超はストーリーに一捻りを加え、他のフォロワーとは違った作品を目指したのでしょう。しかしこの目論見は裏目に出てしまい、単に物語を解り辛くしただけで終わっています。
思えば、彼は『飛竜カンフー』でもコメディに失敗しており、本作で同じミスを繰り返したことになります。李超もその点は自覚していたらしく、より娯楽性を高めた『必殺の~』で見事に雪辱を晴らしていますが、それはまた別の話…。

 一方でアクション描写に関しては、梁家仁を筆頭に実力派の俳優が揃っているため、平均以上のクオリティは保たれていました。ただ、豪快なムーブで押し切っていた『必殺の~』と違い、ややメリハリに欠けている感があります。
ラストバトルの梁家仁VS高飛も、両者の動きは相変わらず力強さに満ちているものの、本作ならでは!と言えるような個性が感じられません。次回作の『必殺の~』で主役を増員し、解りやすい拳法を用いたのは今回の難点を省みた結果なのだと思われます。
決して完成度は高くありませんが、のちの傑作を生み出すための下地になった重要な作品。本作を見た上で『必殺のダブルドラゴン』を見返すと、また違った発見があるかもしれませんね。

『ドラゴンズ・クロウ 五爪十八翻』

2018-02-16 16:17:03 | カンフー映画:佳作
「ドラゴンズ・クロウ 五爪十八翻」
原題:五爪十八翻/龍拳蛇刀
英題:Dragon's Claws
製作:1979年

▼こんにちは、今年から仕事のシフトが変わって夜勤の数が1.5倍になった龍争こ門です(げっそり)。今年から心機一転を誓った矢先の停滞ですが、忙しかったのは去年も同じ。新作のチェックも欠かしていないので、なんとか更新や特集を続けていきたいと思っています。
さて話は変わりますが、ひとくちにカンフー映画と言っても、年代や流行によって様々なタイプが存在します。その中で私がお気に入りを挙げるとするなら、やはり70年代末期~80年代前半にかけて量産されたコメディ功夫片を推したいと思います。
 『神打』で劉家良(ラウ・カーリョン)によって開拓されたコメディ功夫片は、『酔拳』『蛇拳』の大ヒットで数えきれないほどの亜流作品が作られました。私はこの時期の作品が好きで、ちょっと前に関連した特集を組んだ事もあります。
この手の亜流作品は、やんちゃ坊主に酔いどれ師匠のような“お約束”が多々あり、そのクオリティは製作側の判断に左右されます。果たしてギャグで押し切るのか、それともパターンを外すのか、或いはアクションに全てを賭けるのか、それとも…。
本作はそうしたコメディ功夫片の1つで、『少林寺への道』の郭南宏(ジョセフ・クォ)が製作・監督・脚本の三役を担当。ただし、作品としては執行導演を務めた魯俊谷のカラーが強く、功夫アクション尽くしの一篇となっています。

劉家勇は龍形門を率いる劉鶴年の一人息子。今日も熱心な父を横目に怠けていたが、突如として劉鶴年の体調が急変。すぐに道場へと戻るも、そこには恐るべき龍拳の使い手・黄正利(ウォン・チェン・リー)が待っていた。
この男、かつては劉鶴年と同じ龍形門の門弟であり、劉鶴年の妻・元秋(ユン・チウ)とも浅からぬ関係にあったという。黄正利は挑発的な態度を見せて去ったが、直後に現れた小汚い薬売り・白沙力のせいで珍騒動が持ち上がる。
 実は劉鶴年には後ろめたい過去があり、龍形門の跡取り娘であった元秋を手籠めにし、そのまま道場主の座に納まっていたのである。彼は抵抗した元秋によって死に至る拳を受け、今やその命は風前の灯であった。
その後、部下の朱鐵和・陳樓を引き連れて現れた黄正利は、劉鶴年を決闘の末に撃破。冴えない道場主はそのまま死亡し、その証であるメダルも奪われる…のだが、いつの間にかメダルは偽物にすり替わっていた。
 「本物はどこだ!」と迫る黄正利に刃向った劉家勇は、あろうことか父と同じ死に至る拳を受けてしまう。元秋は一門を解散させ、劉家勇の療養と修行の練り直しを行うべく、人里離れたあばら家に居を移した。
しばらくは親子によるマンツーマンの修行が続くが、その間にも黄正利一派は龍形門の門下生を次々と襲撃。動くことの出来ない劉家勇は苛立ちを覚えていたが、友人の韓國材(ハン・クォーツァイ)が妙に強くなっていることに気付く。
 彼が言うには、あの白沙力から拳法を習っているらしい。劉家勇は詫びを入れて弟子入り志願し、彼の身の上を察した白沙力は治療と修行を施していった。いつしか見違えるほど強くなった息子を見た元秋は、伝説の拳士=白沙力の存在を確証する。
その後、修行を完遂した劉家勇は本物のメダルを白沙力から渡される(前半の珍騒動のドサクサですり替えていた)が、敵の追及によって元秋と韓國材が犠牲となっていた。彼は朱鐵和と陳樓を倒し、因縁の黄正利と最後の決戦に臨むが…!?

▲ご覧の様にストーリーはかなり深刻で、主人公と師匠以外の登場人物はほとんど死亡。そこそこ笑えるシーンはあるんですが、話の根幹がまったくコメディ向きではないため、ストレートに楽しめる作品にはなっていません。
白沙力がメダルをすり替えていた件に関しても、黄正利の野望を防ぐという理由は分かるんですが、おかげで何の罪もない門下生たちが犠牲となっています。魯俊谷のコメディ功夫片は出来にムラがあるんですが、本作も例に漏れず…といったところでしょうか。
 とはいえ、李超俊(本作では師父仔名義)によって振り付けられた殺陣は実にアグレッシブで、話の粗を補って余りあるアクションを構築していました。
本作のファイトシーンは役者の長所を引き出すことに特化しており、劉家勇ならキビキビとした拳技を、元秋なら京劇仕込みの軽業を、黄正利なら蹴り技を中心にスタイルを設定。この方針は最初から最後まで徹底しており、アクションへの拘りを感じさせます。
 彼らが絡むバトルは質が高く、単なる小競り合いでも丁々発止の戦いが堪能できます。特にラストバトルでは、黄正利の猛攻に苦戦しつつも、白沙力から学んだ龍拳と元秋に教わった点穴を駆使し、トリッキーな戦法で戦う劉家勇の姿が実に勇ましく見えました。
話については難がありますが、コメディ功夫片の最盛期に作られただけあって、アクションの出来は二重丸。劉家勇&黄正利といえば『洪拳大師』という作品でも組んでいるようなので、コチラもちょっと気になりますね。

『ドーベルマン・コップ』

2018-01-12 14:53:04 | カンフー映画:佳作
「ドーベルマン・コップ」
原題:東方巨龍
英題:Ninjas, Condors 13/Knight Revenger/Ninja Condors
製作:1987年(1988年説あり)

●改めまして、新年明けましておめでとうございます! 去年は連続特集に追われて大忙しでしたが、今年はのんびりマイペース(でも更新はコンスタントに)に戻っていこうと思っています。
さて今年最初の更新は、戌年にちなんで犬にまつわる作品を紹介…したかったのですが、目ぼしい犬関連のタイトルはとっくの昔に紹介済み。なんとかコレクションを漁って出てきたのは本作だけでした(苦笑
 この作品は、台湾ニンジャ映画の代表格・羅鋭(アレクサンダー・ルー)の主演作で、こんな邦題ですが正真正銘のニンジャ映画です。キャストやスタッフも、そのほとんどが過去の羅鋭作品に関わった面々で構成されています。
ストーリーは父親を殺された主人公が暗殺組織に拾われ、足抜けを図って壮絶な死闘を展開するというもの。いわゆる“抜け忍”的な話ですが、よくよく考えると荒唐無稽な台湾ニンジャ映画の中では、最も本来の忍者に近いスタイルの作品なのかもしれません。
 しかし全体的に演出が粗く、人物関係の描き方はとても大雑把です。特に中盤でユージン・トーマスと羅鋭が初めて出会うシーンでは、適当な台詞回しのせいで2人がまったく初対面に見えないという珍事が起きていました。
とはいえ、羅鋭とユージンによるロードムービー的な要素は悪くないし、ストーリーも停滞せずテンポよく進みます。相変わらず血がドバドバ出てくる作風ではありますが、お色気シーンは控え目なのでクドさは感じませんでした。

 そして本作の売りとなるニンジャ・アクションですが、こちらもワイヤーワークや爆破スタントなどで彩られており、ハイテンションな立ち回りが堪能できます(武術指導は暗殺組織のナンバー2にも扮している李海興(アラン・リー)が担当)。
キビキビとした羅鋭の拳技、豪快な蹴りで迫るユージンに加え、組織のボスを演じたジョージ・ニコラスや師匠役の龍世家(ジャック・ロン)も大暴れ! ニンジャ的な立ち回りだけでなく、素面での格闘アクションも充実しています。
 一方、遊園地やスケートリンクでのニンジャ対決は実にシュールでしたが(笑)、クライマックスでは組織のアジトを舞台に銃撃戦が繰り広げられ、銃弾と手裏剣が飛び交う賑やかなアクションが炸裂していました。
最後は羅鋭VSジョージ、ユージンVS李海興の濃い肉弾戦がこれでもかと続き、アクション的にはとても満足のいく内容だったと思います(ただし、このラストバトルではニンジャ的なギミックが一切出てこないので、人によっては物足りなさを感じるかも)。
 全体に漂う安っぽさは払拭できないものの、最後まで一気に見られる勢いに満ちた作品。いまだに羅鋭作品には未開拓の部分がありますが、2018年はそうした未踏の作品にも着目しつつ、円滑なブログ運営を心掛けたいと考えています。
…ところで、主人公の羅鋭はニンジャの殺し者という役どころなんですが、邦題のドーベルマン・コップって誰のことなんでしょうか?(爆

中国産功夫片を追え!(2)『京都球侠』

2017-08-21 23:55:07 | カンフー映画:佳作
京都球侠
英題:Soccer Heroes/Crazy Soccer
製作:1987年

▼皆さんお待たせしました。ここ最近は仕事疲れと夏バテが重なり、思うように更新ができない状況が続いています(汗)。なんとか今月中にこの特集は終えておきたいので、ギリギリですが頑張っていこうと思います。
さて今回紹介する作品ですが、こちらはなんとサッカーと功夫を融合した変わり種の武打片です。サッカーと功夫といえば『チャンピオン鷹』『少林サッカー』が有名ですが、中国でも同様のアプローチは試みられていました。
 私はあまりスポーツに詳しくありませんが、中国では古くからサッカーが親しまれており、80年代は長らく不参加だったW杯に復帰して間もない時期に当たります。本作が製作された背景には、そういった事情が絡んでいるのかもしれません。
劇中でも初っ端から現役選手たちの写真が映し出され、続いて当時のFIFA会長だったジョアン・アヴェランジェ氏の御尊顔と、彼の言葉らしきメッセージが画面いっぱいに登場。内容はなんとなく察せますが、翻訳サイトに突っ込んで読んでみましょう。
”足球起源干中国、它在中国有着千年的歴史……(訳:サッカーの起源は中国で、何千年もの歴史がある――)”
…えっと、実際にジョアン氏はこんな発言をしたことがあるんでしょうか?(爆

■(字幕ナシで観賞したのでストーリーは多少推測が入ってます)
 時は清朝末期。北京に駐留するヨーロッパ大使館(どこの国かはいまいち不明)の主宰により、西洋人同士が対戦するサッカー大会が開催された。
しかしサッカーを知らない中国の観客に対し、西洋人チームはボールを観覧席に蹴り入れるなどの侮辱行為を連発。ボールは来賓の政府高官にも当たり、一触即発の状況となってしまう。
 その時、サッカーを学んだ経験のある張豐毅(チェン・フォンイー)が間に入り、見事なプレーで西洋人チームにボールを蹴り返した。とりあえず事態は収拾したが、先の騒動を重く見た政府はサッカーによるリベンジマッチを提案する。
高官たちは今回の一件を単なるスポーツではなく、国の威信を賭けた大勝負として見ていた。そこで彼らは兵士を鍛え、サッカーチームを選抜しようとするが、ルールを知らないので奇妙な訓練を繰り返すばかりだ。
 一方、この事件に一枚噛むことになった張豐毅は、足が不自由な友人・孫敏と協力して独自にサッカー選手候補を探していく。
集まったのは大道芸人の兄弟、お調子者のスリ、荒くれ者の首領に元罪人などなど…。たびたび政府による妨害を受けたが、遊郭を経営する陳佩斯が後援者となり、西洋人チームのキャプテンの婚約者(ポーリーヌ・ラフォン)も協力してくれた。
 が、物語は順風満帆とはいかない。張豐毅と孫敏の関係はギクシャクし、ポーリーヌは張豐毅に惹かれるがキャプテンとの仲は険悪に。更には、捕まえた政府高官によってチームメイトの1人が殺されるという、痛ましい事件も起きた。
さまざまな困難を乗り越え、練習を重ねた彼らは遂に運命の時を迎える。政府は自慢の兵士チームを出動させるが、まったくサッカーを理解していないため演武のような動きを繰り返し、試合にすらなっていない有様だ(苦笑
試合は0-6のボロ負け状態となり、西洋人チームは兵士チームを文字通りボコボコにしてしまう。そこへ見かねた張豐毅たちが参戦し、チーム総入れ替えという異例の後半戦がスタートする。だが、試合の結末はあまりにも痛切なものだった…。

▲実を言うとこの作品、あまり功夫については重視していません。確かに劇中では何度か立ち回りがあるし、試合でもアクション的な見せ場が存在しますが、試合を根底から覆すほどの要素になってはいないのです。
とはいえ、クライマックスの試合はなかなか楽しいものになっており、神功(念力)の使い手がボールを操ってゴールを決めまくるシーンは「流石にやりすぎだろ!」とツッコんでしまいました(笑
なお、本作のサッカー指導は60年代に選手として活躍し、撮影当時はコーチとして中国サッカー界を牽引していた曽雪麟氏が担当。おかげで試合は見応え十分ですが、選手の活躍に偏りがある(=活躍しない選手がいる)のは少し残念に思いました。
 アクションシーンも僅かながら充分に健闘していて、中盤の大乱闘では大道芸兄弟の弟が大活躍するんですが、演じているのは『カンフー無敵』の王建軍! 彼の詳細については今後の特集で触れる予定ですが、ここでの動きは本当に俊敏です。
ただしストーリーについては消化不良な面があり、先述した張豐毅と孫敏の軋轢・張豐毅とポーリーヌの恋など、簡潔に描き切れていない点がいくつか確認できました。
また、ラストの沈痛な展開は賛否が分かれるところであり、私的には「これはこれでOK」なんですが…やっぱりハッピーエンドで締めて欲しかった気持ちもあります。
 功夫片でサッカーをするというユニークな題材に、真正面から取り組んだ意外な佳作。『チャンピオン鷹』『少林サッカー』とは方向性が違うので、見比べてみるのも一興かもしれないですね。
次回は、またも本格的な武術映画が登場! 伝統ある武術の祖に、李連杰(リー・リンチェイ)と切磋琢磨した某武術家が扮します!

中国産功夫片を追え!(1)『武當』

2017-08-15 23:50:46 | カンフー映画:佳作
武當
英題:The Undaunted Wudang/The Wu Tang
製作:1983年

▼今や世界の映画市場を席巻し、ハリウッドをも脅かしかねない存在となった中国映画界。その勢いは止まるところを知らず、CGを駆使した大作映画がひっきりなしに公開され続けています。
アクション映画においても数多くの話題作が存在しますが、当方は香港映画にばかり執着していたため、中国アクションの過去や旧作功夫片についての知識はサッパリでした(苦笑
 そんな私の一助となったのが、今年の5月に発売された「激闘!アジアン・アクション映画 大進撃」(洋泉社刊)です。この書籍は香港映画のみならず、中国・韓国・タイといったアジア圏全体のアクション映画が網羅されています。
無論、私の知りたかった中国アクション史についても触れられていて、武侠片の源流や何度となく政府の検閲が入った事など、詳細な情報が掲載されていました。
 そこで今月は、にわかに興味が湧いた中国産の功夫・武侠片…それも『少林寺』以降に作られた未公開作に限定し、何本か紹介していきたいと思います。
この時期の作品は日本でも幾つか公開されており、『武林志』『三峡必殺拳』などがソフト化されました。しかし、日本上陸を果たさなかった作品の中にも隠れた名作・佳作があるはず! という訳で、今回の特集ではそうした作品に着目していく予定です。

■(字幕ナシで観賞したのでストーリーは多少推測が入ってます)
 19世紀末の中国では日本人が幅を利かせており、主宰する武術大会で子飼いの空手家たちを暴れさせていた。
そんな中、高名な武當派の拳士・王曉忠が日本人の毒牙にかかり、弟子の林泉(広東省出身の女性武術家)・趙長軍(詳細は後述)・李宇文(広東省武術隊所属)・唐亞麗(陝西省武術隊所属)たちは雪辱を誓った。
 程なくして趙長軍たちはリベンジマッチに挑み、勝負を有利に進めていく。が、敵が隠し持っていた暗器によって李宇文が死亡。故郷で帰りを待ちわびていた唐亞麗は落涙し、もともと体の弱かった林泉は体調を崩してしまう。
仲間たちの間に不穏な空気が漂う中、今度は林泉の後見人?だった臧治國が不穏な動きを見せ始める。政府の役人たちと接触した彼は、密かに日本人と結託。時を同じくして林泉たちを襲撃する謎の一団が現れ、趙長軍は真相を探るべく1人で出立する。
 どうにか後を追おうとする林泉だが、刺客の1人・鞏鐵鏈から衝撃的な事実を知らされる。刺客を指揮していたのは臧治國であり、王曉忠を殺した張本人こそが彼なのだ…と。彼女は臧治國の元から脱出し、どうにか武当山へと辿り着いた。
自らを鍛え、全ての決着を付けたいと懇願する林泉の願いを聞き入れた道長・馬振邦(韓明男と共に武術指導も兼任…陝西省武術隊にて趙長軍を育て上げた中国武術界の重鎮)は、厳しい修行を施していく。
やがて修行を終えた林泉は、兄弟子を死に至らしめた日本人たちとの再戦に臨んだ。敵は臧治國一派を介入させるが、そこに趙長軍や唐亞麗たちが駆けつけ、今ここに最終決戦の幕が上がる! 果たして勝つのは正義か、悪か!?

▲本作は先述した「激闘!~」にも名前が挙がっていた作品で、恐らく『少林寺』のヒットに触発された製作サイドが「向こうが少林ならこっちは武當だ!」みたいな感じで作ったものだと思われます(爆
しかしキャスティングに抜かりはなく、李連杰(リー・チンチェイ)に対抗する主演格(正確には実際の主演は林泉なんですが・汗)として抜擢されたのは、彼と同時期に活躍した本物の武術家・趙長軍でした。
 彼は10年に渡って中国武術界の王者として君臨し、獲得した金メダルの量は54枚を数えるという凄まじい経歴の持ち主。洪金寶(サモ・ハン)や甄子丹(ドニー・イェン)とも交流があり、現在は多数の武術団体や関係組織で要職に就いているそうです。
彼以外にも高名な武術家が多数動員され、本物の武当山などでロケーションを敢行。フォロワー作品としてはかなり頑張っている本作ですが、世界的な知名度では『少林寺』に随分と差を付けられています。

 その原因はストーリーとアクションのそれぞれにあります。まずストーリーですが、本作は功夫片にありがちな復讐と特訓の物語を実直に描いており、一定の質は保たれていました。
ただし、あくまでエンタメに徹していた『少林寺』に対し、本作は作りがやや真面目すぎた感があります。臧治國へのトドメも地味だし、仇の1人である日本人もラストで死なずに逃げ出してしまうため、あまり爽快感が得られないのも難点といえるでしょう。
 アクションシーンについては、趙長軍を筆頭とした武術家たちの動きは本当に素晴らしく、ラストの林泉VS趙秋榮(オランダ精武會という団体でMMAの指導をしている同名の人物がいるが本人かどうかは不明)などで、丁々発止の攻防戦が楽しめます。
一方でカット割りが粗雑で、戦っている人物の位置関係がおかしくなっていたりと、演出面においての不備がいくつか見受けられました。また、『少林寺』でも表演をそのまま持って来たような殺陣がありましたが、本作でもその傾向が強く出ています。
 単独の功夫片としては良作の部類に入るものの、娯楽作としての魅力に乏しく、これで『少林寺』に対抗するのは無理があると言わざるを得ない本作。ギャグやお色気描写もまったく無いので、香港映画を見慣れている方ほど味気なく感じてしまうかもしれません。
さて次回は、趣向を変えてスポーツアクション映画が登場! 元彪(ユン・ピョウ)や周星馳(チャウ・シンチー)もビックリなその作品とは…!?

『龍拳蛇手鬥蜘蛛/龍拳蛇手門蜘蛛』

2016-07-21 23:50:18 | カンフー映画:佳作
龍拳蛇手鬥蜘蛛/龍拳蛇手門蜘蛛
英題:Challenge of Death/Challengs of Death
製作:1978年

●龍拳使いの捜査官・譚道良(ドリアン・タン)は、上官の余松照から武器商人の摘発を命じられた。敵はモンゴル人の劉明を仲介役にしており、その全容は謎に包まれているという。そこで警察は、劉明と恋仲である蛇拳使いのギャンブラー・王道(ドン・ウォン)を引っ張り出した。
譚道良は彼を使って敵に近付こうと考えたが、対する王道も素直に利用されるつもりはなく、2人は事あるごとに対立する。一方、敵のボスであり劉明を囲っていた蜘蛛拳の名手・張翼(チャン・イー)は、譚道良と王道の動向に気付きつつあった。
 そのころ王道と劉明は、取引相手にギャンブルを持ちかけて大金をせしめようと画策。この良からぬ企みは譚道良によって阻止されるが、ここで遂に張翼自らが動き出した。彼は王道を自慢の蜘蛛拳で圧倒すると、組織の秘密を洩らし、不貞を働いていた劉明を殺害する。
続いてアジトに突入してきた譚道良を軽くあしらい、止めに入った余松照を容赦なく捻じ伏せた。図らずも共通の仇敵を持つこととなった譚道良と王道は、協力して蜘蛛拳の攻略を目指す。王道の叔父が誘拐される中、2人は巨悪を倒すことができるのだろうか!?

 皆さんお久し振りです。随分と更新が滞っていましたが、今日からまたボチボチと記事をUPしていくつもりなので、この夏もどうか宜しくお願いいたします。
さて、この作品は台湾屈指の実力派である李作楠(リー・ツォーナム)の監督作です。主演は同氏の作品の常連である王道が、武術指導も同じく常連の金銘(トミー・リー)と龍方がそれぞれ担当しており、今回も充実したストーリーとアクションが構築されていました。
 本作では、相反する性格の主人公たちが反発しあい、やがては手を取り合って強敵に立ち向かっていくまでを一気に描いています。基本的にはシリアスな物語ですが、適度に笑えるシーンもあるのでダレることはほとんどありません。
とはいえ、ややストーリーが込み入りすぎている感があり、終盤で王道の叔父がどうなったのか等、描写不足な点もいくつかあります。致命的なのはラスボスである張翼のスタイルで、その奇抜すぎる格好と戦い方(ワイヤーでビュンビュン飛びまくる!)は、作品の雰囲気を完全にブチ壊していました(苦笑
 注目の功夫アクションについてですが、腰の入った王道の拳技、伸びやかな譚道良の足技は今回も健在。それぞれの持ち味を生かした立ち回りが随所で展開され、ストーリーの粗を吹き飛ばすほどの魅力に満ちています。
ラストバトルでは主役2人が互いの技を習得し、タイトルの意味が“龍拳(譚道良)と蛇手(王道)が蜘蛛(張翼)と戦う”ではなく、“龍拳蛇手で蜘蛛と戦う”だったことが判明。事前に想定していた必殺技が通じないなど、捻りのきいた勝負に仕上がっていました。
改めて李作楠の巧みな演出力と、キャスト陣の高い身体能力に唸らされる一本。台湾功夫片にはまだまだ手を付けていない作品が多いので、これからもコンスタントに紹介していきたいと思います。

メジャー大作を振り返る:香港編(終)『スウォーズマン 剣士列伝』

2016-04-30 23:17:36 | カンフー映画:佳作
「スウォーズマン 剣士列伝」
「スウォーズマン」
原題:笑傲江湖
英題:Swordsman
製作:1990年

▼今月は有名な香港映画をいくつか紹介してきましたが、ラストとなる今回は武侠片ブームの先駆けとなった本作を視聴してみましょう。この作品は金庸の著書である「笑傲江湖」を原作とした作品です。
過去にも何度か映像化されていますが、本作は『大酔侠』の名匠・胡金銓(キン・フー)が監督に就任。新進気鋭の実力派だった徐克(ツイ・ハーク)と手を組み、香港で大ヒットを叩き出しました。
 ただし胡金銓は撮影早々に降板してしまい、実際は徐克を始めとした4人の監督(HKMDBによると許鞍華(アン・ホイ)まで参加している模様)によって仕上げられたとのこと。他にも脚本家が6人もいるなど、現場がどれだけ混乱していたかが伺えます。
しかし本作のスタッフは、数々の困難を乗り越えて革新的な映画を生み出したのです。果たして香港のスピルバーグと呼ばれた男は、いかなる作品を撮ったのでしょうか?

■時は明の万暦年間。宮中の書庫より“葵花寶典”なる秘伝書が盗まれた。そこには極めれば国をも征するという奥義が書かれており、東廠の長官・劉洵(ラウ・ジュン)は不審な動きを見せた金山が犯人だと察する。
そのころ金山の屋敷には、崋山派の師匠の遣いである許冠傑(サミュエル・ホイ)と、師匠の娘である葉童(イップ・トン)が訪れていた。劉洵は彼らに刺客の元華(ユン・ワー)をけしかけ、金山とその一族を皆殺しにしてしまう。
 金山の遺言を受け取った許冠傑たちは、敵に追われながらも崋山派の本拠へと急ぐ。2人は“笑傲江湖”の詩を作った林正英(ラム・チェンイン)と午馬(ウー・マ)、奇妙な老人・韓英傑(ハン・インチェ)と出会いつつ、逃避行を続けていった。
そんな中、劉洵の配下である張學友(ジャッキー・チュン)は、彼らに先んじて崋山派の師匠・劉兆銘(ラウ・シューミン)と接触。自身を金山の遺児だと偽り、“葵花寶典”のありかを掴もうと企む。
やがて物語は苗族の張敏(チョン・マン)や袁潔瑩(フェニー・ユン)を巻き込み、最終局面になだれ込んでいく。様々な勢力が入り乱れる中、最後に秘伝書を手にしていたのは…!?

▲本作は長編小説が原作ということもあり、大幅なアレンジを加えているようです(当方は原作未読)。そのためストーリーはダイジェストとまではいきませんが、やや雑多な印象を受けました。
しかし話が進むにつれて、単なるゲスト出演と思われたシーンが意外な影響を及ぼしたり、登場人物の優劣が頻繁に入れ替わったりするなど、見逃せない展開になっていきます(頭を下げた仕返しをする劉洵が大人気なくて笑えます・笑)。
ただ、やはり最後の連戦は蛇足気味に見えてしまい、あまり綺麗なラストとはいえないものになっていました。個人的には中々楽しめたし、林正英がらみの場面はとても感動的ではあるんですが、ここだけはちょっとなぁ…。
 一方、アクション面については功夫スターが少ないというハンデを乗り越え、実に荒唐無稽なバトルを作り上げていました。手数の複雑さを度外視し、ビジュアルの派手さだけを優先した作りは、後の香港映画にも大きな影響を与えています。
ところが、これにより替え身を多用したスタントマンショーが横行するようになり、アクションシーンの有り様が大きく変わってしまうのです(兆候は『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』辺りからありましたが)。
 本作でも役者本人による殺陣は少なく、特殊効果がメインなので物足りないと言わざるを得ません。例外は林正英や元華くらいですが、生の迫力という点では大いに不満が残ります。
古装片という新たなムーブメントを呼び込み、良くも悪くも数々の変革をもたらした本作。例えるならば、時代にひとつの節目を付けた作品…と言うべきでしょうか。
 さてさて、一ヶ月に渡ってお送りしてきた“メジャー大作を振り返る”ですが、香港編はこれにて終了。来月からは舞台をハリウッドと日本に移し、新たな特集を開始する予定です。
題して、“メジャー大作を振り返る:日米編”! いまだ当ブログで触れていない傑作・話題作の数々をクローズアップしていきますので、まずは次回の更新をお待ちください!

『仁義なき戦い 復讐・血の掟』

2016-03-06 22:57:05 | カンフー映画:佳作
「仁義なき戦い 復讐・血の掟」
「アンディ・ラウのドラゴンファミリー」
「龍之家族 復讐・血の掟」
原題:龍之家族
英題:The Dragon Family
製作:1988年

●香港黒社会の大物・柯俊雄(オー・ジョンホン)は、四大派閥をまとめる頭目であると同時に、龍一族の家長として息子たちに目をかけていた。彼は裏の仕事から手を引き、カタギとして生きていこうと考えていたのだが…。
そんな中、四大派閥の一角を仕切る谷峰(クー・フェン)の弟・何家駒は、仲間の徐少強(ノーマン・ツイ)と共謀して下剋上を画策。柯俊雄の息子の1人・張國強を騙し、ご法度である麻薬密輸の濡れ衣を着せてしまう。
 すぐに罠だと見抜いた柯俊雄であったが、強硬手段を良しとしない彼は交渉でケジメを付け、その上で息子を助けようとする。しかし、柯俊雄は交渉時のトラブルによって殺されてしまい、龍一族は悲しみに包まれるのだった。
悲劇はそれだけで終わらず、この機に乗じて葬儀場を襲った徐少強&何家駒は、龍一族の面々と他の派閥のリーダーたちを殺害。用済みとなった谷峰を始末し、彼らの野望はここに達成される事となる。
だが、台湾に落ち延びていた義理の息子・譚詠麟(アラン・タム)、アメリカ留学から帰国した莫少聰(マックス・モク)、そして劉華(アンディ・ラウ)が復讐に立ち上がった。…今、男たちの魂が烈火のように燃え盛る!

 80年代末、ちょっとしたブームとなった黒社会ものに劉家榮(ラウ・カーウィン)が挑んだ作品ですが、なかなかに充実したキャストを誇っています。
劉華を始めとしたイケメン俳優を中心に、功夫片でお馴染みの惠英紅(クララ・ウェイ)や高飛(コー・フェイ)、個性派脇役の鄭則仕(ケント・チェン)などがズラリ! まるでオールスター作品のような顔ぶれです。
 ただし、劉華たち3人の出番は最初と最後だけ。明らかにスケジュール調整の不足が見え見えの作りですが、監督の劉家榮は特定の主人公を置かず、群像劇に仕立てることで違和感の払拭を試みています。
おかげで主な登場人物に等しく見せ場が用意され、最後まで一気に見通すことが出来ました。しかし気合が空回りすぎて滑稽に見えるシーンも多く、劉華たちが母親を殺されて動揺するカットなどは、その傾向が特に顕著です。

 さて、この出演者に加えて動作設計が武術指導家の大御所・劉家良(ラウ・カーリョン)とくれば、アクションに期待しないわけにはいきません。ところが本作は銃撃戦がほとんどで、肉弾戦は僅かしか無いのです。
まぁ、黒社会を扱ったシリアスな映画でコテコテの功夫ファイトを繰り広げたりしたら、雰囲気ブチ壊しもいいところ。このへんは劉家榮の意向が尊重されているのでしょう。
 素手のファイトが見られるのは中盤以降で、葬儀場での苗僑偉(ミウ・キウワイ)VS成奎安(シン・フィオン)、莫少聰を逃がそうとする鄭則仕の奮闘などが見どころとなっています。
とはいえ、終盤のラストバトルは一定のクオリティを保っているものの、立ちはだかる強敵が徐少強しかいないため、ややボリュームに欠ける印象を受けました。ここは直前に死ぬ高飛を温存しておいて、莫少聰あたりと戦って欲しかったなぁ…。
オチが弱くなりやすい劉家榮の監督作ですが、意趣返しとも取れるラストが強く印象に残る本作。劉華の主演作として見るといささか微妙なので、群像劇だという点を踏まえて視聴するのがオススメです。

『出錯綽頭發錯財』

2015-05-04 23:51:32 | カンフー映画:佳作
出錯綽頭發錯財
英題:The Kung Fu Warrior
製作:1980年

▼(※画像は本作を収録したDVDセットの物です)
 70年代の香港映画界は、李小龍(ブルース・リー)作品に代表されるシリアスな功夫片が主流でした。しかし、許冠文(マイケル・ホイ)と『Mr.Boo!』シリーズの登場によって、流れは一気にコメディ映画へ傾くことになります。
続いて劉家良(ラウ・カーリョン)が『神打』でコメディ功夫片の基礎を築き、『酔拳』がそれを確固たるものにしました。やがて80年代に『悪漢探偵』が大ヒットし、業界全体が現代アクションへの転換を決意しますが、香港コメディの勢いは止まりません。
 『悪漢探偵』が公開された1982年には、早くも洪金寶(サモ・ハン・キンポー)によって『ピック・ポケット!(燃えよデブゴン4)』が撮られ、これがあの『福星』シリーズへ繋がっていく事になります。
しかしその2年前、まだジャッキーもサモハンも現代アクション+コメディに本腰を入れていなかった時期に、いち早く注目を示したプロダクションが存在しました。そのプロダクションの名は……。

張雷は功夫をこよなく愛するクラブのボーイ。しかし腕前はイマイチ止まりで、店に現れたチンピラたちに叩きのめされてしまう。その翌日、彼は先程のチンピラたちを圧倒する謎の老紳士・關海山(クワン・ホイサン)と出会った。
「お師匠、オレに功夫を教えてください!」「わしに会いたかったら香港へ来るのじゃ」 …というわけで、張雷は住んでいたマカオから香港へと渡航。大道芸人との悶着を経て、とある企業の社長だった關海山と再会する。
 かくして張雷は彼の自宅に住み込み、厳しくも楽しい修行をマンツーマンで受けていった。ところが、得意のスケボーで恋人(実は關海山の娘)ができた矢先に、關海山の会社で重役による横領?疑惑が発覚する。
相手は金をジャケットに加工し、読んで字のごとく着服しているという(笑)。そこで張雷と關海山は、ニセの爆弾騒ぎを引き起こしてジャケットを取り返すが、結局は全面対決に発展していく。
果たして張雷は修行で磨いた功夫を生かせるのだろうか? そして立ちはだかる刺客たちとの戦いの行方は…?

▲本作は独立プロである協利電影の作品です。協利電影といえば、独創性の高い傑作功夫片をいくつも手掛けており、今も多くのファンから支持を受けています。
同プロダクションは早くから現代アクションに着目し、70年代後半から『ブルース・リィの刑事物語』『怒りのドラゴン』などを製作。そして本作では、現代アクションとナンセンス・コメディの融合を試みたのです。
 正直言ってストーリーに解りづらいところがあり(私が所有しているのは英語版)、重役が何を企んで最後にどうなったのか不明瞭なところもありますが、そこそこ笑えるシーンがあるので悪くありません。
主役の張雷と關海山についても、堅苦しさを廃したライトで現代的な師弟関係を構築しているので、なかなかに好感が持てます。コメディとしては爆笑必至ではないものの、作品の持つ雰囲気は良好だったと言えますね。
 さて功夫アクションについてですが、こちらはメインの張雷と關海山が本格的な功夫俳優ではないため、いかに協利作品といえどクオリティが気になるところです。
しかし彼らは果敢にも激しいアクションに挑み、吹き替えスタントを使いつつも健闘していました。特に張雷の頑張りが目覚ましく、話が進むにつれて動作がどんどん伸びやかになっていきます(武術指導は監督・脚本も兼任している徐二牛)。
 終盤の連戦では李春華・趙志凌・元武、そして李海生(リー・ハイサン)らと真正面から激突! 關海山も負けておらず、最後の張雷との腕試しではスタントの使用を極力控え、意外な好勝負に仕上がっているのです。
バリバリの功夫アクションを期待するとズッコケてしまいますが、先見の明を感じさせる興味深い作品…といったところでしょうか。なお協利にはもう1つ『醉猫師傅』という現代アクション+コメディがあり、こちらもいつか見てみたいと思ってます。

『一山五虎』

2014-12-22 22:43:28 | カンフー映画:佳作
一山五虎
英題:Bravest Fist
製作:1974年

●囚人の染野行雄は、手錠で繋がれた仲間と共謀して脱獄を決行するも、意見の相違から対立。殴り合いの末に相手を殺害し、何処ともなく行方をくらました…。
それから数年後、こちらは船着場の労働者である陳惠敏(チャーリー・チャン)。正義感と腕っぷしの強い彼は、今日も難癖をつけてきた悪党どもを蹴散らしていたが、妹から「母の体調が思わしくない」と知らされる。
 さっそく実家に帰ることになった陳惠敏は、途中で悪党どもの賭場で袋叩きにされていた石天(ディーン・セキ)と出会い、これを助けた。悪党のボスに収まっていた染野は、悪質な手段で報復を開始していく。
まず最初に船着場の監督を従わせようと拷問にかけ、彼が死亡すると船着場の買収に乗り出した。それを知った陳惠敏は「証拠はないが絶対お前らの仕業だろ!」と殴り込み、タイマン勝負を挑んだ染野はボロ負けしてしまう。
 そこで彼は功夫の達人コンビを雇うが、今度は妻が手下の陳耀林と不倫していることが判明。激怒した染野は陳耀林を撲殺し、まったく本筋と関係のない戦いを制した(苦笑
そのころ、襲撃を受けた陳惠敏は監督の娘とその彼氏(曾江)を連れ、実家に身を寄せていた。つかの間の平和を噛みしめる一行だが、陳惠敏が石天に呼び出されている間に敵が侵入し、彼の妹と監督の娘を誘拐されてしまった。
 陳惠敏の母も重傷を負い、怒りを爆発させた陳惠敏は敵のアジトに突撃! 染野たちを追って別荘に向かうが、そこには何故か石天の姿が…?
「あんたのせいで俺の妹たちが!」と詰め寄る陳惠敏だが、敵に見つかったため一緒に戦うこととなる。果たして彼らは悪を倒し、正義を示すことが出来るのだろうか?

 『怒れ!タイガー/必殺空手拳』『空手ヘラクレス』の陳惠敏が、コメディ俳優の石天と共演した作品です。石天といえば『酔拳』『蛇拳』などで観客を大いに笑わせた名優であり、後年は映画プロデューサーとしても腕をふるいました。
そんな彼が陳惠敏とどう絡むのか気になるところですが、残念ながら思ったほどはっちゃけた活躍は見せてくれません(ギャグも一切なし)。当時はシリアス系の功夫片が主流だったので、こればかりは仕方ないと思うしかないでしょう。
とはいえ、本作の石天は弱々しい賭場の客と思わせて…という比較的重要な役で、ラストバトルでは大立ち回りを披露。最後にはちょっとしたサプライズもあり、当時としては扱いが大きかったと言えます。

 しかし個人的には、染野さん扮する不運すぎるボスが印象に残りました。まずオープニングでバトルを繰り広げるも、内容的にはゲスト出演と思しき方野VS江島が充実しており、インパクトで食われてしまいます。
その後も通りすがりの陳惠敏に賭場を潰されるわ、普通なら勝って一泡吹かせそうなタイマンバトルで惨敗するわ、戦力強化を図った矢先に妻の不倫が発覚するわ、突然現れた妻の兄に苦戦するわと受難が続くのです。
 彼の不幸はこれだけで終わらず、ラストバトルで陳惠敏にリベンジできるかと思いきや、なんの遺恨や因縁もない石天の相手をするはめに。それでもなんとか相手を倒そうとするも、警官隊に踏み込まれてあっさりと逮捕されていました。
功夫片のボスなら、普通は主人公にトドメを刺されるのが当たり前なのに、それさえもお預けにされるなんて…。最後に連行される染野さんの姿に、どことなく哀愁めいたものを感じたのは自分だけではないと思います(涙

 ちなみにアクションは陳惠敏と張午郎(ジョン・チャン)が指導しており、先述のオープニング戦と最終決戦では小手先の技術などにこだわらない、勢い重視のファイトが堪能できます。
また、典型的ながら李小龍作品の物真似をしないストーリーや、主人公サイドの犠牲が最小限で済んでいる(=作品が陰惨になりすぎていない)ことも見逃せません。取るに足らない作品ではありますが、私はけっこう好きですね。