功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『ポストマン・ファイツ・バック/巡城馬』

2014-07-15 22:55:09 | カンフー映画:珍作
「ポストマン・ファイツ・バック/巡城馬」
原題:巡城馬
英題:Postman Strikes Back/Postman Fights Back
製作:1982年

●各地の軍閥と反政府組織が睨みあい、人心が荒廃の一途を辿っていた動乱の中国。かの袁世凱は、北方で暴れまわる山賊を買収して黙らせるべく、配下の高雄(エディ・コー)を派遣する。
彼は郵便配達人の梁家仁(レオン・カーヤン)を雇い、期日までに”ある物”を山賊へ届けて欲しいと依頼した。当初は難色を示した梁家仁だったが、弟分の袁日初(サイモン・ユエン・Jr)の勧めもあって、これを承諾する。
 危険な旅路となるため、彼らは爆発物の専門家である樊梅生(ファン・メイシャン)、高雄が用意した詐欺師の周潤發(チョウ・ユンファ)を迎えてパーティを結成した。一方で高雄は「荷物の中身を見るな」と念押しするのだが…。
旅の途中、梁家仁と同じ村に住む鍾楚紅(チェリー・チャン)や、山賊に襲われていた菊貞淑を仲間に加えつつ、一行は過酷な道のりを進んでいく。
 様々な困難を乗り越え、ようやく山賊がいるアジトの目前まで来た梁家仁たちだが、密かに後を着けていた高雄が突如として牙を剥いた!仲間は次々と殺され、生き残った樊梅生も山賊を道連れに死んでしまう。
全ては自らの利益のため…不要な者は容赦なく切り捨てる、高雄の非道なる計略だったのだ。怒りを爆発させた梁家仁は、袁世凱の元に帰還しようとする仇敵に肉迫する。配達人VS忍者…勝つのはどっちだ!?

 時代に翻弄される男たちの悲哀を描こうとしたものの、なぜか明後日の方向へと全力で突っ走ってしまい、最終的には『ドラゴン特攻隊』クラスの代物と化した作品です(苦笑
ただし狙って笑いを取りに行っている『ドラゴン特攻隊』と違い、本作は普通の冒険ものとして始まります。ところが一時間を過ぎたあたりから奇抜なキャラが登場しはじめ、最後は片っ端から登場人物を殺害!その結果、完全に収集がつかなくなっていました。
 しかし、仕事一筋で寡黙な梁家仁やニヒルな周潤發、情に厚くて壮絶な死を遂げる樊梅生など、メインの登場人物はとても魅力的です。また、長期に渡って行われた韓国ロケの効果、巨大なセットを使用したスペクタクルシーンも見逃せません。
――と、このように光るものもある本作ですが、では何故このような結果になってしまったのでしょうか?原因はいくつか考えられますが、最大の難点はハチャメチャなアクションシーンにあると言えます。
 相棒をおんぶしながら戦う殺し屋、凍った湖面に現れるスケート軍団、そしてフィルマーク作品もびっくりな全身タイツ忍者などなど…。こんな連中が大挙して襲ってくるのですから、折角のシリアスな雰囲気が台無しです。
ちなみに武術指導は袁家班が担当し、一定以上のクオリティを保っています。ところが皮肉なことに、アクションの質が高ければ高いほど物語との落差が浮き彫りとなり、居心地の悪さを助長してしまいました。
 ラストの梁家仁VS高雄も、普通に戦えば見応えがありそうなのに忍者アクションで押し通したため、かなりヘボい最終決戦となっています(この顔合わせなら『秘法・睡拳』の方がオススメ)。
ストーリーは徹底して救いがなく、恋愛フラグにいたっては回収する気さえ無し。個人的にも失敗作だと思いますが、本作が無ければ同じ監督&武術指導の『SPIRIT』(大傑作!)も存在しなかったはず。そう考えると見て損はない……かもしれませんね(爆

『香港黒社会 喧嘩組』

2014-07-09 23:05:16 | 日本映画とVシネマ
「香港黒社会 喧嘩組」
製作:1998年

▼今回紹介するのは、一昨年の今頃に記事を投稿した某Vシネマの続編です。先月の更新履歴で「7月は功夫片やマーシャルアーツ映画を重点的に紹介したい」と言った手前、レビューをアップしようかどうか迷っていたんですが…ま、いいか(爆
さて本作はVシネ界の大御所・小沢仁志、元JAC出身の山口祥行、プロレスラーの高山善廣が肩を並べて暴れまわった『血染めの代紋 喧嘩組』の続編で、監督の原田昌樹とヒロインのかとうあつきも続投しています。
 製作協力には、引き続き倉田プロとプロレス団体のキングダムが名を連ね、新たに新日本プロレスに代わってJACが参入!プロレス系のゲストは見当たりませんが、あの春田純一がラスボスとして君臨しているのです。
春田は千葉真一によって見出されたJACきっての実力派で、主に特撮ドラマで活躍しました。しかし同じJACスターの大葉健二と違い、彼は映画やVシネでタイマン勝負を繰り広げる機会が少なく、本作で暴れてくれるのを期待していましたが…。

■前作で喧嘩組を立ち上げた小沢たちだが、ケンカしか能がない彼らは金策に困っていた(笑)。そんなある日、ひょんなことから不法入国者がらみのトラブルに遭遇した彼らは、裏で暗躍する香港マフィアの存在に気付く。
敵は麻薬密売や不法入国者の斡旋、さらには不法入国者を殺して臓器売買に利用していた。戦いの中で、小沢は香港マフィアの一員である水島あかりと心を通わせ、「気を付けろ」と警告を促すのだった。
 だが、この一件で彼女に疑いの目を向けたボスの春田は、水島の妹を臓器密売の献体として殺害。水島を徹底的に拷問し、喧嘩組の事務所にいたかとうを誘拐した。
警察に足止めを食らっていた小沢は、ギリギリのところで水島の救出に成功する。そして全ての決着をつけるべく、春田の麻薬取引現場に殴りこんだ。果たして勝つのは喧嘩組か、それとも香港マフィアか!?

▲ストーリーは前作同様にテンプレートな内容で、水島の妹に降りかかる悲劇も予測の範囲内。一方で主役3人のやり取りが完全に漫才状態となっており(笑)、ここらへんは大いに笑わせてもらいました。
しかし血生臭い描写がやたらと多く、後半では水島が拷問されるシーンが10分以上も続きます。正直言ってこれらの場面は苦痛でしかなく、ここまでじっくり描かなくても…と思ってしまいました。
 ちなみに、本作の春田はヒステリー持ちの男色家という突飛すぎるキャラ。小沢に惚れた水島に激怒し、実はバイセクシャルか?と思わせておきながら、その本性は”小沢にゾッコンなヤンデレ”だと終盤に判明します(爆
クレイジーさで言えば『仮面ライダーエターナル』の時よりも凄まじいですが、何度もかんしゃくを起こすのでボスとしての威厳に乏しく、存在感では前作の加納竜に負けていると言わざるを得ません。
 ただし格闘シーンについては見ごたえがあり、主役3人に影響されたのかユーモラスな動作が多くなっています。絡み役の動きも軽快で、おそらくはJACや倉田プロのアクターたちが頑張っているのでしょう。
なにげに倉田プロの勇・中村浩二も最終決戦にちゃっかり参戦し、僅かですが小沢のアニキと対決していました。なお、中村は覆面姿のザコ役も兼任しているらしく、彼と思われるザコが確認できます(どこにいるかは見てのお楽しみ・笑)。
 注目の小沢VS春田は、喧嘩アクションなので派手な技こそ出てこないものの、白熱した殴り合いを延々と展開!Vシネという戦場を渡り歩いた小沢アニキと、数々のスタントを経験した春田のバトルは真に迫るものがありました。
ところでネットの情報によると、仮面ライダースーパー1こと高杉俊介も出演しているそうですが、エンドテロップに彼の名前はありません。私は見つけることができなかったのですが、一体どこに出ているのでしょうか…??

『レジェンド・オブ・トレジャー 大武当 失われた七つの秘宝』

2014-07-03 22:19:47 | カンフー映画:珍作
「レジェンド・オブ・トレジャー 大武当 失われた七つの秘宝」
原題:大武當/大武當之天地密碼
英題:Wu Dang
製作:2012年

●時は1910年代の中国。トレジャーハンターにして拳法の名手である趙文卓(ヴィンセント・チャオ)は、500年に一度開催される武術大会に出場するため、娘の徐嬌(シュー・チャオ)とともに武当山へ向かった。
彼の目的は武当山に眠る七つの宝で、娘が大会に出場している間にゲットしようという寸法だったが、宝の1つを狙う女盗賊・楊冪(ヤン・ミー)と遭遇。一時は対立するも、利害の一致で共同戦線を張ることとなる。
 そのころ徐嬌は、武当山の代表として大会に出場する羽目になった樊少皇(ルイス・ファン)と出会い、純朴な性格の彼に惹かれていく。だが彼女は難病を患っており、病状は悪化の一途を辿っていた…。
趙文卓はそんな娘を救うため、宝に秘められたパワーを入手すべく奔走する。しかし徐嬌の容体は急速に悪化し、宝の強奪を目論む譚俊彦(ショーン・タム)一派も動き出していた。
やがて、譚俊彦と結託していた武当山の道長・杜宇航(デニス・トー)が本性を見せ、ここに最後の戦いの幕が上がった。果たして趙文卓たちは巨悪を倒し、徐嬌を助けることができるのだろうか!?

 本作は珍しく武當派がメインの作品で、日本版の予告編では「アジア版インディ・ジョーンズ」「武術大会」「3大武打星の豪華競演」の3点がフィーチャーされています。
確かに趙文卓の役柄はインディ・ジョーンズ風ですが、七つの宝は比較的簡単に入手できる(中には何ひとつ難関がない宝すらある)ので、宝探しのワクワク感というものは殆ど感じなかったですね。
武術大会に関しても、主に活躍するのが徐嬌や楊冪といった非・功夫俳優なので、内容は実に平坦。樊少皇も出場しているという設定ですが、彼が出てくるのは残念な内容の決勝戦だけなので、あまり期待しないほうがいいでしょう。
 そして趙文卓・樊少皇・杜宇航という実力派3人の活躍っぷりですが…こちらも思っていたほどではありませんでした。本作のアクションは全体的にワイヤーの使用率が高く、どこかフワフワした動作となっています。
BGMや効果音も盛り上がりに欠けていて、2度に渡る趙文卓VS杜宇航もパッとしません。樊少皇に至っては他の2人より扱いが悪く、大会決勝戦とラストバトルでしか戦ってくれないのです。
そのラストバトルでも、CG空間の中で杜宇航と何度か殴りあっただけで敗北し、吹っ飛ばされたと思ったらそのまま出番終了という始末。キャリア的には3人の中で一番のベテランなのに、こんな扱いは無いよ!(涙
 ドラマ部分にも穴は多く、特にラストの強引な結末には仰け反ってしまいました。せめて登場人物たちのその後をフォローして欲しかった気もしますが、バッサリと終わるのは香港映画の伝統なので仕方ない…のかな?
実際に湖北省の武当山で行われたロケーション、立派に育った徐嬌(『ミラクル7号』のディッキー!)の姿など、見るべき点もあるにはある本作。つくづくアクションと恋愛描写の不徹底さが惜しまれます。