功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『ホワイト・ファントム/霊幻戦士』

2013-12-22 23:48:54 | 東南アジア映画
「ホワイト・ファントム/霊幻戦士」
原題:WHITE PHANTOM
製作:1987年

●とある街を根城にするサクラ一家の若き当主・龍方(ジミー・リー)は、父親の命令で5メガトン級の爆薬(ケース1個分)を奪い、それを売りさばこうと企んでいた。
CIAのボー・スヴェンソンは爆薬の所在を突き止めるため、踊り子のペイジ・レオンを利用して取引現場を急襲する。だがニンジャだった龍方によって爆薬は持ち去られ、さらにはペイジまでもが殺されてしまう。
そんな中、彼女を愛していた白きニンジャ…ジェイ・ロバーツ・Jrが仇討ちに立ち上がった。陽気な青年の顔を捨てて黒装束に袖を通すジェイ。ペイジへの愛を捨てて修羅の道を行く龍方。2人のニンジャが今、雌雄を決する!

 今年で当ブログがスタートして6年目ですが、まだまだノータッチのジャンルがいくつも存在します。そのうちの1つが東南アジア産ニンジャ映画です。
80年代にアメリカでニンジャ映画がブームとなった際、数々の便乗作品が誕生しました。香港では羅鋭(アレクサンダー・ルー)がこの流れに同調し、フィルマークもニコイチ映画で参戦。同様の動きはフィリピンを中心とした東南アジアでも起こっていきます。
 そうして作られたのが『ニンジャ・ウォリアーズ』などの東南アジア産ニンジャ映画で、香港産の作品とともに日本へ上陸。ブームが去った後も一部のファンから指示を受けましたが、VHSの時代が終わるとともに店頭から完全に消滅し、今では中古品もあまり見かけなくなりました。
私の近所にも数年前まで何本か置いてあったのですが、「いつか見ようかな」と思っているうちに消えてしまい、見なかったことを随分と後悔したものです(苦笑

 結局、私は東南アジア産ニンジャ映画に触れる機会を逸したものの、投売りされていた本作だけは入手することができました。そういう意味では思い出深い作品…と言えなくも無いですが、映画としては大した代物ではありません。
本作は台湾でロケーションが行われた作品で、『ゴッドギャンブラー』などで知られる龍方が出ています。しかし尺の大半はチャチな愛憎劇と抗争に割かれ、ニンジャの活躍は控えめとなっているのです。
 この他にも、ペイジを利用しまくったボーが痛い目を見ない、龍方の父親が死んでいない(続編狙いの演出?)など、釈然としない部分が多々ありました。その反面、ニンジャのアクションはわりと様になっていて、意外と見られるものに仕上がっています。
終盤のジェイVS龍方ではソードバトルから始まり、おもむろに刀を捨てて素手格闘に発展。ボーも果敢に格闘戦へ挑んだりと、このへんはサービスが行き届いていた感じです(ちなみにファイト・ディレクターは龍方が兼任)。
本作はあまり良い作品ではないですが、まだまだ私の東南アジア産ニンジャ映画の探求は始まったばかり。来年はシルバースター・フィルムの作品など、同ジャンルの開拓を進めていこうと思っています。

『ザ・サンクチュアリ』

2012-09-09 22:51:42 | 東南アジア映画
「ザ・サンクチュアリ」
「ザ・サンクチュアリ/聖域での決戦」
原題:SANCTUARY
製作:2009年

▼皆さん、どうもご無沙汰です。8月の中頃から夏バテ気味になってしまい、しばらく休養していました。これから再び通常通りの更新に戻るので、どうぞ宜しくお願い致します。さて、今回は心機一転して新カテゴリ「東南アジア映画」を作ってみました。この枠はムエタイ映画のような、香港・台湾・韓国系ではないアジア地域の作品を扱っていく予定です。
そして本日はカテゴリ新設を記念して、タイの格闘映画を紹介します。本作はアクションスターのマイク・Bという人が主演した作品で、ハリウッドから王盛(ラッセル・ウォン)も参加。タイの格闘映画といえば『マッハ!』が有名ですが、本作にも何人か『マッハ!』の関係者が絡んでいるようです。

■1897年、アメリカとタイの両政府が持ち寄っていた秘宝が、凶悪な盗賊団によって奪い去られた。タイ王国の軍勢は盗賊団を退治するも、秘宝は行方不明となってしまう。そして現在、失われた秘宝はタイマフィアの手によって回収されようとしていた。
マフィアはアメリカから呼び寄せた王盛たちに回収を任せるが、彼らは密かに別の取引相手と通じており、用心棒トリオと共に暗躍を開始していく。一方、秘宝の一部が埋まっていた寺院に住んでいたマイク・Bは、叔父が秘宝盗掘に関わっていたため、この一件に関わっていく事になった。
マイクは考古学者のインティラー・チャルンプラと共に調査を進めるが、敵との実力差は歴然としている。そんな中、彼の持っていたペンダント(実は秘宝の1つ)から光が放たれ…。

▲本作は『マッハ!』と同じく秘宝をめぐる戦いを描いていますが、あちらの何倍も淡白な代物に仕上がっています。全体的に話の進み方は遅く、ドラマ性はかなり希薄。後半から王盛たちを追う展開になりますが、マイクの行動動機の1つであった「兄の仇討ち」が完全に忘れ去られており、肝心の仇敵との対決も全然盛り上がっていませんでした(苦笑
その他にも、豪勢な爆破シーンがあるわりにロケ地が地味だったり、ムエタイの奥義を一夜漬けに近い形で習得したりと、ぼやけた部分の多い本作。しかし、格闘アクションはそれなりに体を張ったスタントが多く、意外と迫力があります。
 序盤はマイクが弱いので見せ場が少ないのですが、先述の王盛たちを追跡するシークエンスからは本領を発揮し始めます。一番面白かったのは次々と相手が入れ替わる用心棒トリオとのバトルですが、ラストの水飛沫が舞い散るマイクVS王盛もなかなか派手に撮れていました。
『マッハ!』のような人命軽視の肉弾バトルを想像すると肩透かしを食らいますが、アクションの出来は悪くありません。マイクの主演作は他にも『ブレイブ・ファイターズ』という作品が発売されているので、こちらも近い内に見てみたいと思います。ところで、予告にあった「マイクがジャンプして双剣をキャッチするシーン」が本編に無かったのは何故?

『ザ・タイガーキッド ~旅立ちの鉄拳~』

2010-12-08 23:24:40 | 東南アジア映画
「ザ・タイガーキッド ~旅立ちの鉄拳~」
原題:Merantau/Merantau Warrior
製作:2009年

▼うむむ…これは凄い映画だ…凄い映画だけど…詳しくは後述にて(謎)。そんなわけで今回は久々に新作の格闘映画の紹介です。本作はいわゆる『マッハ!』の影響によって作られたリアル・ヒッティング系の作品で、なんとインドネシア産の作品です。
インドネシアといえば、かの功夫スターである莊泉利(ビリー・チョン)の出身地で、過去にも色々とアクション映画は作られているのですが、本作は伝統格闘技「シラット」を題材にしているのが特徴であり売りとなっています。

■さる片田舎の集落に住む青年イコ・ウワイスは、「大人になったら出稼ぎするべ」という村の風習に従い、首都・ジャカルタへと向かった。
彼の夢は、自身が得意とする武術・シラットの道場を開くというものだったが、夜行バスの中で出会ったシラット経験者であるナイナイ岡村似のおっちゃんから「今日びシラットなんて流行らねぇって。金稼ぐんなら何だってしなきゃいけないけど…ま、俺みたいにはなるなよ?」と、意味深な忠告を受けた。
 忠告は現実のものとなり、間借りをしようとしていた?家は瓦礫の山と化していた(どうやら不動産屋に騙された模様)。着の身着のままで大都会に放り出され、行き場を失ったイコ。そんな前途多難な彼から鞄を盗もうと、1人の少年が現れた。
すぐさまイコは少年を追いかけたが、行き着いた先には彼の姉でダンサー志望のシスカ・ジェシカがいた。この2人は親に捨てられた身寄りの無い姉弟で、その日の糧を得るために必死で生きていたのだ。
 その後、イコはシスカに殴りかかったチンピラを撃退するが、これが騒動の火種になってしまう。このチンピラ、実は西洋人の人身売買組織の傘下に入っており、組織は「売り飛ばす女の数が足りないぞ」と要求。チンピラはシスカを誘拐して穴埋めをしようとするも、たまたま現場を目撃していたイコによって阻止され、組織のボスも大怪我を負わされた。
激怒したボスはチンピラにイコたちを探すよう指示し、追われる身となった彼らは街から脱出しようと試みる。だが、いったん自宅に戻ったところを組織に襲われ、弟を助けようとしたシスカが捕まってしまう。イコはたった1人で敵のアジトへと向かうのだが…。

▲まず格闘シーンについてですが、こちらはよく出来ています。本作では『マッハ!』のようなアクロバティックな動きは少なく、どちらかというと手技中心の動作が多め。私はシラットという格闘技をよく知らないんですが、イコの見せるファイトはとても迫力があり、その動きは過去に登場したどのアクション超人にも見劣りしていません。
中でも圧巻なのがイコVSナイナイ岡村似の一戦で、狭いエレベータ内を転げ回りながら展開する壮絶な闘いが実に凄まじい。ここまでイコの相手がザコばかりだったので、シラット同士によるこの接戦はとても印象的でした。
続くラスボス戦では、手技&足技コンビが敵という『Who am I?』チックな闘いとなり、こちらも充実した内容の好勝負。どっちも面白い対戦だったけど、ここはシラットをフル活用したVS岡村戦の方が良かった…かな?
 ということで、格闘アクション的には概ね良好と言える本作ですが、ストーリーの方はちょっと好き嫌いが分かれるかもしれないですね。というのも、本作は一貫して全体の雰囲気が暗く、所々に生々しい描写を挟んでいるからです。
これは現実にインドネシアが抱える問題を映画に反映したものと思われますが、それ故に本作は物語が進むに連れてどんどん陰惨な方向へと加速していきます。シスカがボスに手込めにされる(!)のを皮切りに、ナイナイ岡村似が銃弾の雨を浴びて惨殺されるに至り、最後に物語は衝撃的な結末を迎えてしまうのです。
 そのため、スカッとする活劇を期待していた私はラストで呆気に取られてしまいましたが、、本作は決して悪い作品ではありません(最後のカットが泣かせます)。個人的にはハッピーエンドでいて欲しかったですが、これはこれで強烈な印象を残していました。
皆さんも本作を見る際は、単純なアクション映画ではないということを念頭に置いて視聴することをオススメします。

『バンコック・アドレナリン!!!』

2010-09-21 23:19:19 | 東南アジア映画
「バンコック・アドレナリン!!!」
原題:Bangkok Adrenaline
中文題:曼谷極限
製作:2009年

●前回はタイを舞台にした功夫片を取り上げましたが、今回はタイで作られた格闘映画の紹介です。『死亡挑戰』から35年の月日が流れ、東南アジアの一角で作られていたタイ産アクション映画は、『マッハ!』の登場によって一気に世界レベルの名声と知名度を手にしました。そんな時代に作られたのが本作なんですが…コレはどうしたものかなぁ(苦笑
本作はタイで製作された映画ではあるものの、監督以下主要キャストがタイ人ではないので、どちらかというと印象は格闘映画そのもの。主演のダニエル・オニール『アクシデンタル・スパイ』等のジャッキー作品で腕を磨いた本格派で、今回はファイト・コーディネーターとしても名を連ねていることから、そのポテンシャルの高さが伺えます。
しかし、物語がビックリするほど適当で、行き当たりばったりの稚拙な話だったのは大減点でした。

 物語はダニエルたち4バカ(笑)が、カジノで大負けしたためにマフィアから「一週間以内に1000万バーツ払えや!」と脅される場面からスタート。彼らは金策に奔走するものの、短期間でそんな大金を用意できるはずが無かった。
そんな時、新聞で大富豪の令嬢の写真を見た4バカは「彼女を誘拐して身代金1000万バーツを頂こう」と思いつく。誘拐はまんまと成功するのだが、令嬢の父親は何故か身代金の支払いを拒否し、彼らに刺客を放った。仲間たちが次々と捕まり、令嬢の身にも危険が迫ろうかというその時、敵味方入り乱れての最終決戦が始まるのだが…?

 アクションありきで製作したが為に、ストーリーが破綻してしまった映画の典型です。そもそも借金の解決策として誘拐を実行する…という話からして頭が悪すぎるし、それどころか完全に犯罪行為です。カジノでスったのも4バカの自業自得だし、これでは主人公グループに感情移入することすらままなりません。
おかげで前半は随分と苦痛でしたが、後半からは別の意味でマズい展開になっていきます。色々あってダニエルたちは令嬢を助けるためにマフィアと闘いますが、突然なんの複線も無く2人の用心棒が登場!彼らが何者なのか全く説明されないまま(!)話は進み、グダグダな展開の末に根本的な問題が解決せずに幕を閉じてしまうのです。
ストーリーは雑の極みで、ギャグも終始空回り。いくらなんでもコレは…。

 そんなわけでストーリー部分は散々な結果になっているのですが、逆に格闘アクションは凄まじい完成度を誇っているのだから実に不思議です。本作のアクションシーンは『マッハ!』の影響が色濃く、悪漢に追われて町中を駆け抜けるシーンや、トゥクトゥク(オート三輪のタクシー)を使ったアクションなんかは『マッハ!』そのまんまでした。
しかし、ダニエル自らが指導したアクションはスタントや小技を巧妙に交えているので、単なる模倣に終わってはいません。特にラストの倉庫バトルでは、主要キャストのファイトスタイルがきちんと区別されているし、倉庫の地形を利用した殺陣は『マッハ!』というよりも往年のジャッキー作品を髣髴とさせます。
 その他にも、町中を失踪するチェイス・シーンでは細い路地で敵と対峙し、狭い場所で飛んだり跳ねたりの変わった闘いを見せています。ここは『武館』のラストで繰り広げられた劉家輝VS王龍威の一戦に似ている気が…もしかして、狙ってやってる?!
と、このように本作はアクションの質が高く、格闘シーンのクオリティは文句なしの出来です。そこだけを評価するなら大満足なんですが、いかんせん物語の酷さが足を引っ張っているのも事実。せめて、下手にひねくれていないストレートな話であれば、もうちょっとはマシになったと思うんですが…。本当にどうしたものでしょうか、この作品は(爆

特集・50Movies(06)『The Impossible Kid』

2008-12-14 20:59:45 | 東南アジア映画
The Impossible Kid
制作:1982年

●(※…画像は本作を収録したDVDパックのものです)
『Martial Arts 50 Movie Pack』在庫セールも6回目となると、いよいよ功夫片も底を突いてきたところですが(苦笑)今回は一風変わったフィリピン映画の紹介です。

 本作で主演を務めたのはウェン・ウェンという方で、身長83cmの○人さんです。かつて世界一背の低い俳優としてギネスに記載された事もあり、フィリピンでは結構な人気を誇った大スターだった人でした。
ですが、残念なことに彼は1992年に34歳の若さでこの世を去っています。本作は、そんな彼の看板シリーズであったスパイアクション「エージェント00(Agent 00)」の一編。同シリーズの『For Your Height Only』では、『激突!ドラゴン稲妻の対決』のトニー・フェラーと共演しているそうです。

 インターポール捜査官のウェンは、上官からテロ組織壊滅を依頼される。首領は白い覆面を被った謎の男、ミスターXだ。犯行声明を各所に送っているミスターX…具体的にどんな悪い事をしているのか良く解らないが(笑)、テロリストなら放っておくわけにはいかない。
ウェン捜査官とその仲間たちは組織の幹部たちと熾烈な戦いを続けるが、その裏にはさらに大きな陰謀の影が渦巻いていた…。

…という感じの話ですが、本作の見どころはウェン・ウェン氏そのものにあります。彼はその体格ゆえにスタントダブルが使えないため、作中でのアクションはほぼ全て吹替え無しで演じています(ちなみに格闘シーンでは、身長差の都合で攻撃がほとんど金的オンリー・笑)。
また、彼にとって背の低さは弱点ではなく、逆に武器として活用しまくっている点も実にユニークでした。大人では隠れられないような場所に隠れたり、体格を生かして堂々と敵地に侵入したりするなど、ハンディキャップを逆用した際どいアクションも見せ場の1つといえるでしょう。

 作品としては、巨悪を追うウェン氏が七つ道具で困難に立ち向かい、エロいねーちゃんの裸も出てくる凡庸な『007』系のスパイ映画でしかありません。良くも悪くもまったり気味の作風、一本調子のBGM、なぜか異様にモテモテのウェン氏など、おかしな箇所もいくつかあります。
というか、少なくとも功夫映画や格闘映画と同列に語るには無理がありすぎる本作ですが、ここから先の『Martial Arts 50 Movie Pack』在庫セールも更にレビューしづらい映画が待ち構えているはずなので、そこらへんはご容赦のほどをお願いします(爆